鬼滅の刃 蝶と日と   作:毛利カトリーヌ

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下弦集結

炭治郎とカナヲが鬼殺隊となって1年数ヶ月が経った頃。

 

階段が無数にある空間で……

 

ベン!

 

一人の女性が琵琶を鳴らすと、新たな階段と共に一体の鬼が姿を現す。獣のような鬣に、額と鼻、目の下に線が入っていてそれは『エ』の字のようになっているのが特徴で、片目には『下陸』と刻まれている。

 

ベン! ベン! ベン! ベン! ベン!

 

琵琶の音と同時にまた新たな階段と鬼が一体ずつ姿を現していく。

 

燕尾服姿の『下壱』。

 

図体が大きくて土木職人的な出で立ちの『下弐』。

 

額と頬に×の傷がついた『下参』

 

ファーを首に巻き、着物姿で角を生やした赤い顔に白髪。まるで雪女風の『下肆』。

 

やや長髪で青白い顔に赤い斑点がある『下伍』。

 

誰もが怪訝そうな表情をする中、鬼六体はいつの間にか踊場に集めらた所に着物を着た切れ長の女性が現れ……

 

「頭を垂れて蹲え。平伏せよ」

 

六体は一斉に平伏した。

 

―――無惨様だ。無惨様の声だ……。凄まじい精度の擬態でわからなかった……。

 

下陸は汗を浮かべる。

 

「も、申し訳ございません。お姿も気配も異なっていらしたので……」

 

雪女風の鬼が釈明しようとすると……

 

「誰が喋っていいと言った?」

 

鬼無辻無惨は冷酷な目つきでピシャリと遮った。

 

雪女風の鬼はたちまちガクガクと身体を震わせる。

 

「貴様らのくだらぬ意思で物を言うな。私に聞かれた事にのみ答えよ」

 

そう言って、本題に入る。

 

「私が問いたいのは一つのみ。何故に下弦の鬼はそれ程まで弱いのか。最近も佩狼が殺されて下弦の弐が入れ替わったばかりだ。十二鬼月に数えられたからといって終わりではない。そこからが始まりだ。より人を喰らい、より強くなり、私の役に立つための始まり。ここ百年余り、十二鬼月の上弦は顔ぶれが変わらない。鬼狩りの柱共を葬ってきたのは常に上弦の鬼たちだ。しかし下弦はどうか? 何度入れ替わった?」

 

―――そんなことを俺たちに言われても……

 

下弦の陸はそう思ったところ……

 

「『そんなことを俺たちに言われても』 何だ? 言ってみろ」

 

「……」

 

思考が読めるのか……! まずい!

 

「何がまずい? 言ってみろ!」

 

無惨は益々青筋を立てて迫った。

 

次の瞬間、下弦の陸は無惨の手から伸びた、触手のようなものに掴まれ、上まで持っていかれた。

 

「お許しくださいませ! 鬼無辻様どうか! どうかお慈悲を!」

 

「……」

 

無惨は黙ったまま下弦の陸がもがき苦しむのを眺めていたが、やがて口を開く。

 

「私の役に立たないで下らないことを考えるのは死に値する。このことをお前らは確と胸に刻め。私は十二鬼月だからとお前らを甘やかし過ぎた。これからは死ぬ気で私の役に立て。そこでだ。お前らに任務を与える」

 

そう言って下弦の陸を触手から解放してやると、話を続ける。(解放されると同時にドン! という音と共に下弦の陸は床に落ちるや直ちに平伏し直した)

 

「下弦の伍の累が棲む那田蜘蛛山。ここにはこれまでもたくさんの鬼殺隊が迷い込んできたが、ここにこれから最大限、鬼殺隊をおびき寄せて餌食にする。さすれば柱も黙っておらず、那田蜘蛛山にやって来るだろう。そこにお前らを鳴女によって那田蜘蛛山の各所に転送させるから、柱を含む鬼狩り共を始末するのだ」

 

無惨は踊場を行ったり来たりしながら続けた。

 

「それから最近、竈門炭治郎という耳に花札のような耳飾りをつけた少年が入ってきた。そいつと会ったら必ず始末するのだ。柱や竈門炭治郎を始末できた暁にはお前らに私の血を更に分けてやろう。ただ、それができなければ最早お前らの命はないと思え! いいな?」

 

下弦の鬼一同は頭を床に擦り付けて蹲った。

 

「もう一つ。下弦の壱の魘夢と下弦の参の病葉は別命を与えるから今回は鋭気を養ってろ」

 

その言葉と共にベン! という琵琶の音がしたと思いきや、無惨は姿を消した。

 

「ほお、別命ですか。夢見心地でございます~」

 

下弦の壱がうっとりと独り言を言っている間にも鬼たちは琵琶音と共に次々と空間から姿を消していった。

 

ベン! ベン! ベベン! ベン!

 

「僕たちは家族だ……。誰にも邪魔させない。邪魔する奴はすぐに殺す」

 

琵琶を鳴らしていた女鬼こと鳴女によって『棲家』に帰ってきた下弦の伍、累はそう呟いた。

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