鬼滅の刃 蝶と日と   作:毛利カトリーヌ

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下弦の肆

炭治郎は伊之助の協力もあり、隊士たちを糸で操っていた鬼を突き止めて殺すことに成功した。しかし、その直後に雪女風の下弦の肆が現れ、罵詈雑言を浴びせられた。

 

「なぜお前は人間を踏みつけにしようとする? 何が面白い? あなたも元々は人間だったのだろう? あなたからはいつも何かに怯えているような匂いがする。自分が弱いから、自分より弱い相手は虐めることで何とかごまかそうとしているような。例えばいつも、柱からは逃げて平隊士を狙っているのではないか?」

 

炭治郎の言葉は目の前の十二鬼月をグサグサと抉る。下弦の肆は一瞬ハッとするも、すぐにむきになって怒鳴る。

 

「う、うるさいわよ! 口を閉じてろ、この雑魚が! 雑魚のくせに生意気ね! お前のような雑魚は私に平伏し、餌食になればいいのよ!」

 

血鬼術 細雪(ささめゆき)

 

次の瞬間、鬼の口から雪のようなものが吹き出て、炭治郎を直撃した。

 

「この雪に当たればお前の身体はたちまち凍り、死ぬわ! 存分に味わいなさ~い、この雑魚が!」

 

炭治郎は即時、冷気を感じるも日輪で反撃する。上弦の弐の血鬼術と似ていると即、感じた。

 

日の呼吸 参ノ型 烈日紅鏡

 

炭治郎は何とか雪を斬り刻んで彼女の間合いから大きく飛び退く。

 

「ふふふ。逃げるのね。やっぱり弱虫で、雑魚ね! 人間って生まれてもやがては老いていくだけの弱い生物。鬼に絶対に叶わない。つくづく可哀想な生物ね!」

 

下弦の肆はなおも嘲り回す。

 

「人間は皆、強くはないながらもそれぞれ楽しい思い、悲しい思い、辛い思い、悔しい思い、嬉しい思い、様々なことを感じながら必死に生きている! 時に助け合い、支え合い、そして愛し合いながら生きている! それに俺の場合、帰りを待ってくれる人がいる! 可哀想なのは常に妬み、憎しみの気持ちを持つことしかできないお前ら鬼だ!」

 

炭治郎はそう言って斬りかかる。

 

日の呼吸 肆ノ型 灼骨炎陽

 

血鬼術 雪礫

 

彼女の口から、前に掲げた両手から、最初よりも特大で鋭い雪刃が日輪に対して襲いかかる。日と雪の技のぶつかり合いとなり、炭治郎は雪の血鬼術を相殺させて緩和させることには成功するも、下弦の肆の頚には到底、届かない。しかし、上弦の弐との遭遇で、これより遥かに強力な氷の血鬼術を経験したためか、十二鬼月相手でも迎撃は出来ている!

 

「雑魚の癖によく耐えたわね」

 

下弦の肆はやや、感情を落ち着かせた。炭治郎の善戦に感心したようだった。

 

「俺は、弱い者を踏みつけにつる奴を決して許さない!」

 

炭治郎はそう言って日輪刀を構えてみせる。すると下弦の肆は再びいきり立つ。

 

「すぐ殺すのは可哀想だからと休憩してやったのに! 何なのその態度は? 雑魚のくせに! 私は零余子。十二鬼月、下弦の肆よ! 今からお前のことをこれまでにない残酷なやり方で殺してやる!」

 

血鬼術 雪風巻(ゆきしまき)!

 

次の瞬間、炭治郎に激しい雪刃に加え、暴風が襲った。

炭治郎は吹き飛ばされながらも木々にぶつからないように避けながら何とか受け身を取って着地することができた。

 

しかし零余子は再び襲って来る。

 

「やっぱり雑魚ね!」

 

血鬼術 雪礫

 

再び特大の雪刃が迫り、今度こそ炭治郎はトドメを刺されるかに思われたが…

 

日の呼吸 拾壱ノ型 幻日虹

 

日の呼吸 㭭ノ型 飛輪陽炎

 

炭治郎は残像をくっきりと残してトドメを刺したと思わせながら素早く避けて攪乱し、零余子が一瞬、混乱している隙を突いて、刀を両腕で振りかぶって独特な振り方で頚を狙ったが、ギリギリで避けられた。

 

ピシャッ!

 

斬撃は零余子の胸を斜めに裂き、夥しい血が出る。

 

「斬られた? 私が? この雑魚に? しかも何? なかなか再生しないじゃない!」

 

今回の日輪は上手く当たったらしい。下弦鬼の傷の再生を遅らせるくらいには。

 

炭治郎はここぞとばかりに、

 

日の呼吸 肆ノ型 灼骨炎陽

 

素早い回転斬りで再び頚を狙うも…

 

血鬼術 終式 雪上加霜(せつじょうかそう)

 

次の瞬間、零余子の口から、かざした手から雪風巻を遥かに上回る吹雪に加え、大きな雪刃の塊が炭治郎を襲った。

 

その四字熟語の意味を極端に誇張したような、人間を死と隣り合わせレベルの災難に継ぐ災難に遭わせる禁じ手のような血鬼術だ。

 

ドシャッ!

 

日の呼吸 拾壱ノ型 幻日虹

 

雪刃の下敷きになって即死するかと思われた刹那、炭治郎は日の呼吸で何とか躱し、大きく飛び退くが再び雪刃の塊は襲い、しかも吹雪は周囲の木々を絡め取って炭治郎の上に浮いたと思いきや、炭治郎目掛けて一気に襲ってきた。

 

「雑魚のくせに随分イライラさせてくれたわね~! でもこれでおしまいだわ! 死ね!」

 

雪刃や木がかすり炭治郎は身体に激しい痛みが走る。既に炭治郎は日の呼吸の連発、激しい血鬼術に対する対応で息を乱しており、ここに来ての怪我は痛みもひとしおだった。顔は雪刃によって火傷し、それ以外にも背中、腕、脚から夥しい血が出ている。

 

「ハハハ! 惨めね! これもお前が雑魚で生意気にも私に抵抗し続けるからこのように苦しむのだ! お前みたいな雑魚は黙って私の餌食になればいいのよ! そうすれば苦しみは一瞬だけで済む!」

 

零余子は狂ったように高笑いする。人間の幸せな営みを壊すのがさも当たり前、自然の摂理だと言わんばかりの物言いに炭治郎は怒りに震える。

 

「俺はどんなに身体を痛めつけられてもお前のことは決して許さない!」

 

炭治郎は激痛に必死に歯を食いしばりながらそう唸った。

 

「それが生意気なのよ!」

 

再び下弦の肆の最終奥義が襲う。

 

日の呼吸 拾壱ノ型 幻日虹

 

炭治郎は身体に鞭を打って必死に避けるも、もうすぐ身体は動けなくなる。何としてでもカナエさんの下に帰るという思いを胸に、避けながら必死に呼吸を整え……

 

日の呼吸 陸ノ型 日暈の龍・頭舞い

 

炭治郎は龍が舞うように素早く突撃し、襲い来る雪刃なども斬撃で五回ほど強行突破し、その斬撃ごとに勢いをつけて零余子に飛びかかり……

 

力一杯一閃した。

 

とうとう零余子の頚は胴から離れ、地に落ちた。同時に血鬼術により造られた銀世界もたちまち消滅する。

 

「負けた? この私が?」

 

下弦の肆は信じられない、といった顔だった。炭治郎は近くに駆け寄ると、自分は弱いということに対するコンプレックスの匂いがした。弱いから、自分より弱いと見做した人に対して攻撃的になる。

 

「俺もわかる。カナエさんを見てると世の中にはこんなにも完璧な人がいるんだな、と自分の小ささを感じさせられるから」

 

零余子が灰になっていく過程で一瞬、彼女に涙を見たような気がした。鬼という立場から解放され、己の本音をさらけ出した瞬間。

 

間もなく、どこかから猫がやって来て猫の蓋がひとりでに開き、毬使いの鬼と矢印の鬼と戦った後に貸してくれた短刀のようなものが顔を覗かせた。鬼の身体に刺すことで血液を採取できる短刀だ。

 

珠世さんからの使いだと感じた炭治郎は短刀を取り、まだ残っている零余子の頚から下の部分に刺したのだった。

 

竈門炭治郎は単独で十二鬼月討伐を果たした。

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