鬼滅の刃 蝶と日と   作:毛利カトリーヌ

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鬼殺隊柱合裁判

カナエが炭治郎を背負って那田蜘蛛山を降りていたところ、鎹烏の指令が木霊した。

 

「伝令! 伝令! カァァ! 伝令アリ! 伝令アリ!」

 

カナエは足を止め、次の言葉に耳を傾けたが、その言葉は驚愕の内容だった。

 

 

「竈門炭治郎拘束シ本部ヘ連レ帰レ! 連レ帰レ! 竹を噛んだ鬼禰豆子は既に拘束シタ! カァァ!」

 

「禰豆子……」

 

炭治郎は激痛に耐えながら思わず、そう呻く。とうとうバレる時が来てしまったか……。しかし、カナエは、

 

「大丈夫よ」

 

そう言って背負っている炭治郎を抑える手に力を込めた。

 

「花柱・胡蝶カナエが絶対に守ります」

 

「ありがとうございます」

 

炭治郎は思わず涙を浮かべて言った。これほど頼もしい言葉はない。

 

「ううん。師範として当然のことよ。むしろ本部に連れていくことになってしまってごめんね~。炭治郎は遠慮せず眠ってて大丈夫だからね」

 

「はい」

 

直後、炭治郎はカナエの背中で気を失った。

 

カナエはキリっとした双眸で那田蜘蛛山を降りていった。

 

 

 

 

炭治郎が目を覚ますと……

 

左右にはカナエとしのぶが控えていて、背後を見ると……

 

荘厳な姿をした鬼殺隊士がずらりと並んでいる。

 

カナエさんも凄いけど、この人たちから醸し出す威厳は半端でない……

 

恐らくは鬼殺隊でトップクラスの実力、要するに柱か?

 

 

数珠姿で身長が2m以上ある大柄な岩柱・悲鳴嶼行冥。

盲目らしく、両目は白目を剝いている。

 

悲鳴嶼に次ぐ大男で、美男子風の音柱・宇随天元。

宝石の髪留めで、長い銀髪を纏めている。

 

金と赤が混じった、まるで炎のような髪型が特徴で、顔つきも炎のような熱さを醸し出している炎柱・煉獄杏寿郎

 

小柄で年齢も幼げな霞柱・時透無一郎

 

桃と緑が混じった髪を三つ編みにし、胡蝶姉妹に引けを取らぬくらいの可憐な容姿の恋柱・甘露寺蜜璃

 

そして彼らから少し離れた所にポツンと突っ立っている、片身替模様の羽織を纏った切れ長の目つきの水柱・冨岡義勇がいた。しかしそんな彼をカナエは放っておく筈がない。

 

「義勇くんもこっち来なよ~。これから私のかわいい継子を紹介するんだから♪」

 

「いや、俺はいい。俺はお前たちとは違う」

 

その言葉に誰もが聞き捨てならないというように振り向くが、

 

―――冨岡さん! 離れた所に一人突っ立っていて可愛い 

 

恋柱・甘露寺蜜璃はただ一人、冨岡にときめいていた。

 

「冨岡さん? またそんなこと言うんですか? これだからあなたはみんなから誤解されるんですよ? わかってます? いいから早くこっち来てください」

 

今度はしのぶが笑顔で言った。炭治郎は知っている。笑顔に隠された並々ならぬ怒りを。

 

「……承知した」

 

怒りは義勇にも伝わったらしく、水柱・冨岡義勇は柱たちの輪に加わった。

 

そして話題は炭治郎と禰豆子の処分の是非についてとなり……

 

「うむ! 裁判の必要などなかろう! 鬼を庇うなど隊律違反! 我らの判断のみで女の鬼もろとも即座に斬首! それでよかろう!」

 

炎柱・煉獄杏寿郎は炭治郎たちの即刻処刑を主張した。

 

「うん! ド派手にな! 俺が派手に頚を斬ってやる! 誰よりも派手に血しぶきを見せてやるぜ」

 

音柱・宇随天元が煉獄に同調する。

 

「あぁ、なんというみすぼらしい子供だ……。生まれてきたこと自体が可哀想だ……」

 

岩柱・悲鳴嶼行冥が数珠で両手を合わせながらさりげなく煉獄や宇随以上の毒舌を呟いた。

 

言いたい放題の柱に対し、花柱・胡蝶カナエは反論する。

 

「これまでみんなに隠していたことは謝るわ。しかし、私が上弦の弐に襲われた時、炭治郎がいたから生き残れたし、それに那田蜘蛛山では十二鬼月を単独で撃破したわ」

 

「十二鬼月を撃破した、だと……」

 

宇随が驚きの声を漏らした。

 

「上弦の弐との戦いで生き残り、十二鬼月を撃破するなんて……。無一郎君に続く天才だわ!」

 

恋柱・甘露寺蜜璃が両手を組み、再びときめきの声を上げた。

無一郎とは霞柱・時透無一郎のことで、炭治郎や禰豆子の処分を決めているこの時に、ボーっと空を見上げている小柄な少年だ。

しかし彼は鬼殺隊員になってからわずか二ヶ月で柱になったので、天才剣士と言われていた。

 

「十二鬼月を撃破したからといって下弦の鬼だろう? それに問題はそんなことではない。鬼殺隊なのに鬼を庇っていた、ということだどう責任を取る? これは胡蝶姉妹、お前らの責任でもある」

 

ネチネチとした声が上から降ってきて、炭治郎は何だろうと見上げると、蛇を首に巻きつけている蛇柱――伊黒小芭内が木の上から指差して、炭治郎だけでなく胡蝶姉妹をも追及している。

 

「隊律違反は鬼を屋敷に匿っていた胡蝶たちも同じだろう? 未だに処罰されていないことに俺は頭痛がするんだが。どうするどう責任を取らせるどんな目に遭わせてやろうか」

 

―――伊黒さん、相変わらずネチネチしていて蛇みたい! しつこくて素敵❤️

 

甘露寺は自分と同じ女性隊士である、胡蝶姉妹をも槍玉に挙げられたにもかかわらず、今度は伊黒にときめきを見せた。

 

「伊黒さん。まだお館様が見えておりません。お館様の判断なしに処罰を決めるなどそれこそ隊律違反ですよ。それに禰豆子さんはどこですか? 早く連れてきて下さい」

 

しのぶが能面で言ったその時……

 

「鬼を連れてる隊士はそいつかィ?」

そう言ってやって来たのは風柱・不死川実弥だった。

しかも、禰豆子の箱を背負っている!

 

「禰豆子……!」

 

炭治郎が駆け寄ろうとする前に、しのぶが消え……たと思いきや、箱を取り戻した。

 

「ほら炭治郎、禰豆子さんですよ。守ってあげなさい」

 

「ありがとう…ございます」

 

風柱・不死川ですら反応できないほどのしのぶの速さに、炭治郎は呆気に取られた。

 

「あらあら」

 

そう漏らすカナエの声に、怒りが込められている。

 

「お前ら揃いも揃っていい度胸してるぜェ! いい度胸してるといえばお前らのとこの女子たちもそうだったからよォ、風柱として指導してきたわ」

 

お前らのとこの女子ってもしかしてアオイさん、カナヲ……?

 

「わかりました」

 

カナエが冷たい笑みを浮かべて口を開いた。隣ではしのぶが厳しい表情で不死川を睨みつけている。

 

「不死川君がそのつもりなら私にも考えがあります。この後、お館様がいらっしゃるでしょうからそこで訴えさせてもらいます」

 

「オォ! そうかァ! やれるもんならやってみやがれェ!」

 

胡蝶姉妹と不死川が一触即発の雰囲気になり、甘露寺が「キャー! ダメダメ!」と止めに入るのも双方の耳に届かず、といった所におかっぱ頭の産屋敷家の子供たちが姿を見せ……

 

「お館様の御成りです」

 

最終選別が終わった時にいた人と同じ人だ……

 

その言葉と共に柱たちは一斉に正座して深々と頭を下げ、胡蝶姉妹も不死川も喧嘩をやめて頭を深々と下げた。

 

「炭治郎、頭を下げるのよ」

 

カナエに促され、炭治郎が柱たちと同じように頭を下げると、鬼殺隊の『お館様』が姿を現したのだった。

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