鬼滅の刃 蝶と日と   作:毛利カトリーヌ

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無限列車

「善逸……!」

 

獪岳は蝶屋敷に着くや否や善逸の眠るベッドに駆け寄った。

 

「ご、ごめんなさい……。私があの山に誘ったが故に……」

 

善逸の側には真菰がいて、涙を流している。

 

「善逸……! このカスが!」

 

そう言う獪岳の目には涙が溢れていた。

 

「真菰は悪くない。生きて帰って来なかったこのカスが悪いんだから」

 

「獪岳君。あなたにとって大切な弟弟子だったんだから、カスと言うのはやめてあげましょう」

 

真菰は溢れ出る涙を拭いながらそう諭すと、獪岳は益々大泣きして善逸の遺体を抱きしめた。

 

そんな獪岳を、真菰は背後からゆっくりと抱きしめたのだった。

 

 

 

 

「改めて柱就任、おめでとう!」

 

柱合会議が終わり、蝶屋敷への帰路でカナエが言った。

 

「ありがとうございます。これもカナエさんやしのぶさんのお陰です。それに今の会議でもカナエさんたちが護ってくれなければ俺の命はありませんでした」

 

炭治郎は恐縮して言った。

 

「いいのよ。師匠として当然のことをしたまでよ。それに炭治郎が柱になれたのは純粋に実力があったからよ! それに私だって炭治郎にこの命、救って貰っているわけだし……」

 

「そうよ。炭治郎がいなければ姉さんは上弦の弐に殺されていました。ここまで来れたのは炭治郎の努力の賜物だから、そこは自信持ちなさい」

 

しのぶも口を挟んだ。

 

「これからは柱の先輩として色々と指導していくから、改めて宜しくお願いしま~す」

 

カナエがフワフワした声で言うと、炭治郎も返す。

 

「はい! 宜しくお願いします!」

 

胡蝶姉妹と炭治郎が一緒に帰っていると、水柱・冨岡義勇が前を一人で歩いていたので……

 

「冨岡さん!」

 

炭治郎が呼び止めると、義勇は黙って振り向く。

 

「あの、柱合会議の時は俺と禰豆子を命を賭して守ってくれてありがとうございました!」

 

「鬼殺隊、ましてや柱になったからには一体でも多くの鬼を狩ることで報いろ。以上だ」

 

義勇はニコリともせずそう言って踵を返そうとすると……

 

「ちょっと冨岡さん? 折角お礼を言いに来てくれた人に何て態度なんですか?」

 

しのぶが額に青筋を立てて詰め寄り……

 

「ちょっとしのぶさん! 俺は別に大丈夫ですから……!」

 

炭治郎が慌てて止め……

 

「あらあら」

 

カナエはいつものようにフワフワとした声を出し……

 

義勇はしのぶの怒りに当惑しているのだった。

 

 

 

 

蝶屋敷に帰ってからは身体の傷を治し、アオイやカナヲたちと機能回復訓練を行った。アオイは禰豆子を守ろうとして風柱に気絶させられたというのに、全く気にしていない様子だった。

 

すっかり全快した日柱・竈門炭治郎は無限列車という列車で、炎柱・煉獄杏寿郎と合流することとなった。

 

今回はカナヲと伊之助を連れていくこととなった。なお、伊之助も蝶屋敷に運ばれて機能回復訓練などを受けていた。

 

「なんで俺様がお前に従わねばならないんだよ!」

 

三人で向かっていると、猪の被り物を被った伊之助は早速、文句を垂れた。

 

「いや。俺はまだ到底、柱になれるだけの実力が備わっていないと思ってるんだ。だから今回の任務は正直、怖い。だから伊之助、そしてカナヲが来てくれて本当に心強かった。心から頼りにしているし、君たちも柱になれるよう、俺も出来る限り協力するよ!」

 

「……」

 

ホワ、ホワ……

 

伊之助はたちまち固まる。カナヲはマイペースで、指に留まらせている蝶を眺めながらながら歩いている。

 

「てめぇ! 俺をこれ以上ホワホワさすんじゃねえ! ぶっ殺すぞ、コラァァ!」

 

「やめてくれ伊之助~! 落ち着け~!」

 

炭治郎の柱としての威厳はあったものではなく、現場に向かうまで炭治郎はひたすら、伊之助からの攻撃をかわし続けるのだった。

 

 

「何だ? これは!」

 

駅に着き、真っ黒な機関車を前にして伊之助は目を丸くした。炭治郎も啞然としている。本人たちは列車だとは認識しておらず、得体の知れない何かだと思っている。

カナヲからも驚きでいっぱいの匂いがする。

 

当然だ。三人とも都会で育っておらず、伊之助とカナヲに至っては幼い頃から両親がおらず、伊之助は自然の中で自給自足することで育ち、カナヲは奴隷として売られ、悲惨な環境で育ってきたのだ。

 

「よし、勝負だ! 勝負、勝負! 猪突猛進!」

 

何を思ったか、伊之助は機関車に突進したのだ。

 

周囲は列車を乗り降りする人々で行き交っており当然、彼らは炭治郎たちを怪訝そうな目で見る。しかも炭治郎たちは刀を腰に差しているので、益々不審者のような目で見られた。

 

「伊之助! やめろ! この土地の守り神かも知れないだろう! 急に攻撃するのは良くない!」

 

炭治郎は必死に止めたが、その論理は激しくずれており、カナヲもカナヲで一切突っ込まない。

 

「うるせえ! 俺に命令すんじゃねえ!」

 

抵抗する伊之助を、カナヲにも頼んで抑えてもらっていると……

 

「何してる! お前ら!」

 

ぞろぞろと詰襟の服を着た警備員がやって来て……

 

「こいつら刀を持っているぞ! 警察だ、警察を呼べ!」

 

三人はたちまち現実に戻り、

 

「逃げるんだ!」

 

炭治郎は他の二人を誘導して刀を何とか隠そうとしながら逃げた。

 

「何だかわからないけど、この中に煉獄さんがいる! きっとこれが鴉の言っていた列車だ!」

 

カナヲは勿論、伊之助もここは逃げないとまずいと察知し、炭治郎に従う。炭治郎も伊之助もカナヲも実力ある鬼殺隊員である。目の前の機関車が列車とは認識できなくとも、とにかく飛び乗ってみるしかない、という本能が芽生えていた。何が何だかわからなくてもとにかく突き進んで活路を見出す。そういった感覚が身についていた。

 

三人が乗ると同時に、機関車の扉が閉まり、動き始めた。

 

駅が流れるように離れ、それからも景色が流れていく様に炭治郎は興奮した。

 

伊之助に至っては……

 

「おおおおお! すげえ! はえええ! 主の腹の中だ! 戦いの始まりだ!」

 

周囲を憚ることなく大声を出している。

 

「伊之助。煉獄さんを探そう! 戦いはそれからだ!」

 

炭治郎はカナヲと共に伊之助を再び連れ出し、列車の奥に進むと……

 

「うまい! うまい!」

 

快活な声がする。煉獄さんの声だ!

 

そして次の車両のドアを開けると……

 

「うまい!」

 

夥しく並んでいる座席の一つに座り、金色と赤色の混じった髪をツンツンと立て、まるで炎のような髪型をした炎柱――煉獄杏寿郎が駅弁を何個も平らげている所だった。

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