鬼滅の刃 蝶と日と   作:毛利カトリーヌ

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上弦集結

異空間無限城では琵琶の音が鳴り響くと同時に上弦の陸が現れ、再度琵琶の音と共に今度は壺が姿を現した。

 

その壺からは「ヒョッ!」という声と共にぬっと蛇のような細長い姿が現れた。

 

人の形をした鬼では珍しく、人外の個性的な姿で、本来の両目が口となっており、本体の口がある部分と額の中央に目があり、額の方に「上弦」、本来の口の方に「伍」と刻まれている。

 

まるでランプの魔人を彷彿とさせる。

 

「これはこれは堕姫嬢! ますます綺麗になられてなにより……。90年ぶりでございましょうかな? 私はあなたが遊郭でダメな男に弄ばれていないか心配で心配で胸が苦しゅうございました!」

 

「……」

 

上弦の陸の美女こと堕姫の表情がたちまち強張った。

 

「恐ろしい、恐ろしい。玉壺は暫く会わぬ内に年も数えられなくなっておる……」

 

今度は耄碌した爺の姿をした鬼が現れた。上弦の肆・半天狗だ。 

 

「呼ばれたのは113年振りじゃ。割り切れぬ数字、不吉な丁、奇数! 恐ろしい、恐ろしい……」

 

半天狗の独り言の後、上弦の陸が口を開く。

 

「ねえ、琵琶女。あの方はいらっしゃらないの?」

 

ベン!

 

「まだお見えではありません」

 

琵琶を弾いている女鬼こと鳴女が淡々と答えた。

 

「やあみんな、久しぶりだね」

 

今度は上弦の弐・童磨が姿を現した。

 

「猗窩座殿が亡くなったんだって? 無二の親友だったのに。悲しい……」

 

そう言って童磨は涙をこぼした。しかし、これには誰も反応しなかった。思ってもないことを、とでも言うかのようだった。

 

「上弦の壱はどこよ? まさか上弦の壱もやられたわけじゃないわよね?」

 

「上弦の壱様は最初からずっとそこにいらっしゃいますよ」

 

鳴女の声と共に御簾が現れ、スルスルと上がっていくと共に姿が明らかになっていく。

 

武士が着るような着物を着ており、腰には刀を差しており荘厳な出で立ちで、熟達した武士の姿そのものだった。上弦の壱だけあって何より威圧感が他の上弦の比ではない。上弦は選ばれし鬼だが、壱だけは明らかに別格だと感じさせるような。

 

御簾が完全に上がりきると、長髪も露になった。

 

鬼無辻無惨を除けば、最強の鬼である上弦の壱・黒死牟が姿を現した。

 

「私は……ここにいる……」

 

慎重というか、間の多い話し方が特徴的だ。

 

「無惨様が……お見えだ……」

 

上弦の壱の声と共に天井と机が現れた。天井からは鬼無辻無惨が立っている。

 

上弦は皆、一斉に平伏した。

 

「猗窩座が死んだ」

 

無惨はワイシャツにベストの姿で、薬品をいじっている。今回は薬の研究者の姿のようだ。

 

「上弦の月が欠けた。あの竈門炭治郎に負けた」

 

「……」

 

これには上弦たちも返す言葉がなかった。

 

「私はもう、お前らの存在理由がわからなくなってきている」

 

「またそんな悲しいことを仰る……」

 

童磨の呟きも、無惨は一蹴する。

 

「青い彼岸花はまだ見つかっていない。産屋敷一族を未だ見つけていない。それにお前も竈門炭治郎を殺せなかった」

 

「あ、その節はどのようにお詫びしましょうか? 目玉をほじくり出しましょうか? それとも……」

 

「必要ない! 貴様の目玉など!」

 

無惨が手を振ると、童磨の顔から血が出たが、直ぐに傷は塞がる。

 

「無惨様! 私は違います!」

 

上弦の伍・玉壺が壺を揺らしながら必死に訴えた。

 

「貴方様の望みに一歩近づくための情報を私は掴みました! ほんの今しがた……」

 

「私が嫌いなものは変化だ」

 

無惨は玉壺の頚をいつの間にもぎ取って、手に載せている。

 

「状況の変化。肉体の変化。感情の変化。あらゆる変化は殆どの場合、『劣化』なのだ」

 

※頚を捥がれた玉壺は喜んでいる。『無惨様の手が私の頭に! いい! とてもいい!』

 

無惨は続ける。

 

「私が好きなものは『不変』。完璧な状態で永遠に変わらないこと。113年振りに上弦を殺されて私は不快の絶頂だ。まだ確定していない情報を嬉々として伝えるな!」

 

無惨は玉壺の頚を放り投げた。

 

「さて上弦の参だが、後任を就ける」

 

これにすっかり頚を元通りにした上弦の伍が「自分のことか?」とばかりに細長い身を乗り出し、上弦の陸・堕姫も大きくて澄んだ瞳で無惨をうっとりと見上げた。すると無惨は堕姫を確と見返し……

 

「妓夫太郎」

 

そう囁いた。

 

すると、上弦の陸の身体からたちまち、別の姿が生えてきた。堕姫とは全く対照的で、細長い身体は斑点のようなものがいっぱいで薄汚く、顔にもやはり斑点が浮き出ており、醜悪そのもの。両手には血に塗れた鎌を持っており、まるでカマキリのような姿だ。

 

そして醜悪な顔に載っている両目には「上弦」「参」と刻まれている。

 

※この時、玉壺は『妓夫太郎が上弦の参? 私を差し置いて無体な……! でもそこがいい!』

 と心の中で呟いていた。

 

「妓夫太郎。お前を猗窩座の後任の上弦の参とする。もう二度とあの耳飾りの小僧に討たれるようなヘマはせず、より人を喰らい、より強くなるのだ」

 

「ハハーッ! 絶対に取り立ててみせますなァ!」

 

新・上弦の参は細長くて醜悪な身体を丸めて平伏した。

 

「堕姫。お前は誰よりも強い。そして美しい。沢山の人間を喰らい、柱を7人葬った。もう妓夫太郎の助けがなくとも、お前は立派に上弦としての務めを果たせる」

 

「無惨様……! 勿体なきお言葉……」

 

堕姫はガクガク震えながら平伏した。無惨の言葉を光栄に思いながらも、自分一人でやれるだろうかといった不安も混じっているようだった。

 

「お前は引き続き遊郭に迷い込む人間たちを喰らい、強くなるのだ。そこに柱が迷い込んできたら始末しろ」

 

「勿論ですとも! 無惨様!」

 

「遊郭には妓夫太郎も向かわせるから今度こそはしくじるな。私はお前たちを上弦だというだけで甘やかしすぎたようだ。これからは死に物狂いでやったほうがいい」

 

その言葉と共に、無惨は天井と共に姿を消した。

 

一瞬の間の後、童磨が堕姫にヘラヘラと話し掛ける。

 

「ねえねえ、堕姫ちゃん。遊郭、俺も一緒に行っていいかい? 俺、これ以上上弦はだーれも欠けてもらいたくないんだ。それに招待したの、俺だから堕姫ちゃんと妓夫太郎殿には死んでもらいたく……」

 

その時、荘厳な姿が童磨の背後に回り……

 

ボトン!

 

童磨の腕が斬られ、床に落ちた。

 

「これはこれは、黒死牟殿! 如何されたかな?」

 

腕を斬られたというのに童磨は相変わらずヘラヘラしている。

 

「童磨……。お前は緊張感がなさすぎる……。鬼殺隊士でもなかった小僧に逃げられておいて……」

 

「いやー、あれはだね。向こうも幼かったから、手加減してやっただけさ!」

 

そう笑ってみせて童磨は再び腕を生やした。

 

「あの方はお前には何も命じていない……。失せろ……」

 

「はーい。誰も彼もつれないなァ」

 

童磨は金の扇子を掲げて渋々ながら了解した。

 

その後、琵琶の音が鳴り響くと共に、上弦の鬼たちは順次、無限城から姿を消していった。 




~大正コソコソ噂話~

新・上弦の参こと妓夫太郎と上弦の陸・堕姫にはその後、無惨から大量の血を分け与えられました。そのため、遊郭では原作よりもパワーアップした姿で待ち構えております。

今後益々、炭治郎たちと上弦の戦いが激化していきます。是非、ご期待ください!
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