鬼滅の刃 蝶と日と   作:毛利カトリーヌ

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蝶屋敷

翌朝、炭治郎は朝日が昇っている最中に起こされた。

 

「うーん……」

 

「炭治郎君、おはよう。今日は朝日が綺麗ね」

 

昨日、走らされた疲れは全然取れておらず、到底寝足りない。それでも寝ぼけ眼を精一杯、凝らすとカナエは眠そうな顔1つ見せず、太陽のような笑顔を浮かべている。既に身なりを整え、いつでも出られる態勢だ。

 

「おはようございます。」

 

「今日も屋敷まで走り通すわよ~。早く身支度してね。」

 

「はい!」

 

炭治郎はノロノロと起き上がり、洗面所で顔を洗ったり歯を磨いたり、着替えたりなどの身支度をする。

 

 

身支度を終えると、禰豆子もカナエから起こされたのか、起きていた。

炭治郎はカナエからおにぎりを1つ分けられた。

 

「あなたもこれから私の弟子となることだし、これからは炭治郎と呼ばせてもらうわね?」

 

カナエはおにぎりを頬張りながら言った。炭治郎も一口、かぶりつく。なかなか旨かった。

 

「わかりました!」

 

これで継子として認められたも同然だ。気分が高揚する。このまま何としても胡蝶家の許での修行を認めさせ、禰豆子を何としても人間に戻し、家族の敵も取ってやる!

 

「ふふっ。素直でよろしい! お姉さん、素直な男の子好きだぞ~、炭治郎」

 

カナエはニコニコして言った。

 

「ありがとうございます! 精一杯、修行に励みますので、ご指導お願いします!」

 

「はい! 頼まれました~!」

 

朝から炭治郎は、カナエのペースに引き込まれっぱなしだった。

 

2人が朝食を食べ終えると、カナエは烏のような鳥を手に留まらせ、手紙を括り付けて飛ばした。

 

「手紙を送ったのですか?」

 

「ええ。今飛ばしたのは、鎹烏といって、手紙を送ってくれたり、任務といって鬼を退治しに行く時には情報を貰って来てくれたり、他の隊員と連携するのに情報をやり取りしてくれたりするのよ。鎹烏、話せるからね~。炭治郎も鬼殺隊に入れば貰えるわよ! で今、送った手紙は蝶屋敷宛で、妹のしのぶたちに炭治郎と禰豆子ちゃんを預かるという内容を送ったわ。」

 

「そうですか! ありがとうございます!」

 

「いえいえ~。では今から出発するわよ!禰豆子ちゃん、籠に入れられるかしら?」

 

「はい!」

 

炭治郎は籠に手招きすると、禰豆子は素直に籠に入り、ぴったりと収まった。

 

「ふふふっ。今日もカワイイわね〜」

 

カナエが禰豆子を撫でると、禰豆子も嬉しそうに微笑む。

 

「じゃあ、ついてきて」

 

そう言うや否やカナエはスッと前を向いて走り去って行き、炭治郎も遅れじと追い掛けていった。

 

今日も禰豆子のためだと歯を食いしばって何とか走り抜き、蝶屋敷に着いた時にはちょうど、太陽が沈んでいる最中だった。

 

「カナエさん、ハァー、ハァー、凄い、ハァー、ハァー、、ですね」

 

炭治郎は手で膝を押さえ、息も途切れ途切れになりながら言った。彼女は昨日からの強行軍を妖艶な顔のままこなしてしまうのだから。今も息ひとつ乱していない。

 

蝶屋敷はどこまでも続く大きな塀で囲まれており、まるで城のようだった。門を入ると立派な石が散りばめられた広大な庭があり、真ん中には池がある。極めつけは、おびただしい数の艶やかな蝶が飛び回っている。

 

カナエが玄関の鍵を開けて入り声を掛けると、すぐさま小柄な女子がきびきびとやって来た。髪の毛を青色の蝶飾りで二つに結っている。

 

「おかえりなさい、カナエ様。そちらはどなたですか?」

 

うわっ、カナエさんと違ってなかなか気の強い匂いがする……。

 

「突然、すみません。俺は竈門炭治郎です! 家族を鬼に襲われて俺だけ難を逃れていた所をカナエさんに助けていただいたんです。よろしくお願いします。」

 

「私、彼を継子にするかどうか試すことにしたから、宜しくね~!」

 

ニコニコしながら言うカナエを尻目に、青の髪飾りの彼女はその真っ青で大きな目をスッと細める。

 

「私は神崎アオイです。ところで炭治郎さん、背中に背負っているものは何ですか? 鬼の気配がしますが」

 

冷たい声だ。カナエも蝶羽織の下に詰襟の隊服のようなものを着ているが、アオイも同じようなものを着ているので、鬼殺隊の関係者だろう。であれば、最初はこのような反応するのも仕方ない。

炭治郎は臍下丹田に力を込めて口を開く。

 

「これは、俺の妹なんです。家族で唯一、生き残ったのですが鬼にされてしまいまして、俺は妹を何とか人間に戻すために鬼殺隊入りを志願しました! 俺、炭売りの家生まれなのでご飯を炊くのも得意ですし、どんなことでもやりますのでどうか宜しくお願い致します!」

 

「……」

 

呆然とするアオイを尻目に、後ろでカナエがふふふっと笑う。

 

「炭治郎はもう、真面目なんだから~。この家の主である私が許可しているんだから、そんな堅苦しい挨拶はいいのよ~。アオイも別にいいわよね? それに炭治郎君の妹、禰豆子ちゃんって言うんだけど、とてもかわいいのよ~。ほら、禰豆子ちゃん、出てきていいわよ~。」

 

カナエは炭治郎の背中の籠を覆っていた布を外した。炭治郎もそれに合わせて籠を下ろす。そして、禰豆子が籠からゆっくりと出てこようとした所、紫の蝶が舞い……

 

カキーン!

 

カナエが咄嗟に籠の前に出て刀で弾いた。相手はカナエとよく似た顔で、髪の後ろに紫の蝶飾りを付けている華奢な女子だった。

全く見えなかった。カナエが守ってくれなければ籠ごと禰豆子は串刺しに遭っていた所だった。

 

「あれ? 姉さん。どうして邪魔するのかしら?」

 

笑みを浮かべながらも、額に青筋を立てている。これには最初に気が強いと思ったアオイも呆然とするばかりだった。もしかして、この人がカナエさんの怒りんぼな妹か。

 

「あらあら、しのぶ。どうして殺そうとするのかしら~。この子とてもかわいくて今、アオイに見せようとしていたところなのよ。ねえ、アオイ?」

 

「しのぶ様も心配していましたがカナエ様は人が良すぎるんです! 鬼によってどれだけの幸せが奪われたか、カナエ様も御存知でしょう!」

 

一瞬、呆然としていたアオイはしのぶの肩を持つ。

 

「そうよ! 姉さん。あなたはこの男に騙されているのよ!」

 

そう言ってしのぶは、青筋を立てて凍りつくような笑みを浮かべた顔を炭治郎に向け、刃も向ける。

 

「坊や、姉さんをどうやって言いくるめたのですか? 姉さんがお人好しだからといって口説き、鬼を手引きして私たちの幸せを壊そうとしているのですか?」

 

俺が人の家の幸せを壊す? 

 

急に悪者にされた炭治郎は戸惑う。しのぶの口撃は容赦なく続く。

 

「私は怒っているのではないですよ~、確認しているだけ。お前のやましい意図を暴き出し、今すぐここから出て行ってもらいます。さあ、簡潔に話して下さい。私たちも忙しいので。」

 

竈門炭治郎と禰豆子兄弟は一転してピンチに追い込まれた。

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