お待たせいたしました。後編です。
「……台無しです。色々考えてたのに」
突っ込んできたシロナは俺の手から通信端末を奪い取ると既に通話は終わってる事を確認した後、『奪い取ってすみませんでした』と告げ、おばあちゃんに抗議の電話を入れていた。
孫想う祖母の気遣いは吉と出るか凶と出るかわからないシロモノだ。扱いには注意せよ。
「慌てて突っ込んでくるのが面白かったです」
澄まし顔が驚愕に変わる瞬間は何度も見たい。
「……こほん。何はともあれ、お久しぶりです。お兄さん」
「久しぶり、シロナ。疑惑は解けた?」
「ええ、バッチリです。それで……用件というのは?」
「ああ、コイツなんだが」
『オマエは、花畑を知ってるでしゅか?』
相も変わらず俺の頭の上に鎮座するコイツは、俺とシロナの身長差もあってなんだか偉そうである。
「……聞いた事あります。……ええっと、『そのポケモン、名をシェイミ。特定の条件下でフォルムチェンジをする。人前には滅多に姿を現さないポケモンであるが、稀にシェイミの花はこびを目撃する人がいるらしい』です」
「シェイミ。シェイミっていうんだな」
『そんな事より花畑の場所を知ってるでしゅか!?』
「振り落としたろかオマエ」
人の頭間借りしておいてなんて言い草だ。
「詳しい場所はわからないです……が、私にも伝手がありますので大体の検討はつけられると思います」
「おお、ありがとう! いやー、遠出してきた甲斐があるってもんだよ」
『ミーに感謝するでしゅ』
「そうですね。ありがとうございます。シェイミ」
いい子だ。以前会った時から礼儀正しい子だったけど、こんないきなり本題に入った挙句感謝を求めるようなよくわからんポケモンにもきちんと感謝する。人間が出来てるって話よ。
『オマエも大概アホでしゅな』
「は? 俺の頭の上からなんて発言だ許しておけん」
そもそも、港で頭を振り回しながら暴れる人間はそりゃ目立つ。
段々と注目を集める俺たちにシロナが遠慮がちに声をかけるまでそんなに時間は掛からなかった。
「面目ない」
『悪かったでしゅ』
控えめに注意してくれたシロナの声で我に帰った俺は、シェイミを頭から振り落とす作業を一旦中断して移動する事にした。ちょっと目立ちすぎた。
ただでさえこのシンオウ地方でシロナは有名人なのだ。むしろなんであんな変なのと一緒にいるんだろうとシロナが悪目立ちしていないか心配だ。
とはいえ旅は始まった。
なるべく歩きで行きたいらしいシロナの言に従い徒歩で進む。
俺の頭の上でのんびり振られているシェイミは少し眠たげだ。俺はゆりかごじゃあないんだが。
まあいいか。
「お兄さんは、どうしてシェイミの手助けを?」
「ただの成り行きかな。特に目的もなく旅をしている身だし、こういうのも一興だと思って」
その点シロナは凄い、俺より全然歳下なのに活躍ぶりが凄い。
「そうですか。……ちなみに、ちなみにですけどシンオウ地方に拠点を移したりとかは……」
「うーん、取り敢えず無いかなぁ。まだホウエンを回り切れたとは言えないからね」
「そ、そうですか」
「そんな悲しそうな顔をしなくても、これからはちょくちょく遊びにくるよ」
そんなに分かりやすくガーンとした表情をされたら仕方ない。
これまた分かりやすく嬉しそうな表情になっている。
この子は楽しそうにしてる方が似合うからこのくらいは、と。
しかし、そんなに懐かれるような事をしたかね……?
『オマエ、やっぱりバカでしゅな』
「フン!」
『絶対に振り落とされてやるもんでしゅかー!!』
他に人のいない街道で、それこそシェイミの言う通り馬鹿みたいにはしゃいでシェイミを振り落とそうとする。
俺の頭を掴んで離さないシェイミとちょっと混ざりたそうにこちらを見ているけど自身の中のなにかと葛藤してるシロナがいて、
──あそぼ
何かの声が聞こえた気がして、有無を言わさぬ力で何処かに引きずり込まれた。
「……え? お兄さん?」
「なんですかね、ここは」
『わからないでしゅ』
なんだかよくわからないところに連れてこられて、どうしたもんかと頭をかいてみる。
ところがシェイミをかいてしまってくふふと笑い声を漏らした。
『いきなりくすぐるのはやめるでしゅ』
「存在を忘れてたよ」
『なにおう……って、なんか来るでしゅ!!』
「ミロカロス!」
飛び降りたシェイミが戦闘体勢に入ってるのを見て、俺もミロカロスをボールから出しておく。
ポケモンの感覚は人のソレよりも確実に鋭い。何か来るというのなら来るのだろう。
「わあお」
そして姿を現したのは、巨大なポケモンだった。本当にポケモンなのかはわからないが多分ポケモンだろう。
『先手必しょ……わぷっ、何するでしゅかー!!』
「待て待て、多分大丈夫」
わざを使おうとしたシェイミの口を塞ぎ、一応ミロカロスに何かあったらすぐ動いてもらう為に目配せだけしておく。
そもそも、このポケモンが俺達に敵意があるのなら引きずり込まれた時点で詰みだ。遊ぼうと言ったのがこのポケモンなら、敵意はないはず。
「遊ぼうか」
寂しいのは嫌だよな。
背に乗ったり、戯れているのを眺めたり、変な重力を体感したり、この不思議な世界とこの世界にただ1匹のポケモンと遊んでしばらく経った頃。
「あ、シロナどうしてるんだろ」
割と時間を忘れて遊んでしまった。
花畑とうるさいアイツもキャッキャ遊んでいるから大概アホなんだろう。だから迷子になるんだな。
心配してなきゃいいけど。
「すまん、戻らなきゃ」
コクンと頷いて、背に乗るように促された。
優しいいい子だ。
「え? え? えぇえええええ!?」
戻った俺達を出迎えたシロナは、案の定驚いていた。
鏡の中からいきなり巨大なポケモンが現れたら誰だって驚くはず。モンスターボールを構えたまま俺の姿を発見して固まったシロナに笑ってしまったのは多分バレてないはず。
「心配したんですよ」
「悪かった。俺も引きずり込まれたんだ」
「それにしても、鏡の中の世界……? あのポケモンは一体……? 重力がおかしくて……うん、興味深いわね」
俺の心配もそこそこに学者としての顔を覗かせたまま、自分の世界に入っていった。
なんだか、長くかかりそうな予感がする。
『何しても無反応でしゅ』
これ幸いとイタズラシェイミはシロナの頭の上に乗り込みぐらぐらと揺れてみたり、頬をぺちぺちと叩いてみたり、口を引っ張ったり。
何してるんだコイツは。
「やめなさい」
『痛いでしゅーーー!?』
虐待でしゅ! と喚くシェイミを無視してシロナから引き剥がす。
せっかく熱中してるんだ、こんな時こそ俺と遊ぼうじゃないか。
俺の頭ならくれてやる。乗れ!
「はっ!」
「おかえり。随分と熱中していたようで」
「ご、ごめんなさい。つい熱中しすぎてしまいました」
「気にしない気にしない。そうだ、シロナのミロカロスを見たいんだけど」
「あ、はい! そうですよね! 今出します。おいで」
ぽんと放ったボールから現れたのは俺のミロカロスより一回り小さいミロカロス。
まじまじとシロナのミロカロスを見る俺を見て自慢げにしているシロナ、そして不機嫌な俺のミロカロス。
「ふぉぉぉぉう」
「ふぉぉぉう!」
「ふぉぉぉぉぉぉう」
「ふぉぉう!!」
「ふぉぉぉう……」
『しゅ、修羅場でしゅ……』
頭の上のシェイミが何やら戦慄している。
俺にはポケモンの言葉はわからないから、何を言ってるのかわからないが何やら言い合ってるらしい。
多分そんなに対面する事もないから大丈夫だろう。多分。きっと。
そんなこともあって、無事花畑に到着した。
『花畑でしゅーーー!!!』
「グラシデアの花畑、綺麗だな」
「そうですね」
『……ま、感謝しといてやるでしゅ。オマエとの旅はそこそこ楽しかったでしゅから』
「また会おうな、シェイミ」
『ふん、たまになら会ってやってもいいでしゅ』
ちょっと長く感じて、けれども短かった旅は終了した。
「……んじゃ、シロナもまた会おう」
「はい。何があっても駆けつけます」
「いや、それは用事を優先して欲しいかな」
「ふふふ、頑張って都合をつけますね」
また会う時は更に有名になってるだろう。年月が経てば俺の事など忘れるかもしれないが、まあ、思い出のお兄さんとして記憶の片隅にでも留めておいて欲しいところだ。
「さて、帰るか。ホウエンに!」
「ふぉぉぉぉう!」
なんやかんやで1ヶ月半経ってしまいました。
時が経つの早すぎやしないかと。
ちなみに、リクエストでよくブイズに関するものをいただきます。作者も例に漏れずブイズは大好きなんですが、種類が多すぎて絞れません。
なのでもうしばらく悩みます。多分アンケートすると思います。
それではまた次回も、気長〜〜〜にお待ちください。
おまけ:特別翻訳(意訳です)
「え? そんなにジロジロ見てボクの身体ってそんなに美しい?」
「……私のご主人様に色目を使わないでください!」
「あなたに魅力がないだけじゃないの?」
「は?」
「ごめんなさい……」
ブイズ人気投票します。一位のポケモンが主人公の手持ちになるらしいです。
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イーブイ
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ブースター
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サンダース
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シャワーズ
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エーフィ
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ブラッキー
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リーフィア
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グレイシア
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ニンフィア