さて、質問がある。
君は傷だらけのポケモンが道端に倒れていたら保護をするだろうか。
当然保護をする。
そうして俺に保護されたのは、痩せて傷だらけになって倒れていたタツベイだった。
すぐさまポケモンセンターに運んで然るべき治療を受けてもらった。ジョーイさんの手際は見事で、ボロボロだったタツベイは翌日にはすっかり治っていた。
『はい、しっかりご飯をあげて面倒を見てあげてくださいね? それが、拾った人の責任だと思うので』
そうだ。拾う覚悟が無ければ涙を呑んでボロボロのタツベイを見捨てるしか選択肢は無かったし、あそこで衝動的にでもタツベイを救う選択肢を取ったなら、俺にはタツベイを育てていく義務がある。捨てるなんて以ての外だ。
それに、タツベイはこんな場所に棲んでるポケモンじゃないのも引っかかる。が、
『まずは関係の構築からだよね』
何故ボロボロになってるのか、何故倒れていたのか、何故あんな所に。
次々湧いてくる疑問は一旦振り払って、ポケモンセンターを後にした。
『タツーッ!』
結論から言って、俺が拾ったタツベイはとても臆病?な子だった。
そもそも俺の手から碌にご飯を食べてくれない。ミロカロスに手伝ってもらってなんとか食べさせる事が出来るくらいだ。
戦闘なんて怯えて出来ないし、ポケモンもトレーナーも受け付けないみたいであった。
『……どうしたもんかなぁ』
『ふぉぉう』
ミロカロスが困った子だねぇという感じに鳴いている。
『ふぉぉう!』
お世話は任せて!と胸を張っているのだろうか。胸がどこか分からないけど。
ミロカロスの手を借りないとまともにご飯すら食べないからやる気があるのは助かるけれど。ミロカロスに手なんてないけど。
『ミロカロスにはそこまで怯えた様子はないのが不思議だな』
よく分からないけど、取り敢えずタツベイがご飯を食べてくれるならなんでもいいか。
『タツァーー!?』
『おおい落ち着けタツベイ。ソイツはただのケムッソだ』
『タツーーー!?』
『きのみが落ちてきただけだから』
『タツゥゥゥゥッッ!!?』
『木の枝に当たっただけだぞー?』
こんなに怯えるならボールに仕舞えばいいだけの話だと思うだろうがそうもいかない。何事にも怯えまくるタツベイだが、ボールに仕舞おうとするとそれとは一線を画す程の怯えた……絶望の表情をする。
ただ俺1人だとタツベイのフォローが出来ないのでミロカロスも出しっぱになってしまう。つまり街にいけない。
『ミロカロスを連れて街に行くとかなんの拷問よ』
『ふぉぉぉう……』
『うん? 仕方ないよ。タツベイのためだし』
タツベイがボールに入ってくれるようになるか、人に慣れるまで野宿と相なった。
それから色々と試してみたが、ミロカロスの主人という事でなんとなく信用されたみたいで、腕の中に収まってくれるくらいには進歩した。
『前は手を差し伸べただけで怯えてたし、大きな進歩か……』
手をかざす。
それで怯えるという事は……
『いや、考えるのはやめるか』
考えたところで何か出来るわけでもない。そういう事は、まだ、考えるべきじゃない。
色々試す中でタツベイについてわかった事が1つある。そもそもこの子は優しいのだ。
戦闘をするのが元々好きじゃない性格で、自分のご飯をそこらの野生のポケモンに分けに行くくらいお人好し。
優しくて、臆病で、戦闘に向かないこのタツベイがどうしてあんなところに捨てられていたか。
『……チッ』
『ふぉぉう』
『ごめんな。大丈夫』
ポケモンには優しくしろと教わった。
ポケモンは道具じゃないと教わった。
どれだけ時間が掛かっても真心を込めて信頼関係を構築する事がポケモンと強くなる1番の近道だと教わった。
父さんと母さんがそうやって教えてくれて、それを実践してきた姿を見ているからこそ、ミロカロスがここにいて、タツベイがここにいる。
だからこそ、ポケモンにあんな仕打ちをした奴は許せない。
『タツ?』
これ以上は心配掛けてしまう。ようやく心を開いてきてくれたのに、また心を閉じさせるのは良くない。
『ご飯、食べるか?』
『タツー!』
食べるー!と言っているのだろうか。
『ほら、そっちの子にも』
『タツ!』
遠くからこっちを伺っているポケモンに分けてあげたいみたいで、両手で抱えて分けに行く。くっ、かわいい……!
『タツベイ。ボールに入ってみない?』
『タツ……』
怖いか。タツベイにとって、ボールに入る事がどんな恐怖を呼び起こすのか俺にはわからない。
言葉の通じ無い人とポケモンだから、ただタツベイの強さを信じることしか出来なくて、それがとてももどかしいけれど一番の近道だから。
『……ゆっくりでいいよ。ごめんな、タツベイ』
『ふぉぉぉう』
大丈夫、俺とミロカロスがついてるから。
まだボールに入る事は出来ないけれど、戦闘は少しずつ出来るようになってきたように思う。
きっかけはケムッソが襲われてるのを助ける為に飛び出した事で、見事なずつきを決めてくれた。
『なんだ、戦えるんじゃん』
無我夢中だったようだけど、その一歩はとても大きかった。自分で踏み出した一歩は、他人に押されて進む一歩より遥かに価値がある。
襲われているポケモンがいないか見回ってみたり、時には俺とミロカロスが襲われてみたり。
タツベイはまだボールには入りたがらないけど、どこか自信がついたように見える。
『んー……! 久しぶりの街だ!』
肩に掴まるタツベイは今にも逃げ出しそうだが、何とか堪えてるみたいだ。
結構戦闘もこなしたし、俺にも慣れてきたし大丈夫でしょうという事で強制的に街に連れてきた次第。
そろそろしっかりしたお風呂に入りたかったというのはタツベイには内緒だ。
『……やっぱお風呂よ。なぁタツベイ』
『タツゥ……』
『そうか、気持ちいいか』
お風呂はとても気持ちよかったみたいで、目を細めてリラックスしている。
気に入ってくれたようでよかったよかった。
『ふぉぉぉぉう!』
『おい馬鹿っ!お前が飛び込んだらお湯がなくな──!!」
ザッパーン!
我慢出来なくなったミロカロスが飛び込んできて、ほとんどのお湯が流れて何が起きたのかわかっていないタツベイが目をパチクリさせているのが面白かった。
『ふっ……あは、あははは!』
時間を掛ければ傷は癒える。そう確信した。
タツベイがコモルーになる頃にはもうボールも克服していて、ボールに収まってくれるようになっていたが、あまりボールの中は好きじゃないみたいでちょくちょく外に出さないとボールの中で暴れてしまう。
なるべく外に出しておくようにしている。
そしてボーマンダになってしまえばボールの中もなんのその。あの日テレビで見た光景と同じような強さを誇るドラゴンポケモンが勇ましい雄叫びをあげ、敵トレーナーのポケモンを倒している。
優しくて、臆病な君は物凄く強くなった。
泣き出して、逃げ出して、怯えてる君はもういない。
空を飛び、炎を吐き、他を圧倒するまでに成長した。
優しいのは相変わらずでお腹を空かせてそうな野生のポケモンにご飯を分けてあげようとして、逃げられて落ち込む事が増えた。
ここに来るまでにとても時間は掛かったけれど、ボーマンダになった君は全てを克服した。
やっぱり教えは間違っていなかった。
そう思えた。
Side タツベイ
痛い。
ぶたれて、蹴られて、罵声を浴びせられた。
痛くて真っ暗闇の中で僕は捨てられて、もう死ぬんだって思った。
意識が朦朧として消えかかっているところをご主人に救われた。
前のご主人みたいに僕をぶつんじゃないかって怖くて、怖くて、怖くて何も見えなかったけれど、ミロカロスはとても優しさに溢れていて不思議と怖くなかった。
ミロカロスは明るくて、優しくて、何も出来ない僕をずっと見守ってくれていて。
お腹を空かせてる子を放って置けない僕を笑って許してくれた。
ご主人も優しくて、ミロカロスはご主人といる時はもっと優しくなる。
ご主人はミロカロスが大好きで、ミロカロスはご主人が大好きだ。
優しい2人に囲まれて、僕も頑張らなきゃって思ったけど怖くて進めなかった。
でも、襲われている子を見過ごせなくて、無我夢中でずつきをした。
何とか撃退したら、ご主人もミロカロスもとても褒めてくれて嬉しかった。
初めて入ったお風呂はとても気持ちよかったけれど、2人だけでずるい!とミロカロスが入ってきたらお湯が無くなってた。
ご主人とミロカロスと他のみんなと過ごしてるうちに暗闇が怖く無くなっていた。
あの時の痛みや苦しみが出てくる事が無くなっていた。
目を閉じても、目を開けてもご主人達がいる。
今はこうしてご主人の役に立てる。
ほら、僕、戦えるよ。
飛べるよって、前のご主人に自慢してあげたいな。
きっと、悔しがる。
ご主人に拾われてよかった。
ご主人、大好きだよ。
主人公の2匹目のポケモンはボーマンダ。
あの頃のテレビで見た憧れのポケモンの1匹です。
Sideミロカロスとかも……いいなぁ。
では続きは気が向くか続編を望む声が多かったら。
ブイズ人気投票します。一位のポケモンが主人公の手持ちになるらしいです。
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イーブイ
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ブースター
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サンダース
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シャワーズ
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エーフィ
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ブラッキー
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リーフィア
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グレイシア
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ニンフィア