ダイの大冒険でよろず屋を営んでいます   作:トッシー

1 / 47
お久しぶりです。トッシーです。
以前にじファンで投稿していたSSをコチラに移転させていただくことにしました。
よろしくお願いします。


本日の目玉商品『万能薬』

俺の名前はタケルです。

ひょんな事から異世界に来てしまったトリッパーです。

テンプレよろしくで特殊な能力、持っています。

最強じゃないけど…。

 

「いらっしゃい、ここはよろず屋だよ」

 

俺の前には様々な道具が並べられている。

当然これらは商品であり、俺の飯のタネだ。

勿論そんじょそこらの店とは格の違う商品を取り扱っている。

その自信と自負がある。

本日の商品は

 

特やくそう(HP90ほど回復)100G

月のめぐみ(HP90ほど回復、麻痺を回復)210G

万能薬(HP90ほど回復、毒、麻痺を回復)360G

賢者の聖水(MP90ほど回復)1240G

毒針(偶に一撃で敵を葬る)980G

命の指輪(歩く度にHP回復)2500G

祈りの指輪(使うとMP回復。但し壊れることもある)2800G

 

それぞれ20個用意してある。

値段が高い?

いやいや適正価格ですよ。

けっしてボッタクリではないです。

第一、本来ならこの世界には絶対に存在しない一品ばかり。

このくらいの値段にしてもバチは当たりません。

 

「これは興味深いですね~」

 

おっと、自分の世界にトリップしてる場合じゃない。

お客さんだ。お客さんは神様です!

俺は満面の笑顔を向けて言った。

 

「いらっしゃいませー」

 

「こんにちは、

 

 この店は素晴らしいですね。とても露店とは思えないですよ」

 

そこにいたのは男二人組の旅人だった。

成人した男性と、まだ幼さの残る顔立ちをした少年。

男性の方は、優しげな顔立ちをしており、掛けたメガネが更にその表情を際立たせていた。紫色の髪を左右にカールさせていて貴族っぽい。

腰には剣を挿している。戦士だろうか?

少年の方は黒い髪にバンダナを巻いており、腰にはロッドを挿している。

魔法使いか僧侶のようだ。

 

(どこかで見た事ある二人組だな、どこだっけ?)

 

俺は二人を観察した。

お金を持っているようにはとてもじゃないが見えない。

この二人がどこの誰かは別にしてもコチトラ商売だ。

俺はジト目で二人組を見た。

男は興味深そうに並べている商品を一つ一つ手にとって眺めている。

 

「先生~、いつまで見てんですか~。もう行きましょうよ~」

 

「ちょっと待ってください、ポップ。もう少しだけですから」

 

ん?

センセイ?ポップ?

まただ。この二人、何か引っかかる。

何だっけ?

 

「大体、何ですかこの値段!

 

 薬草が100G!?ぼったくりもいいところっすよ!」

 

ムカ!

何だと!この野郎!

それは聞き捨てならねぇな!

 

「おい、お客さん!ぼったくりとは聞き捨てならないな!

 

 ソイツは唯の薬草なんかじゃないんだよ!

 

 この俺が心血注いで調合した特やくそうだ!ケチつけんな!」

 

「な、なんだと! 

 

 こんな怪しい薬草がなんだってんだ!?

 

 普通の薬草とどう違うってんだ!」

 

「聞いて驚け!

 

 その薬草は普通の薬草の約3倍の効果があるんだ!

 

 ベホイミ以上なんだぞ!」

 

「だったら普通の薬草を3つ買ったほうがお得だろうが!」

 

 

「そりゃ安全が確保できればだろうが! 

 

 非常時にチマチマと薬草で何度も

 

 回復してる暇があると思ってんのか!?」

 

 

「何ィ!?」

 

「この特やくそうはな、即効性なんだ!

 

回復魔法並なんだよ!だからこそ100Gは高くない!

 

むしろ安いくらいだ!だから買え!」

 

「ふ、巫山戯んな!どさくさに紛れて何いってんだ!誰が―」

 

「特やくそうと月のめぐみ、そして万能薬をそれぞれ2つお願いします」

 

「せ、先生っ!?」

 

ほう、この先生は物の価値が分かっているようだな。

俺は最高の営業スマイルを浮かべて声を上げた。

 

「毎度ありがとうございます。1340Gになります」

 

「これでいいですか」

 

「はい、1340Gちょうど頂きます!またのご利用をお待ちしております!」

 

俺は受け取ったお金をしまい込むと、お客様に向かって深々と頭を下げた。

 

「ところで」

 

お客さんはお買取った道具を袋に入れながら聞いてきた。

 

「あなたは一人で商売を?」

 

「えぇ。まぁ」

 

「まだ若いのに大したものですね」

 

何だこの人。

男性は屈託の無い笑顔を向けて感心する。

そこに悪意は全く無い事が感じられる。

その笑顔に俺は思わず目を逸らしてしまう。

 

「……えっと」

 

「あぁ、すいませんね。先程、ご自分で薬草を調合したと言っていたので」

 

つい興味が出てしまったのですよ。

男性はそう言った。

俺を褒めているのが気に入らないのだろう。

少年の方は面白くなさそうにしている。

 

「先生、もう行こうぜ~」

 

「はいはい、分かっていますよ。それじ私達はこれで」

 

「はい、またどうぞ~」

 

心に引っかかりを残したまま、俺は二人を見送った。

 

 

 

 

ギルドメイン大陸。

この世界の中心に位置する最大の大陸だ。

1年前、俺はこの大陸最大の国、ベンガーナ王国の郊外にある小さな村で目を覚ました。

混乱して、嘆いて、絶望して、そんな俺を村の人々は優しく受け入れてくれた。

この世界の常識を学んでいく内に俺は自分の置かれた状況を受け入れ納得した。

納得できた一番の理由はやはり魔法と魔物の存在だった。

村の外で見かけたプルプルと震えるゼリー状の魔物を見た時、俺は思いっきり肩を落として言った。

 

「ドラクエかよ」

 

そう、この世界はドラゴンクエストの世界だったのだ。

ドラゴンクエストシリーズの中のどれかは分からない。

もしかすると完全にオリジナルかもしれない。

しかしドラクエと分かった時、俺の中にあった絶望は完全に消えた。

絶望は希望へと変わったのだ。

だってドラクエだよ?

しかも村の人の話では魔王は既に勇者によって倒されて平和な世界。

村の外でスライムに襲われなかった理由も頷ける。

命の危険もなく、この世界を堪能できるということだ。

もしかすると魔法を覚えることが出来るかもしれない。

となると俺のステータスってどれくらいだろう?

その時だった。

俺の脳裏に自分の『つよさ』が浮かんだのだ。

 

「うわっ、極端なステータス。しかもオレって弱っ!」

 

浮かんだステータスは次の通りだった。

 

タケル

 

レベル:1

 

最大HP:20

最大MP:500

 

ちから:10

すばやさ:10

たいりょく:10

かしこさ:256

うんのよさ:256

EXP:0

 

攻撃力:10

防御力:7

 

どうぐ

E:普段着

 

呪文・特技

 

錬金釜

採取

大声

口笛

寝る

 

俺は自分の能力値よりも特技に注目した。

錬金釜?採取?

何それ、どうやって使うんだ?

気がつくとカーソルを合わせて採取を選んでいた。

 

採取を行いますか?

⇨はい

いいえ

 

選択すると、目の前に光るものが。

光っているものに手を伸ばすと。

 

太陽石を2個手に入れた

 

気がつくと俺の掌の中にはぼんやりと光を放つ石が二つ、しっかりと握られていた。

 

 

 

 

実際にこの商売を初めて1年になる。

この世界で得た俺の能力。

採取と錬金釜。

採取は割と何処でも利用できる。

その辺で適当に使えばレミラーマよろしく辺りが光るのだ。

光に触れると、素材が手に入る。

俺は自分の能力は最大限に利用した。

そうでなければ生きていくことなんて出来なかったからだ。

はっきり言って俺に戦闘力はない。

だがそれでも俺の能力はチートといっても良い。

何で自分にこんな能力があるのか分からないが、考えたところで答えなど出る筈がない。

ご都合主義ということで、とっくの昔に諦めた。

 

この世界に来て1年。

魔物が普通に存在する異世界で、俺はほのぼのと、旅のよろず屋を営んでいる。

勿論平和な今の時代でなければ旅など出来ない。

俺の特殊なよろず屋は様々な場所を旅しないと成り立たないのだ。

なにせ錬金には素材が必要。

そして優れた素材を得るには採取が必要不可欠だからだ。

普通の店で売っているものでは優れた物は作れない。

だからどうしても旅を続ける必要がある。

 

「あぁ、平和って最高っ!」

 

俺は岩場で採取を行いながら悦に浸っていた。

岩場で適当に採取しているだけで、質の良い鉄鉱石やミスリルが手に入るのだ。

これだからこの商売は止められない。

 

「…やっぱりやめようかな~この商売」

 

「ぐるるるるる」

 

採取もキリの良いところで切り上げ、街に戻ろうとした矢先だった。

リカントが俺の前に立ちふさがった。

ヨダレをだらだらと垂らしながら、血走った視線を俺に向けてくる。

あれ?平和なドラクエ世界は?

 

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。