ダイの大冒険でよろず屋を営んでいます   作:トッシー

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本日の目玉商品『最後の鍵』

イカダに揺られて約1時間。

ラインリバー大陸から出たオレは漸くギルドメインに到着した。

砂浜に降り立つ。

目の前には森が広がっている。

地図によればカールとテランのちょうど真ん中辺りだ。

ここはもうミストバーンの勢力下だ。

だが現在、六団長は魔軍司令ハドラーの招集を受けていた筈だ。

しかも現在は勇者ダイを始めとするアバンの使徒に注目していて、オレの様なモブキャラは間違いなくノーマーク。

勇者討伐に躍起になっている今、世界征服は停滞中といっても良い。

事を済ませるなら今しかないのだ。

オレは迷わずカール王国への道を進む。

 

現在ダイ達はフレイザードと交戦中の筈だ。

レオナ姫が凍りづけにされるかはまだ分からない。

だがダイ達もレオナ姫のかなりの武具を装備している筈。

しかも回復アイテムも多く持たせている。

死ぬ事は無いだろう。

どうにも心に凝りを感じる。

 

『このままで良いのかと…』

 

オレはラインリバー大陸を見た。

 

「気張れよ、ダイ達…」

 

海の向こうで戦っているであろう勇者達。

オレは彼らに心からのエールを送った。

 

 

 

 

バルジ塔を挟むように現れた炎と氷の柱。

『氷炎結界呪法』

フレイザードが此度の戦いに用いた最悪の禁呪法。

敵の技能を封じ込め、尚且つ力を激減させる卑劣な術だ。

ダイ達はこの禁呪法の前に苦戦を強いられていた。

ポップの魔法、マァムの魔弾銃は封じられパーティーとしての強さは機能しなくなってしまう。

ダイの攻撃力も大幅に下がり、フレイザードには通用しなくなってしまう。

攻撃を仕掛けたダイの剣はフレイザードに受け止められ反撃を受けてしまう。

 

「どうしたんだ!?フレイザードのやつ、急に強くなったぞ!」

 

「ククク…違うな…、お前等が弱くなったんだよっ!」

 

「なにっ!?」

 

フレイザードは外に見える柱を指さしていった。

 

『炎魔塔』と『氷魔塔』

その二つの塔はフレイザードの体内の核に作用してこの島に強力な結界を張ってる。

この結界陣の中においてフレイザード以外の者は力も呪文も全て封じられてしまうという…。

フレイザードは勝利を確信したかのように愉快に説明した。

絶望的な死の宣告。

これまで培ってきた力が使えない。

このままでは戦いの先に待っている結果は敗北しか無い。

 

 

「汚い手を…、正々堂々と戦えフレイザード…」

 

「…オレは勝つのが好きなんだよ!別に戦いが好きな訳じゃねぇんだよっ!」

 

フレイザードはダイ達に襲いかかった。

ダイ達は防御の体制でフレイザードを迎え撃つ。

ダイは魔法の盾でフレイザードの猛攻を受け止める。

ポップとマァムはフレイザードの攻撃を掻い潜る。

 

「くっそ!」

 

「どうすんだよ!このままだと殺られちまうぜ!」

 

ポップはフレイザードの攻撃をどうにか躱しながら叫ぶ。

 

「どうにかして活路を見つけないと!」

 

「そんなもん、有るわけねえだろ!」

 

フレイザードはポップに襲いかかる。

 

「あわわ、ら、『雷光』!!」

 

「な、なにぃ!?」

 

咄嗟のことだった。

ポップはいかづちの杖の力を解放するキーワードを叫んでいた。

むしろこれ以外、ポップの攻撃手段は残されていなかった。

マァムの魔弾銃の様に発動しないかもしれない。

しかし、そこまで考えている余裕もないのだ。

だがポップの行動は大当たりだった。

いかつちの杖から金色の光が放たれた。

それは蛇行しながらバチバチと音を立ててフレイザードを襲う。

 

「うぎゃああああっ!!」

 

電撃呪文『ライデイン』と同等の威力の雷撃の直撃。

フレイザードは堪らず膝をついた。

 

「や、やった…」

 

「そうか!タケルから貰った装備…」

 

「これならまだ…」

 

「よーし、『閃光』!」

 

ダイは破邪の剣の鋒をフレイザードに向けて叫ぶ。

狙うは当然、氷の半身。

膝を付いて体制を崩しているフレイザードは躱しきれない。

 

「ぐうううっ…くそったれっ!」

 

光線に腕を焼かれながらフレイザードは忌々しそうにダイを睨みつける。

 

「ダイ君、ここは一度退きましょう…」

 

「レオナ!?」

 

戦いを冷静に見守っていたレオナが静かに言った。

 

「いくら武具が強力でもそれだけで勝てるほど軍団長は甘く無いわ…それに見て…」

 

レオナは塔の外を指さした。

 

「あれは…」

 

外を見るとフレイザードの配下の怪物達がワラワラと周囲に集まってきた。

 

「この結界の中じゃ私達に勝ち目はないわ。それに傷ついた者たちを守りながらじゃ…」

 

「そうね…悔しいけど姫さまの言う通りだわ」

 

マァムのレオナ姫の意見に賛成する。

ダイは周りの傷ついた者達を見た。

エイミはマリンにホイミを掛けているがまるで効果は見られない。

アポロも重症の兵士を治療しているが同じく効果が見られない。

このままでは皆死んでしまう。

ダイは悔しそうにフレイザードを睨みつける。

 

「さあ急いで怪我人を気球へ!」

 

「わ、わかった!」

 

ポップとマァムは怪我人に駆け寄って肩を貸す。

 

「ちっ!逃すかよ!」

 

フレイザードは再び腕を再生すると立ち上がった。

逃がさないようにするにはと当たりを見る。

そして必死で姉に三賢者の姉妹に目を付けた。

エイミはマリンの治療で直ぐに動けそうにない。

それにフレイザードの目の前に居るのだ。

利用しない手はない。

フレイザードは素早く姉妹の前に駆け寄った。

 

「あ、ああ…」

 

「エイミ、マリン!」

 

アポロが走るが間に合わない。

 

「ね、姉さん!」

 

咄嗟にエイミはマリンを庇うように前に立った。

 

「エ、エイミ…っ!」

 

焼け爛れた顔を押さえながらマリンは悲痛な声を上げた。

エイミはフレイザードに捉えられてしまったのだ。

 

「あ、ああぁ…」

 

そして凍り付いていく。

意識のある状態で身体が凍り付いていく恐怖。

エイミは顔を歪ませながら、ただ身体を震わせていた。

同時にアポロがマリンを助けだす。

 

「ちっ!出来れば姫さんのほうが良かったんだがな…どうだい?これでも逃げられるのか?えぇ!?お姫様よ!大事な部下が凍り漬けだぜ!」

 

「くっ」

 

「いけません、姫様!」

 

「わかっているわ…ダバック、アポロとマリンを回収後、気球を発進させて」

 

「わ、わかりました」

 

「させるか!」

 

「くっ!」

 

気球の縄梯子に掴まっている状態のマリン達の背中にフレイザードが襲いかかる。

フレイザードの指から閃熱呪文の炎が生み出される。

マァムは咄嗟に魔弾銃の弾筒を、フレイザードの指目掛けて投げつけた。

 

「な、なにぃっ!?」

 

フレイザードの指が弾筒を突き破った瞬間、大爆発が起こった。

 

「うぎゃああああああっ!!!」

 

フレイザードは大爆発に飲み込まれて悲鳴を上げた。

 

「今よ!」

 

アポロとマリンは爆風に煽られながらも必死で縄梯子にしがみ付く。

そして幸か不幸か気球は爆風の衝撃波によって空高く舞い上がった。

 

「ぐうううぅ…」

 

フレイザードは失った半身を押さえながらも散らばった魔弾の破片に目を向けた。

 

「そうか…あの筒の中にはギラの呪文込められていたのか…それがオレ様の呪文に誘爆して…」

 

忌々しそうに離れていく気球を見上げた。

 

 

 

気球はどんどんバルジの塔から離れていく。

このままだと程なくして逃げられてしまうだろう。

しかしそうは問屋が卸さない。

フレイザードは炎魔塔のフレイム達に向かって叫んだ。

 

「フレイム軍団っ!そいつらを逃がすなっ!!」

 

 

 

 

「くっ!エイミ…」

 

気球の上でアポロは悔しそうに塔を見下ろす。

ダイ、マァム、ポップも同様に歯噛みしている。

マァムは申し訳なさそうに呟いた。

 

「ごめんなさい…わたしが…」

 

「いいえ、あなたの機転がなければ私達は殺られていたわ」

 

「そうだぜ、マァム」

 

レオナとポップがマァムのフォローを入れる。

 

「それにエイミは死んだわけではないわ。次に奪い返せばいいのよ」

 

「そうですね…」

 

「ううぅ…エ、エイミ…」

 

「あ、あああ、あれはっ!?」

 

パプニカの兵士が下を指差して叫んだ。

視線を移すと、炎の怪物フレイムの群れが気球に向かって飛んできていた。

感情の感じさせない表情と共に身体を揺らめかせながら襲いかかってくる。

 

「じいさん、飛ばせ!全速力だ!」

 

「ヒャダイン!!」

 

アポロが氷系呪文でフレイムを攻撃する。

どうやら既に結界の外、呪文は使えるようだ。

レオナ、アポロ、ポップはそれぞれ氷系呪文でフレイム達に応戦する。

しかし数が多すぎた。

フレイム達は直に気球を攻撃して落とそうとする。

攻撃を受けて気球は次第に高度を下げていく。

真下はバルジの大渦。

このままだと大渦に飲み込まれて全滅してしまうだろう。

 

「こ、このままだと…っ!?」

 

「つ、墜落…」

 

その時だった。

気球を一筋の閃光が飲み込んだ。

 

「グワアアアアアアアァッ!!!」

 

フレイム達は閃光によって消滅していく。

凄まじい魔法力の奔流。

それはダイ達を傷つけること無く敵だけを消滅させた。

閃光の出元は気球の上からハッキリと見えた。

海岸に見える洞窟、そこから光が放たれていたのだ。

フレイム達の攻撃から逃れた気球は、徐々に高度を落としながらバルジの大渦を超えて陸地の近くの浅瀬へと落ちた。

 

「ぶはっ!」

 

「あそこだ!あそこから閃光が奔って…、オレたちを助けてくれたんだ!」

 

「行ってみましょう!」

 

一行は傷ついた者たちを連れて洞窟の入口までやって来た。

中に橋を踏み入れようとした時、奥の方から低い男の声が響いた。

 

「なんだ、先刻の連中か……礼は良いからとっとと帰れ。面倒事はゴメンだ…」

 

明らかな拒絶の声。

マァムはその声に憶えがあるのか、はっとする。

 

「あなたは…」

 

「んん…っ!?」

 

男の方もマァムの声に反応して振り返った。

宝玉の付いた縦長い帽子をかぶった老人。

魚を咥えた表情は、何というか間が抜けていた。

マァムは顔を綻ばせて叫んだ。

 

「…マトリフおじさん!」

 

大魔道士マトリフ。

かつて勇者アバンと共に世界を救った英雄がそこにいた。

 

 

 

 

「漸く着いた…」

 

オレは目的地であるカール王国に到着した。

美しかった街並みは見る影もなく。

人の気配も感じられない。

魔王軍の進行による爪痕。

建物は破壊され、鎧を着たガイコツが散らばっている。

おそらくこの国の兵士だろう。

オレは心を込めて胸の前で十字を切って祈った。

 

「…アーメン」

 

酷いことをする…。

オレは辺りを警戒しながら忍び足で街を歩く。

目指すはカールの図書館。

 

 

しかし期待はずれだった。

カールの図書館は怪物の攻撃によって半壊していた。

この様子だと貴重な本は奪われるか燃やされているか…。

オレは図書館の内部に侵入した。

扉を開くだけで建物全体が揺れた気がした。

気をつけて進まないと図書館が崩れて生き埋めになりかねない。

オレはまだ無事な本棚を一つ一つ調べていく。

 

「…あった!魔導書だ!」

 

図書館の最奥、貸出禁止の禁書を保管している部屋だ。

鍵が壊れていて中に入る事が出来た。

更に奥の方に宝箱が置いてある。

持ち出し厳禁の札が掛けられている。

 

「…これはもしかして『アバンの書』か…?」

 

宝箱には鍵が掛かっており開けることが出来ない。

盗賊の鍵を試してみたが無理だった。

 

「アバカムが使えたらな……いや待てよ もしかしたらイケるかも…」

 

オレは昔手に入れた物を取り出した。

錬金釜を取り出す。

先ずは盗賊の鍵を入れる。

次に『魔力の土』を入れる。

そして最後に先ほど取り出した『マネマネ銀』を入れる。

 

「巧く行けば…出来た!」

 

出てきたのは金色の鍵。

オレは早速、宝箱の鍵穴に鍵を近づけてみた。

すると鍵の先がウネウネと動き、鍵穴にピッタリとハマる。

 

「おお!巧く言ったみたいだな!」

 

まさかこうも上手くいくとは思わなかった。

『最後の鍵』によってオレは宝箱を開けた。

中を覗いてみると古ぼけた一冊の本が入っていた。

どうやらビンゴだったみたいだ。

表紙の紋章に見覚えがある。

 

「アバンの書だ…」

 

オレはアバンの書の頁を捲ってみた。

まずは武術の『地の章』、次に呪文の『海の章』最後に心の『空の章』。

様々な事が詳細に書かれていた。

オレは逸る気持ちを押さえながらアバンの書を読む。

武術の『地の章』はオレには不要。

今のオレに必要なのは呪文の『海の章』だ。

 

「オレの知らない呪文…これはダイ大の特有の魔法だ…契約の魔方陣も載ってる…」

 

オレは自分の手帳に一つ一つ、魔方陣を書き写していった。

 

「…こ、これは!?」

 

海の章の最後を見てオレは驚いた。

描かれていたのは、あの有名な『旅の扉』だった。

空間を歪め一定の場所に繋げる旅の扉。

流石に作り方は載っていなかったが、旅の扉が封印されている場所が載っていた。

その場所は『死の大地』。

どこに通じているかは不明だが、アバンによれば魔界に通じているかもしれない。

そも旅の扉を封じたのはアバンの家系らしい。

 

閑話休題

 

「ま、オレには関係ないか…」

 

オレはアバンの書を閉じた。

 

「……」

 

オレはもう一度アバンの書を開く。

どうにも気になるのだ。

オレはペラペラと頁をめくり最後の空の章を開いた。

目を通す。

オレは気づかない内に次第にその内容に引きこまれていった。

指でなぞりながら一文字、一文字を余すことなく読む。

ポタリ―

 

「……あ」

 

気づかない内にオレは涙を流していた。

不意にオレの心に過る自分の声。

 

『このままで良いのか…』

 

雫が頁を濡らしてしまい、オレは慌てて本を閉じた。

オレはアバンの書を宝箱に戻して鍵を掛けた。

 

「戻ろう…ホルキア大陸に…!」

 

ダイ達を助ける。

オレにしか分からない事、オレにしか出来ない事。

それがある。

先ずは新しい魔法を覚えよう。

取り敢えずダイ達の側で色々と手助けしよう。

幸いアバンの書にはルーラも載っている。

巧く習得できれば一瞬でパプニカの町まで戻れる筈だ。

それに明確な目的も出来た。

 

「キルバーン人形を手に入れる!」

 

黒の核が埋め込まれたアレを手に入れて道具袋に保管してしまおう!

あの小悪魔(キルバーン)さえ殺ってしまえば楽にいくはず。

黒の核が有れば大魔王を倒せるかもしれない。

それに黒の核が人形に埋め込まれているのを知ってるのはキルバーン本人と冥竜王だけの筈だ。

手に入れてしまえばコッチのもの。

決行は百貨店での邂逅の時。

出てきた瞬間、ぶっ殺す…っ!

 

「…うまくいくはずだ」

 

オレは急いで図書館から出た。

目指すのはちょっとだけ良い未来(エンディング)。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く

 

本日のタケルのステータス

 

レベル23

 

さいだいHP:143

さいだいMP:585

 

ちから:60

すばやさ:150

たいりょく:72

かしこさ:290

うんのよさ:256

 

攻撃力:61

防御力:133

 

どうぐ

E:どくばり

E:ビロードマント

E:力の盾・改

E:幸せの帽子

E:スーパーリング

E:星降る腕輪

 

 

呪文・特技

 

錬金釜 採取 大声 口笛 

寝る 忍び足 穴掘り 大防御

連続魔法 思い出す もっと思い出す

 

 

ホイミ ベホイミ 

キアリー キアリク シャナク

メラ メラミ メラゾーマ

ギラ ベギラマ 

イオ イオラ

ヒャド ヒャダルコ ヒャダイン

バギ バギマ

ドラゴラム

ニフラム マホカトール

フバーハ

ラナリオン

トラマナ レミーラ 

インパス アバカム 

ルーラ トベルーラ

 


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