ダイの大冒険でよろず屋を営んでいます   作:トッシー

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バランVSロン・ベルク 其の一

「はああああっ!!」

 

「ぬぅんんっ!!」

 

重なりあう剛剣と双剣。

石の大地に剣戟が何度も響く。

その度に火花が散り、衝撃で岩が砕ける。

竜達の死体も転がり、また宙に跳ね飛ばされる。

圧倒的な金色の闘気を全身に纏うは竜の騎士バラン。

バランは凄まじい程の剛剣をロン・ベルクに振り下ろす。

ロンも負けじと双剣を巧みに操りバランの剣を受け流していく。

 

「何時までも逃げられると思うな!」

 

バランは瞬間移動呪文(ルーラ)を唱えた。

一瞬にして光となったバランはロンの背後、その上空に現れる。

 

「これで終わりだ!」

 

ロンが振り向いた時にはバランは剣を振り下ろす瞬間だった。

咄嗟に双剣を交差させて防御の体制を取る。

竜闘気によって強化された真魔剛竜剣。

斬れない物などこの地上のどこにも存在しないだろう。

現にバランもそう思っている筈だし今までもそうだった筈だ。

だが―

ロンはニヤリと笑った。

 

「な、なにぃっ!!?」

 

なんとロンはバランの剛剣を正面から受け止めていたのだった。

ロンの口元が更に釣り上がる。

歓喜の表情を隠すことが出来ない。

予感は確信に変わり、全身が泡立つ。

これだ!

こんな戦いがしたかったのだ!

真魔剛竜剣を求めたのも、最強の剣を求めたのも…。

 

「全てはオレの全力を振るうため…」

 

久しく忘れていたよ。

鍛冶屋を目指したのは断じて他者の為ではない。

嘗て魔界最強の剣士として名を馳せた自分。

実戦の中で数々の剣技を編み出してきた。

そして多くの強敵を下してきた。

しかし、決して満たされる事はなかった。

どれほど多くの強敵を打ち倒しても。

何故なら全力を出せなかったからだ。

極みに達した剣技。

それを振るうには自身の肉体と剣は余りにも惰弱だった。

どれほどの名剣を用いようと。

魔界に名を残すほどの伝説の剣を持ってしても。

そして更に自身の肉体を鍛えても。

遂には自身の極めた技を自在に放つ事は叶わなかった。

だからこそ歓喜する。

オレの鍛えた剣は地上最強の剣と打ち合えているっ!!

いや眼の前の剣は、もう地上最強ではない。

ロン・ベルクは予感を確信に変えてバランと切り結ぶ。

 

(どうやらオレは二つとも嬉しいらしい)

 

「最強の剣と剣士の誕生がなっ!!!」

 

「っ!?」

 

超速の連撃『はやぶさ斬り』だ。

ロン・ベルクの二刀流も相まって一瞬で四斬。

それを連続で行う。

 

「はああああああああっ!!!」

 

「ちぃっ!!!?」

 

ガガガガガッ!!!!!

 

ギィィンッ!!!

 

四、八、一六と僅か刹那の内に繰り出される無数の連撃。

バランは防戦一方になる。

忌々しそうに口元を歪ませる。

しかしバランも歴戦の騎士。

一旦仕切り直そうと飛翔呪文(トベルーラ)で上空に飛ぼうとする。

だが―

 

「させんっ!!」

 

「ぬぅんっ!」

 

一瞬の内に上空をとったロンが強襲する。

放たれた闘気は竜の顎となってバランを襲った。

竜系に対して痛烈を与える秘剣『ドラゴン斬り』だ。

バランは辛うじて剣で受け止めたもの、竜の闘気はバランの剣の脇を通り抜けて、その身に食らいつく。

まるでドラゴンキラーで攻撃された衝撃。

それは竜の因子を持つが故のダメージ。

バランは堪らず膝をついた。

 

「ぬぅう…流石は魔界の剣士…

 人間如きの剣技とは一線を画している」

 

「そういうアンタも流石だ

 竜の騎士の力は伊達じゃないと言ったところか」

 

「どうやら剣技の勝負では分が悪いらしい」

 

バランの紋章が更に輝きを増す。

ロン・ベルクは空かさずバランに斬りかかる。

 

「ちぃっ!!」

 

しかし次の瞬間、ロンは身を捻って地面を転がった。

同時にその横を一筋の閃光が通り過ぎた。

閃光は連なる岩々を貫通し、更にその先に見える大きな岩山に直撃。

 

「……くっ!」

 

岩山に刻まれた巨大な紋章の後。

竜の騎士が紋章に闘気を収束させて放つ光線『紋章閃』だ。

ロンはそれを見て息を飲んだ。

もしも躱さなければ自分は…。

冷や汗が流れた。

だが…。

 

「どうやらそう簡単にはいかないようだ」

 

ロン・ベルクは嬉しそうにバランを見た。

嘗て無い緊張感。

これほどの戦いは過去どれだけだったろうか?

一瞬の判断ミスが敗北を招くギリギリの攻防。

だがまだまだだ。

何故なら自分は未だ全てを出し切っていない。

真・星皇剣の能力も、最強の奥義も。

礼を言うぞタケル…。

ロンは心中でタケルに礼を言うと再び双剣を交差させた。

 

―先程のお返しだ―

 

そして真名を叫ぶ。

二剣一対の双剣の名を!

 

『真・星皇剣(ビッグバン)!!!!』

 

「な、なにぃ!!?」

 

瞬間。

双剣の中心が煌き極光が放たれた。

それは一瞬で膨張しバランを飲み込んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く

 

 


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