ダイの大冒険でよろず屋を営んでいます   作:トッシー

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バランVSロン・ベルク 其の二

「ぐおおおおおおおっ!!!?」

 

真・星皇剣の放った極光。

バランは咄嗟に竜闘気を全開にしながら歯を食いしばる。

光は竜闘気の護りを打ち破りながらバランに食らいつく。

全身を襲う焼け付くような感覚。

バランは歯を食いしばって耐える。

そして光が弾けた。

 

 

「やったか…」

 

ロンは、もうもうと広がる煙の中心を睨む。

不吉な事に空は何時の間には雨雲が覆っていた。

いや、あの程度で伝説の竜の騎士が死ぬはずがない。

ロンは真・星皇剣を握る手に更に力を込めた。

今の内に闘気を高める。

ロンは大きく息を吸い込んだ。

体内に闘気が充満し、駆け巡るのがわかる。

さぁ、何時でも来い!

次第に煙は晴れていく。

 

「やはりか」

 

バランは生きていた。

竜闘気を身体に纏い、防御姿勢のまま空に静止していた。

しかし無傷ではなかったようだ。

額からは赤い血が流れている。

鎧も所々破損している。

バランは剣を天に掲げた。

 

「ギガデインッ!!」

 

雨雲に稲妻が走る。

極大の落雷がバランの剣まで一直線に伸びた。

真魔剛竜剣は紫電を纏い、バチバチと凄まじい音を立てる。

魔法剣、この世界において人の身では決して扱う事の出来無い力。

正しく人間以上の存在が目の前に居た。

バランは紫電の剣を上段に構えてロンを見下ろす。

そして-

 

「はあああああっ!!!」

 

バランは飛翔呪文と竜闘気を全開にして急降下。

ロンまで一直線に強襲する。

 

「おおおおおおっ!!!」

 

ロンも自身の秘剣で対抗すべく構えを変える。

闘気を集中させつつ剣を左脇に交差させた。

 

「ギガブレイクッ!!!」

 

「星皇十字剣っ!!!」

 

バランが剣を振り遅すと同時にロンの一刀目が振り抜かれる。

まるで落雷の如き轟音。

そして刹那の間に二刀目が振り下ろされて剣が十字を描く。

バランとロンを中心に閃光が広がった。

 

 

光が収まる。

そこには膝を付いて互いを睨み合う戦士がいた。

汗が滝の様に流れ、腕が震える。

不意にロンが笑う。

視線の先には真魔剛竜剣。

バランが杖のように大地に突き立てている。

しかし刀身には亀裂が入り、刃が欠けているのが見て取れた。

 

「……くっ」

 

バランも自身の剣のダメージに気づき歯噛みした。

 

「くくく……、ハハハハハハーーッ!」

 

ロンは笑う。

消耗した体力の事など忘れて立ち上がる。

ロンの胸中には勝利の二文字が浮かんでいた。

 

「コレだ!オレが望んでいたのはコレなのだッ!!」

 

「どういう意味だ」

 

「オレの望みは最強の剣を創り上げる事ッ!!それだけを望み、渇望して生きてきた!その真魔剛竜剣を超える事だけを望み剣を鍛えてきたのだっ!」

 

バランは真魔剛竜剣を地面から引き抜き立ち上がる。

掛けた刃を見る。

剣が損傷したのには驚いた。

怒りはある。

だが不思議と憎しみは沸かなかった。

目の前に男にあるのは唯只管に剣の事だけなのだ。

善悪のない純粋さ。

バランは剣を下げて言った。

 

「その為に我が軍団を襲い、私に戦いを挑んだと…ならばもう目的は果たしたのだろう。剣を交えてみて思ったが、貴様は殺すには惜しい男だ。素直に剣を引くのであれば、今回の事は不問にしてやろう」

 

最早この男と戦う気は起きない。

確かに配下の竜達を消耗したのに対して思う事はある。

だがそれ以上に。

 

「いや、それよりも…我が軍門に下る気は無いか?その力、人間共を滅ぼす為に使う気はないか?」

 

この男が配下に加われば消耗した竜達にお釣りが来るほどの戦力だ。

それにロンに武具を造らせれば、我が軍の戦力は更に上がる。

敵対するよりも仲間に引き入れたほうが遥かに良いのだ。

バランは一度剣を鞘に納めるとロンの返答を待つ。

 

「そう、オレの剣は真魔剛竜剣に勝る…先程の一合でそれが分かった本来オレの目的はこれで達したと言ってもいい…だが!」

 

「…っ!」

 

ロンは鋭い眼光をバランに向ける。

 

「気づいたのさ、オレが本当に求めているものを」

 

「本当に求めているものだと?」

 

「ああ、最強の剣を目指し長年に渡って剣を鍛えてきた!だが一度オレは自分の限界に絶望した。年月だけが過ぎてオレは腐っていった……」

 

ロンは忌々しそうに視線を落とした。

 

「だが、ある人間の存在がオレの情熱を取り戻した!」

 

バランは眉がピクリと動く。

 

「おれたち魔族に比べてちっぽけな存在である人間がオレの剣を上回る物を創り出したと言うんだからな」

 

本当に驚いた…。

数百年の時を生き、伝説の魔剣鍛冶師とまで云われたロン・ベルク。

そんなロンの剣を上回る物を創りだしたのが人間だった。

彼にとって驚愕だったのだろう。

勿論、唯のチート能力なのだが…。

もしもタケルがロンの心中を知れば何とも言えない気分になり凹むに違いない。

 

「人間って生き物は大したもんだな…っと、どこまで話したか…。本当にオレが求めているものだったな…」

 

ロン・ベルクは双剣を構えて闘気を高めた。

 

「貴様…っ」

 

「オレが剣を鍛え始めたのはオレに見合う剣が無かったが故に本来のオレは鍛冶師などではない…最強の二文字を目指す唯一人の剣士に過ぎん…オレはオレの鍛えたこの剣と共に最強の剣士になるのだっ!!!」

 

「コチラも気が変わったぞ、魔族の剣士よ…人間などを大した存在などと宣う貴様など最早生かしておけんっ!」

 

「ほう、貴様にとっては禁句だったか…上等っ!」

 

膨れ上がったバランの殺意を何処吹く風と受け流しながらロンは笑みを浮かべる。

 

「天下の竜の騎士殿はかなり人間臭さを持っているようだな…」

 

「何ィっ!?」

 

「竜の騎士の使命ってのはオレも知っているさ」

 

竜の騎士。

それは人間、魔族、竜の神が集まり創り出した究極の生命体。

竜の戦闘力と魔族の超魔力と人間の心を持った戦士。

もしも何れかの種族が野心を持ち地上を支配しようものなら天に代わり之を裁く。

神の御使い。

その竜の騎士が魔王軍に味方し人間を滅ぼそうとしている。

客観的に見れば人間が悪なのだろう。

だがロンはバランの憎しみを見抜いていた。

 

「お前は竜の騎士の使命として人間を滅ぼすのか?」

 

「……」

 

バランは無言だ。

 

「憎しみなんざ最も人間らしい感情だろうよ」

 

「ほざけえええええっ!!!」

 

ロンの言葉にバランの怒りが頂点に達した。

バランは竜の牙を取ると天高く掲げた。

 

雷雲が集まり雷が走る。

 

ドドドドーーーーンッ!!!!!

 

極大の落雷がバランに落ちた。

 

「ぐおおおおおおおおおお!!!」

 

バランは天に向かって竜のように吠えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く…。

 

 


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