ダイの大冒険でよろず屋を営んでいます   作:トッシー

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幕間

アルテマソード。

それは自身の闘気を暴走させ、更に制御。

制御した膨大な闘気を放出と同時に剣の形に収束させる。

天を突く程に強大な光の剣。

それがアルテマソードの正体だった。

魔界の剣技を極めたロン・ベルクが編み出した究極の一。

星皇十字剣を上回る必殺剣だ。

 

「勝った…っ!」

 

自身の秘奥義に飲まれていくバランを見てロン・ベルクは勝利を確信した。

それ程確かな手応えだった。

 

「…うぅ?」

 

急な目眩と同時にロンは膝をつく。

 

「ぐ……むぅ…」

 

そしてその意識は次第に薄れていく。

駄目だ、ここで意識を失う訳には…。

ロン・ベルクは眼前を埋め尽くす極光に飲み込まれるように意識を失った。

 

 

 

そして…。

そこには全ての力を使い果たして倒れたロン・ベルク。

しかし手には確りと愛剣が握られており、その鋒の先には…。

竜魔人化が解け、人の姿に戻ったバランが倒れ伏していた。

鎧は既に砕け、全身から血を滲ませている。

既に意識はないようだ。

 

-バキンッ!

 

バランの目の前で何かが砕けた。

何時からだろうか。

そこにはバランの愛剣、真魔剛竜剣があった。

しかし刀身は根本から砕け、ガラガラと地に落ちる。

真の武具は主を自ら選ぶ。

そして主の下に帰る。

真魔剛竜剣は真の武具の中でも最高の一。

伝説の武具だった。

それ故だろう。

主の危機を察知し、自らの身を挺して主を庇ったのだ。

しかしアルテマソードの余りの威力に耐え切れず…。

まるで涙を流しているかのように落ちていく刀身の欠片。

オリハルコンの光は雫の様に零れ落ちた。

 

「グ…ッ」

 

剣の涙を感じ取るようにバランは呻く。

嗚呼、取り敢えず主の命だけは護る事が出来たようだ。

真魔剛竜剣は最後にオリハルコンの光をバランの顔に反射させて崩れ落ちた。

 

 

 

 

その光景を見つめる視線があった。

悪魔の目玉だ。

全世界の動向を探るべく放たれた魔王軍の偵察。

それはバランとロン・ベルクの戦いを確りと捉えていた。

 

「むぅ…」

 

「どうやら決着が付いたようですね」

 

地上最強の力を有する両雄。

当然ながらその戦いは魔王軍にリアルタイムで伝わっていた。

悪魔の目玉が写す光景は魔王軍の本拠、鬼岩城へと送られていた。

城の最奥にある謁見の間。

城の主たる大魔王バーンは、側近の一人、死神キルバーンと共にその光景を眺めていた。

結果は相打ち。

バランは満身創痍の上に剣を砕かれ、ロンは全闘気を使い果たし戦闘不能。

両者、今なら簡単に討ち取られそうだ。

 

「バラン…、油断しおったか」

 

バーンは面白くなさそうに倒れたバランを睨みつけた。

 

「ホント、ホント、天下の竜騎将もてんでだらしないの!」

 

キルバーンの肩に乗った小悪魔がヤジを飛ばす。

 

「それにしても」

 

バーンの声音が不機嫌なものから機嫌なものに変わる。

髭を摩りながら面白そうにロンを見つめた。

 

「まさか人間界におったとは」

 

「アイツ、魔族だよね!何で魔王軍将軍のバランに戦いを挑んだんだろう?」

 

「ふふふ、ピロロ、彼の名はロン・ベルク…魔界じゃ超有名な御方だよ」

 

「ホントー?」

 

「それでどうします?今なら簡単に殺れますよ?」

 

「そうそう!大魔王様!ぼくらにお任せ!」

 

「まあ待て。アヤツは我等に戦いを挑んだわけではない」

 

「どういう事ですか?」

 

キルバーンの問いかけにバーンは面白そうに笑う。

 

「あやつ、何も変わっておらん…。いや、完成させた所を見ると、随分な進歩よ…」

 

「どうゆうこと?」

 

「恐らく自身の剣が最強である事を証明したかった…」

 

唯それだけであろうな…。

バーンはゆっくりと玉座に背を預けると酒を煽った。

 

「ロン・ベルクは捨て置け。それよりも今のうちにバランの奴を回収しておけ」

 

「処分なさるので?」

 

「いや、此度のことは任務外のこと。不覚を取ったとは言え竜の騎士は貴重な戦力だ。……今回は不問にしておこう」

 

それよりも、と。

バーンの瞳が怪しく光った。

 

「ロン・ベルクは興味深い事を言っておったな」

 

「はい、確かに」

 

「ロン・ベルクを感心させる程の人間か…」

 

「興味ありますよね」

 

「うむ、やはり欲しいな」

 

バーンの脳裏には先程の戦いの終始が鮮明に甦っていた。

ロン・ベルクが地上界に居たのも驚いたが…。

 

「星皇剣を完成させておったとは」

 

嘗て魔界最強の剣士として名を馳せたロン。

しかし彼が剣の道から鍛冶の道に変えた理由。

バーンはそれを見抜いていた。

ロンの極めた剣。

それは強靭な魔族の肉体を持ってしても自身に帰ってくる諸刃の剣だった。

ロンが鍛冶の道に入って百年余り。

 

星皇剣は見事にロンの技に耐え、尚且つ主の身を守る最強の武具として完成していた。

しかも星皇十字剣をも上回る秘奥義まで…。

 

「アルテマソード…、脅威だ」

 

その威力はバーンをして戦慄させる程のものだった。

あれ程までに収束させた闘気の剣。

おそらく『黒の核』に匹敵するだろう。

その威力と範囲は比べるべくもないが…。

あれは黒の核の威力の剣で斬りつけるようなものだ。

真魔剛竜剣が無ければ間違い無くバランの命はなかっただろう。

 

「くくく…」

 

だからこそバーンは笑う。

まさか人間界で是程までに楽しませてもらえるとは…。

 

「キルバーン」

 

「はい」

 

「ロン・ベルクの動向を探れ。間違いなく件の人間と接触するはずだ」

 

「分かりました。バランの回収後、直ちに」

 

キルバーンはクスクスと笑いながら闇にその姿を消した。

 

「さて、どうなるか…」

 

バーンは残った酒をグラスで転がしながらじっと虚空を眺めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く?

 

 


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