ダイの大冒険でよろず屋を営んでいます   作:トッシー

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本日の目玉商品『爆弾石』

鬱蒼とした森の中を歩く。

バルジ島に到着した俺達は二手に分かれて行動を開始した。

それぞれ炎魔塔と氷魔塔を目指す。

ダイはレオナ姫とゴメちゃんを連れ炎魔塔へ、オレはマァムとポップと氷魔塔を目指す。

 

 

暫く歩くと薄暗い森の奥、木々の隙間から光が見えた。

真夜中だというのに何だろう?

その答えは直ぐに出た。

氷魔塔の光だ。

氷が星と月の光を反射していたのだった。

 

「ポップ、タケル…」

 

「ああ、どうやら嵌められたみたいだな」

 

何時からだろうか?

見られている。

身体中を突き刺すような視線、殺気が俺達を襲う。

獣の匂い…。

しかし百獣魔団の物ではないだろう。

木々や、水の自然な匂いがしない。邪悪な気配だ。

バサッ!バサッ!

不気味な羽音が響く。

空に見えるのはガーゴイルとホークマンだ。

段々と気配は増えていき、アッという間に周囲から殺意が突き刺さる。

完全に囲まれてしまったようだ。

 

「クックック…ダイ達は炎魔塔か、拍子抜けだな…」

 

魔物の群れを掻き分けながら現れたのは魔族の男。

側近の悪魔系怪物、アークデーモンを引き連れて歩く。

威風堂々とした佇まいに残忍な笑みを浮かべて。

ポップは魔族の声に肩を震わせた。

 

「こ、この声は…」

 

「どうしたの、ポップ?」

 

「こいつの声だけは死んでも忘れねぇ…っ!」

 

ポップは怒りを孕んだ声で魔族の男に向けて叫んだ。

 

「魔軍司令ハドラーッ!!!」

 

「こいつが…」

 

オレはハドラーを観察する。

青い肌に、ローブの上からでも分かる鍛えぬかれた巨躯。

その風貌は全身から凄まじいオーラを放っていた。

現時点のコイツは、どこか大したことがないという印象だった。

だがどうだ。

こうして見ると、とんでもないバケモノだ。

 

「コイツがアバン先生を殺した男…?」

 

「ああ、まさか…、魔軍司令自ら出てくるなんて…」

 

「目障りな貴様らを一気に叩き潰してやろうと思ってな。しかしガッカリだ。罠に掛かったのが貴様らのようなヒヨコとは…」

 

「うるせえ!そうそうテメエの思い通りになると思うな!」

 

「…ん?そうか貴様…思い出したぞ。デルムリン島でアバンを葬った時に側にいた魔法使いのガキか?」

 

ハドラーはポップの顔を思い出して肩を震わせた。

そして大いに笑う。

 

「ククク……、ハーッハッハッハ!」

 

「何がおかしいっ!」

 

「くくく、コイツは泣かせてくれる感動的な話じゃないか。ひ弱で未熟な弟子が最愛の師の敵を討つ為に必死で戦いを潜り抜けてきたという訳か…涙ぐましい努力だな…。しかもその結果が惨めな討ち死にとはなぁ」

 

ハドラーの眼光にポップはたじろいた。

 

「ふ、ふざけんなよ!タ、タダじゃ死なねえ!たとえ刺し違えてもアバン先生の受けた痛み、全部テメエの身体に刻みつけてやるぜ!」

 

しかし勇気を振り絞って啖呵を切る。

マァムもハンマースピアを握りしめて叫ぶ。

 

「そうよ!許せないわ!あの先生の生命を奪った貴方だけは!」

 

「フン!勘違いするなよ小娘…アバンの命を奪ったのはオレ様ではないその優しさとか言う愚にもつかない猿以下の感情なのだ!」

 

そのハドラーの言葉がマァムの怒りに火を付けた。

頭に血が上ったマァムは怒りの表情で飛び出す。

 

「よせ!マァム!」

 

ポップの制止の声も振り切りハドラーへと走る。

そして一気に距離を詰めるとハドラーにハンマースピアを振り下ろした。

しかし-

 

「-ッ!?」

 

ハドラーは涼しい顔でマァムの一撃を受け止めた。素手で。

ライオンヘッドの巨躯でさえ安々と吹き飛ばす一撃を容易に止める。

やはり半端な強さではないようだ。

オレはこの戦いに生き残るために努めて冷静にハドラーと手下たちを分析する。

ヒュンケルの助っ人に期待するのも手だが確実ではない。

ゲームではなく現実である以上、手を抜く訳にはいかない。

 

 

「逃げろ!マァム!やつは格闘技も半端じゃねぇんだ!」

 

マァムの一撃を受け止めたハドラーはハンマースピアを握り捉える。

そして反撃とばかりに拳を構えた。

それを見たオレは直ぐに呪文を唱えた。

 

「瞬間移動呪文『ルーラ』」

 

オレの身体が光の矢となってハドラー目掛けて翔ぶ。

 

「……むっ!?」

 

ハドラーの拳がマァムを捉える瞬間。

オレは瞬間移動呪文の速さによってマァムの救出に成功する。

 

「大丈夫か?」

 

「え、ええ」

 

マァムを下ろしながらオレはハドラーを見据える。

ここはボス戦のセオリーで行くしかないな。

 

「ちっ!余計な真似をしおって…死ぬがいいっ!」

 

ハドラーは面白くなさそうに爆裂系呪文『イオ』を連発してきた。

 

「マァム!タケル!」

 

ポップが駆け寄ってくる。

ヤバイッ!

オレはポップとマァムの前に歩み出ると力の盾・改を構える。

そして全神経を集中して防御する。

無論、唯の防御態勢ではない。

実戦で使うのは初めてだが上手くいく筈。

コレはあらゆる攻撃を十分の一に軽減する『大防御』だ。

同時にイオが俺の面前に着弾、爆発が連続した。

 

「タケル!」

 

腕が少し痺れたが問題はないだろう。

ダメージを受けると同時に力の盾の能力で回復したから問題ない。

煙が晴れると地面は砕け、煙が上がっていた。

とてもではないが並のイオの威力ではない。

それを見てポップが顔を青くした。

 

「い、以前よりもハドラーの呪文の威力が上がってる?」

 

「ふっ、見て分らぬか?オレはアバン討伐の褒美としてバーン様より新たな肉体を頂いた…。以前のオレとは比べ物にならん程に強くなったのだっ」

 

それを意味するのは唯一つ。

この男はアバンを倒した時よりも強い。

 

「理解できたか?貴様らには万に一つも勝ち目がない事に…。そしてこの場にはダイもいない…。今頃ダイは妖魔師団と魔影軍団の集中攻撃を受けているだろう。そろそろくたばっておるかもな」

 

「そ、そんな…ダイ達も…っ!?」

 

ポップとマァムの顔が絶望で歪む。

 

「虫ケラ以下の人間の分際で偉大なる我が魔王軍に楯突いた事は死を持ってしても有り余る…オレの高熱地獄で死よりも苦しい地獄を味わいながら消し炭になるがいい」

 

ハドラーの掌から炎が迸る。

あれは閃熱呪文『ベギラマ』だ。

ポップは死を予感して肩を震わせる。

 

「けど俺達は無傷だ」

 

「む…っ」

 

「タ、タケル…」

 

「お前さ、得意そうに呪文を披露してるけどさっきの呪文で俺達は別段傷を負ってないぜ」

 

「そういえば、おめえ、俺らを庇ったってのに…」

 

「ポップ、諦めるなよアバンの使徒だろ?たしかに恐ろしい相手だけどさ…勝てるぞ、コイツに…俺達が一致団結すれば間違い無くな…」

 

「なにぃ?」

 

ハドラーはオレの顔を睨めつける。

結構な迫力だけどワニ顔のクロコダインに比べればマシだ。

一応、人間の顔だし…。

オレはハドラーを無視して補助呪文を掛け始める。

淡い金色の光が俺達を包む。

 

「コイツは…」

 

この呪文は仲間の素早さや反応速度を倍加させるピオリムの呪文だ。

ポップとマァムは自身の体の異変に気づいて怪訝な表情になる。

しかしこれは不調ではない。むしろ好調だ。

オレはスクルト、バイキルトと次々と補助呪文をかける。

勿論、敵に呪文がバレないように声を落とし口元も隠して。

 

「スゴイ…力が漲ってくる」

 

「な、何だと!?」

 

これがオレの戦い方の答え。

要はボス戦のセオリーだ。

まずは補助呪文でパーティーの強化だ。

ハドラーは現時点のアバンの使徒よりも強い。

ならば呪文で補強してやれば良いのだ。

オレはマァムとポップの肩を引き寄せた。

 

「タ、タケル!?」

 

「マァム ポップ、聞いてくれ!今のは補助呪文だ。一時的だけど俺達の戦闘力は倍増してる。けど呪文だけは強化できない!それでも今のハドラーを相手にする分には十分な筈だ!」

 

「ククク…、何を言うかと思えば…何をしたが知らんが、貴様ら人間如きに何が出来る。それにオレの相手をするには十分だと?手加減していれば図に乗りおって!」

 

ハドラーは愉悦の表情を浮かべて足を踏み出した。

 

「いいか二人共!奴が敵で憎いのは分かるが今は耐えろ!いま戦っているのは俺達だけじゃない!目的最優先で行くからな!」

 

二人の脳裏にダイとレオナ姫の顔が浮かぶ。

そして氷漬けにされているエイミの顔も。

 

「マァムは前衛でハドラーを抑えてくれ!大丈夫だ!今回は絶対にイケる!ポップはマァムの援護だ!他の雑魚どもに邪魔はさせるな!」

 

オレは氷魔塔を破壊する。

 

「はあああああっ!!!」

 

「なっ!?疾い!?」

 

マァムはハドラーに突っ込む。

ピオリムによって強化されたスピードは電光石火。

一瞬で間合いを詰め一閃。

強化されたマァムの一撃はハドラーの身体の中心へと迫る。

しかしハドラーも並の敵ではない。

その経験が、元魔王のプライドか…。

ハドラーはマァムの攻撃に反応し咄嗟に腕でガードする。

ミシリと鈍い音が響く。

 

「ぬぅっ!?」

 

マァムの一撃がハドラーの腕にめり込む。

先程は用意に防ぐことが出来た。

しかしこの結果。ハドラーは驚愕する。

バイキルトは攻撃力を倍加させる呪文だ。

つまり強化されるのはマァムの力だけではないのだ。

マァムの持つハンマースピアも含まれる。

マァムは更に力を込めてハンマースピアを振りぬいた。

 

「でやあああああああっ!!!」

 

「ぐおおっ!」

 

ハドラーは大きく吹き飛ぶ。

しかし宙で姿勢を整えると地面に下りた。

腕に受けたダメージを信じられない面持ちで見ている。

部下の怪物たちに動揺が広がる。

そして怪物たちが動き出す。

 

「ハ、ハドラー様!」

 

「させっかよ!」

 

ポップが行かせまいと呪文を放つ。

 

「タケルだけにいいカッコはさせねえ!」

 

ポップの放った閃熱呪文『ギラ』が進化する。

ギラは大きく炎を収束させて巨大化した。

あれは最早ベギラマだ。

 

「出来た!オレにもベギラマが…っ!」

 

ポップのベギラマはアークデーモンとハドラーの間に着弾する。

瞬間、巨大な炎がハドラー達を飲み込んだ。

 

「よし、今のうちに」

 

オレは氷魔塔に向けて掌を向けた。

道具袋から10個もの爆弾石を取り出す。

そして宙に放り投げる。

 

「バギ!」

 

真空呪文で爆弾を氷魔塔目掛けて飛ばす。

続けて両手に別々の呪文を作り出す。

イオラとベギラマだ。同時に放つ。

 

ズガガガガーーーンッ!!!!

 

爆弾石は連鎖的に爆発していく。

最後にバダックさんの爆弾を取り出すと爆発する空間目掛けて投げつけた。

氷魔塔を大爆発が飲み込んだ。

 

「やったぜ」

 

崩れ落ちていく氷魔塔を見て自然と顔が綻ぶ。

 

「お、おのれ…」

 

「あ、ああ…」

 

怒りを孕んだ低い声音。

視線を向けると怒りの形相のハドラーがいた。

ローブを脱ぎ捨て青い肌が顕になる。

どうやら少しダメージを負っているようだ。

しかしそれがハドラーのプライドを傷つけたようだ。

 

「許さんぞ貴様ら…」

 

「あ、ああ…、うああ」

 

ハドラーの両手から巨大な炎がアーチの様に蠢く。

まさかあの呪文は…。

ポップのハドラーの呪文のヤバさに気づいたようだ。

しかしもう遅い。

オレはルーラを唱えて二人を庇うように立つ。

大防御で耐えるしかない。

 

「逃げろ!」

 

「タ、タケル!?」

 

「何考えてやがんだ!」

 

うるせえ!

オレだってあんなヤバそうな呪文食らいたくねえよ!

躱す事も考えたが無理だ。

極大閃熱呪文『ベギラゴン』は既に完成している。

極大呪文の効果範囲から全員で逃れるのは無理だ。

道具袋から強力な防具を出す時間もない!

甘く見過ぎた!手持ちの装備と呪文だけで上手くいくなどと!

珍しく強力な武具で注目されたくないなどと!

ここ一番でヘタレる自分に腹が立つ。

それよりも目の前の危機に集中しないと。

今はこれが一番被害が少くて済む筈なんだ。

大防御に力の盾による回復。

食らうと同時に即回復だ。イタイの嫌だし…。

 

「死ねえ!」

 

「早く下がれ!」

 

オレは咄嗟にバギの呪文で二人を傷つけないように吹き飛ばす。

お陰で大防御が少し遅れた。

同時にハドラーが叫んだ。

 

「極大閃熱呪文『ベギラゴン』ッ!!!」

 

超収束された高熱の炎がレーザーの様にオレに向かって伸びる。

こりゃヤバすぎる!

例えるなら某白い魔王の殺傷設定星破壊光線。

そんな事を考えてる間にベギラゴンはオレに直撃した。

同時に凄まじい衝撃で盾が吹き飛ばされる。

ヤバイこれは計算外だ!

 

あ、熱いっ!イタイッ!?

 

アツイ!アツイ!!アツイ!!!アツイ!!!!

アツイ!アツイ!!アツイ!!!アツイ!!!!

アツイ!アツイ!!アツイ!!!アツイ!!!!

アツイ!アツイ!!アツイ!!!アツイ!!!!

 

それだけじゃない。

苦しい!

周囲は炎の海なのだ。

当然酸素などない。

呼吸など出来ないから呪文も唱えられない。

簡単な初級呪文なら出来るがベギラゴンを打ち消すほどの物は出来無い。

息が出来ない…。

それでもオレは死にたくない一心で大防御を行う。

大防御のお陰で即死は免れたが、甘く見ていた。

極大呪文を正面から受け止めるなんてバカだった。

し、死ぬ…、本気で死んでしまう…。

痛みで流れる涙は炎によって直ぐに蒸発していく。

嫌だ…、死ぬのは嫌だ…。

 

 

「ヒャダルコーッ!!」

 

声の方を見ると、ポップが必死に氷系呪文で消化している。

マァムも魔弾銃からヒャダルコを放っている。

二人共必死でオレを助けようとしてくれている。

…嬉しい。嬉しくて泣きそうだ。

 

そういえば、はぐりんは何処だろう?

懐を探る……居た。逃げてなかったのかコイツ…。

…コイツ、寝てやがる!?

オレが熱さと苦しさで喘いでるってのに…っ!

 

「くそったれ!」

 

「タケルーっ!」

 

程なくしてベギラゴンの炎は消え去った。

同時にオレは胸いっぱいに酸素を吸い込んだ。

早く酸素をとオレの肺が活動する。

 

「げほっ!げほっ!」

 

「大丈夫!?タケル!!」

 

マァムがオレに駆け寄りベホイミを唱える。

 

「へ……、へへっ!サンキュー!」

 

オレはどうにか取り繕いながら礼を言いながら自身もベホイミを唱える。

 

「無茶しやがって」

 

「けど大丈夫だっただろ?」

 

「にしてもなぁ!おまえ!窒息死するとこだったんだぞ!」

 

「すまねえ、そこまで考えてなかった!」

 

ベギラゴンのダメージ自体は耐えれる自信があったんだけどな…。

やっぱり現実の実戦は違う。

それに極大呪文の恐ろしさを身をもって知った。

オレは悠然と佇むハドラーを睨みつけながら立ち上がった。

恐怖に震える身体に活を入れながら。

勝負はこれからだ。

そう自分に言い聞かせながら。

そうでないと心が折れて戦えなくなりそうだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く?

 

 

本日のタケルのステータス

 

 

レベル23

 

さいだいHP:143

さいだいMP:585

 

ちから:60

すばやさ:150

たいりょく:72

かしこさ:290

うんのよさ:256

 

攻撃力:200

防御力:104

 

どうぐ

E:超・グリンガムの鞭

E:ビロードマント

E:幸せの帽子

E:スーパーリング

E:星降る腕輪

 

どうぐ(チート道具袋ではない手持ちの)

 

エルフの飲み薬

エルフの飲み薬

エルフの飲み薬

超万能薬

超万能薬

世界樹のしずく

賢者の石

 

 

呪文・特技

 

錬金釜 採取 大声 口笛 

寝る 忍び足 穴掘り 大防御

連続魔法 思い出す もっと思い出す

 

 

ホイミ ベホイミ 

キアリー キアリク シャナク

メラ メラミ メラゾーマ

ギラ ベギラマ 

イオ イオラ

ヒャド ヒャダルコ ヒャダイン

バギ バギマ

ドラゴラム

ニフラム マホカトール

バイキルト スカラ スクルト 

ピオラ ピオリム 

ルカニ

フバーハ

ラナリオン

トラマナ レミーラ 

インパス アバカム 

ルーラ トベルーラ リリルーラ

レムオル

 

力の盾・改が紛失したので防御力低下。


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