ダイの大冒険でよろず屋を営んでいます   作:トッシー

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今回はタケルの回想編です。
短くてスイマセン。


本日の目玉商品『世界樹の葉』2

少年の話をしよう。

何処にでもいる何の変哲もない少年の話だ。

お調子者で、少し見栄っ張りで、思春期の少年らしく異性への興味も人並みな少しスケベな面もある…。

そんな普通の少年の話を…。

 

 

 

 

タケルが異世界のとある村で目覚めて数日が経過した頃。

自分の『能力』にも自覚し、村の人々と打ち解け色んな事に慣れ始めた頃。

 

タケルはある場所を目指して一人、黙々と歩いていた。

ギルドメイン大陸。村同士を繋ぐ街道を離れた小高い丘。

その先には青々とした森が広がっていた。

旅人の服に皮のブーツ、腰には短剣をといった軽装。

やや頼りない装備だ。

しかし魔王ハドラーが倒され平和になった時分、このくらいで丁度良い。

 

異世界すなわちドラゴンクエストの世界。

普通なら元の世界に帰る為に奔走するのだろうが、タケルにその気は全く無い。

将来は商人として村を出ることも決めており、この世界に根を下ろすことを決定している。

 

しかし、気になる事が一つだけあるのだ。

タケルを拾ってくれた狩人、彼の話によるとタケルは村から大きく離れた森で倒れていたのだという。

魔王が倒され、森の魔物が居なくなった為、狩りにやって来た際に発見したのだという。

この世界ではありえない学生服、そして彼を守るように下に敷き詰められた瑞々しい大葉と共に。

 

タケルは件の大葉を見せられた時に仰天した。

何故ならそれはドラゴンクエストを知るものなら、誰でも知っているアイテム。

死者を蘇生させることが出来る貴重品『世界樹の葉』だったからだ。

 

タケルを拾ってくれた狩人も首を傾げたという。

その大葉の木など、森の何処を探しても生えていないのだ。

つまり森に存在しない木の葉が有ったのだから。

 

 

首都へ向かう街道から大きく外れ、丘を越えて谷を横断する。

その先は深い霧が掛かった青の森。

魔王ハドラーの脅威があった頃は、恐ろしい魔物の住処だったが現在は静寂が支配する霧深い森だった。

魔物が居ない現在、動物たちが戻り、狩人の狩場としても穴場となっている。

 

 

タケルは狩人に教わった通り、深い森を分け入り目的の場所を目指す。

しかし旅が初めての為、思うようにいく筈もなく、少ない体力は直ぐに底をつき何度も休憩を挟みながら、狩人に教わった旅の心得を実践していくのだ。

危険な獣道の見分け方、火の起こし方や、地図やコンパスの使い方。

運悪く魔物に遭遇した時は、テンパりながらもどうにか聖水を使う事によって事なきを得た。途中何度も挫けそうになり村に戻ろうと思った。

 

それでもタケルは好奇心と探究心を燃やして前へと進んだ。

森の奥に進む度に霧は濃く深くなり、視界はますます悪くなっていく。

それでもタケルは藪を掻き分けながら進み…。

 

「…あれ?急に明るく?」

 

タケルの視界を青い光が満たしていた。

そこは大きく拓けた場所だった。

まるで狩人が休憩のために作ったかのような円状に開けた場所。

空を見上げると月が見えた。月の光だったのか…。

タケルは次々と空から舞い落ちる落ち葉を擽ったそうに払う。

 

「落ち葉?なんで絶えず落ち葉が?いや…ちょっとまて!」

 

暗がりでよく分らなかった。

手にとった落ち葉が月の光によって照らされる。

タケルの手の中にあったのは、なんと『世界樹の葉』だったのだ。

 

「オレを…、呼んでたのか?」

 

何もない虚空から次々と落ちてくる世界樹の葉は、何故か時分を誘っているように感じた。

そして何時の間にか世界樹の葉の雨は止んでしまった。

満月が真上に来たのは同時だった。

 

「うそだろ?」

 

次の瞬間、タケルの眼前には力強く雄々しい大樹が天に向かって聳え立っていた。

優しい青い光を放つ大樹はまさしく伝説に語り継がれた世界樹そのものだった。

 

タケルは吸い寄せられるように世界樹に触れた。

そして靴を脱ぎ捨てると、世界樹の頂上を目指して登りはじめた。

タケルは運動が苦手ではないが、この世界の人間に比べると遥かに体力はない。

此処に来るまでで、その体力は底をつきかけている。

しかし、何時の間にかタケルは身体には活力を完全に取り戻していたのだ。

間違いなく生命力溢れる世界樹の恩恵だろう。

タケルの木登りは徐々に速さを増し、あっという間に世界樹の頂上まで到達した。

 

「すげえ…」

 

タケルはその光景に息を呑んだ。

世界樹の頂上から見下ろす世界の姿に。

それは正に世界の全てと言っても良いのかもしれない。

星や月に手が届きそうな、遙か上空。しかし世界樹に繁る葉のお陰かまるで寒さは感じない。それどころか暖かくさえ感じた。

タケルは徐に世界樹の葉に手を掛けた。

 

「……抜けない?」

 

首を傾げながらもタケルは直ぐに納得した。

ああ、この世界でもそういうものなのかと。

タケルが初めに手にしていた世界樹の葉も何時の間にか無くなっていた。

どうやら一つだけしか所持できないらしい。

 

「ここがオレの降り立った場所…なんだな…」

 

-はい、その通りです-

 

「誰だ!?」

 

タケルの脳裏に不思議な声が響く。

その声に驚いたもの、しかしどこか優しい声にタケルは戸惑う。

 

-私はルビス、精霊ルビスです。世界樹を通して貴方に語りかけています-

 

「精霊ルビスだって?もしかしてオレをこの世界に連れてきたのは…」

 

-はい、この私です-

 

あまりの予想外の展開にタケルの心は混乱する。

自慢ではないがタケルは自分が平凡な人間であることを自覚している。

異世界に召喚されて活躍する物語の主人公のような真似が出来る人物ではないのだ。

何故?その答えを聞くという思考へと移動する間もなくルビスは話を続けた。

タケルは混乱とあまりの展開に思考がついていかず、その話の殆どの部分を聴き逃してしまう。

やはり自分は凡人なのだろう。

 

-貴方には世界樹の加護を授けました。どうか私の願いを聞き届けてください-

 

その言葉に漸くタケルは己を取り戻した。

 

「え…、ちょ、ちょっと待って!いきなり言われても!」

 

-本当に申し訳ありません。貴方をこんなことに巻き込んでしまって-

 

世界樹の枝が寂しそうに揺れた。

 

-せめて貴方の身を守れるように-

 

一瞬、美しい少女の姿が見えた。

この少女こそが精霊ルビスなのだろう。

少女は神々しくも儚い光を指先から放つ。

優しい光がタケルへと吸い込まれていき…。

 

-貴女を守るにはこの方法しかありません。これからこの場での記憶を封印します-

 

「ふ、封印?忘れるってことか…?な、なんでっ?」

 

-恐れることはありません。いずれ記憶は戻ります-

 

「戻る…?どうやって」

 

ルビスは寂しそうに笑う。

 

-貴方が世界樹の葉の力を必要とした時、私のことを思い出すでしょう-

 

「それって、誰かが死ぬって事か?そんなことっ!」

 

誰が死ぬというのか?

タケルの脳裏に自分に良くしてくれた村の人々の顔が浮かんだ。

そして直ぐに被りを振った。

 

「そ、そんなっ!」

 

-忘れないでください。私は常に貴方を見守っていることを-

 

そこでルビスの声は聞こえなくなった。

タケルが何度呼びかけても返事は帰ってこない。

そしてタケルは何時の間にか地面に立っており、世界樹もその姿を消していたのだった。

そして次第に意識が遠のいていった。

 

 

再び目を覚ますと、タケルは森の入口で倒れていた。

そして何故か、これいじょう森に踏み入る気を無くしたタケルは村へと引き返したのだった。その手に世界樹の葉を持って…。

 

 

 

 

「そうか…、この馬鹿みたいに高い魔法力って」

 

世界樹と精霊ルビスの加護だったんだろうな…。

タケルはエイミの無事を喜び合うダイ達を眺めながら深い溜息を付くのだった。

 

「ルビス様…、記憶を取り戻したのはいいけど、オレ、肝心な所おもいっきり聞き逃してるから。何を言ってたのかさっぱりだから」

 

ルビスから貰った能力を商人として金稼ぎに使うほど小市民な自分である。

平凡な人間である。元手ゼロで大儲けだと喜んでいた普通に欲の強い人間である。

 

「なんでオレなんだろうな…けど」

 

きっと自分は少しは変わることが出来たのだろう。

ダイ達を見ながら思う。

精霊ルビスは自分がこうなることを見越していたのだと信じたい。

今はダイ達を助けて少しだけ良いハッピーエンドを目指すことに全力を注ごう。

タケルはゆっくりと世界樹の葉を手放すと、葉は風に抱かれて空へと消えていった。

 

「…そういえばオレ、前に一度、売ろうとしたんだっけ?売れなくてよかった…」

 

 

 

後にタケルは知ることになる。

じぶんの錬金術の能力の本来の意味。

そしてタケルのこの世界での本当の役割の事を。

そしてそれが世界全体を巻き込むほどの重大な事をタケルは知る由もなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く?

 

 

 

レベル26

 

さいだいHP:155

さいだいMP:604

 

ちから:69

すばやさ:173

たいりょく:78

かしこさ:302

うんのよさ:256

 

攻撃力:209

防御力:115

 

どうぐ

E:超・グリンガムの鞭

E:ビロードマント

E:幸せの帽子

E:氷の盾

E:スーパーリング

E:星降る腕輪

 

どうぐ(チート道具袋ではない手持ちの)

 

エルフの飲み薬

エルフの飲み薬

エルフの飲み薬

超万能薬

超万能薬

世界樹のしずく

賢者の石

魔封じの杖

 

 

 

呪文・特技

 

錬金釜 採取 大声 口笛 

寝る 忍び足 穴掘り 大防御

連続魔法 思い出す もっと思い出す

 

 

ホイミ ベホイミ 

キアリー キアリク シャナク

メラ メラミ メラゾーマ

ギラ ベギラマ 

イオ イオラ

ヒャド ヒャダルコ ヒャダイン

バギ バギマ

ドラゴラム

ニフラム マホカトール

バイキルト スカラ スクルト 

ピオラ ピオリム 

ルカニ ルカナン

ラリホー

フバーハ

ラナリオン

トラマナ レミーラ 

インパス アバカム 

ルーラ トベルーラ リリルーラ

レムオル

 

※世界樹の葉使用により消滅。

 




タケルの魔法力は世界樹の加護。
魔法の才能は実はルビスの加護です。

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