ダイの大冒険でよろず屋を営んでいます   作:トッシー

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戦いが始まります。
キルバーン登場はもう少し待って下さい。


本日の目玉商品『魔物の餌』

その日の天気は快晴。

ぽかぽかとした日差しが心地よく眠気を誘う。

ベンガーナの街を大きく囲む城壁と対魔物用の大砲。

魔王軍の侵攻を何度も撃退した城塞だ。

ここ暫くは魔物の襲撃は鳴りを潜め、平和が続いていた。

兵士達も気が緩み、大きく欠伸をかみ殺している。

 

「ふああああ~~っ、かったりぃ…」

 

大きく伸びをして息を吸い込む。

生温い潮風に思わず気分が悪くなる。

 

「あん?」

 

「どうした?」

 

視線の先に見えるのは怪しい暗雲だ。

それは次第に広がっていくように見える。

 

「嫌な天気だな。さっきまであんなに晴れていたのに」

 

「コイツは一雨来そうだな」

 

その時だった。

カッっと黒雲が光り、凄まじい早さで閃光が飛来した。

 

「ぎゃっ!!」

 

光線は城壁に立つ兵士の身体を貫く。

同時にその身体は炎上して崩れ落ちた。

 

「な、なんだぁっ!!?落雷かっ!?」

 

「だ、大丈夫かっ!?」

 

光線によって倒れた男は既に手遅れだ。

 

「ひでえ…、何だってんだ…っ!」

 

「お、おい…なんかヤバイぞ」

 

「うわああああああっ!!!」

 

光線が暗雲から次々と飛来してくる。

兵士達は城壁の影に身を隠してやり過ごす。

足元が強い熱線によって焦げ跡を穿つ。

 

「こ、こいつは…」

 

その『光線』は落雷などではない。

閃熱呪文ギラだ。そしてこんな場所で攻撃呪文を唱えるなど敵以外にあり得ない。

気づいた時にはもう遅かった。

黒雲は稲光を発しながら分裂していく。

それは雲の様な姿の怪物だった。

 

「ギ、ギズモだっ!!怪物の…、魔王軍の襲撃だっ!!!」

 

その叫びと同時に海面が盛り上がる。

 

「気をつけろ!海にも何かいるぞっ!!」

 

「ひ、ひぃっ!!?」

 

勢い良く姿を表したのはドラゴンだった。

しかし唯のドラゴンではなかった。

兵士達が見たのは、知識の中にあるドラゴン達とは何もかもが違っていた。

異様な雰囲気。変色し今にも剥がれ落ちそうな鱗や剥がれて落ちた肉から除く肋骨。

鼻を突く腐敗臭。そして意思の感じない光を失った眼。

 

「コイツは…ゾンビ?」

 

「うふふ…、その通りだよ…人間諸君」

 

「だいせいか~いっ!!」

 

再び海面が盛り上がり次々と竜達がその姿を露わにしていく。

 

「この前の戦いで死んだ竜の死骸…、まさかこんな使い道があるなんてね~、流石キルバーンえらいっ!凄くえらいっ!!」

 

小悪魔ピロロが嬉しそうにキルバーンを褒め称える。

 

「ふふふ、そう褒めないでくれ ピロロ。伊達にボクも死神を名乗ってないさ。それに勿体無いじゃないか。折角の竜の死骸、リサイクルしないと勿体無いだろ?」

 

以前の戦い。

それは竜騎将バランとロン・ベルクとの戦いにおいて築かれた竜の屍の山であった。

 

「ふふふ、ボクのドラゴンゾンビを相手に何処まで奮闘できるのか…せいぜい頑張ってくれたまえ」

 

キルバーンが言葉を切ると同時にドラゴンゾンビの群れは、その巨体を乗り出す。

そして城壁に向かって突撃した。

 

「うわああああああああっ!!!」

 

轟音と共に城壁の守りは容易く突破された。

 

「う、撃てっ!撃てぇっ!!」

 

兵士達は必死に抵抗を試みた。

剣で槍で、大砲による砲撃で襲い来る怪物達と戦う。

しかし敵は痛みも恐怖心も感じない生ける屍。

それも最強の怪物である竜種なのだ。

ドラゴンゾンビの群れは他の怪物達を引き連れて構わず進む。

今、ドラゴンゾンビ達の侵攻が開始された。

 

 

 

一方その頃、タケル達は…。

 

「18500ゴールド!」

「18800っ!!」

「わしは19000ゴールドッ!!!」

 

ドラゴンキラーを巡ってのオークションの真っ最中だった。

値段は釣り上がり遂に19000ゴールドまで上った。

もしもこれ以上の値段が付かなければ落札されてしまうだろう。

 

 

オレは考える。

果たしてこれ以上の大枚を出してまでドラゴンキラーは必要か否か。

間違いなく否だ。

しかし以前持っていたドラゴンスレイヤーは実は既に売ってしまっている。

それ以上の武具は多く持っているが…。

 

「う、売れちまう…」

 

ここで悪い癖が出てしまう。

コレクター癖という名の悪癖だ。

例え必要のないものでも珍しいものは欲しい。

一つは持っておきたい。

ゲームとしてドラクエをプレイしていた時からの悪癖だった。

実際に数多くのアイテムをコレクションするなど旅する身では不可能だ。

しかしオレにはそれを可能にする手段がある。

オレは『幾らでも』物を持つことが出来るのだ。

オレはライバルである19000ゴールドを提示した男の顔色を見る。

胸に手を当てて緊張した面持ちでドラゴンキラーを睨めつけている。

その表情に確信した。この人はこれ以上値段を上げることは出来ない。

 

「25000ゴールド!!」

 

オレは立ち上がって宣言する。

視線が集中する。沈黙、そしてゴクリと誰かが息を呑む。

 

「に………、に、25000ゴールド出ましたっ!!!25000ゴールドッ!!!」

 

「ま、マジかよ…払えませんじゃ済まねぇぞ」

 

「大丈夫だって」

 

「さぁ!他にはっ!?他にはいらっしゃいませんか!?」

 

かなり痛い出費だが後悔はない。

ここで逃すと次は何時手に入るかわからないからだ。

これ以上ゴールドを出す者は居ないようだ。

ここでドラゴンキラーの落札が決定した。

 

「ドラゴンキラー!25000ゴールドでの落札が決定いたしました!落札したのは此方のタケルさんでした!どうもありがとうございますっ!!」

 

周囲から感嘆の声が流れた。

オレは係りの者に25000ゴールドを支払うとドラゴンキラーを受け取った。

そして自慢するように高々と掲げてみせる。

 

「やったなタケル!」

 

「でも良いのかな?25000ゴールドも…」

 

「けど、あんな奴らに取られるよりは遥かにマシだろ?」

 

「確かに…」

 

「ダイ、楽しみにしてろよ。こいつを材料にもっと良いもの作ってやるからな」

 

オレはドラゴンキラーを『道具袋』に入れた。

その時だった。

この百貨店全体が揺れ始め、次第にグラグラと強く揺れ始めた。

 

「じ、地震…っ!!?」

 

「いや違う…コイツは…」

 

「きゃああああっ!!!ば、化け物っ!!」

 

遂に来たか超竜軍団。

オレは悲鳴が聞こえた方を辿って窓の外を見た。

 

「な、なんだと…?」

 

オレは自分の目を疑った。

ドラゴン…、ドラゴンの群れには違いない。

しかしオレの識る光景とは根本的に異なっていた。

ゲームとは違う現実の光景。

ドラゴンゾンビ。

画面越しだと骨だけの存在で登場するが…。

あれはモノホンのゾンビだ。

 

「…最悪だ」

 

ドラゴンゾンビの中にはヒドラかヤマタノオロチか分からないが、八つの首のもいるのだ。

そんな奴がゾンビとして向かってきている。

異様で不気味な、そしてドラゴン特有の圧倒的な存在感。

生物的な嫌悪感が噴き出してくる。

よく見ればドラゴン以外の魔物の姿も見られる。

キズモにフロストギズモ。メドーサボールなど。

明らかに超竜軍団ではなかった。どういうことだ?

考えても分からない。

自分は、ここまで自体を変えるような行動は取らなかった筈だ。

それとも…。

 

「知らず知らずのうちに、オレの行動ってやつはこんな事態を引き起こしてたっていうのかっ!?冗談じゃねぇぞ」

 

現実から目を背けたくなる。

これはもしかしてオレが招いた事態なのかもしれない。

ドラゴンゾンビは次々と逃げ惑う人々を襲い、街を蹂躙していく。

ドラゴンゾンビの眼から逃れた人達も他の魔物の犠牲となっていく。

 

「くそったれ!」

 

この調子だと死神キルバーンも現れるかどうか分からない。

どうすればいいんだ?

 

「戦いましょう」

 

オレが悩んでいると、凛とした声が響いた。

レオナ姫だ。王者の風格を持った少女が強い眼差しでドラゴンゾンビを睨みつける。

ダイもポップもそれに同意して戦う意志を見せる。

さすがアバンの使徒だ。

オレも悩んでいる暇があるなら行動するべきだろう。

 

 

それに、こうなった以上責任は絶対に取らないと。

オレは『道具袋』から剣を一振り取り出した。

それをダイに放り投げる。

 

「ダイ!」

 

「これは…?」

 

ダイの手には十字架を模した両手剣が握られていた。

 

「そいつは『ゾンビキラー』だ。奴らはドラゴンだがゾンビでもある。そいつなら有利に戦えるはずだ」

 

ダイはゾンビキラーを鞘から抜くと、吸い込まれそうな刀身に溜息を付いた。

 

「凄いや…タケル、ありがとう!」

 

実際に単純な攻撃力ならドラゴンキラーを上回る剣だ。

原作のようにいきなり折れたりしないだろう。

 

「よし!じゃあ行くか」

 

「おう!あのドラゴンゾンビの群れは俺がやる!ダイはあのデカイのを頼むぜ!」

 

ポップの視線の先には暴れまわるオロチゾンビ。

ダイはオロチゾンビを一睨みすると、ガチャガチャと体を引きずりながら走っていった。

 

「タケル、悪ぃが付き合ってくれ!オレだけだとドラゴンゾンビだけで他には手が回らねぇ…おめえは」

 

「他の怪物の相手だろ?わかってるって!」

 

ゾンビならともかく通常の魔物なら、アレが役に立つはずだ。

 

「姫さんは逃げ遅れた人達の避難を頼む!」

 

「分かったわ!気をつけてね!」

 

オレとポップも飛翔呪文トベルーラで窓から飛び出した。

 

 

 

ポップはドラゴンゾンビの群れ、オレはメドーサボールやギズモを標的に空を舞う。

数多の眼を持つメドーサボールがオレたちを補足する。

ギズモの群れが閃熱呪文ギラを、フロストギズモが凍える吹雪を吐き出してくる。

 

「じょ、冗談じゃねえ…っ!!」

 

一匹、一匹は大した事のない敵だが群れをなしての一斉攻撃をまともに受ければ一溜まりもない。

それにあの数の怪物達を相手にするには手持ちの攻撃魔法だとキリがない。

半端な攻撃だと間違いなく反撃を受けて殺されてしまうだろう。

オレは攻撃の届かない上空に逃れながら魔力を集中させる。

 

この世界において魔法の威力は集中力と魔法力、即ちMPに依存する。

未習得の呪文も実力が足りていれば開眼できる可能性もある。

ハドラーとの戦いにおいてポップがベギラマを開眼したように。

オレの魔法力は最終決戦のポップよりも遥かに上だった筈。

なのに呪文の威力が一定なのはおれの考え方というか意識がゲーム知識に沿うところが大きい。

『メラのダメージは約10ポイント』だという感じに。

この世界はゲームなんかじゃないというのに。

こんな当たり前の事でもオレは…。

 

「けど…、だったら信じて、集中して試すしかねえよな…っ!」

 

オレは意を決すると。身を翻して怪物の群れに突っ込む。

同時に先程、手に入れた『魔物のエサ』を投げつける。

 

「やった!」

 

流石に全ての怪物達は釣れなかったが、半分以上は我先にと魔物のエサに向かっていく。

魔物の群れは押し合いへし合いと互いに足を引っ張り合っている。

それでも何匹かは惑わされずに此方を攻撃しようとしている。

もうすぐ互いの射程距離だ。

これからの試みに失敗すればオレは怪物の群れの反撃によって死ぬかもしれない。

けど、このまま何もしなければオレは自分自身を一生誇れないだろう。

 

「アバンの使徒って訳じゃないけど…オレだってっ!!」

 

オレは自分の力量以上の未習得の呪文を構成する。

イメージするのは常に最強の自分。本当の意味で信じて集中する。

この空において相手に有効な攻撃呪文。

オレは腕を交差させて叫んだ。

 

「バ、ギ……、クロオオオオオオオォスッ!!!!!」

 

十字に交差する風刃が放たれる。

それは怪物の群れの先頭に着弾し突風と竜巻を巻き起こした。

 

―ビュオオオオオオオオォッ!!!!!

 

極大真空呪文バギクロス。

その風の猛威は敵の呪文攻撃や息吹攻撃をも巻き込みながら敵を蹂躙した。

 

「これが俺の力…っ?」

 

一瞬、脳裏に何かしらの光景が浮かぶ。

力強い生命に満ち溢れた芽が芽吹く。そんな光景だった。

 

「い、いまのは…、世界樹…?」

 

オレは頭を振る。

今はそんな場合じゃなかった。

 

「ポップは!?」

 

目を向けるとポップは重圧呪文ベタンでドラゴンゾンビの群れを押しつぶしていた。

あの威力は間違いなくオレのバギクロスと同等の威力だ。

流石はマトリフのオリジナル呪文だ。

それを習得したポップも半端ねえ。

 

 

しかし今のポップには、まだ早い呪文だったようだ。

一気に魔法力を使い切ったポップは飛翔呪文さえ維持できずに地面に落ちた。

 

「ポップ!大丈夫か!?」

 

「あ、ああ…、タケル…か。どうだ?流石は師匠直伝の大魔法だ…けど一気に力を使い切ったみたいだ」

 

「ポップ、コイツを…」

 

「魔法の聖水か…ありがてえっ!」

 

「いやコイツはエルフののみぐすりだ」

 

ポップはオレが渡したエルフの飲み薬を一気に飲むと人心地ついた。

 

「ふぅ、次はダイ達の方を…」

 

その時だった。

ポップの呪文によって潰されたかに思えたドラゴンゾンビ達が起き上がった。

自身を下敷きにしていた大岩を跳ね飛ばして不気味に唸る。

しかもその数は三頭。二頭しか仕留められなかった様だ。

 

「ま、まじ?」

 

魔法力を全快させたとはいえ、この状況。

ドラゴンゾンビは直ぐに目の前だ。

ドラゴンゾンビは大きく行きを吸い込むと氷の息吹を吐き出した。

 

「やべえ!」

 

オレは咄嗟にベギラマで相殺を試みる。

しかし敵の数は三頭だ。のこりのドラゴンゾンビはジリジリと距離を詰めてくる。

ポップもベギラマを放って残りの敵を牽制するが、手数が足りない上にベギラマの効果も薄く見える。

オレもポップも身動きがとれない。

 

「やべえ…積んだか?」

 

「くそったれ…」

 

そして三頭目のドラゴンゾンビがオレたちに向かって突っ込んできた。

 

「やべえ!逃げろ!タケルッ!!」

 

ポップの声も虚しく、鈍い衝撃と共にオレは意識を失った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く?

 

 

 

レベル28

 

さいだいHP:165

さいだいMP:624

 

ちから:71

すばやさ:177

たいりょく:82

かしこさ:308

うんのよさ:256

 

攻撃力:247

防御力:116

 

どうぐ

E:地獄の魔槍

E:ビロードマント

E:幸せの帽子

E:氷の盾

E:スーパーリング

E:星降る腕輪

 

どうぐ(チート道具袋ではない手持ちの)

 

エルフの飲み薬

エルフの飲み薬

超万能薬

超万能薬

世界樹のしずく

賢者の石

オーロラの杖

 

 

 

呪文・特技

 

錬金釜 採取 大声 口笛 

寝る 忍び足 穴掘り 大防御

連続魔法 雄叫び 思い出す もっと思い出す

 

 

ホイミ ベホイミ 

キアリー キアリク シャナク

メラ メラミ メラゾーマ

ギラ ベギラマ 

イオ イオラ

ヒャド ヒャダルコ ヒャダイン

バギ バギマ バギクロス

ドラゴラム

ニフラム マホカトール

バイキルト スカラ スクルト 

ピオラ ピオリム 

ルカニ ルカナン

ラリホー ラリホーマ

フバーハ

ラナリオン

トラマナ レミーラ 

インパス アバカム 

ルーラ トベルーラ リリルーラ

レムオル 

 

 

 

※今回はバギクロスを習得しました。

たまにはオリ主らしくしてもらいました。

 




このまま更新していっても良いのか迷います。

タケルはロン・ベルクに王者の剣を渡したことが原因で、この事態になったことに全く気づいてないです。
自分の所為でロンさんがバランに喧嘩を売ることになるとは、お釈迦様でも思いませんねw

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