ダイの大冒険でよろず屋を営んでいます   作:トッシー

39 / 47
今年最後になりそうです。
来年も頑張りたいです。


本日の目玉商品『黒の核』

「がぁっ!!?」

 

禍々しい漆黒の光線が黒い影を貫く。

 

「…ちぃ」

 

「キ、キルバーンッ!?」

 

抜かった。

俺の視線の先ではキルバーンが小悪魔ピロロを庇うように立ち塞がっていた。

それも当然だ。なんせ本体だ。

キルバーンは人形であり、切られても殴られても痛くも痒くもない。

ピロロはキルバーン人形を操り自分の盾としたのだった。

咄嗟に自分を庇うように見せかけて。

 

「大丈夫かい?ピロロ?それにしても酷いね。僕でなく弱いピロロを狙うなんて、勇者の仲間とは思えないよ」

 

「そうだ!そうだ!」

 

「弱いやつ、弱点から狙うのは戦闘の基本だろう?」

 

「…ほう」

 

キルバーンの仮面の奥の目が光る。

ピロロ、キルバーン本人は表情こそ笑顔だったが内心穏やかではなかった。

なにせ殺されかけたのだ。先程の魔槍の光。

それが眼前に迫った時、死を幻視してしまう程に。

巫山戯るな!僕は死を超越した死の神だ!

その僕が死にかけたんだぞっ!

 

「確かに君の言うとおりだ。ならばその言葉、君自身にも当て嵌まる事は理解できるかな?」

 

キルバーンは何時の間にか強大な鎌をその手に出現させていた。

 

「君の能力、少々厄介だ。ここで消しておくのも悪くない…、何ボクの専門は暗殺でね。気づいた時には………フフフッ」

 

死神キルバーンは不気味に笑う。

 

「そんなこと…、させるもんか!」

 

ダイとポップがタケルを庇うように前に出て各々の武器を構える。

タケルは少し嬉しそうに笑うと、視線を外してニヤリと笑った。

どうやら準備が整ったようだ。

 

「……っ、いや、やっぱり死ぬのはお前だよ……はぐりん!!!」

 

トスン!

 

そんな気の抜けた、命を奪うには余りにも弱々しい音だった。

 

「……へ?」

 

小悪魔ピロロは訳が分からなかった。

体の中心が熱い。焼けた鉄を差し込まれたように。

振り返ると、スライムの顔のアップが見える。灰色の見慣れないスライム。

その口には毒針が咥えられており、その先端は…どうやら自分の身体に…。

 

「…あ?あああああああああっ!!?」

 

理解した。刺されているのだ。

逃れられぬ死の針が自身の心臓に、深々と。

理解した時にはもう遅い。

必死に身を捩りキルバーン人形に命令を送る。

しかし人形は動かない。

タケルだ。タケルは取り出した『まだら蜘蛛の糸』を人形に投げつけて拘束する。

普段なら、そんな物はキルバーンには通じない。

しかし人形師であるキルバーン本人は最早死ぬ間際、通常の能力など発揮できるはずもなかった。

 

「…っっくっそおおおおおおおおおっ!!!!!」

 

こんな筈ではなかった。

冥竜王ヴェルザーの側近、死神キルバーンは真の任務である大魔王バーンの暗殺を果たすこと無く最後を迎えたのであった。

 

「……」

 

タケルは続けてキルバーンの胴体を魔槍で貫く。

人形師を失った人形は無防備にタケルの攻撃を受けて串刺しになった。

 

「な、なんだぁ!?呆気ねえな…」

 

ピロロに続いてキルバーンまでも。

その様子にポップが気の抜けた声を上げた。

本来なら攻撃する必要はないのだが、タケルがキルバーンが人形だと知っている事実は矛盾が生まれる。

そこで一芝居打つ事にしたのだ。

 

 

「そ、そうだな…まさかコイツ、本当に使い魔ってやつじゃ?」

 

「いやそれは、そのスライムが刺した奴だろ?」

 

「まだ油断するな!このぐらいでやられるなんて」

 

ダイは構えを解かずにキルバーンを睨む。

 

「……いや、ちょっと待ってくれ…コイツは」

 

「どうしたんだよ?」

 

「人形だ…こいつ、生き物じゃない」

 

「な、何だってっ!?」

 

「見ろよ」

 

タケルはキルバーンから槍を引き抜くと、穴の開いた部分を見せる。

レオナ姫が気づいたように呟いた。

 

「絡繰仕掛け…?それに…血じゃないわねこれ」

 

傷口から流れる液体はふつふつと茹だっており地面に滴り落ちる。

ジュウジュウと石畳の床が焼けていく。

魔界のマグマ。強い酸性を持った猛毒だ。

 

「触らない方がいい…かなりの熱気…火傷じゃ済まないかも…危険だ」

 

タケルは危険なものを処分、または遠ざける流れでごく自然にキルバーン人形を仕舞う。

 

「消えた…、またお前の袋に?」

 

「ああ…、この人形、多分さっきの小悪魔が操ってたんだろうな…偶然とはいえ先にアイツを狙ったのは正解だったよ」

 

「…だな。人形を攻撃しても意味ねえもんな」

 

ポップはしみじみと頷いた。

そして仲間達は戦闘が終わり漸く一息ついた。

 

 

タケルは内心、飛び上がりそうなほど喜んでいた。

これで目的のものは手に入った。

上手くやればバーンをも倒す事が出来るかもしれない。

少なくとも真・大魔王ではない老人の姿のバーンなら確実に…。

自分が関わる事によって生じてしまった歪み。

責任を感じていた。もしもこのままダイ達の成長を阻害し、最終決戦前に負けるような事になれば死んでも死にきれない。

なら責任を取るしか無い。

足りない実力は道具や武具で補うしか無いのだ。

必要なら『ドーピング』もしなければならないかもしれない。

 

「けど……取りあえずは上手くいった…」

 

タケルの視線の先ではダイ達が占い師の少女と話をしていた。

恐らく竜の騎士の話を聞いているのだろう。

だとすると、次の目的地は『テラン』という事になるだろう。

 

「気が重い」

 

竜騎将バランとその配下である竜騎衆。

今までで最強の敵だ。

自分の持つチート道具が何処まで通用するか。

そもそも戦闘中に簡単に使う事が出来るのか…?

タケルの最大の武器はアイテムだ。

敵もバカではない。タケルに道具を使わせないように妨害だってするだろう。

タケルは逃げ出したい気持ちを必死で押し殺しながら破壊された街を眺めていた。

 

(街の復興の手伝いを口実に残れないかな)

 

冗談と本音が半々。

こんな時にも少しだけヘタレるタケルなのであった。

 

(何にせよ『黒の核』は手に入った…後は…)

 

タケルは東の空を見つめる。

その遥か先には自然を信仰する国『テラン』だ。

タケルの記憶通りに進むなら間違いなく激戦になるだろう。

 

(チート性能の武具、解禁しないといけないかもな…後、出来そうな呪文も一通り試しておこう…)

 

自重していて勝てる相手ではない。

タケルは密かに心の中で決意を固めるのであった。

 

 

 

 

一方その頃、かつてのアルキード王国。

その近隣に位置する森の奥深く。

清涼なる水が湧き出る美しい泉があった。

そこでは怪物も、動物も関係なく己の疲れた身体を安める為に訪れる。

アモールの泉。

傷を癒やす聖なる水を何時の頃からか人はそう呼ぶようになった。

その泉の中心、そこにはベッドに横たわるように揺蕩う人影があった。

竜騎将バランだ。

魔界の剣豪ロン・ベルクとの戦いに置いて傷ついた身体を癒やす為に、この泉に訪れていたのだ。

そして此処はかつて愛した女性と出会った思い出の場所。

目を閉じると瞼の裏に映るのは、優しい妻の笑顔だった。

だからこそ…。

次の瞬間、美しい笑顔が紅蓮の炎によって黒く塗りつぶされていった。

そして夢から覚醒める。

 

「私はニンゲンを許さんっ!!!」

 

バランは憎々しげに目を開いて怨嗟の言葉を吐き出した。

体の節々が痛む。バランは治癒呪文を唱えようとして止める。

あの男との戦いで酷使したのは肉体だけではない。

精神も限界まで消耗していたのだ。

バランは瞑想、自己診断する。

その身体が完全に癒えるまで僅か数日。

 

「バラン様」

 

「ラーハルトか…」

 

現れたのは肌の碧い青年。

鋭い目つきに尖った耳、魔族の戦士だった。

 

「はい、お休みのところ申し訳ありません」

 

「なんだ?お前には私の名代としての任務を与えていたはずだが?」

 

青年は負傷したバランに代わり軍団長代理として会議に参加していたのだった。

 

「はい。会議は滞り無く…その事でバラン様に至急お耳に入れておきたいことが」

 

「なんだ?」

 

「ディーノ様が…ご子息が生きて、おられました」

 

「……っ」

 

バランの身体が硬直し水面下に沈む。

今、何と…。バランは青年の言葉の意味を繰り返す。

そして直ぐに立ち上がった。

 

「何だとっ!?」

 

「お喜び下さい!ディーノ様は生きておいでです」

 

「ほ、本当なのだな」

 

「はい」

 

「詳しく聞かせろ!ラーハルト!」

 

十一年前に生き別れた我が子の無事。

その喜びにバランは体の痛みも忘れて泉から上がろうとする。

ラーハルトは、それを宥めながらも魔王軍の本拠地『鬼眼城』での経緯を話し始めるのだった。

 

 

 

竜騎衆の一人、陸戦騎ラーハルト。

彼も噂には聞いていた。

勇者ダイ達の快進撃を。次々と魔王軍の軍団長を打ち破っていく武勇伝。

しかも勇者ダイはまだ年端もいかない子供だというのだ。

敵ながら尊敬できる。

 

会議に出席したラーハルトが目にしたもの、それは見苦しい権力争いだった。

勇者ダイ討伐に失敗したハドラー。

そして責任の追求から逃れようと躍起になる浅ましい姿。

反吐が出そうだった。

しかし疑問に感じるのは勇者ダイの力の秘密だった。

いくら勇者とはいえ、未だ少年ダイにそこまでの力が?

そこで悪魔の目玉が記録した戦闘の記録が流れた。

 

「……あれは『竜の紋章』っ!?」

 

ラーハルトは見た。

ダイの額に輝く『竜の紋章』を!!

嘗て聞いたことがあった。

父のように尊敬する自身が命を捧げた将から。

十一年前に生き別れた子ディーノの話を。

ラーハルトは勇者ダイの戦う姿に引きこまれていく。

その闘争心、戦闘力はバランの姿と重なる。

 

 

 

「では…その勇者ダイが…?」

 

「はい。間違いありません。歳の頃も…それに、何よりも」

 

「竜の紋章か…」

 

「はい」

 

「ラーハルト」

 

「分かっております。ご命令を…」

 

「この通り私は未だ動けん。ラーハルトよ竜騎衆を率いて我が子、ディーノを奪還してくるのだ!!」

 

「御意」

 

ラーハルトの後ろ、木陰から獣人の戦士たちが姿を表した。

残忍そうな笑みを浮かべた鳥の獣人と逞しいトドの獣人だ。

バランは部下の勇姿を満足そうに見渡す。

 

「ラーハルト」

 

「はっ」

 

「ボラホーン!」

 

「はい」

 

「ガルダンディー!」

 

「ヒャッハァッ!!」

 

「竜騎衆、出撃せよっ!!」

 

「「「ははあっ!!」」」

 

ラーハルト達は一礼するとその場から姿を消した。

遂に最強の竜使い達が動き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く?

 

 

レベル28

 

さいだいHP:165

さいだいMP:624

 

ちから:71

すばやさ:177

たいりょく:82

かしこさ:308

うんのよさ:256

 

攻撃力:247

防御力:116

 

どうぐ

E:地獄の魔槍

E:ビロードマント

E:幸せの帽子

E:氷の盾

E:スーパーリング

E:星降る腕輪

 

どうぐ(チート道具袋ではない手持ちの)

 

エルフの飲み薬

エルフの飲み薬

超万能薬

超万能薬

世界樹のしずく

賢者の石

オーロラの杖

 

 

 

呪文・特技

 

錬金釜 採取 大声 口笛 

寝る 忍び足 穴掘り 大防御

連続魔法 雄叫び 思い出す もっと思い出す

 

 

ホイミ ベホイミ ベホマ

キアリー キアリク シャナク

メラ メラミ メラゾーマ

ギラ ベギラマ 

イオ イオラ

ヒャド ヒャダルコ ヒャダイン

バギ バギマ バギクロス

ドラゴラム

ニフラム マホカトール

バイキルト バイシオン 

スカラ スクルト 

ピオラ ピオリム 

ルカニ ルカナン

ラリホー ラリホーマ

バーハ フバーハ

ラナリオン

トラマナ レミーラ 

インパス アバカム 

ルーラ トベルーラ リリルーラ

レムオル 

 

今の魔法力で出来そうな呪文追加。




少し短いです。
そして難易度低下?
まずは竜騎衆が相手になりそうです。

ところでイマイチ分からないのですが…。
ボラホーンってトドですよね?オットセイ?セイウチ?
牙があるのでアザラシとは違いますよね?

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。