ダイの大冒険でよろず屋を営んでいます   作:トッシー

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本日の目玉商品『星降る腕輪』

鬱蒼とした森をひたすら歩く。

村長に言われた通り、ロモスの方角を目指して歩く事十数分。

水が流れる音が聞こえ始めた。

川を発見した俺は、川にそって南に向かう。

 

「ギャアアアア!!!」

 

いきなりの事だった。

けたたましい叫びが響き渡った。

俺は声の方へと走る。

 

「うわっ!」

 

俺は火達磨になって逃げていくリカントとすれ違う。

何が起こったんだ?

俺はリカントが来た方へと走った。

少し進むと男女の声が聞こえてきた。

何やら言い争っているみたいだ。

 

「こんな森なんてパパっと通り抜けてやるわい!」

 

「その程度の腕で?」

 

「なんだと!?」

 

電流が走ったように睨み合う男女とオロオロと見守る少年。

これが原作遭遇ってやつか。

 

「行こうぜ!ダイ!」

 

「ちょ、ちょっと!ポップゥ~~」

 

ポップはダイを引っ張って行ってしまった。

あ~あ、ロモスの方角はそっちじゃないって…。

おっと、ここで眺めていても話は進まない。

村長とミーナにも頼まれているし、とりあえず俺は声をかけることにした。

 

「ちょっといいか?」

 

「だれ!?」

 

「怪しいもんじゃないよ。えっと、もしかして君がマァムさん?」

 

「えぇ、どうして私の名前を?」

 

「ネイルの村の村長さんに頼まれてね。君を呼びに来たんだよ」

 

「え?で、でもミーナが…、女の子が一人で森に入ったの」

 

「大丈夫、ミーナちゃんは無事さ。今はお母さんと一緒にいるよ」

 

「ええっ!?」

 

「言いにくいんだけどさ。ミーナちゃんは森に入ってなかったんだ」

 

俺はマァムに事情を説明した。

マァムはミーナが一人で危険な森に入っていない事に安堵し、また母親が無事だったことも心から喜んだ。

マジで良い娘さんだ。眩しすぎる。

 

「ありがとう。ミーナの事もおばさんのことも…」

 

「べ、べつに良いよ」

 

「……あれ?」

 

「どうした?」

 

「これは…」

 

マァムの視線を追ってみると、丈夫そうな布袋が落ちていた。

 

「さっきの二人が落としたのかしら?」

 

「みたいだね。ここに置いておくのも何だし、取り敢えず持って行こうか?」

 

「そうね」

 

「改めて自己紹介するよ。俺はタケル、商人だよ」

 

「知っているみたいだけど、私はマァムよ。

 ミーナとおばさんの事、本当にありがとう」

 

「いいよ。それよりもあの勇者アバンの使徒なんだって?凄いカッコイイよな。オレ、憧れるよ」

 

いやマジで。

遠目から魔弾銃を撃つところ見てたけど、マジでカッコよかった!

本物はやっぱり違うわ。

 

「そ、そんな事ないわよ」

 

「いやいや、本当に凄いって!

 

オレなんて最低限の自衛能力しか身につけてないからさ」

 

「へぇ、でも一人でこの森を抜けてくるのは素直に凄いと思うわよ」

 

「はは、おっと!それよりも早くミーナちゃんを安心させてやらないと」

 

忘れるところだった。

マァムと会えてテンション上がりすぎだろオレ。

それに魔の森で立ち話は危険過ぎる。

マァムには何でもないけどオレに命の危険。

早く帰らないとヤバイ。

 

「そうね!急いで村に戻りましょう」

 

 

 

 

「あ、帰ってきた!マァムお姉ちゃーん!」

 

村に入ると、ミーナちゃんと村長さんが迎えてくれた。

どうやら入り口で待っていてくれたみたいだ。

それに村の人だろうか。

皆が入り口に集まってきた。

一人を心配して村人が全員やってくるなんて本当に良い村だな。

 

「ただいま、ミーナ」

 

「マァム。ご苦労じゃったな」

 

「結局無駄足でしたけどね」

 

「なに、無事で何よりじゃわい」

 

「俺からも礼を言うよ。娘のために有難う」

 

ミーナの父親だろうか。

中年の男性がマァムに頭を下げた。

 

「お礼なら私よりも、このタケルに言って上げて」

 

「ありがとう、妻の治療まで行なってもらって」

 

「いや、良いよ」

 

なんだかしんみりした空気になったな。

村長が申し訳なさそうに口を開いた。

 

「マァム…すまない。村には男手が少ない。お前には何時も危険な目に…」

 

「みんな城を守りに行ってるもの。仕方ないわ」

 

「ウム、国王に何かあってはお終いじゃからのぅ」

 

皆の表情は更に暗いものになる。

いくらアバンの使徒とはいえ、マァムの様な娘がたった一人で村を魔物から守っているのだ。村の人たちも心中穏やかじゃないだろう。

そんな村人たちに、マァムは励ますように明るく言った。

 

「みんな安心して。村は私が守るわ!」

 

漫画で見るのとは訳が違う。

この世界を一人で旅をしてきたから分かる。

魔物の脅威を。

その驚異からたった一人で守ろうと言うのだ。

すごい勇気だ。

それに比べてオレは…。

 

「大丈夫だよ。お姉ちゃんはモンスターみたいに強いんだ!」

 

「そうだね!大丈夫さ!」

 

「こら!だれが魔物ですって!」

 

「あははは!」

 

子供達の言葉にゲンコツで答えるマァム。

雰囲気は一気に明るくなり、村人たちに笑顔が戻った。

凄い、これがアバンの使徒か…。

 

「ねえ、お姉ちゃん。それ何?」

 

ミーナはマァムの持つ布袋を指さした。

 

「ええ、森で出会った妙な二人組が忘れていったのよ」

 

「開けてみようか?」

 

いたずら心と好奇心か。

子供が布袋の紐を解いて開ける。

すると、その隙間から黄金の光が放たれた。

 

ポン!

 

そんな音と共に飛び出してきたのは一匹のスライムだった。

 

 

「スライムだ!」

 

「離れて!」

 

魔物の出現。

マァムはこれまでの経験に基づき反射的に魔弾銃を抜いた。

金色のスライムはいきなり人間に囲まれて困惑している。

そしていきなりマァムに銃口を向けられ怯えた表情を見せた。

銃口とマァムの鋭い眼光、スライムは耐えられずに…。

 

「………ピ、ピェ~~~~ン!!!」

 

泣き出してしまった。

 

「駄目だよ。いじめちゃ…可哀想でしょ」

 

全くもってその通りである。

ミーナちゃんは正しい!

マァムはミーナに言われてバツが悪そうに銃をしまった。

 

 

 

 

一方その頃

 

魔の森の奥深くにある洞窟。

太陽の光を全く通さない最奥では一匹のリザードマンが寝息を立てていた。

ただ、普通のリザードマンとは大きさも威圧感も一線を画している。

 

「獣王クロコダインよ……、目覚めよクロコダイン」

 

低く威圧的な声がリザードマンに掛かる。

声に反応してリザードマンが目を開いた。

 

「誰だ?オレの眠りを妨げるのは…」

 

視線の先には何本もの触手を生やした目玉の怪物『悪魔の目玉』が洞窟の天井に張り付いていた。声は悪魔の目玉から発せられている。

 

「クロコダインよ」

 

悪魔の目玉の眼球から映しだされたのはクロコダインの上司。

魔軍司令ハドラーだった。

 

「これは魔軍司令殿!これは失礼をした!」

 

クロコダインは武人としての礼儀を取り姿勢を正した。

 

「どうしたというのだ?クロコダインよ。お前にはロモスの攻略を命じていた筈だが」

 

だというのに洞窟で眠っていた部下にハドラーは鋭い眼光を向けた。

クロコダインはその視線を受け流して頭を振った。鼻で笑う。

獣王である自分と人間と比べること自体が間違いだが、戦い甲斐の無い弱者を相手に全くその気に成れない。自分の配下の魔物たちだけで十分だ。

クロコダインの言い分、それは団長たる自分が出るまでもない。

配下の魔物たちに任せておけば後数日ほどでロモスを攻略できるとの事だ。

 

「相変わらずだな…。しかし今日はその事ではない。我ら魔王軍に楯突く者共が今、その森に迷い込んでおる。お前が始末するのだ。」

 

「なに?どんな奴だ!?」

 

悪魔の目玉が映し出しているモノが変わる。

映しだされたのは自分がよく知る場所、魔の森の風景。

そして森を歩く二人の少年。

少年の一人の方の顔が大きく映しだされた。

まだ十歳を過ぎたばかりに見えるあどけない表情の少年。

ハドラーは憎々しげに少年の顔を見ながらその名を告げた。

 

「こいつの名は……ダイ…ッ!」

 

クロコダインは顎が外れんばかりに大口を開けて固まった。

まさか軍団長たる自分に勅命が回ってきたと思えば、倒す相手は人間の少年だったのだ。この上司は何を考えているのか。

そう思うと呆れるのを通り越して笑えてくる。

 

「くくくく………」

 

笑いを堪えるが、それでも耐え切れず爆笑してしまう。

 

「何を笑う?」

 

「冗談は止めてくれ魔軍司令殿。獣王と呼ばれる俺に、ガキの相手をしろというのか?」

 

「侮るな!コイツは想像を絶する程の信じられんような底力を秘めておるのだ」

 

ハドラーは何かを思い出したように忌々しそうに拳を握りこんだ

 

「俺も手傷を負わされたのだっ…!このガキに…っ」

 

「な、何っ!?魔軍司令殿に傷を負わせただと!?」

 

クロコダインはハドラーの告白に驚愕した。

 

「そうだ!今の内に始末せねば必ず我等が最大の障害となるだろう……っ」

 

「くく……、面白いっ!」

 

クロコダインは口を吊り上げながら立ち上がった。

その表情は歓喜に震えている。

好戦的な笑を浮かべながら側にあった大斧を手に取った。

 

「ハドラー殿を傷つける程の小僧……ダイ…っ!是非戦ってみたいっ!」

 

その眼光は武人としての誇りに溢れていた。

クロコダインの表情にハドラーは確信した。

コイツならば間違いなくダイを葬ることが出来るだろうと。

 

「では任せたぞ……確実に葬れ!」

 

悪魔の目玉はその瞳を閉じた。

 

 

 

 

「ふふっ、かわいい」

 

ネイルの村にあるミーナの家。

先程の金色のスライムが机の上にいた。

ミーナはぷるぷると揺れるスライムと遊んでいた。

幻の珍獣ゴールデンメタルスライム。

知る人ぞ知るまさに生きた宝石。

それよりも…。

 

(神の涙か……)

 

原作知識。

オレはゴメちゃんの正体が『神の涙』だと言う事を知っている。

あらゆる願いが叶う願望機。

ゴメちゃんに願えば元に世界に帰れるかも知れない。

しかしオレは直ぐに頭を振った。

正直に言って、オレは元の世界にあまり未練はない。

高校生だったオレがこの世界にきてもう一年以上の時が経つ。

戻ったところでどうなるというのか?

学校は面倒臭いと感じていたし、卒業後の進路も全く見えてなかった。

しかしこの世界は居心地が良かった。

スキルの恩恵で商売は順調だったし、好きなドラクエ世界の武具や珍しい道具を手元においてある現実は本当に気分が良かった。

魔王軍によって平和が脅かされているが、いずれダイ達が世界を救ってくれる。

今の生活を捨てて元の世界に戻るのは抵抗感が生まれるのだ。

 

(やっぱり戻りたくないな……叔父さんには悪いけど)

 

現実世界の便利な文明の利器と様々な社会のしがらみ。

ドラクエ世界の自由な生活と魔物の脅威。

天秤にかけると矢張り自分に帰る選択はなかった。

それに自分には両親はいない。昔交通事故で亡くなっている。

世話になっている叔父も負担がなくなると思えば都合が良い。

 

(それに『神の涙』にちょっかい掛けて魔王に知られる訳にはいかない)

 

オレは思考を切り替えた。

マァムは壁にもたれ掛かってスライムを見ている。

無害とはいえ、魔物とミーナを一緒にするにはまだ心配なのだ。

 

「大丈夫かしら?」

 

「マァム、その二人組み、もしかしてロモスに行くって言ってなかった?」

 

「どうしてそれを?」

 

「いや、ネイルの村を素通りしたんだ。一番近い街はロモスだろ?」

 

「そうね……」

 

「で、どうするんだ?あの子、届けるのか?」

 

「そうね。今頃困っているかもしれないし…」

 

マァムはため息を付いて言った。

その時だった。

 

ドオオオオン!!!!!

 

大きな地響きが響き割った。

マァムは顔色を変えて外に飛び出した。

オレも後に続く。

外に出るとマァムは軽い身のこなしで屋根に飛び上がった。

 

「そんな…森が……」

 

マァムはその光景に息を呑んだ。

視線の先に広がる魔の森は朱く…。

轟々と燃え盛る魔の森。

これは只事じゃないだろう。

マァムは直ぐに家の中に戻ると、置いてあった武器を取った。

ハンマーロッド。

強い打撃力を持つが、その重量の為に鍛え上げた戦士にしか操れない武器だ。

 

「マァム、もしかして行くのか?」

 

「えぇ、これは只事じゃないわ。タケルはミーナとここに居て」

 

マァムはオレの返答を待たずに駆け出した。

不意にズボンをギュッと掴まれた。

 

「お兄ちゃん…」

 

ミーナは不安そうな表情をオレに向ける。

オレはマァムの後を追うつもりはない。

何故なら行く必要がないからだ。

俺が何もしなくても、ダイ達はマァムの助けで生き残る。

それにクロコダインなんて化物、俺が行っても意味が無いと思うのだ。

しかし…。

 

「後を追う気、無かったんだけどな~」

 

「え?」

 

俺はミーナの手を優しく取ると腰を下ろしてミーナと同じ高さで視線を合わせた。

この世界が原作通りに進むかどうかはまだ分からない。

正直怖い。でもそれ以上に興味がある。

今から急いで追えば間に合うかもしれない。

俺は道具袋から『星降る腕輪』を取り出した。

 

「ミーナちゃんは、家から出ちゃ駄目だよ」

 

オレは星降る腕輪を装備した。

 

「お兄ちゃん…」

 

「ちょっと行ってくるよ」

 

オレはマァムの向かった先、燃える森に向かって駈け出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

本日のステータス

 

レベル:12

 

さいだいHP:75

さいだいMP:536

 

ちから:32

すばやさ:80

たいりょく:38

かしこさ:265

うんのよさ:256

 

攻撃力:86

防御力:97

 

どうぐ

E:砂塵のヤリ

E:ビロードマント

E:力の盾・改

E:幸せの帽子

E:スーパーリング

E:星降る腕輪

E:魔法の弾×10

 

呪文・特技

 

錬金釜 採取 大声 口笛 

寝る 忍び足 穴掘り 大防御

 

ホイミ ベホイミ 

キアリー キアリク シャナク

メラ メラミ メラゾーマ

ギラ ベギラマ 

ヒャド ヒャダルコ

バギ バギマ

フバーハ

ラナリオン

トラマナ レミーラ

 




修正しました。

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