ファンタジーな世界をご当地ヒーローが救います。   作:yosshy3304

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第十二章 勝利と不安の伝説

 

「まぁ変身しようと関係ないわ。引きずり込めばいいだけですもの。」

 

 

 田鼈は突き付けられた指を見て余裕の笑みを浮かべる。田鼈の言う通り、海中に引きずり込まれれば、災害救助用のスーツを纏っていても、哲多の様に苦戦するだけであった。

 

 

「あら、やってみなければ判らないわよ。」

 

 だが空はそう言って自ら海中へと飛び込んだ。小さく音をたてるだけで水飛沫すら上げないのは小さい頃から続けていた水泳のお蔭だろう。

 

 

「あらあら、お馬鹿さんね。」

 

 

 田鼈は自身の得意とするフィールドに引きずり込む所か、自分から飛び込んで来た事に嘲笑う。海中という場所では哲多の、リュウレンレッドすら一方的に嫐る事ができる実力をフルに発揮できるからだ。

 

 空を、リュウレンブルーすらも同じ目に合わせようと意気揚々と海中を進んでいった。

 

 

「舐めないでよっ!!」

 

 

 海中で空は叫ぶ。空は海中で今までにない万能感を得ていた。魔力がスーツ内に溜り、空の肉体を強化しているのだ。

 

 空は元々水泳を長年やってきたお蔭で、魔力の肉体強化が泳ぐのに最適な形となって現れたからだ。

 

 

「な、なんでなの!?」

 

 

 田鼈が驚く。リュウレンレッドすら一方的に嫐ったその速度すら上回る速度で空が、リュウレンブルーは泳いでいる。

 

 足には陸上では無かったナノマシンの鰭が出来ているとは言え、海中に住む海竜すら追いつく事の出来る田鼈からすれば、唯の変わった精霊種に自身のもっとも得意とする戦場で負けるとは思いもしなかった。

 

 リュウレンブルーは田鼈の周りを泳ぎまわり、田鼈の振るわれた鎌を避けては、田鼈の動きを観察する。

 

 

「今だっ!!流激装備、シーランサー!!」

 

 

 空はバックルの摘みを左右に押し広げる。龍玉から光が溢れ、その光の中から柄が出てきた。空はその柄を握りしめ、光の中から引っ張り出した。

 

 リュウレンブルーの専用武器は水で出来た槍である。ただし、空が引っ張り出した槍に穂先は無く、長柄のみであった。

 

 瞬間、長柄の先に水が渦を巻きながら集まる。海中にあってもそれは、いや海中にあるからだろう、空気を含んだその海水は太陽光を反射してキラキラ輝く穂先へと変貌した。

 

 本来ならば、流石のナノマシンと言えど、水分を集めて穂先にする事等出来はしなかった。ナノマシンで出来た穂先が出現する筈であったそれは、魔力の影響で原作本来の形で現出したのだ。

 

 原作通りになるのであれば、シーランサーの穂先は空の思い通りの形となる。槍の様な真っ直ぐな一本の穂先。薙刀の様な形にする事も出来る。

 

 長柄の先、穂先の部分は三俣に分かれている。今回空が思い描いた形は海中である事もあり、銛だ。銛の形になったシーランサーを真っ直ぐに田鼈へと空は突き立てた。

 

 

「えー…いっ!!」

 

 

「グゥゥ…、うわっ!!」

 

 

 突き立てた穂先は田鼈の外殻を突き破る事は出来なかったが、田鼈を海面の方へと押し上げる。更に空は穂先を回転させながら田鼈へと放ち、田鼈を完全に空中へと押し上げてしまった。

 

 空中へと驚きの声と共に押し上げられた田鼈は、一度狼狽えはしたものの、体に傷はついておらず、冷静に羽を広げ空を飛んだ。

 

 

「私に楯突こう等、無駄なんだよ小娘っ!!」

 

 

「それは如何かな?」

 

 

「何っ!!」

 

 

 逆に海中から追い出された為だろう。空に汚い言葉を投げかける。しかし、田鼈の更に上から声がした。

 

 其処には魔力によって強化された脚力でもって跳び上がったリュウレンレッドがフレイムハンマーを振りかぶった状態で落下してきており、田鼈の直ぐ傍まで来ていた。驚く田鼈を無視して全力で打ち据える。

 

 強固な外殻を突き破るかの様な衝撃と共に、地面に向かって打ち出された田鼈。絹を引き裂いたかの様な甲高い悲鳴が一直線に地面に向かった。

 

 

「待っていたぞ、この時をっ!!」

 

 

「っ!!」

 

 

 田鼈が墜落した場所は砂浜であり、盛大に海水と砂が舞う中、リュウレングリーンの持つウッドスナイパーの銃口が田鼈を狙っていた。

 

 田鼈の外殻を突き破る事は出来ない。ならば甲虫の時と同じく外殻の中を狙えばいいのだ。

 

 田鼈がリュウレンブルーによって海中から空に向かって打ち出され、空を飛ぶ為に外殻を広げるのを待っていたのだ。

 

 打ち上げられた高さが思いの外高く、リュウレンレッドに打ち下ろしに行って貰ったが、見事にリュウレングリーンの目の前に落としてくれた。

 

 あまりの衝撃に、外殻を閉じるのを忘れていたのだろう。柔らかい内側を曝け出している。

 

 砂と海水が舞っているが、収まるのを待っていると、このチャンスを不意にしてしまう可能性がある為、リュウレングリーンは一瞬の、海水と砂が切れ目を作り出した瞬間を狙ってウッドスナイパーの引き金を引いた。

 

 発射された風の弾丸は、真っ直ぐに突き進み、そして田鼈が声にならない悲鳴を上げて、砂と海水に飲み込まれた。

 

 

「やったの?」

 

 

「さてな。」

 

 

 海から上がってきたリュウレンブルーがリュウレングリーンの横に並び立つ。空から落ちて来ていたリュウレンレッドも反対側で警戒していた。

 

 

「っ!!」

 

 

「まさかっ!!」

 

 

 突如、舞い上がっていた海水と砂が再び舞い上がる。それは下から何者かによって持ち上げられたかの様な動きであり、田鼈がまだ動ける事を指す。

 

 

「今回は引かせて貰うわ。無理する様な事でもないし…。」

 

 

「っ、…行かせると思うっ!?」

 

 

「そうね。…貴女は私の獲物よ。」

 

 

 驚く三人に再び妖艶な美女の姿に戻った魔族の女は声を掛けてくる。空は宙に浮かぶその美女に向かって吠えるも、オドロオドロシイと表現したら良いと思える声で宣言する。

 

 美女は自身の得意とする戦場で上を行った空に狙いを定めたのか、空に邪悪な笑みを浮かべながら殺気を送った。

 

 狂気と殺気をぶつけられた空は今まで怒っていたのも忘れ、急速に体が冷えるのを感じ、体を抱きしめる。

 

 そんな空の様子を鼻で笑った美女は、悠々と空を飛んで逃げて行った。

 

 

「…おい、大丈夫か?」

 

 

「…ごめん。」

 

 

「取り敢えず、変身解こうぜ。」

 

 

「…うん。」

 

 

 震えあがっている空を心配して哲多が話しかけるが、空は一言謝るだけ。哲多がヒーロースーツを解く事を提案して、初めて空は今だ、ヒーロースーツを着用しているままだった事を思い出した。

 

 リュウレンブルーの姿が光に包まれる。その光が収まった所に空は立っていた。

 

 濡れていた服は乾いており、まるでアイロンにかけられたかのような皺一つない状態であった。

 

 ヒーロースーツを形取るナノマシンは災害救助用であり、また遭難者等の身を守る事にも使われるため、着用者の体温を奪う水分を蒸発させ、汚れは外に排出させるのだ。

 

 その効果が表れた為であり、スーツが今だ震える空の体温を維持していた筈で、更には頂点を過ぎているとはいえ、今だかんかんに照り付けており、暑いくらいである。

 

 

「うおっ、…空。」

 

 

「…ごめん、ちょっとこうさせて。」

 

 

 空は哲多に正面から抱きつき、その胸板に顔を埋める。声なき声で泣き始めた。

 

 哲多は片手で抱きしめながら、もう一方の手で空の頭を撫で始めた。

 

 訳の解らない場所に放り出され、助けられた命が失われ、殺されかけ、そして狂気をぶつけられた。空の心は既に一杯一杯であり、衝動的に涙が溢れ出たのだ。

 

 哲多はもう一方で撫でていた手を空の背中に回し、ギュッと力強く抱きしめる。

 

 

「…俺が、…何とかしてやるからな。」

 

 

 それは哲多の口癖。困った人を、手を必死に伸ばしている人を助ける為の口癖。

 

 空はそれを哲多の悪い癖だと常々思っていたが、今だけは頼りにしてしまった。

 

 そんな二人を三匹が小さく鳴きながら待っており、涼貴は空の様子に顔を逸らしていた。




すみません、風邪は完治とはいかないまでも治ったんですが、今度は仕事が忙しくなりそうです。
今日中にもう一話アップしたいと思ってますが、無理なら夜中かな?
やはり二、三日に一本ペースになりそうです。

感想、誤字脱字の報告待ってます。
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