ファンタジーな世界をご当地ヒーローが救います。   作:yosshy3304

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第十三話 思考と怪我の伝説

 

 

「信じられない!!こんな可愛い子らにそんな単純な名前を付けるなんてっ!!」

 

 

 あの後泣き止んだ空は哲多と涼貴から今までの事を聞いていた。空の様にドラゴン達の魔力でバックルが修理され、変身して魔族を退けているのはいいとして、空が今一番怒っているのは、彼女が抱き上げている三匹の内、海竜のディネ以外の二匹の名前についてだった。

 

 

「いやいや、今それ必要?」

 

 

「必要よっ!!名前って一生の付き合いなのよっ!!」

 

 

 思わず哲多が突っ込むも、一応の正論で返される。哲多が突っ込んだ通り今考える事ではないが、古今東西昔から女性に男性は口では勝てないと決まっている。先までの萎らしい態度は何処に行ったのか。哲多に早口で捲し立てながら詰め寄っていた。

 

 涼貴は我関せずを貫き、海岸沿いを先頭に立って歩く。

 

 

「分かり易くて良いと思うけどな?なっ、チビ。」

 

 

「あんたね、幾らなんでもチビは無いでしょう。大っきくなった時の事考えてる?」

 

 

 頭を傾げながら、そんなに駄目かねぇとチビに問いかける哲多。チビはその名前が気に入っているのか、哲多の問いにチミャーと鳴く。小さな羽を精一杯動かして、空の腕の中から哲多の頭の上に移動した。

 

 解ってきたことがある。それはチビがチミャーと鳴く時は喜んでいる時だ。まぁ、チビは感情を体一杯使って表現する為、それ以外の事でも判りやすいのだが。

 

 クロは空の腕の中から抜け出して、先頭を歩く涼貴の横に並んだ。短時間であったが、ウッドドラゴンとしての知能と涼貴の教育の賜物か、猟犬としての資質がある様に思える。

 

 まぁ、空の素人目であるが。それでも近所に住んでいる馬鹿犬の事を思うと、賢いだろう。

 

 最後まで空の腕の中に残ったシードラゴンのディネ、亀の生物学名称であるテストゥーディネースから取ってディネとした。そう考えると空の命名も大した事がない事が判る。何せ犬にイヌという名前を付けたようなものだ。は小さくカウッと鳴いて、まるで笑ってるかのように前足?鰭をパタパタさせている。

 

 あの後、乾燥させるのは流石に不味いが、海水じゃなくても大丈夫で、肺呼吸をしているらしく陸上でも大丈夫な事が判ったのだ。

 

 まぁ、親が陸上で卵を産んでいた訳だし、海豹の様に陸上でも問題なく活動できるのは分かっていたのだが。それでも長時間水無しで生活出来るとは思っても見なかった。

 

 

「…あったぞ。」

 

 

「っえ!?」

 

 

「うおっ、本当だっ!!すげぇ、涼貴さん!!」

 

 

 空が再び哲多に文句を言おうとした時、先頭を歩いていた涼貴が立ち止り、振り返りながら一言告げた。

 

 今から何処に向かおうとしているのかという事を聞いていなかった空は何を見つけたのかと聞こうとして、哲多の上げた声にタイミングを盗られた。

 

 キラキラした純粋な尊敬を感じさせる哲多の瞳に見つめられて、少し照れて頬を掻く涼貴。

 

 空はそこで改めて前を見た。そこには海へと流れ込む川の終点地点があり、今は引き潮の為か流れが強い様に思える。

 

 

「川?」

 

 

「おう!!あんな…。」

 

 

 何故川なのだろうと口をついて出た言葉に哲多が興奮したように説明しだした。

 

 

「それって凄いのは涼貴さんで、あんたじゃないでしょ。」

 

 

「うぐっ…。」

 

 

 別に哲多自身凄いとは言っていないのだが、まるで自身の様に語る哲多に空から指摘が入る。哲多も自覚があったのか押し黙ってしまった。

 

 涼貴は先頭を歩きながら、後ろを付いてくる二人に思わず視線を向けた。

 

 二人は現役の高校生。現実を知っているものの、まだまだ世間の荒波を知らないのか、演技の指導を受けている時も、今の様にじゃれ合っていた。喧嘩の様に見えて、ポンポン交わされる会話は漫才の様で。それでいて何時も一緒に居るから良くからかわれていた。これで付き合っていないと言われても信じる者はいないだろうと思える。

 

 だが、二人とも正義感に熱い性格をしており、ヒーローと言う職業は合っているのかもしれないと思わされた。演技指導も飲み込みが早いというよりも自然体でやってのけ、自分達よりも早く終わったのを覚えている。

 

 哲多は涼貴から見ても、現状本物のヒーローだと言われても信じてしまいそうだ。相手が誰であろうと弱い者虐めは許さないという性格に涼貴すら救われている。

 

 だが、空は。哲多の胸で泣いているのを見ている。幾ら激情型で情に厚く正義感タイプだと言えど、それでもまだ親の庇護が必要な女子高生なのだ。哲多の様な考えなしには必要ないかもしれないが、それでも出来るだけ様子を見た方がいいかもしれないと考えた。

 

 

「っ!!涼貴さんっ!!」

 

 

「あれっ!!あれっ!!」

 

 

「…何だとっ!!急ぐぞ、二人ともっ!!」

 

 

 考え込んでいたが、道を離れることなく川沿いを上流に向かって歩いていた時、最初に見つけたのは哲多であった。直ぐに涼貴に声を掛けてくる。空も川の上流を指差し声を掛けてくる。

 

 涼貴が視線をカーブして先が見えない様になっている場所、上流側を見ると、川を流れる水に赤い物が混じっている。それは、薄らと匂う錆びた鉄の匂いから血である事が判った。

 

 そして涼貴はもう一つ分かった。この幅の川の水、それなりに水量はある。からこの血液が流された地点までそれ程距離がない事が。

 

 涼貴は二人を急かし、先頭に立って走り出した。二人は文句を言わずに短く返事を返し、涼貴の後ろに付いて走り出した。

 

 

「あそこっ!!」

 

 

「黄広さんっ!!」

 

 

 空が叫ぶ。カーブを曲がり、直線の先に大柄な人が川縁に倒れ込んでいたのだ。それは、リュウレンイエローこと黄広 大地(きひろ だいち)であった。

 

 完全に気を失っているようで、涼貴の呼び掛けにも答えない。ガッチリした大柄な体格であり、片腕を伝ってそれなりの量の血液が流れ出ていた。

 

 血液は体重の13分の1と言われており、その内半分が無くなると人は死ぬと言われている。

今までにどのくらいの量が流れ出たかは判らないが、それでも止血しない事には不味い事が判った。

 

 涼貴は直ぐに服の裾を破り、深い切り傷のある肩に巻いていく。それと同時に抱き起こし、傷口を心臓よりも高い位置に持ってきた。二人に余り動かさない様に言って、声を掛け続けてもらう。

 

 気絶していた場合、頭を打っている可能性があり、下手に動かすと悪化させる恐れがあるからだ。抱き起こすのは止血が先決であり、声を掛け続けてもらうのは、まず意識の回復を促す為だ。

 

 黄広 大地は今年27になる農業家だ。農業家としてはまだまだ新米であるが、涼貴達にとっては最年長であり、何かと頼りになる兄貴分である。涼貴も哲多も空も、大地に御飯を食べに連れてって貰ったりする。

 

 まぁ、其処は大地が野菜を下している店で、自慢してきたりするのだが、それでも親しい人が血を流し、倒れているのは心臓に悪い。

 

 猟師でこういう時の応急処置を実践している涼貴が居なければ、二人はパニックになっていただろうと思われる。空もライフセーバーとして応急処置の仕方は習っている筈だが、それでもまだまだとしか言い様がないだろう。

 

 空の場合は溺れた人の応急処置が中心と言ってしまえばそれまでだが、こういった怪我を海岸でもする場合があるという事を考えれば、出来ない訳じゃない。

 

 大地は気絶していただけなのか、哲多と空の呼び掛けに直ぐに目を開いた。

 

 

「おう、坊主に嬢ちゃん。」

 

 

「大地さんっ、大丈夫なんすかっ!!」

 

 

「おう、これは…、涼貴か?迷惑掛けたな。」

 

 

 大地は血が流れすぎているせいだろう、ボーとしながら現状の把握を始めた。目の前に居る心配そうな二人に先ず声を掛け、痛みが走ったのだろう。顔を顰める。顔を傷口にやり、布が巻かれているのを見て、後方から涼貴が抱き起こしているのを見て、応急処置を涼貴がしたのだろうと推測。済まなさそうに礼を言った。

 

 

「いえ、でも何があったんですか?」

 

 

「……、そうだ、アイツはっ!!」

 

 

「ちょ、落ちついて大地さん。アイツじゃ判らないっすよ。」

 

 

「亀だよ、デッカイ亀っ!!」

 

 

 涼貴が何があったか尋ねると、思い出す様に宙に視線を彷徨いさせ、突然立ち上がったと思うと哲多に詰め寄った。

 

 その事に哲多が引き、大地に落ち着く様に言う。そして、大地が繰り返し言うアイツとは誰の事かと尋ねると、大地は両手を広げて、こんな大きさの亀だよと言う。

 

 

「いえ、見てないっすよ。」

 

 

「私達が来た時は大地さんが倒れているだけでした。」

 

 

 哲多が見ていないといい、空がその事を補足すると、大地は慌てたように不味いと叫んで走り出してしまった。慌ててその後を追いかける。

 

 流石に木々の中を行くのに長けた猟師が先導し、体力には自信のある高校生二人である。体格が大きいと言えど、逆にその体格が速度を落としており、更に怪我をしている事もあり、大地には直ぐに追いついたのだった。




何とか今日中に間に合いました。
できればもう一話上げたいのですが、明日の朝に上げられたら御の字。
大地の怪我の理由が次話で分かります。
そんでもって、空の相棒の名前は、空が甲羅の無いウミガメみたいと言った所から来てます。
んで、大地の相棒が陸ガメ。名前何にしよう?←まだ決まってないんかい!!
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