ファンタジーな世界をご当地ヒーローが救います。   作:yosshy3304

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第十四章 老人と陸亀の伝説

 真っ青な空に、白い雲が流れていく。自身の視界に入ったそれはグングンと凄い速度で離れていった。いや、違う。自分が寝転がる様に仰向けになって下に落ちているのだ。そうヒーロースーツの中で思った瞬間、大地の意識は回復した。

 

 

「…どわぁぁあああああぁっ!!」

 

 

 追い風の様に下から吹き付ける風は、何て事は無い。自分が落ちているから、空気の層にぶつかりに行っているだけだ。

 

 ヒーロースーツはそれこそ災害救助用に作られただけはあって、衝撃を完全に殺してしまう。

 

 試した事はないそうだが、理論上は大気圏からパラシュート無しのスカイダイビングをしても無事に降りて来れるらしい。改めて言おう。試した事は無い。

 

 そんな話を聞いていただけに、結構な高さと判るが、命の心配はしていない、何処か冷静な自分が居る事に驚く大地。

 

 確かに命の心配はしなくてもいいのだろう。自身がヒーロースーツを着ているのを確認出来たのだから。

 

 だが、高所から見下ろした豆粒みたいな大地に、グングンと近付く感覚だけは慣れない。背中に冷やりとする嫌な汗を掻く。ジェットコースターの頂上から落ちる感覚と言えば良いのだろうか。人はそれが良いと言うのだが、大地はそれが共感出来なかった。

 

 

「だ、大丈夫なんだろうなぁっ!!」

 

 

 地面に衝突する寸前、気合を入れる為にも一度大きく叫んだ大地は、盛大に地面にぶつかった。土埃が舞いあがり、視界を覆い隠す。巨大なクレーターが、大地が落ちた場所を中心にして出来上がった。

 

 地面の様子に唖然とする大地。大地には衝撃一つ、いや何かが当たったという感触はあったが、それでも目の前の現象を起こした衝撃の大半は何処かに行ってしまったらしい。

 

 

「うわぁぁ…。大丈夫だと思ったが、二度とやりたくねぇな。」

 

 

 スーツを解いた大地は自身の起こした現象に思わず引いて、よく自分はこれで大丈夫だと思ったもんだと顔を青くする。そして、冷静な頭は回転しだした。曰く、此処は何処だと。

 

 

「ふぅむ、変なもんが落ちてきよったわと思えば、唯の精霊種か。」

 

 

「あん?…なぁ、爺さんはこの辺の者か?」

 

 

 だが、その場を動かない大地に後方から声を掛けられた。声の方を向けば、其処には黒い、いや光の加減では濃い緑色に見える、貫頭衣だろうか。RPG等ではマントと呼ばれる物だろうか。を着た老人が立っていた。

 

 その老人に道を尋ねようと、声を掛ける大地。少なくとも、この場所が気になって、というか大地が起こした現象を確認しに来たのなら、人通りのある大きな道へと出るルートを知っている公算が大きかったからなのだが…。

 

 

「ふぇっ、ふぇっ、笑わしてくれる。儂ゃ、魔族じゃよ。」

 

 

「あん?魔族?何だそりゃ。つうか、ここが何処だか教えてくれよ。」

 

 

 大地の何がおかしかったのだろう。カラカラと笑った老人は大地を睨みつけるように見ては自身が魔族というものだと答えた。ここが何処だか知らない大地は、組合か極道かと思い込み、その程度なら如何とでもなると考えて、改めて道を尋ねた。

 

 

「ふむ?…時間が無いし、かまっておる場合ではないしの。」

 

 

 老人は大地の反応に頭を掲げる。自分から魔族と名乗り、それに相応しい魔力も放出しているというのに、目の前の精霊種は慌てる素振りを見せる所か、堂々とこちらを見据えてくる。

 

 研究対象として観察、解剖してみたいが、今は色々と不味い。本来の獲物に逃げられては、癖の強い仲間に何を言われるか分かったもんじゃない。仕方ないと溜息を一つ吐き、空へと浮かび上がった。

 

 

「な、なんじゃそらぁっ!?」

 

 

「お主、助かったの。今回は見逃してやるから、さっさと去ね。」

 

 

 老人が浮かび上がった事に仰天する大地。老人は手をシッシッとやって大地に言葉を投げかけ、山が見える方へと飛び去ってしまった。

 

 

「あっ…。」

 

 

 そこで大地は気付く。老人がいきなり宙に浮かび上がった事で忘れていたが、此処が何処なのか、今自分が立っている場所の事も、どの方向に道があるのかも教えて貰ってない事を。慌てて大地は草木を掻き分け、老人を追いかけるのであった。

 

 

「なっ!?」

 

 

 宙を飛ぶ老人と、草木が生い茂る地上を行く大地。当然進む速度に差が出来てしまい、老人を見失わなかっただけでも大変な作業であった。その老人が止まる。少し距離が離されていたが、それでも必死に追いつこうとして、足元が突然揺れバランスを崩し尻餅を付いてしまった。

 

 大地が慌てて立ち上がり、老人の足元にはトラックぐらいはあるだろうか。巨大な陸亀が居たのだ。陸亀は甲羅に引っ込む事をせずに、四肢で踏ん張り、唯一引っ込めている顔は少しだけ甲羅から出て、老人の方を睨んでいる。

 

 大地はその陸亀の巨大さに驚きの声を上げてしまった。

 

 

「ほっ?…ふむ、付いてきたのか?」

 

 

 大地が上げてしまった声に、老人が大地の存在に気付いた。瞬間、巨大な陸亀が老人に向かって岩を吐きだしたのだ。

 

 

「むっ、まだ抵抗するのか。さっさと死ねばいいものを。」

 

 

「おいこら爺っ!!生きてる奴にそんな事言うなよっ!!」

 

 

 その岩は老人に届く事無く、遥か手前で砂に砕けていく。だが、大地はその老人の心配をするよりも、その老人の言葉に怒った。

 

 野菜等を育てる農業家である大地は、命の大切さや、その命を頂く事に感謝している。日常的に命と触れ合っている大地に取って老人の言葉は余りに我慢出来るものではなかった。

 

 

「それに、子供抱えてる奴にする事じゃないだろっ!!」

 

 

「…お主から先に始末するべきか。」

 

 

 大地が叫ぶ。大地の場所からは巨大な亀の甲羅の下に、やや黄みがかった真っ白な卵がドンとあるのが見えた。

 

 だが、老人は大地の言葉に耳を貸さず、大地を煩く思ったのか、大地に向けて掌を向けてきた。訝しむ大地に向かって、まるで土砂崩れが起きたかのような、視界一杯の大小様々な岩が降ってきた。

 

 

「おわっ…、っておお!!」

 

 

「ふむ、魔族に喧嘩を売るとは、命知らずな奴だな。」

 

 

「亀が喋ったっ!!」

 

 

 その有り得ない現象に茫然と立ち尽くす大地であったが、亀に咥えられ慌てる。亀は甲羅に引っ込めていた首を伸ばし、大地に岩が降り注ぐ寸前に咥えて、自身の体の下へと避難させたのだ。少しの説教を加えて。

 

 その説教の為に言葉を発した亀を見た大地は、亀が日本語を発した事に驚く。

 

 

「ふむ、共通言語なのだがな。それよりも、あの魔族を如何するべきか。」

 

 

「ああ、もう。頭こんがらがって来たぜ。あの爺を如何にかすればいいんだなっ!?」

 

 

 亀は大地が、自身が言葉を発した事に驚いている事を悟り、エルファンテトラの共通言語を喋ったのだがと頭を掲げる。だが、亀も魔族の攻撃に耐えるのがきつくなってきたのか、空中に居る魔族に視線をやり、如何するべきかと頭を悩ませる。

 

 だが、そこで待ったがかかった。大地である。大地は先程から続く理解の範囲から逸脱した事象ばかりに頭を抱えていたが、元々、それ程頭の良いわけではない大地は先ずは目の前の問題に対処する方が先だと、魔族の打倒を買って出た。

 

 

「出来るのか?」

 

 

「任せとけっ!!…流水っ!!」

 

 

 大地の言葉に訝しむ陸亀。だが、大地はそんな亀の疑問の声を一蹴して、変身グッズのバックル摘みを、周りの空気を吹き飛ばしながら宣言された掛け声と共に摘みを押し込んだ。

 

 

「な、なんじゃあ!?」

 

 

 大地の体を光が包み込む。照明でそういう演出をしている訳ではなく、今現在の玩具というのはそういう物であった。

 

 医療用のナノマシンを使用し、組み込まれたギミックを作動させると、収納されていたナノマシンが体の周りに放出され、それがゴム質な何かに変質する。

 

 ナノマシン自体には複雑なプログラムを組む事は出来なくとも、磁力の影響を受けることは出来る為、ギミックを作動させた時にバックル側で操作することが出来るのだ。

 

 大地のガッチリした肉体を黄色いゴム質な何かが覆っていく。肩、胸、腕、足と橙色で覆われていき、左右に広がる数本の猫の様な髭を持つ黄土色の龍の顔を模したヘルメットが大地の頭を覆った。

 

 

「大地と力の伝説、リュウレンイエロー。」

 

 

 突如の発光、いきなり姿の変わった大地に驚きを露わにする魔族の老人。そんな老人にビシッと指を突き付け、ただ宣言するように名乗った。

 

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