ファンタジーな世界をご当地ヒーローが救います。 作:yosshy3304
リュウレンイエローのヒーロースーツを纏った大地は雨霰と降り注ぐ大小様々な岩を避ける様にして亀の下から抜け出た。
「流激装備。」
大地は変身バックルの摘みを左右に押し広げる。変身バックルの龍玉とされているガラス玉が光輝く。その中から柄がナノマシンによって形成され出てきた。
大地はその柄を掴むと一気に引っ張り出す。
「ランドホー。」
大地の、リュウレンイエローの専用武器は幾つかの形態をとる武器である。その基本の形、鍬それも先が三又に別れている備中鍬の形をしている。
原作では刃の部分は岩でできており、それを分解、再構築させて刃先を変えるという設定であったが、ナノマシンで代用されており、細かい制御が出来なかった為に、ご当地ヒーローとしての象徴的な物が武器として採用された。
大地は刃先を錘代わりにしてランドホーを、まるでハンマー投げの様に振り回した。飛んできた岩は、備中鍬の刃先に絡め捕られ、大地まで届かない。それどころか、絡め取られた岩が錘の役割を果たし、ランドホーはドンドンと遠心力で重くなっていった。
大地が先ず考えたのは、空に浮かぶ爺までどうやって攻撃を届かせるかという事であった。そこで考えたのがハンマー投げである。十代の頃、たまたまテレビを点けた時にやっていたハンマー投げを見て、タオルと石で代用して河原で遊んだ経験があった大地は、プロ選手程ではないが、ヒーロースーツの補助もあり、それなりに様になっていた。
ドンドン重くなっていくランドホーを、魔族の爺に向かってブン投げる。
「流激装備、解放!!」
そこで変身バックルの摘みを元に戻した。変身バックルの電気信号によってランドホーを構築していたナノマシンは霧散し、龍玉へと吸い込まれた。
ランドホーが無くなった為、ランドホーの刃先に絡め取られていた岩は、遠心力によって高速で空気を引き裂きながら魔族の爺へと飛んで行った。
こうすることで、絡め取られた岩は散弾の役割を果たし、ある程度の狙いが付いていれば、素人の攻撃でも中てる事が出来る。
「うっし!!」
「な、なんじゃとっ!?」
思わずガッツポーズをして作戦が成功した事を喜ぶ大地。魔族の爺は驚きを露わにし、頬に手をやった。
頬には切れ目と表せばいいのだろうか、下から黒い肌が見える。その頬に手をやって中の黒い肌が見えている事を確認した魔族の爺は、両腕をダランとさせ、背中に力を入れた。
背中から、虫が脱皮する様に出てきたのは巨大な蝿であった。
「がはははは、面白いではないか。お主は殺した後、俺様の研究材料にしてやろうっ!!」
「げっ、誰が大人しく殺されるかっ!!」
それは先程までの老人の様な声ではない。大地の様な体格のいい、若い力ある言葉であった。その声の持ち主である、巨大な蝿は高笑いをしつつ、大地が皮を傷つけた事に喜ぶような言動をして、大地を殺すと宣言した。
大地も大人しくやられる様なたまではない。再び権現させたランドホーを巨大な蝿へと向け、啖呵を切った。
「げっ!!」
だが、突如大地の視界から巨大な蝿が消える。巨大な蝿は、それこそ大地の視認できない速度で持って、大地へと近付いたのだ。その手にはいつの間にか鋏が握られており、大地の首を挟んでいた。
慌ててしゃがむと、首のあった所を鋏の刃が通って行った。冷や汗を流しつつ、振り返るが其処には既に蝿はいない。
感に従ってランドホーを振るうと、鋏にぶつかるが感触が無かった。大地がランドホーを振るう速度よりも、更に速い速度で動いている為、簡単に受け流されている為だ。
「むぅ、大丈夫かっ!!」
「馬鹿っ、亀野郎はその卵を持って早く逃げろ。」
「し、しかし…。」
「こっちは何とかして見せるっ!!」
苦戦する大地を見て、巨大な亀が大地を心配する声を掛けてきた。大地は蝿の攻撃を辛うじて避けながら、亀に卵を持ってこの場から離れろと叫んだ。
大地が苦戦している事に逡巡する亀。だが、大地から力強い言葉が返ってくる。やっと腹を決めた様で、片足で卵を握ると、その足を地面に落とさぬよう、器用に残りの三本足で歩いて行った。
「ぬっ、待て。」
「お前の相手はこっちだっ!!」
蝿が、亀が動き出した事で本来の仕事を思い出したのだろう。亀の方向に攻撃を加えようとする。そんな事させまいと、大地はランドホーを蝿に向かって振るった。
流石に亀に気を取られていた為か、力一杯振るったランドホーは蝿の鋏に当たり、罅が入ってしまった。
「なっ!?オノレ、貴様から先に片付けてやるっ!!」
「やってみなっ!!」
その事に激昂した蝿は、大地に向かって怒気をぶつけてくる。だが、大地としては亀を逃がす為に、興味を大地の方へと移す為にやった事で、それが成功を収めた為、気が楽になっていた。
鬼さん此方、手のなる方へ。まるでそんな歌が聞こえてきそうな感じに蝿を挑発しながら、背を向けて木々の中に隠れた。
「待たんかっ!!」
その挑発に怒りのあまり茫然としていた蝿であったが、大地の姿が見えなくなる寸前に意識を戻し、大地を追いかけて木々の中に消えていった。
「グッ…。」
「おらおら、如何した。威勢だけだったのかっ!!」
だが、大地の誤算は、木々の中なら空から見つけ辛いだろうと考えた事である。最初に空を飛んで行ってしまった為に、また大地を探す為に木々の上を飛んでくると考えたのだが、蝿は大地を追いかけて木々の中を追ってきた。
更にその巨体の為、木々の中では速度が落ちるだろうと考えたのだが、その速度は増すばかりだ。蝿故に、最高速度での急な方向転換を得意としているのだろう。更に複眼の為、後方から急速に近付く木々に当たる筈もなく、苦も無く避けている。
その上悪い事に、木々の中という戦場はリュウレンイエローの得意とする所ではなかった。得意とするのはリュウレングリーンであり、薄暗い事を考えると、次点でリュウレンブラックだろう。寧ろリュウレンイエローとしては苦手な戦場である。
リュウレンイエローが得意とする戦場は開けた平地であり、障害物がある木々の中では、長物であるランドホーを遺憾無く発揮出来なかった事もある。
大地の若い頃にやったヤンチャの経験がなければ、既に大地は倒されていた筈だ。だが、大地はランドホーを短く持って、片刃になった鋏の攻撃だけを防ぐのに苦心しており、吹き飛ばされる様な攻撃は、亀の逃げた方向から遠ざかる様に受けて、距離を開けていった。
「いい加減にしろっ!!」
「がはっ…。」
余程イライラしていたのか、大地が鋏をランドホーで受けた瞬間、ボディブロー気味に強烈な一撃を加えた。
その一撃は、大地を後方にあった木々に縫い付け、いや、耐えられなかった木々を貫通し、大地を川の傍に転がす。
ヒーロースーツが受け流せなかった衝撃が腹に鈍い痛みを齎し、地面を転げまわる。そんな大地を見下ろしながら、巨大な蝿が木々の間から出てきた。
「その皮が邪魔じゃな。」
「なっ!?」
腹に拳を当てた時であろう。ヒーロースーツによって通る筈の攻撃が阻まれていると断じた蝿は、大地の視界から姿を消した。
蝿は大地が変身バックルを弄っている場面を見ていた。そのバックルがヒーロースーツを構築していると中りを付け、大地が振り向く瞬間、バックルに切り付けた。
バックルのナノマシンを制御している部分を狙った訳ではないが、その一撃はバックルが耐えられる衝撃を超えており、制御している部分、龍玉の一部が欠けた。
大地は光に包まれ、ヒーロースーツが解かれてしまった。驚き、声を漏らした大地に鋏を振るう。
「ぐっ…。」
「これで終いじゃ。」
鋏は大地の首を狙っており、辛うじて避けたものの、片方の肩に中たってしまった。痛みに呻き声を上げる大地。噴出した大地の血で真っ赤に染まった鋏を振るう瞬間、空気が震えた。
「ぬむ、忘れる所じゃったな。こ奴は放っておいてもよいじゃろ。」
その亀が上げたものだろう。咆哮を聞いた瞬間、蝿は本来のやるべき事を思い出し、倒れ伏した大地が気絶している事を確認した蝿は、後で回収に来ればよかろうと思い直して空の彼方へと飛び去ったのだった。
二話に分けて、魔力で修復された状態の変身と、本来の変身の差を書いたつもりですが、上手く表現出来ていますでしょうか?
次は、大地が魔力ありの変身をする場面です。
しかし、父の日とその前日と言う事でリアルが忙しく、更新できるのは月曜日に出来れば良い方ですね。楽しみに待っていてください。
感想、誤字脱字、評価待ってます。