ファンタジーな世界をご当地ヒーローが救います。   作:yosshy3304

16 / 22
第十六章 怒りと爆発の伝説

 大地は肩を貸して貰っている現役高校生二人を横目で見た。その眼には二人が眩しく映る。その事に何だか自分が情けないような、何とも言えない感覚を味わった。

 

 

「この先に、…居るな。」

 

 

 先頭を行く涼貴が声を掛けてきた。大地の足に合わせて進んでいた為、その歩みは遅く、涼貴が大地の言う巨大亀の足跡を探し出し、その跡を追わなければいけなかった。この辺りの自然は、巨大な亀が日常的に移動できる様にか枝葉はかなり高い所になっている。

 

 地面自体もかなり踏み固められ、歩きやすいが、亀の足跡すら殆ど残っていなかった。しかし、其処は猟師である涼貴。確かに判り難いが、足取りに迷いはない。哲多達には判らないが、涼貴曰く、地面に踏みしめた時に出来る削れた後があるのだそうだ。

 

 木々を避けて、数分歩き出すと哲多達にもこの先に居る事が判るようになった。腹に響くような、まるで巨大な生物が足踏みをするような、ズシンズシンという音と足の裏に伝わる振動。

 

 

「急ぐぞっ!!」

 

 

「あ、大地さんっ!!」

 

 

 続いて聞こえてきた甲高い悲鳴の様な鳴き声に、肩を貸して貰っていた大地が飛び出した。後ろから三人の心配する様な声が聞こえてくるが、大地はそんな事よりも、亀の生存の方が何倍も心配であった。

 

 

「がはははっ、あの精霊種も無駄死にじゃったのっ!!」

 

 

 大地が木々の間を抜け、広場の様な場所に出た時には、巨大な陸亀は地に伏していた。甲羅は罅割れ、手足に付いている鱗は剥がれ落ち、顔から血を流している。しかし、卵を守る為、片足だけは上がっていた。

 

 それを、上空から巨大な蝿が嘲笑う。それを視界に捉えた大地は顔を真っ赤に染め上げた。本能のままに叫ぶ。

 

 

「俺は死んじゃいねぇっ!!ここに居るぞっ!!」

 

 

「ぬ?むっ、しぶとい精霊種じゃのう。」

 

 

 その空気を震わせた大地の声で大地の事に気付いたのか、巨大な蝿は大地の方を向いた。巨大な陸亀はもう虫の息であり、放っておいても問題無いと判断したのだろう。

 

 

「ふむ、来た事は誉めてやろう。じゃが、如何するつもりかね。」

 

 

「如何するも、こうするもっ!!……っ!?」

 

 

 何処までも上から目線で大地の事を侮る巨大な蝿に、目に物見せてやると意気込んだ大地だったが、自身の変身バックルに目をやって、言葉を失った。

 

 巨大な足の下に存在する龍玉と呼ばれる部分が割れていたのだ。そういえばと思い出す。大地が最後に見た巨大な蝿の一撃が、バックルに当たり、変身が解かれたことに。その一撃がナノマシン制御部分に当たったのだと気付き、顔を青くする。

 

 

「ウインドシュート。」

 

 

「むっ…。」

 

 

「フレイムハンマーっ!!」

 

 

「シーランサーっ!!」

 

 

 だが、次の瞬間、風の弾丸が巨大な蝿に命中した。高速で振るわれた羽に弾かれはしたものの、蝿の視線を涼貴、リュウレングリーンの居る木々の方へと引きつける事に成功した。

 

 その隙を見逃さず、空高く跳び上がったリュウレンレッドがフレイムハンマーを。リュウレンブルーが空気中から集めた水で形成されたシーランサーを振るう。

 

 

「甘いわっ!!」

 

 

「うわっ!」

 

 

「きゃっ!」

 

 

 意識が完全にリュウレングリーンの方へと向いていたのにも係わらず、普通なら死角となる筈の上空からの奇襲に対応して見せた蝿。振り下ろしたフレイムハンマーの柄を握り、リュウレンブルーの方へと放り投げる。

 

 ぶつかった衝撃で驚きの声を上げる哲多と、小さく悲鳴を上げた空。瞬間、巨大な蝿は姿を消す。

 

 

「がぁっ!!」

 

 

 木々の間に身を潜めていたリュウレングリーンが、苦悶の声と同時に跳び出してきた。高速で移動した蝿に蹴り飛ばされたのだ。

 

 

「ぐっ、な、何でっ!!」

 

 

「…複眼か?」

 

 

 投げ飛ばされた為、本来の形とは違う落ち方をした為、呻き声を上げた哲多。何故奇襲に失敗したのか疑問の声を上げる。

 

 その問いに答えたのは、吹き飛ばされた涼貴であった。蝿に限らず、昆虫に見られる複眼という多数の小さな個眼が束状に集まった目が、哲多達の姿を捉え、そればかりではなく、不可視の筈の風の弾丸すら視認を可能としてしまったのだ。

 

 当然、その弾丸を放ったリュウレングリーンの姿も捉えており、すぐさま涼貴の後ろに回って蹴り飛ばしたのだった。

 

 

「当たりじゃ。お主らの動きは見えておるぞぉ。」

 

 

「見えてたって、ぐはっ…!!」

 

 

「哲多っ!!」

 

 

 挑発も含んでいるのだろう。無駄に言葉尻を伸ばして言う蝿に、哲多が、見えていても避けられない攻撃をすればいいとハンマーを振り上げながら突撃した。

 

蝿 の目には止まっているかのようにと言うと、誇張表現になるが、スローモーションの様に見えている。

 

 その中を、蝿の速度で持って、普段と同じような速度で飛び、リュウレンレッドの腹に蹴りを見舞った。

 

 ナノマシンが殺し切れなかった衝撃が哲多を貫いていく。勢いよく飛んでいき、木々に打つかって止まった。

 

 

「甘い甘い。ほらほら、当たらなければ如何って事等ないのじゃよ。」

 

 

 リュウレングリーンが風の弾丸を散弾に変えて放つも、散弾が無い場所を空中を泳ぐ様にして避ける。面制圧と言っても、その弾丸にも隙間と言うものはあり、その中を潜り抜けてきた。

 

 リュウレングリーンに攻撃を仕掛ける巨大な蝿、だがその瞬間を狙いリュウレンレッドがハンマーを振りかぶる。

 

 

「がはっ。」

 

 

「言ったじゃろ。当たらなければ如何って事無いと。」

 

 

 同じ言葉を口にしながら、リュウレンレッドの後ろに回り込み、リュウレンレッドをグリーンの方へと蹴り飛ばした。

 

 飛んできたリュウレンレッドと共にその勢いを殺せず、木々の間にその姿を消す。

 

 リュウレンレッド、哲多が最初に戦った魔族、巨大な蜻蛉も複眼であったが、此処まで苦戦することは無かった。

 

 それは単に相性というもの。蜻蛉は蝿と違い、一直線に飛ぶのであれば速いが小回りが利かないのである。その為、一直線に飛んできた蜻蛉の前に飛び込むようにしてハンマーを叩きつけた事であっさり勝ったのだ。

 

 しかし、蝿は直線の速さは劣るもののその小回りの速度は比べようも無い程速いのだ。蜻蛉が戦闘機、蜂がヘリコプターだとすると蝿は小型飛行機だろう。戦闘機程の高速では飛べずとも、その速度は速く。ヘリコプター程小回りは効かずとも、下手な戦闘機よりも小回りは効く。

 

 ましてや、その魔族は魔族の中にしては老齢だった為か異端で、頭脳戦を得意としていた。その頭脳が、哲多達の行動を先読みし、複眼から送られた情報を吟味し、最適な行動を可能としていた。

 

 

「くっ、くそっ!!」

 

 

 大地は一人歯を噛み締めていた。変身した時のナノマシンの補助が無い状態で、あの戦いに行っても邪魔でしかない事は解っている。こうして哲多達が苦戦している所を見ても、陸亀の傍を離れられない自分に苛立つ。

 

 その時、大地の後ろから地響きが聞こえてきた。何だと振り向く大地に倒れ伏す陸亀。その腹の下には上部から中程まで割れた卵があった。その傍には小さい、と言っても大柄な大地の膝よりも上ぐらいの大きさの陸亀が居た。

 

 

「う、産まれたのか。」

 

 

「うむ。」

 

 

 思わず呟いた大地に、片目を開いて小さく頷いた巨大な陸亀。大地に頼みがあると言い、子供の名付け親になってくれと言ってきた。

 

 名付け親になれと言われた大地は驚きながらも、亀は万年と長生きの象徴でもある事から、年の表外読みである『みのり』と名付ける。大地の職業である農業家としても、大きく実ってほしいと思いを込めたのだ。

 

 その名前と意味を聞いた陸亀は口角を上げて、たぶん笑った。大地にははっきりと判らなかったが、確かに喜んでいるような雰囲気を感じる事から笑っているのだろう。

 

 

「良い名だな。」

 

 

「だろう。」

 

 

 巨大な陸亀の動きが、元々緩やかだったが、それでも素人目に判る程に遅くなっている。大地すら、もう手の施しようがないと判る程だ。自身でも判っているのだろう。大地に傍に来るよう頼んできた。

 

 

「…なんだよ。」

 

 

「すまぬな。みのりを頼めるか?」

 

 

「…ああ、任せとけよ。確り育ててやる。」

 

 

 泣きそうになっているのを我慢していた為に、やけに言葉使いが汚くなるも、陸亀は気にした様子もなく、大地に一言謝ると、生まれたばかりのみのりを大地に預けてきた。大地は胸を張って了承する。

 

 もう一つ謝った陸亀は、それを直しておくと言って、光に包まれる。

 

 その光はやがて大地のバックルへと流れ込んだ。その事に驚き、バックルに目をやっている間に光になった陸亀の姿は薄れていき、バックルが治ったのと同時に消えて無くなった。

 

 

「無意味な事を。こやつは一度敗れておるのじゃぞ。」

 

 

 その様子を見ていたのだろう。巨大な蝿が陸亀を馬鹿にするような言葉を吐いた。

 

 

「流水っ!!」

 

 

 大地のその返答は、怒りに震える大声での掛け声であった。

 

 左腕を肘から曲げて、顔の前に真直ぐ立てる。拳は顔の方へと向けて、手首に巻いたバックルが蝿へと良く見える様に掲げた。蝿側に向けた龍の足が正面に来るようにして右手で内側の摘みを掴んだ。

 

 掛け声と共に、摘みを押しこんだことでギミックが作動する。龍の太い足が、虹色に輝く龍玉を踏み締める。

 

 大地の体を光が包み込んだ。自然の光ではない。今現在の玩具というのはそういう物であった。

 

 医療用のナノマシンを使用し、組み込まれたギミックを作動させると、収納されていたナノマシンが体の周りに放出され、それがゴム質な何かに変質する。

 

 ナノマシン自体には複雑なプログラムを組む事は出来なくとも、磁力の影響を受けることは出来る為、ギミックを作動させた時にバックル側で操作することが出来るのだ。

 

 電気の代わりに魔力によって動かされたナノマシンは大地のガッチリした肉体を黄色いゴム質な何かで覆っていく。肩、胸、腕、足と橙色で覆われていき、左右に広がる数本の猫の様な髭を持つ黄土色の龍の顔を模したヘルメットが大地の頭を覆った。

 

 

「大地と力の伝説、リュウレンイエロー。」

 

 

 燃え上がる怒りを溜めているかのような、そんな雰囲気を出しながら決まっている動きと名乗りを上げる。

 

 

「くっ、火と鉄の伝説、リュウレンレッド。」

 

 

「…海と空の伝説、リュウレンブルー。」

 

 

「はぁ、木々と命の伝説、リュウレングリーン。」

 

 

 その名乗りに、苦悶の声を上げながらも、木々の間から出てきた哲多が続く。自身も怒っているのか、無言でそれに続いた空。溜息を吐きながらも、自身は冷静にあろうとクールに名乗った涼貴。

 

 

「な、何なんじゃお主らはっ!!」

 

 

『伝説が重なり今此処に。連楽戦隊リュウレンジャー』

 

 

 巨大な蝿の問いに答える様に声を重ねてポーズを決めた。大地の静かな怒りに同調した過剰な魔力が背後で爆発を起こす。

 

 

「さぁ、伝説の物語の第四章だっ!!」

 

 

 その爆発に感化されたのか、大地は蝿に指を突き付け、怒りを爆発させたのだった。

 




すみません、遅れに遅れました。何気に今回の話は難産で、書き直し書き直ししていたら、こんなに遅く。
次はもう少し早く仕上がると思います。


で、言い訳は置いといて、小説家になろうさんにも投稿しようかなと考えております。もう20話ぐらい先の話ですが。
幾つかの話数を纏めて一話として書き直しつつ投稿。オーバーラップ文庫大賞に応募してみようかなと…。
無謀だヤメロ!という方がいたら感想でお願いします。
試にヤッテミロ!という方も感想でお願いします。
それでは、感想、誤字脱字、評価の程、宜しくお願いします。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。