ファンタジーな世界をご当地ヒーローが救います。   作:yosshy3304

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第二十一話 縄張りと感覚の伝説

 真由美は昔から何故かは知らなかったが、探し物が得意と言う特技があった。母親が何処に置いたか忘れた財布を直ぐに見つけ出したり、落し物を見つけるのはいつもの事で。人の多い場所で待ち合わせをしても、簡単に見つけ出す。気味悪がられなかったのが不思議なぐらいだった。

 

 観察眼が良いのだろうとぐらいしか思われなかったが、生物の先生にある時、それって縄張りが広いのではないかと言われた事があった。

 

 動物には縄張りというものがある。当然それは人も動物である以上存在し、男性は一メートル、女性は30センチの距離がストレスを感じなくてすむ距離なのだそうだ。追加で女性を口説く時は30センチより近づいてすると落としやすいぞ。という如何でもいい追加情報もあったが。

 

 だが剣の達人なんかはこの縄張りの距離を意図的に広げる事が出来るのだそうだ。意識の範囲と呼んだり、剣の距離と呼んだりするものだ。そこにあるものを意識に捉えて認識する能力。真由美の探し物が得意なのは、無意識にこの縄張りを広げて探し物を意識に置いているのではないかという見解であった。

 

 色々と穴や言いたい事はあるが、当時はそんなものかと納得したものだ。だが、それがこんな場所で役に立つとは思わなかった。

 

 今現在真由美は巨大な蝙蝠の様な生物と共に、攫われた蝙蝠の子供を追いかけている所であった。何故か真由美の知る言語で話しかけられ、流石に直後は唖然としたが、子供が攫われたと聞かされた真由美は直ぐに探し出す。

 

 何故かそんなに離れていない場所で立ち止っているようで、その場所に案内したのだ。

 

 其処ではもう一人真由美がおり、リュウレングリーンに狙撃されていたが、隣を並走していた、並飛?まぁ、どちらでもいい。していた巨大な蝙蝠が飛び出し、少年に姿を変えたもう一人の真由美の手に握られていた小さな蝙蝠を奪い返してきたのだ。

 

 

「あーらら、ねぇ、それ返してくんないかな。」

 

 

「駄目ですよ。これはワイバーンさんのものですよ。」

 

 

 少年が声を掛けてくるも、真由美は誘拐犯の言葉に耳を貸さない。おっとりといつもの口調で否定しておく。

 

 

「ぬむ、不味いぞ。」

 

 

「どうしましょ、グッタリしてるし。」

 

 

「ぐむ、今なら間に合うかもしれん。」

 

 

 取り返した小さな蝙蝠は真由美の腕の中でグッタリとしていた。少年に強く握りしめられていたのだろう。死んでいないのが不思議なぐらい弱っている。

 

 巨大な蝙蝠もそれが解ったのだろう。少し悩んだ素振りを見せた後、自身を光に包ませると、その光を小さな蝙蝠に分け与える。少しだが、グッタリしている様子が無くなる。だが、それでも何とかマシというレベルである。死にそうが今すぐ死な無いになったぐらいで、根本的な治療とは程遠かったのだ。

 

 

「あ、そうだ。ナノマシンを使えば、…って駄目ねぇ。」

 

 

 そこで真由美は己の腕に嵌っているバックルを思い出す。このバックルはナノマシンで出来ており、ナノマシンの本来の使い方は治療用。ナノマシンを使えば、もっと効率良く治療が出来る事を思い出したのだ。

 

 だが、バックルに目をやって落胆する。ナノマシンを制御する部分に罅が入り、とてもではないがナノマシンを制御できる状態ではなかったのだ。

 

 

「…ふむ、それが万全なら、何とかなるのか?」

 

 

「うん、ナノマシンは元々治療用だから。」

 

 

「何とかなるかもしれん。」

 

 

 真由美の言葉を聞いた蝙蝠は一度真由美のバックルに目をやり、哲多達のバックルに目をやった。真由美のバックルが壊れている事を理解したのだろう、真由美に声を掛けてきた。

 

 真由美が何とかなるかもしれないと答えると、少なくとも現状よりは悪くなる事は無くなるだろうと、真由美の腕に嵌るバックルを直してみるかと真由美に向かって問いかけた。

 

 

「なんとかなるのなら、…その方がいいだろうけど。」

 

 

「では決まりだな。…子供を頼むぞ。」

 

 

 ちょ、それ如何言う意味ですか?慌てて蝙蝠の言葉の意味を問おうとした真由美の前で、巨大な蝙蝠はより一層光輝く。その光は真由美の腕のバックルに注ぎ込まれ、龍玉が虹色に輝きを放つ。罅など何処にもなくなっていた。

 

 

「…勝手なんだから。」

 

 

 思わずポツリと言葉が出た。子供を守る為とはいえ、あるかどうか解らない。それも会ったばかりの真由美の呟いた言葉を信じて命を懸けたのだ。真由美は直ぐに視線を小さな蝙蝠に移すと、バックルのギミックを操作して、ナノマシン本来の働きをするよう操作した。

 

 小さな蝙蝠はナノマシンの発する光に包まれる。周りがいつの間にか暗闇に包まれており、空の叫び声が聞こえた。

 

 

「もう少し、待ってて貰えますか?」

 

 

 取り敢えず、今中断すると命に係わると判断した真由美は何時も通りのおっとりした声で答えた。

 

 

「おう、何とかしてみる。」

 

 

 仲間がピンチの時に何を言っているのだろうと自分でも思った言葉は、何時も自身たっぷりの哲多の声に上書きされたのだった。

 

 

「なんとかって、如何するのよ。」

 

 

「う~ん、取り敢えず、…目瞑ってみる。」

 

 

 直後、あほかっと空の突っ込みが暗闇の中から聞こえた。周りの空気も何処か弛緩した。だが、哲多は大真面目であり、リュウレンレッドの中で本当に目を瞑ったのだ。

 

 途端に哲多の感覚は鋭敏になる。ナノマシンが伝えていた情報が視覚を閉じた事により、その他の感覚を鋭敏にしたのだ。下手な達人並みの感覚を哲多は使いこなす。

 

 

「…そこだぁっ!!」

 

 

「なっ!?」

 

 

 振り上げたフレイムハンマーを闇に向かって振り下ろした。少年の驚く声と、確かな手応え。哲多の攻撃は確かに少年魔族に当たっていた。

 

 

「くすくす、まさか本気にさせられるとは思わなかったなぁ。」

 

 

「なにっ!?」

 

 

 だが、直ぐに感覚は無くなり、前へとつんのめる様に扱ける。何とか足を出して地に付く事は防いだが、闇の中から聞こえた声に段々と焦りが募ってきた。

 

 目が見えていたのなら、少年の背中がパックリと割れ、中から巨大な蚊が出てきたのを見る事が出来ただろう。だが、それは闇に阻まれて不可能であり、直後哲多は腹を殴打され後ろに吹き飛ばされる。

 

 

「なら、もう一度だ!!」

 

 

「ふーん。」

 

 

 哲多は又も目を瞑り感覚を鋭敏にする。だが、哲多の発した言葉を聞いた巨大な蚊は見下すように声を出した。直後、哲多は眩暈に襲われる。鋭敏になった感覚、特に聴覚に不快な音が入ってきた為だ。

 

 それは全方位からしており、鋭敏になった感覚でも何処からその音が出ているかは解らない。それどころか逆にダメージになる。耐えられなくなった哲多は目を開けて耳を塞ぐ。

 

 

「がはっ!!」

 

 

 再び、今度は横から顔を殴られた。悲鳴が彼方此方から聞こえるのは哲多以外にも攻撃しているのだろう。

 

 

「まったく、メンドクサイよね。あんなのを取り返すのに命なんか掛けちゃってさ。」

 

 

 巨大な蚊はあ~メンドクサイメンドクサイと愚痴ったのだろう。だが、その言葉は真由美には放っておくことは出来なかった。少なくとも目の前で光になって消えたのを見ていた、子供を託された真由美には。親蝙蝠の思いも、子蝙蝠の命も軽く扱われたのだ。

 

 

「うん、もう大丈夫だね。」

 

 

「ああ、回復したの?メンドクサイ事してくれちゃって…。」

 

 

「そうでもないよ。後ね。」

 

 

 真由美の腕の中に居た子蝙蝠の治療が終わったのだろう。ナノマシンの光が止み、先程とは違って活力に満ち溢れた姿になった子蝙蝠に声を掛けた。その声を聴いた巨大な蚊は真由美の方を振り返ったような気がした後、またもメンドクサイと言い放ったのだ。

 

 真由美は何時も通りのおっとりとした声で咎める。そして真由美の不自然に途切れた言葉に、巨大な蚊はうん?と聞き返すと。

 

 

「私も怒るときは怒るからね。」

 

 

 真由美は何時ものおっとりとした声が嘘の様にはっきりとした物言いで宣言したのだった。

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