ファンタジーな世界をご当地ヒーローが救います。   作:yosshy3304

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第四章 蜻蛉と甲虫の伝説

 哲多は魔族の男に向かって一歩を踏み出した。

 

 

「おわっ…。」

 

 

「なっ!!」

 

 

 哲多と男の驚く声が重なる。哲多は軽く踏み出しただけなのに、高速で後方へと流れる景色に。魔族の男は、哲多の圧倒的な速度に。

 

 

「にゃろめっ!!」

 

 

「くっ!?」

 

 

 哲多は驚きつつ、急激に近づいてくる男に向かって拳を突き出す。

 

 男は哲多の攻撃を防ぐ為にチビを離し、辛うじて腕を交差させて受け止める。しかし、その力は強く、先の哲多の様に後方へと吹き飛ばされた。

 

 

「な、何故!?」

 

 

 男は疑問の声を上げる。竜種ですら軽々と叩き伏せる事が出来る男が、姿が変わるまで甚振っていた哲多に一方的になっていたからだ。

 

 男も哲多も知らないことであったが、竜種の魔力が哲多のスーツ内に留まり、哲多の肉体を強化していたからなのだが。

 

 哲多はドラゴンに修復されたヒーロースーツのお蔭だと思っていたし、男は、哲多を取り巻く魔力がヒーロースーツによって阻まれ、ほとんど外に放出されない事から強力な肉体強化が起きているとは思えなかった。

 

 

「仕方ありませんね。この姿になるのは嫌いなんですが…。」

 

 

「何だ?」

 

 

 不利を悟った男は、後ろに跳び哲多から距離を取ると、全身の力を抜き両手をダランと垂らす。背中が縦に割れ、中から何かが出てきた。

 

 

「うをっ!?」

 

 

「これを避けますか…。」

 

 

 気障な男風であったが、今は皮だけになって地面についている。その中から出てきたのは巨大な蜻蛉であった。

 

 閃光が走ったと思った瞬間、哲多は嫌な予感に襲われる。

 

 その感に沿って体を真横に投げ出すと、閃光は哲多のすぐ横を通り過ぎ、後方にあった木々が数本切り裂かれていた。

 

 巨大な蜻蛉は哲多の方に向きなおす。

 

 

「きっついな。だが見えてた。」

 

 

「あなたは此処で倒しておきます。」

 

 

 哲多は見えた倒された木々を見て呟く。だが、スーツの補正だろうか、こちらに向かってくる巨大な蜻蛉の姿がはっきりと見えていた。

 

 

「流激装備。」

 

 

 哲多はバックルの摘みを左右に押し広げる。龍玉から光が溢れ、その光の中から柄が出てきた。哲多はその柄を握りしめ、光の中から引っ張り出した。

 

 

「フレイムハンマー!!」

 

 

 それはリュウレンジャーの装備武器だ。決まった形にプログラムされ、ナノマシンで形成されたその武器は各リュウレンジャーで形が違う。

 

 哲多の、リュウレンレッドの武器は巨大なハンマーだ。

 

 設定では赤く燃えるハンマーであり、本当に燃やすわけにもいかず、ただ赤く光るだけであったが、魔力で再生されたバックルは本来の形の通りに燃えるハンマーを現出させていた。

 

 プログラムが呪文の代わりをし、ナノマシンを繋ぐ魔力が反応した結果であった。

 

 

「な、なんだと…。」

 

 

「喰らいやがれ!!」

 

 

 閃光となって哲多に迫った魔族であったが、哲多はフレイムハンマーを振り上げた体制で前へと跳んだ。

 

 丁度魔族の顔の前へと躍り出た哲多は振り上げていたハンマーを、思いっきり振り下ろす。

 

 

「がはっ!?」

 

 

「もう一丁!!」

 

 

 地面に叩きつけられ、呻き声を上げる魔族。

 

 地面に叩きつけられた衝撃で、跳ね上がってきた魔族に向かって哲多は、野球でバットをフルスイングする要領でハンマーを振るった。

 

 

「ギエッ!!」

 

 

「よしっ!!」

 

 

 小さく悲鳴を上げた魔族は木々を薙ぎ倒し、遥か先へと土煙を上げながら消えていった。

 

 小さくガッツポーズをした哲多は、変身を解くと地面に倒れているチビの方へと歩いていった。

 

 

「キュイー…。」

 

 

「大丈夫か?チビ…。」

 

 

「キュイッ!」

 

 

 ぐったりしていたチビであったが、哲多が抱き上げると途端に元気に鳴いた。

 

 

「はは、大丈夫みたいだな。」

 

 

「キュウ。」

 

 

 思わず安心する哲多。

 

 だが、哲多はチビを抱き上げたまま、魔族の飛んで行った方をみる。

 

 哲多の感がまたも嫌な予感をさせており、事実土煙の中から、最初の姿。気障な男風になった魔族が出てきたからだ。

 

 哲多は油断なくバックルの摘みに手を伸ばす。

 

 

「…どうやら、今回はその竜種を諦めなければいけませんねぇ。」

 

 

「逃がすかよ…。」

 

 

「逃げるだけなら造作もないですよ。」

 

 

 男は薄く笑い、宙に浮く。

 

 哲多がバックルの摘みを押し込み、変身しようとするも、巨大な蜻蛉であった時の様な速度で宙を駆ける魔族の男。

 

 

「ああ、そうだ。」

 

 

「降りて来いっ!!」

 

 

「お前は俺の獲物だっ…。」

 

 

「つっ!!」

 

 

 男は言い忘れていたと言った風に声を出す。

 

 哲多の攻撃が届かないぐらいの高さに浮く魔族の男は、哲多に向かってオドロオドロシイと表現すればいいのか、そんな声を出し宣言する。狂ったような笑みのままで。

 

 魔族の狂気に中てられた哲多は思わず尻込みしてしまった。

 

 その間に魔族の男は飛び去ってしまい、思わず安堵の息を吐いてしまう哲多。

 

 

「なぁチビ。これから如何すれば良いと思う?」

 

 

「キュイー…。」

 

 

 数秒、数分立っただろうか、魔族の男が攻めて来ない、安全になったと判断した哲多は、これから如何すれば良いのかとチビに問いかけた。

 

 当然チビに答えられる訳がなく、チビは首を傾げる。

 

 

「うをっ、何だ一体!?」

 

 

 だが突然、強力な揺れと爆発音が哲多を襲う。哲多が爆発音がした方、裾の方を見ると木々の中からモクモクと煙が出ていた。

 

 

「なっ、なんじゃアレ!!」

 

 

 その上を巨大な甲虫が飛んでおり、土煙の周りを飛んでいる。

 

 

「何かを襲っているのかっ!?行くぞチビっ!!」

 

 

「キュイッ!!」

 

 

 何かを襲っている様に見えるその姿に、もし本当に何かを襲っているのであればと、正義感の強い哲多はチビを頭に乗せて駆けだしたのだった。

 

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