ファンタジーな世界をご当地ヒーローが救います。   作:yosshy3304

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第七章 風の弾丸とカナブンの伝説

「へへ…、行くぜ!!」

 

 

「っ!?返り討ちだ!!」

 

 

 哲多が、リュウレンレッドが最初と同じように飛び出す。

 

 巨大な甲虫は機先を制すされ慌てるも、自身の小回り速度と防御力の前には無意味だと前へと飛んだ。

 

 リュウレンレッドはフレイムハンマーを大振りに振るう。一切の手加減等要らないというかのような振り下ろしは、炎を撒き散らしながら甲虫へと迫った。

 

 

「先と同じじゃねぇか!!」

 

 

「本当にそうか?」

 

 

「っ!?…ぐっ!!」

 

 

 当然そんな大振りの攻撃が当たる様になった訳ではなく、甲虫は余裕をもって回避する。一方的に甚振ることが出来た先と同じ攻撃に有頂天になる甲虫であったが、哲多の様子は慌てている物ではなく、驚きを露わにした瞬間、体に鋭い痛みが走り、呻き声を上げてしまった。

 

 

「流激装備、ウインドシュート。」

 

 

 攻撃が放たれた場所に視線をやると膝立ちになり、取っ手の付いた筒の様な物を構える涼貴が居た。

 

 リュウレングリーンの専用装備は所謂猟銃だ。発射口が一つしかない江戸時代から使われていた種子島によく似た形の木で出来たスナイパーライフルである。木と言うが実際はナノマシンで構成されており見た目以上の強度を誇っている。

 

 弾は設定上では風を物理的に触れる程に圧縮して放つのだが、それを再現出来なかった為、舞台上ではナノマシンが弾の代わりをしていた。

 

 このナノマシンにはあるプログラムが加えられており、ナノマシンに当たった場合、そのナノマシンを巻き込んで後ろに下がれというものだ。

 

 怪人のスーツも、リュウレンジャーのスーツもナノマシン構成の為、ナノマシンが当たっても後ろに強制的に下げられるだけで済む。そのお蔭で、視界の悪い怪人スーツでもリュウレングリーンの攻撃を喰らったのだという演技が出来ていた。

 

 だが、今リュウレングリーンの放った銃弾は設定上の物と同じ、物理的に触れる程圧縮された風の弾丸であった。ナノマシンを操作する為のプログラムが呪文の代わりをして魔力が魔法となった為であった。

 

 その事に一番驚いているのは弾を放った当の本人リュウレングリーンのスーツ内の涼貴である。

 

 

「ぐお、なんで防げねぇ!!」

 

 

「隙だらけだぞ。」

 

 

 驚きつつも銃を手にし、獲物に狙いを付けた涼貴は常に冷静だ。猟師である涼貴は下手に騒いだり、冷静でなければ思わぬ怪我をすることを身を持って知っていたからだ。

 

 自身の防御力を訳もなく抜いてくる摩訶不思議な筒を見て騒ぐ甲虫であったが、その姿は涼貴には隙だらけに見える。

 

 確かに外側の堅い部分には猟銃は効かないだろう。

 

 威力だけならリュウレンレッドの持つフレイムハンマーこそが一番高い。そのハンマーの攻撃に晒され、一切のダメージが入っていなかった事を思えば、涼貴の持つウッドスナイパーでは気にする必要も無い。

 

 だが、羽を広げ高速で動かし飛んでいる現状では、柔らかい肉が顔を覗かせている。

 

 フレイムハンマーのような大型の武器ではその場所は狙えないだろうが、涼貴の持つ猟銃なら簡単に狙えたのだ。

 

 高速で動かされる堅い外側を避けて内側に中てるには相当な技量が要求されるが、スーツの内に籠った魔力が涼貴の肉体を強化しており、その中には視力、それも動体視力も強化されており、羽がゆっくりと上下する様に涼貴には見えていたのだ。

 

 

「ぐおっ!!」

 

 

「今だっ!!」

 

 

 又も涼貴の放った銃弾が一発二発と肉に突き刺さり、その衝撃で腹を上にして地面に落ちた甲虫。

 

 視線は青空を見せられ、その青空の中にポツンと赤が混じる。空高く飛び上がったリュウレンレッドであり、その手は更に高く振り上げられている。

 

 

「フレイムハンマー!!」

 

 

「グゥアハっ!!」

 

 

 重力すら味方に付けたその一撃は、今までの中で一番の威力を叩きだし、甲虫の腹に打ち据えられる。

 

 衝撃が地面にも伝わり、砂埃がリュウレンレッドと甲虫の姿を覆い隠した。

 

 直ぐにリュウレンレッドは跳び出してきて、リュウレングリーンの横に並び立つ。

 

 

「チミャー!!」

 

 

「うお、チビっ!!」

 

 

 そんなリュウレンレッドの顔に隠れていたチビがベチャーと覆いかぶさる。驚く哲多であったが犯人が誰か解った哲多は、叱る様に名前を呼びながら、首の辺りを猫を掴むようにしてチビを引きはがす。

 

 

「くーん…。」

 

 

「うん、お前も無事だったか。」

 

 

 涼貴の足にも隠れていた子犬が甘えるように擦り寄ってきた。その事に気付いた涼貴は、未だ晴れない砂埃の方を警戒しながら子犬を抱き上げた。

 

 

「俺、は、かっけぇ!!」

 

 

 瞬間何事か叫びながら砂埃の中から筋骨隆々の魔族の男が飛び出してくる。

 

 その衝撃で砂埃は払われて薙ぎ倒された木々の真ん中にすり鉢状の大穴が見えるようになった。

 

 

「ふむ、まだ倒れんとはな。」

 

 

「ふんっ!!今日は見逃してやるよ。」

 

 

 冷静に見ていた涼貴は宙に浮かぶ魔族の男に向かってウッドスナイパーを構える。

 

 だが、魔族の男は何処までも上から目線で宣言し、腕を空に向かって掲げた。その腕を中心にして魔力が広がり、その魔力が魔法陣を描く。

 

 

「お前は、俺の獲物だ。こいつらに倒されんなよ。」

 

 

「っ!!」

 

 

 魔族の男は涼貴を自身の獲物と定めたのか、オドロオドロシイと表現したらいい声を出し、狂気の笑みを貼り付け涼貴に宣言した。

 

 一瞬、その狂気に体を硬直させるも、直ぐに魔族の男は飛び去ってしまい、体の硬直は解ける。

 

 逃がせば不味い事が分かるが、追いたくても魔族の男が置いて行った置き土産。魔法陣から召喚された十匹近い巨大なカナブンが哲多と涼貴に迫ってきていたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

「ああ、めんどくさかった。」

 

 

「数の力か…。」

 

 

 魔族の男が変貌した巨大な甲虫と比べれば遥かに弱く、一撃一撃を確りと中てれば一撃で落とせるものの、チビや子犬すら狙ってくるカナブンは厄介な相手であった。

 

 疲れた様子で変身を解いて地面に座り込む哲多が吐いた言葉に、同じく変身を解いた涼貴が考えるように顎に手を置いてポツリともらした。

 

 

「…これから如何します?」

 

 

「そうだな。先ずは水だな。」

 

 

 落ち着いてきたのか哲多がこれから如何すればいいか涼貴に聞く。その頭上にはチビがここが自分の位置だと主張するかのように寝そべる様に乗っかっていた。

 

 涼貴は生きる為に必要な物を脳内でピックアップしていく。サバイバルの知識から先ずは水の確保が先だと思いついた。

 

 

「水って、この先に海が見えましたけど…。」

 

 

「ふむ、なら先ずはそこを目指そうか。」

 

 

 哲多が山の中腹辺りから見渡した時、今いる場所の先に海が見えた事を告げる。よくよく耳を澄ませば、微かに波の寄せては返す音が聞こえる。

 

 涼貴は目印となる音が鳴るその場所を目指す事にしたのだった。

 




隙間が文字通り隙になった訳ですね。
誤字脱字、感想待ってます。
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