ファンタジーな世界をご当地ヒーローが救います。 作:yosshy3304
山で遭難した時は、頂上を目指せと言われる。下手に下山すると全く別の場所に出てしまう場合が多いからだ。頂上を目指す場合、頂上というゴールが見えている以外に本来の道筋のゴールであり、上から見下ろすことで自身の居る場所が判るからだ。
だが、異世界の何処とも知れない場所で遭難した場合は如何したら良いだろうか。一番に確保すべき飲み水を探す事を推奨させてもらう。人は一週間ぐらいなら水だけで生活することが出来る。それ以上になってくるとどうしても体力面での活動限界がやってくるだろう。
下手に山に分け入って迷い体力を消耗するぐらいなら、近くに海がある場合海を目指すのが賢い選択だと思われる。
波の音が目印になり、現状の深い森の中に居ても迷うことが無いからだ。
海に出れば海岸沿いを歩くことで、必ず海に流れ込む川があるはずで、その川を遡れば飲み水の確保も難しくなく。海水を煮詰めることでミネラルを含む海塩を手に入れられる。川の傍なら一つや二つ、食糧も手に入れられる筈だ。
上手くすれば、海沿いの港町に出ることもあるだろう。
「へ~、そうなんだ。さすが涼貴さん。」
涼貴の説明に純粋に感心する哲多。涼貴も大学時代にふざけて調べただけの知識で、此処まで感心されると、どうしても照れてしまう。
「キュクルー!!」
「ウオウッ!!」
少し先行していたチビとクロと涼貴に名付けられた子犬が、興奮した様子で哲多達を呼ぶ様に鳴き声を上げる。
「どした?…うおおぉ…。」
そんな二匹の様子を不審に思った哲多が早足で二匹が出てきた茂みを掻き分ける。突如哲多の興奮する声が聞こえてきた。
「…子供だな。」
「ひでぇ、海っすよ、海。」
先ほどから波の押しては引く音が強くなっており、そろそろ海岸にでも出るだろうと考えていた涼貴は、真っ青な何処までも広がる海を見て興奮する哲多の様子に呆れていた。
哲多は何がそんなに凄いのか判らないが涼貴に向かって海、海と連呼しており、チビ達もまた波の押し寄せては返す様子が不思議なのか波を見ている。
真っ白な砂浜は流木等の自然のゴミこそあるものの、人工ゴミは一つも落ちてはおらず、海の水は透明度が高く何処までも澄み渡っている。
確かにこの光景は涼貴にも感動を与えていたが、一つだけ不安にもさせていた。
「これだけ澄んでいるということは、生活排水が流されていないという事だ。」
「現実的っすね。」
「そうでもなければ生き残る事は出来ないよ。」
涼貴が海の透明度を見て、この近辺に人が住む集落がない事を指摘する。
どれだけ低い文化レベル、生活様式であろうと、生活している以上は生活排水は出てくるものだ。そしてその処分は川や海に流すものが当たり前だろう。
海の水が綺麗に澄み渡っている事から傍に人がいない事を考え付くのは簡単であった。
哲多はこの綺麗な海を見て最初に出てきた言葉がそんなものだった涼貴に少々非難めいた視線を送る。
だが、現実を見ている大人な涼貴から出てきた言葉はその通りだがとしか言えないものであった。
哲多も涼貴と話した事により、今の現状が自身の見る夢ではないと理解しており、生きる為には必要な事だとも理解しており、文句を言いたくても言えないという状態であった。
「さて、川を探そうか。」
「うす。」
涼貴は哲多達が一通り騒いだのを呆れて見ており、騒ぎ終わったなと判断した所で、本来の目的である海に流れ込んでいる川を探す為に海岸沿いを歩き始めた。哲多もそれに同意し、涼貴の後ろをチビ達二匹と付いてくる。
瞬間、正面の海から水柱が空高く上がり、巨大な生物が悲鳴のような鳴き声を上げながら巻き上げられるのが見えた。
「あっ、おい…。」
後ろから涼貴が慌てて制止する声が聞こえてきたが、哲多とチビはすでに走り出していた。
夢じゃなく現実だと理解しても、元々正義感が強く、竜巻すら恐れずに向かっていく哲多だ。
当然悲鳴を上げた生き物が居れば、脇目も振らずに駆けていく。後ろで溜息を吐く涼貴が居たが、足元に擦り寄ってきたクロを抱き上げ、哲多を追いかけるべく駆けだしたのだった。