星は暗闇で輝く【完結】   作:一口さん

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U6、日常

 トレーナーの部屋へ向かいながら、マルゼンに話した足のことを考える。

 推測でしかないが、トレーナーも私の足のことは気が付いているんだと思う。

 というか、そうじゃないとウィンタードリームトロフィーを取らせるためにあんなに手伝ってくれるわけないし。

 いつの間にか部屋の前についていた。

 部屋の電気は……やっぱりついてる、ちゃんと寝てるんだろうか。

 

「おはよう、トレーナー」

 

「あぁ、おはよう……来てすぐで悪いが、足を確認させてくれないか」

 

「ん、わかった」

 

 ソファに座って足をトレーナーに向ける。

 

「触るぞ」

 

 トレーナーがゆっくり私の足を触る。

 筋肉や骨の構造だけでなく疲労や成長による変化を確認するのには触診はわかりやすく向いている。

 

「うーん……思ったより消耗が激しいな」

 

「じゃあ今日のトレーニングどうするの?」

 

「いや、思い切って今日は切り替えの日にしよう」

 

 え?き、切り替え……。

 昨日マルゼンにあんなこと言ってウィンタードリームトロフィーにしっかり狙い定めたのにその直後で休み……。

 

「せっかく学園に戻れてたのに、イメトレやデータ整理でほとんど遊ぶ時間もなかったろ?どちらにしろトレーニングはできないしな、すこし出かけてみたらどうだ?」

 

「出かける……かぁ」

 

 ここ最近出かけることは一切してない。

 足を治すのに重点を置きたかったので、ほとんどが学園内だ。

 気分をリセットさせるなら確かにいいのかもしれない。

 

「でも足関係の激しい運動はするなよ、リフレッシュの意味もあるが足の消耗の回復が優先だからな」

 

「わかったー」

 

 ……

 

 さーてどうしたものか……。

 トレーニングをする気満々だったからプランなど立てていない。

 ルドルフ……は忙しいだろうし、マルゼン……は今誘ったらさすがに怒られそうだ。

 

「んお?ステラじゃん、トレーニングでもしてると思ってたんだけどな」

 

 急に声をかけられて振り向くと……ゴルシちゃんがいた。

 

「足の消耗がね、トレーナーに今日はトレーニングは厳しいって言われちゃった、ゴルシちゃんはどうしたの?」

 

「あたしは純粋に暇なだけだな、マックイーンにでも嫌がらせしようか悩んでた」

 

 ふむ、ゴルシちゃんも暇か……。

 

「よしゴルシちゃん、私も暇なんだ……よってゴルシちゃんに任務を与えるっ!」

 

「サーイエッサー!隊長、任務を教えてください」

 

 ノリノリでゴルシちゃんが敬礼をする。

 うーんネタからの対応が速い、さすがだ。

 

「うむ、私をもてなすのだー!」

 

「んじゃあどうするー?」

 

 ケロッと雰囲気を戻す、早いなぁ。

 

「最近外出てないからねぇ、面白いことがしたいけど……なんかある?」

 

「んー……あたしじゃ思いつかねぇな、誰か呼んでみるか」

 

 そういうとゴルシちゃんはウマホで電話をかける。

 ゴルシちゃんが呼ぶ人かーどんな人がいるんだろうなぁ。

 

 ……

 

 どうしてこうなった、どうしてこうなった?

 私は今車の中にいる……運転してるのはマルゼン、隣にいるのはルドルフだ。

 いやいやいや!足がどうたらって大事な話をして重々しくわかれたのに次の日にまた顔合わせた上に内容が遊びに行きますって。

 ゴルシちゃんが呼んできて、目があった時マルゼンは目が死んでたし(なぜかルドルフも)空気が重い……あ、ゴルシちゃんそのじゃが〇こ私にも頂戴。

 

「んで、なんでこんなメンツが集まってるの?」

 

「私はゴルシちゃんから電話がかかってきたのよね……『遊びに行きたいから車出してくれない?、レンタカーで』ってルドルフは最近忙しそうだから息抜きさせようと拉致したって感じかしらね」

 

「生徒会の仕事が……」

 

 ルドルフの目が死んでたのはこっちかぁ多分エアグルーヴとナリタブライアンが頑張ってるなこれは。

 

「んでこれどこに向かってるの?私なんも聞いてないんだけど」

 

「ショッピングモールよ、服とか……いろいろ見て回りましょ?」

 

 ショッピングモールか……恥ずかしながら私はレースで勝つこと以外あまり考えてなかった側だ。

 しかも強かった相手と面白そうなやつしか覚えない、つまり友達がいないので誰かと買い物も初めてかもしれない。

 あれ?そもそもショッピングモール自体ほぼ行ってないのでは?

 

「ショッピングモール、ショッピングモール……」

 

「なんだぁ呪詛みてーに、まぁいろんな店があるからのんびり見ればいいんだよ、どうせみんなオフになるんだし」

 

 ゴルシちゃんが頼りになるように見える……!でもゴルシちゃんルドルフがすごい顔でそっち見てる、こいつ何を言ってるんだ?っていう困惑の顔してる。

 ま、まぁついてから考えるか。

 

 ……

 

「やっぱり広いなぁ」

 

 すぐ迷子になってしまう私的には、広い+人が多いのはよろしくない。

 ゴルシちゃんがでっかいから助かるなぁとか思ってないよ。

 

「さーて服でも見に行きますか」

 

「もうここまで来たなら仕方ないか、今日はオフということにしてしまおう」

 

 ルドルフが諦めて服の店の方へ歩いていく。

 後ろをついていこうとするとマルゼンが話しかけてくる。

 

「ねぇ、あなたトレーナーのための服とか持ってないの?もっとイケイケな服を着ないと鈍感な人は気が付いてくれないわよ?」

 

「きゅ、急になに?私はトレーナーがす、好きではあるけど……そんなやましい感情はまだないもん」

 

「あら、おしゃれな服って意味合いだったんだけど……それに『まだ』ねぇ」

 

 やられた、顔が沸騰するように熱くなる。

 

「ッ!マルゼン!」

 

「怖い怖い、ちゃんと選んであげるから」

 

 あなたジャージとかばっかでしょ、と付け足される。

 うん、ぐうの音もでない。

 ぐぅ……でたわ。

 

「ステラ……」

 

 三人が呆れた目で見てくる、生物の本能だ、腹が減ったんだから仕方ない。

 

「腹が減っては戦はできぬ、ともいうし……先に何か食べるかい?」

 

「そうしよう!」

 

 カフェに入って注文をする。

 普通にお腹が減っているからウマ娘盛りだ。

 にんじんハンバーグは食堂のもいいが、たまにカフェのも食べたくなる……罪な料理だ。

 うーん周りの視線が少し気になるな。

 一応有名ではあるからサングラス程度には顔を隠しているんだけど。

 ルドルフとかマルゼンのオーラがすごい、後ゴルシちゃんはなんでドリンクバー混ぜてんの?多分君のは悪目立ちってやつだよ。

 

「ねぇあそこにいるのって……ルドルフさんじゃない?マルゼンさんもいるし、金髪の人ってステラさん?」

 

 うーん、ヒソヒソ声のつもりなのだろうが……ウマ娘の聴力は高いのだよ。

 

 料理が届く……うむ!でかい!

 やっぱりにんじんハンバーグはデカければデカいほどいいと思う。

 出されたハンバーグを食べる、食べる、食べる。

 食べてる途中でゴルシに食べかすを指で取られて、食った。

 周りから黄色い悲鳴があがる、こいつ……自分の顔の良さと私がクールだと思われてるのを逆手にとってファンサしやがったな……。

 正直ご飯は静かに食べたいのでいい気分ではない。

 さっきから私のトレーナーに関してヒソヒソしてるのも聞こえてくるし。

 

「そういえばステラさんって、足が……、そうよあのトレーナーが……」

 

 雑音だ、私のトレーナーを悪く言うな。

 ルドルフが頭をなでてくる。

 

「……なに?」

 

「いやなに、お姫様が少し不機嫌そうだったのでな」

 

 こいつらはなんなんだ、私を餌にファンサをするんじゃないこのイケメンどもめ。

 そそくさと食べ終わりカフェを後にする。

 

「今度こそ服を探す、トレーナーに見てもらえそうなのを選ぶんだ」

 

 マルゼンも選んでくれるって言ってたし、面倒見がいいマルゼンならきっとセンスがいいのを……。

 

「気合入ってるわねぇ、これなんてどう?」

 

 わぁすごい昭和臭。

 忘れていた、マルゼンは良くも悪くもセンスが独特なんだ。

 とりあえず軽く流しつつ、服を選ぶ……。

 うーん、私のセンスは正直あてにならない……ルドルフが選ぶと人妻感が……。

 ゴルシちゃん……ゴルシちゃんってセンスどうなんだ?今日のを見る限りめちゃくちゃセンスはありそうだけど。

 

「ステラ!これなんてどうだ?」

 

 受け取った服は……黒いコート、白のセーター、茶色のスカートと……なんだと……?服のレベルがたけぇ。

 

「すごいかわいいし、大人っぽい……」

 

「これならあの鈍感トレーナーも行けるだろ!」

 

 そそくさとレジに向かい一式を買う、ゴルシちゃんには感謝しなければ……!

 各々が買い物を終わらせたところでゴルシちゃんがいないことに気が付く。

 

「あら?ゴルシちゃんは?」

 

「え?さっきまで私と一緒にいたけど……あれ?」

 

「電話をかけてみよう、闇雲に探すよりいい」

 

 電話を聞いている感じどうやらゲームセンターにいるらしい。

 ゴルシちゃんがもどってきた。

 

「お前らのぬいぐるみあったわ、どうせならゲームセンターよってから帰らねぇ?」

 

 どうせまだ時間はあるし……あそぶならとことんだ!

 ゲームセンターには音ゲーやシューティングゲームなどいろんなゲームが所狭しと並んでいて、目移りしてしまう。

 

 とりあえず……

 

「音ゲーしようぜ!」「写真を撮るのはどうだろう」「クレーンゲーム行きたいな」「レースゲームしましょう!」

 

「「「「ん?」」」」

 

 全員バラバラである。

 結局とりあえず全部やろうみたいな感じになった。

 

 ……

 

 帰りの車、みんなすっかり楽しんで疲れている。

 ゴルシちゃんははしゃぎすぎたのか、ルドルフは日ごろの疲れからか……すでに夢の中だ。

 

「ねぇステラ」

 

「ん?」

 

「あなたは……ウィンタードリームトロフィーを最後にするって言ってたけど、本当に後悔しないの?」

 

 後悔か……。

 

「後悔ばっかりだよ」

 

「じゃあ……どうして」

 

「きっと速く走れないと、私が楽しくないから」

 

 すごいかっこいいレースをして、賞をもらって……。

 もうそれじゃあ満足できない。

 私の欲しい言葉をくれて、私の走りに惚れ込んでくれて、私のために全力になってくれる、あの人の隣にいたい。

 

「失望させるのは嫌だから」

 

「……もうこれ以上は言わないでおくわ、湿っぽいのは終わりにしましょ……次からあなたと私はライバルで、勝たなきゃいけない相手よ」

 

「うん、絶対負けないから」

 

 ……

 

 トレーナーの自室まで来ると急に後ろから声をかけられた。

 

「ステラ、楽しんできたか?ゴルシちゃんから連絡が来ててな『あたしが相手するから任せろ』だってよ」

 

「ゴルシちゃんが……」

 

「あとこれは俺からのプレゼントだ」

 

 渡されたのは……ミサンガ?

 

「怪我しませんようにってな」

 

「ミサンガってちぎれた時に願いが叶うらしいけど、怪我をしないようにってなったらどういうときに切れるんだろ?」

 

「さぁ?まぁお守りって思って持っててくれ」

 

「どうせならトレーナーが付けてよ」

 

 右手をトレーナーに向けて差し出す。

 

「俺が?つけ方なんてわからんぞ」

 

「てきとうに、レース中に簡単に解けないようにしてくれればいいよ」

 

 ミサンガが付けられる、何回か腕を振って……‥うん、ほどけないな。

 

「ありがとう!トレーナー!」

 

「明日こそトレーニング再開だ、気合入れていくぞ」

 

「おー!」

 

 気持ちも切り替えれた、ウィンタードリームトロフィーに向けて、走らなくては。

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