星は暗闇で輝く【完結】   作:一口さん

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流れるように書かないと文章が出てこない


T2、無能

 俺もロスには毎日会いたかった。

 だがいくら実績があろうと担当がいないままの俺を放置することはトレセン学園にはできないことだ。

 ……理事長から呼び出しを貰う。

「依頼ッ!担当がいない今、君は仕事がない状態だ、このままでは学園に置いておくこともできん……そこでだ!君にリギルとスピカの補佐をしてほしい!」

 

「補佐……というとサブトレをしろってことですか?」

 

「その通りです、傷心のところ申し訳わけありません……」

 

「いえ、仕事をしてないのはこちらですから……」

 

「幸い、スピカやリギルのトレーナーはあなたが悪いなんて思っていませんから、どうかお願いしますね」

 

「はい」

 

 リギルとスピカのメンバーの記録取りがメインの仕事になりそうだ……。

 スピカはともかくリギルはメンバーが多く正直きつかった。

 計測とメモが終わり、タイムをまとめるところまでやりたかったが、顔色が悪いことを指摘され、明日明後日は休めと怒られて自室に戻された。

 ふらふらと部屋の中に入る……。

 悪夢とつらい現実に板挟みになっていた俺は……頭痛と吐き気に襲われて崩れるようにソファに倒れこむ……。

 薄れゆく意識の中で、今日は顔を出してやれなかったステラの事を思い出す。

 苦しい、つらい、それでも彼女の顔を見たいと思った。

 無理やり寝かせたのではなく、疲れから眠った体はあっさりと意識を手放した。

 

 俺自身が語り掛ける。

お前は彼女に釣り合わない

 

 違う……。

 

 俺自身が語り掛ける。

お前は凡人だ、役に立たないただの凡人だ

 

 違う。

 

 俺自身が語り掛ける。

お前は何もなせない、何もできない

 

 違う!!!

 

『『『お前は無能だ』』』

 

 俺は……!俺は!

 

『ねぇトレーナー』

 

 ス、ター?

 

『私、もう走れなくなっちゃった……全部、全部トレーナーのせいだよ』

 

 ごめん、ごめんよロス……君が走れなくなったのは俺のせいで、君は何も悪くない、俺が全部悪いんだ……。

 俺がいたから……俺が……!

 

「……でも、それでも私はトレーナーを信じてる」

 

 ……え?

 

「ロス!」

 

 いつの間にか握っていたマーガレットの耳飾りを眺めて状況を確認する……。

 まだ頭が痛い……時計を見ると時間は変わってないように見えるが、すでに日付が変わっている……二日以上眠っていたようだった。

 

「はぁ……はぁ……」

 

 動悸と眩暈がひどい。

 しばらくは動けないし、病院に行くのもきつい……。

 すでに三日行けてない……いっそ休んで明日、来れなかったことを詫びよう。

 そう思ってもう一度眠ろうとするとゴルシから電話がかかってくる。

 

「ゴルシちゃん……どうしたの?」

 

「……お前、一昨日昨日今日と会いに行ってないな?」

 

「なんでそれを「声を聞けばわかる」

 

「……ゴルシちゃんにはかなわないな……三日前動いてからかな、疲れが取れなくてね……気が付いたら気絶してた」

 

「気絶って……おい本当に大丈夫かよ……まぁてきとうにトレーナー名義で伝言しといたぜ『しばらく会えないかもしれない、必ず学園にいるから足を治せ!』ってな」

 

 彼女は破天荒というかつかみどころがないけど、やっぱり気づかいはすごい

 

「……本当にありがとう」

 

「おう、このゴールドシップ様に任せて、お前はしばらく休め」

 

「そう……させてもらうよ」

 

 ……

 

 3日がたった。

 サブトレまがいの仕事も慣れて疲れをためることも少なくなった。

 体調は少しマシになったろう……。

 これなら動いても大丈夫……なはずだ。

 ……ロスに会いに行くか。

 病室までの足取りは重く、行かなかった日数分の重い足かせが付いてるような感覚だった。

 扉を開けるのに妙な緊張感に襲われ心臓が引き締まる感覚がある。

 ……扉を開けてから先のことはほとんど覚えてない、彼女の笑顔が見れたことだけはしっかりと覚えているけど。

 例え来れる日や時間が限られてもロスに顔を見せるようにして、悲しませないようにしないといけない……。

 そう心に誓った。

 ……でもそう現実は甘くなかった。

 

 ・・・

 

 仕事が片付きやっと病院に来れた日……。

 知らないウマ娘が病院前に立っていた。

 どうやらロスのファンらしいが、俺のことが許せないようだった。

 

「病院には入れさせないわ、あなたのせいでステラ先輩は怪我をしてあなたのせいで治らない、きっとそうよ!」

 

「俺は無力だし無能だ、だが彼女のトレーナーだ、俺が会うことがどうしてダメになる」

 

 いくら問いただしても答えてもらえず強行突破しようとしたが通してはもらえなかった……。

 ウマ娘にただのヒトが力でかなうわけがない俺は……諦めて帰ることしかできなかった。

 情けない話だ……。

 

 ・・・

 

 ルドルフとゴルシに事情を説明すると、最悪マスコミに捕まるかもしれないということで俺は行けなくなってしまった。

 二人は何度も会いに行ってくれているようで……本当に頭が上がらない。

 俺ができることは彼女の場所を作っておくこと。

 ……会えなくなってから日に日に悪夢が強くなっているような気がする。

 もうすぐロスが入院してから一ヶ月たつ……ロスは異常な回復を見せ、走れないと言われていた足は完治とまではいかないが走ることもできるようになるとルドルフから伝えられた。

 その知らせを直接聞けないのは残念だが、ロスがもう一度走れるのはとても嬉しい……。

 

「ゴホッ!ゴホッ!……」

 

 咳き込むことが増えた気がする。

 まだ大丈夫だと思っていたが限界が近いのかもしれない。

 でもロスが戻るまではこらえなければ……。

 

「あなた……また顔色が悪いんじゃない?」

 

「東条さん……大丈夫です、気分はいいままですから」

 

「あんまり無理はするんじゃないわよ?私や沖野はあなたの話があらぬ噂だってわかったし、彼女……ロンリーステラを迎えてやるんでしょう?しっかりしなさい」

 

「はは……ありがとうございます」

 

 その日の夕方、ゴルシから連絡があった……。

 ロスの退院の日が決まったとのことだった。

 よかった……。

 これから忙しくなる、ロスをウィンタードリームトロフィーに勝たせるためにリハビリとトレーニングの内容を再調整する。

 沖野トレーナーに頼み込んでウマ娘の骨折時の資料もらい、それと自身の管理しているファイルを引きずりだして必要なトレーニングを出してメニューを作っていく。

 

 ・・・

 

 ロスの退院の三日前になった。

 俺は完璧に仕上げたトレーニングメニューを部屋に置いて理事長にロスのトレーナーに復帰するつもりだと伝えに行くことにした。

 足取りは軽いつもりなのに自分が踏み出そうとしている感覚と足が合わない……。

 

「あっ」

 

 やっぱり神様は残酷だ。

 階段から足を滑らせ、さかさまにゆっくりと落ちていく景色を見ながら俺はそう思った。

驚いたロスの顔が見えた気がした。




例のごとく誤字脱字チェックおねがしゃす

感想ももちろん待ってますので是非に~
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