Next stage of another dimension 作:烊々
超次元ゲイムギョウ界と神次元ゲイムギョウ界を行き来するための次元を超える光の柱のようなゲート。
タリの女神の件で肥大化し、次元間の移動を容易にした光のゲートであったが、猛争事変が起こる前ぐらいにはほぼ消えかかっており、猛争事変が収束した頃には完全に消えてしまっていた。
しかし、そのゲートは本来プラネテューヌが一定数のシェアを稼ぐことにより、それぞれの次元のイストワールが交信して繋がれるものであったため、次元間の移動法が失われたわけではなく、ネプテューヌとプルルートは遊ぶために、そして遊び終わって片方が元の次元に帰るために、度々クエストなどでシェアを稼いで次元を超えていた。
そして、今日も今日とて超次元へ遊びにやって来ていたプルルートが再び神次元へと帰るためのシェアを稼ぐため、ネプテューヌとプルルートの二人でモンスター退治のクエストに勤しんでいたが。
「くっ……!」
「なんて強さ……!」
女神パープルハートと女神アイリスハートは、苦戦を強いられていた。
彼女たちの目の前に立ちはだかるは『朱雀』。変身した守護女神ですら苦戦する程の強さを誇る、ゲイムギョウ界最強の鳥系モンスター。
「キィーーッ!」
その紅蓮の翼で羽ばたくだけで、灼熱の熱風を帯びた風が巻き起こり、ネプテューヌとプルルートの体力を奪っていく。
「モンスター駆除程度のクエストだと思ったら、こんなに強いモンスターがいたなんて……」
「ちぃっ、鳥風情のくせに生意気ねぇ……っ!」
ジリ貧の戦いを強いられる女神二人。
しかし、余裕を失っているプルルートに比べ、ネプテューヌはまだどこかに余力を残しているかのような立ち振る舞いをしていた。
(正直……ぷるるんの前でこれは使いたくなかったけど、これ以上時間をかけるわけにはいかないし……仕方ないわね)
「『ハイパーシェアクリスタル』! 『ネクストプログラム』起動!」
ジリ貧の状況を打開するため、ネプテューヌはネクストパープルへと姿を変えた。
「ねぷちゃん……その姿……」
「下がっていてぷるるん。一気に決めるわ」
ネプテューヌはネクストフォームへの変身によって強化された身体で、通常の女神化では近づくことが困難な朱雀が巻き起こす熱風を物ともせず、一直線に突き進む。
「はぁぁっ! 『ネプテューンブレイク』」
そして、通常の変身の比ではないシェアエネルギーの出力から放たれる必殺剣技が朱雀を捉えると、目にも留まらぬ勢いで耐久値を削り切り塵に還す。
「ふぅー……クエスト完了だね。おつかれぷるるん。帰ろっか」
「……うん」
「これで次元を超えられるぐらいのシェアは充分稼げたでしょ」
「そうだね、ねぷちゃん」
戦闘を終え、変身解除した二人は、そのままダンジョンを後にする。
しかし、前を歩くネプテューヌは気づいていなかったが、プルルートの表情は暗く険しいものだった。
(『下がっていて』かぁ……)
先程のネプテューヌにとっては何気ないものであったその言葉が、プルルートの心には深く突き刺さっていた。
*
「〜〜〜〜なんてことがあったんだけどぉ」
プルルートは神次元のプラネテューヌ教会に帰宅後、神次元のノワール、ブラン、ベールを集め、真剣な表情で事の経緯を話した。
「ネクストフォーム……」
「女神化を超えた更なる変身……か」
猛争事変が引き起こされ滅亡寸前の危機に陥った超次元と比べ、タリの女神を倒した後の神次元は平和そのものであった。
プルルートはともかく、ノワールもブランもベールも鍛錬を欠かしてはいないが、鍛錬だけでネクストフォームほどの域に辿り着けている筈もない。
「ううん、ネクストフォームだけじゃないよ〜……」
「プルルート……?」
「ここ最近ねぷちゃんと一緒に戦ってて思ったけど、今のあたしじゃネクストフォーム抜きにしてももうねぷちゃんに勝てないかもしれないよ。ねぷちゃんだけじゃなくて、ぎあちゃんもあたしたちと神次元で戦ってた頃よりもすっごく強くなってたしぃ……」
皮肉なことに、守護女神の成長は世界の危機が齎すものなのかもしれない。
「……私たちが全力で戦ったのなんて、タリの女神以来あったかしら……?」
「恥ずかしながら、わたくしはありませんわ……」
「……私もよ」
「どうしよう。あたしねぷちゃんたちに置いていかれたくないよ〜」
ノワールもブランもベールも、数年前の強さは超次元の自分たちと並んでいた。
だが、今は…………
「……」
その答えなど既にその場にいる者全員がわかっている。
しかし、誰も言葉にはしたくなく、その場を静寂が支配する。
「やるしかないわね、修行を」
静寂を破ったのはノワール。
「修行……? わたくしもノワールも鍛錬を欠かしてなどいないでしょう? 今更その程度のことでどうにかなるとは……」
「いいえ。私たちが個人個人がやる程度じゃなくて、私たち全員で全力でスキルアップのために修行するの。どう?」
「悪くないわね。確かに、限界を越えるなら、私たちが一つに纏まる必要があると思うわ」
三人の女神は志を共にする。
「……そういうわけだけど、プルルートはどうする?」
最後の一人、プルルートにもその誘いの手は差し伸べられる。
「やる!」
そしてプルルートは、いつものおっとりとした様子からは考えられないぐらい力強く返事をするのだった。
「びぃも! ぴぃもしゅぎょーするー!」
「そうね。あなたもこの次元の守護女神だものね」
こうして、神次元の守護女神たちによる、限界を超え新たなステージへと登るための修行が始まるのだった。