お呼びじゃないよカバネさん!   作:昆布たん

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ぎっくり腰を患ったので初投稿。


【壹駅目】カバネだョ!全員逃走

 小さい頃、私には仲の良い同性の友人がいた。

 とは言っても、彼女とは約3ヶ月ほどの付き合いしかなく、流浪だった彼女とその母親はすぐに次の場所へ旅立ってしまった。

 

 言うまでもなく、理由はカバネの襲来を避ける為だった。

 彼女達は以前、住んでいた村をカバネの群れに襲われ、からくも逃げ延びた過去があるらしく、その時の出来事を教訓に、特定の住まいを持つ事は無いのだそうだ。

 

 彼女の借家に遊びに行った際、そんな経緯を彼女の母親から聞かされた私だが、当時の私は前のめりで聞いていた。

 無理もない。『彼女たちがカバネに襲われる寸前、駆けつけた一人の男がカバネを一撃で屠り、守ってくれた』なんて英雄譚を聞かされては、純真な子供の感性に突き刺さらないはずも無かった。

 

 それからは、母親が毎日夜の決まった時間に同じ方角へ向けて三十分ほど祈りを捧げる習慣を作ったらしい。

 母親曰く、『その時間が当時恩人に命を救われた時間だから、彼と彼に巡り合わせてくれた神の御加護に感謝の念を込めてお祈りをしている』のだそう。今思えば、あの時の様子を事細かに語ってくれた母親の表情には、恩人への謝恩や憧憬の他に何か別の感情も含まれていた様な気もする。

 よりその恩人に憧憬を抱いた当時の私は、彼女の母親に倣い、彼女の家に赴いた日は共に祈祷するのが通例となっていった。余談だが、毎度祈りを終えた後に、ほう、と息をついて頬が上気していた母親のあれは一体何だったのだろう。

 

 

 あれから十年。十五の歳を迎えた私、鰍は、いま蒸気鍛冶として、ここ顕金駅で生駒くんや逞生くんを始めとした気の合う同僚達とともに充実した日々を過ごしている。

 彼等は女手の私を敬遠することなく、先輩として色々なことを親身になって教えてくれた。そのおかげで、漸く一人前となった私も時折それなりの仕事を任せてもらえるまでになり、生駒くん達には感謝の念に尽きない。

 

 陽気な同僚達の皮肉まじりの挨拶へ無愛想に返し、相変わらずの仏頂面で重役出勤を果たした生駒くんが、私と逞生くんのもとへやって来た。

 

「よっ! 人気者! その様子だと昨日も遅かったみたいだな」

「るせえ、ほっとけ」

「おはよ、生駒くん」

「ああ、おはよう」

「んもうっ、朝なんだからしゃきっとして!」

 

 寝不足そうな生駒くんの気を引き締めさせる為、私は彼の背中を叩く。

 

 今日も一日、良いことありますようにっ! 

 

 

 

 

 その夜。

 突如発生した途轍もない轟音と震動から数分後、カバネの襲来を知らせる鈴鳴りが顕金駅中に響き渡り、先程まで賑やかな喧騒に包まれていた駅は、たちまち恐怖と困惑に晒された人々の絶叫へと変わり果てた。

 

「鈴鳴り……!? まさか、カバネが来やがったのか!?」

「グズグズするな! 第一班は入り口の守りを固めろ! 二班は通路、三班で甲鉄城を守るぞ! 直ちに配置につけ!」

 

 ひと仕事を終えて一服していた駅構内の人員達にも激震が走り、目の前で武士の人たちが慌てふためきながら声を張り上げる姿は、私たちに更なる現実味と不安を齎した。

 

「どうなるのかな……」

「生駒は!?」

「多分、昼間に武士の人たちに連れてかれてから牢屋に閉じ込められたままの筈──逞生くん!? 何やってるの!?」

 

 言うが早いか、私の言葉を待たずに駆け出して行く逞生くんの姿が。恐らく生駒くんの安否を直接確かめに行くつもりなのだろう。

 

「見りゃわかんだろ! 生駒を連れて来るんだよ!」

「外にはカバネがいるんだよ!? 危険過ぎるよ!?」

「だからって見捨てていけるかよ! お前はここで避難してくる人たちの誘導を頼む!」

「ちょっと、逞生くんてば! ──……お願い、無事に戻って来て……っ」

 

 私の必死の呼び止めに応じることなく、駅の外へと姿を消した逞生くんと、未だ安否の分からない生駒くんの無事を、私はただ祈るほか無かった。

 

 

 

 介

 

 

 

 カバネでございまーす! (サザエさん感)

 

 最近は武芸を嗜んでおり、遂には拳が音を置き去りにするまでに上達しました。その過程でいくつかの草原が動物一匹寄り付かぬ荒れ果てた大地と相成りましたがなんのご愛嬌。瑣末なことですしお寿司! 

 

 やはりこの体は疲労も眠気も空腹も感じることは無く、日がな一日四六時中修練し放題! あのハンター協会会長も臍を噛むこと請け合いでしょうな。

 

 おっと、皆まで言わんとも大丈夫だ。メインキャラとの邂逅に間に合わなくなってしまわないのか、とか、それただの現実逃避じゃね? という懸念やツッコミは察するに余りある。

 あんまり言わないでよ。おれも割とガチで焦ってるから。

 

 いや、やり始めたら止まらなくなったというか気付いたら四季が何周してたとかほんと今更だけど、本編終わってたらまじどうしよう。いくらプァ–フィクトゥボリィ(ケイン感)のおれでも駿城に一年以上先を走られてたらもう追いつけないよ。

 不眠不休どんとこいだけどそれと忍耐は別だからね。カバネさんだって中身は人間なんだからそりゃずっと同じ作業の繰り返しは飽きるよ? 別のことをしたくなる時だってあるんだよ? ──おい、鍛錬の話を持ち出すのはやめて貰おうか。

 

 いやほんと辺り見回した限り土と木と草しかなくて草生える。あの村に出くわして以降、いくら彷徨っても木、木、木。適当に歩いたらその内麓に出るかと思ってたけど一向にそれらしきもん見えてこないのはなんなん? 

 泣いたよ? こんな大層な図体した化け物が森の中でさめざめと泣いたからね? ウォンウォンて。涙は出なかったけど。お陰でおれの周辺から生き物の気配が消えてすっかり独り法師──いって。いや、痛く無いけど。

 

 そんな不遇の境地に立たされた憐れなオオカバネを嘲笑うかの様に、一本の折れた枝がおれの頭に落ちて来た。何なんだよ、木にまでこんな扱いかよ。

 

 所詮おれなんかこんな棒切れと同じ──……ん、なんか着想が得られそうな……棒……スティック? いや、違う杖……ステッキ…………ファッ!? 

 

 テッテレー♪ 『たずね人ブランチ〜!』

 

 よしっ、これで複数回枝を立てて、一番倒れた回数が多かった方角に進むこととしよう! なあに、不眠不休の体で走ればその内山を抜け出て近くの人里か、もしくは線路が見つかれば駅まで辿り着けるやろ! 

 そうだよ、ハナからこうすれば良かったんだよ。全く、良案っつうのは正義のヒーローみたく遅れてやって来るもんなんだよなあ。

 

 ヒャッハー! 待ってろよ推しカプ! その甘々なイチャコラでわいの荒んだ心を癒やして貰うズェ……! 

 

 さあて、気になる結果はー? ジャガジャン! 

 ↑一回、↓一回、→一回、←一回、↖︎一回、↗︎一回、↙︎一回、↘︎一回。

 

 ……こ、これじゃあ正確性に欠けるな。よし、回数を増やしてもう一度だ! 

 ↑二回、↓二回、→二回、←二回、↖︎二回、↗︎二回、↙︎二回、↘︎二回。

 

 これなら! 

 ↑三回、↓三回、→三回、←三回、↖︎三回、↗︎三回、↙︎三回、↘︎三回。

 

 次こそ! 

 ↑四回、↓四回、→四回、←四回、↖︎四回、↗︎四回、↙︎四回、↘︎四回。

 

 っしゃおらあ!! 

 ↑五回、↓五回、→五回、←五回、↖︎五回、↗︎五回、↙︎五回、↘︎五回。

 

 おらっ! 

 このっ! 

 どうだ! 

 ぬうんっ! 

 ドラァッ! 

 オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ!! 

 

 

 

 

 ……つまり北だな。(ヤケクソ愛北者感)

 

 旅は道連れ世は情けなんて言った奴誰だ。道連れの同行者もいなければおれに対する情けなんかこの世のどこにもないぞこの野郎。

 

 

 

 

 

 

 歩き続けて数時間。鬱蒼と茂っていた木々の数は少なくなったものの、道のりはあいも変わらず急勾配。しかも夜なので辺りはめっさ静かでより孤独感が際立つ故にカバネさんションボリ皇帝ですよ。

 

 何かひたすら北が正解だったみたい。愛北者ってやっぱ凄いね。ビッグサルの言う通りだったよ。でも今まで探索に明け暮れた数年の涙ぐましい苦労が今この瞬間、全部水の泡となったわけだがね。

 まあ? そんな小さなことを気にする程器小さくないし? 山での生活もそれなりに楽しかったし? 特訓も出来たから寧ろ感謝してるぐらいよ? 

 

 そんなことを自分に言い聞かせてると、何やら不思議な匂いが風に流れて鼻を衝いた。うーむ、どこか懐かしい匂い……そしてこのリズミカルな重々しくもどこかアクティブに富んだ駆動音。極め付けはなんと言っても──

 

 ――フォ━━━━ン! 

 

 汽笛キタ━━━━ヽ(゚∀゚ )ノ━━━━!!!! 

 

 今なら鉄オタがこの音で舞い上がっていた気持ちが分かるぞ! こういうことだったんだな! ←違う

 

 前言撤回! 山籠りなんかクソだよクソ! だーれが好き好んで原始生活なんか営んでられっかっての! 何が特訓だよおれ様の貴重な時間返せやクルルァ! カーッ、ペッ!! (゚д゚(  人  ) =3 ブッ※あくまで個人の感想です。

 

 とにかくこれで移動がうんと楽になるわ。この駿城に乗ればどっかしらの駅には着くじゃろうて。

 

 やっと久方ぶりに生の人間見れるよお。

 ていうかあの山奥じゃカバネすらあの村以外で出くわさんかったからなぁ。人恋しさが半端じゃないのよね。まあカバネに遭遇したところでぶっ殺すだけの話なんだけどもさ。

 

 というのもこの背中のエスカリボルグ。どうやらこいつでカバネを殺せば殺すほど比例する様におれの力がグングン漲って来んのね? しかも心なしか再生も凄い早くなってる気がすんの。

 そこら辺に落ちてた誰かさんの刀拾って自分に試し斬りしてみたらまさかの一瞬で治癒。怖かったけど興味本位で首も跳ねてみたら一瞬意識は飛んだものの、体組織みたいなのが首と胴から伸びてまさかのすぐに結合して意識覚醒。音グチュッとかいったしキモすぎワロえない……。首繋がる感覚もすんごい気持ち悪かった……あんなの二度とやらんしやられとうない。

 

 とまあ余談はさておき、ついにおれも駿城デビューかぁ。あくまで物資の運搬がメインだから、乗り心地は据え置きだろうかね。

 まあ一文なしなんで無賃乗車は確定だが背に腹はかえられん。そもそも唯一の駅間の移動手段て設定だけど運賃とかってあるのかな。あんな大きな乗り物動かしたり、駅毎にメンテ入るんだろうからコスパが悪い意味で恐ろしい気はするけど。

 

 なんにせよ、一先ず乗り込むとしますか! 輝け! 一ヶ月で会得したレアスキル! コンセントレ──っべ、石に躓いた。

 なまじスピードがついてた分、ろくな受け身も取れずに気分はまるでガキに容赦なくド突かれる大玉転がしのよう。あれたまに蹴っ飛ばすやついるんだよなあ。ルールは守ろうね。

 

 傾斜を大の大人が転がり続けるみっともない醜態を晒しつつ後頭部を線路に強打。痛みは無いが、爆発的な回転力によって頭と視界がぐわんぐわんしてる。

 うわー久しぶりの感覚の気がするこれ。前世で長らくこんな運動していなかった証拠じゃん? てかどう考えてもこんな偏った知識と記憶はくそド陰キャのインドア確定ですねあざっす。

 

 よし、平衡感覚も戻りかけきたところで、今夜私がお世話になる駿城の御姿でも拝見するとしますか。

 ふんふむ。緑がかった丸目のヘッドに? 周辺にへばり付いた光が時折蠢いてるな。えーと……何だっけな、名前……あ、そうだ! ふそ──っぶな! おいゴルァ! 免許持ってんのか! 

 

 なんか猛スピードで撥ねられそうだったから寸でのところで躱して最後尾に乗り込めたわ。超冷や汗もんだったぜ、出ないけどな。

 

 さてさてさーて、上手く中へ乗り込んだは良いがいかんせん外も中も既にお仲間だらけ。

 

 遂に旅のお供が出来たよ! やったねたえちゃ──おいやめろ! 

 

 いきなり踏み入って来たせいか無数の光る瞳孔が俺に集まってくる。当たり前だよなぁ? 

 しかしこれどう見てもあの顕金駅を未曾有の危機に陥れた扶桑城センパイじゃないっすか! ウッス! カバネら共々侵略の準備は万端ってわけね。

 そかそか、じゃあ†悔い改めて†

 

「ギャアオエッ!」

 

 てなわけでこれより車内清掃を行います。ゴミだいぶ溜まってんじゃんアゼルバイジャン。

 

 手近な一体を頭からぶっ潰したら、カバネたち動揺のあまり固まっちゃってるよ……終いにはなんか顔を見合わせて『あいつヤバくね?』みたいなこと話し合ってるし(適当)

 まあ、短い付き合いだったけど、お前らと旅が出来てよかったよ。おれからのせめてもの感謝の気持ちだ、嬉しいダルルォ!? 

 

 瞬間、一斉に背中を向けて脱兎の如く逃げ出すカバネの群れ。

 

 おいゴルァ! 天下のカバネが逃げんな! 何だお前根性無しだな(棒読み)

 みんな物凄い勢いで我先に次の車輌目指して逃げ惑ってるんですけど! これじゃまるでおれが悪いことしてるみたいだろ! 

 

 今更被害者ヅラして逃げんと往生せえや! 死にたくないなら始めっから人なんざ喰ってんじゃねえぞタコスケ! つかお前らもうとっくに死んでんだから二度も三度も同じだっつうの! 

 

 グヘヘ……顕金駅までどのくらい掛かるか知らんが暇潰しの相手になってもらうからな! 

 

 

 

 

 ぬわあああん疲れたもおおおおん! (気分的に)数多すぎィ! 

 ヤってもヤっても減ってる気がしない。そりゃあんな短時間で顕金駅が廃駅になる訳だ。

 それよりお前ら人襲う時より素早いな! 屍の癖に生への執着が凄まじいぞ。

 

 一応扶桑城自体を止める事も出来なくはないけどさぁ、それやっちゃうとぉ、顕金駅が廃駅にならんくてぇ、おれの生き甲斐がぁ、無くなっちゃうからぁ、無しよりのぉ、無しテキな? (ギャル調)

 要するに最小限の被害で顕金駅をぶっ潰す作戦なのだ! (ゲス笑い)

 た、多少死者は抑えてあげる訳だし、非難される謂れは無いんだからねっ! 

 

 自己ブリーフィング(ただの言い訳)も終わったし、残りのカバネを出来る限り──あれ、なんかいきなり体が車外に放り出されたんだけど。

 

 ぐえぇ! 咄嗟のことで受け身取れなかった……あーもう、手足全部折れちゃったよ。顔もおもっくそ背中向いちゃってるし。

 

 ……なんか、車輌こっちにグルングルン回りながら落ちてきてね? おいバカやめろ! まだこちとら完全に回復してな──

 

 

 

 介

 

 

 

「あ、菖蒲様ー!」

「桃矢!」

「ゔわあああぁああ!!」

 

 まさか、こんな日が訪れるなんて……。

 

 見慣れた顕金駅の街並みが、カバネよって瞬く間に蹂躙されていく光景を前に、私はただ立ち尽くしていた。

 目の前の受け入れたくない現実と、抗いようのない恐怖に冷や汗が吹き出し、手足に震えを覚えながら、私達はカバネの侵攻を足止めしつつ、甲鉄城の様子を見に先立ったお父様からの合図を待っていたが。

 

「菖蒲殿! いつまでこうしておられるのか! 早く甲鉄城に向かわんと間に合わんぞ!」

「し、しかしお父様は合図を待てと……!」

「合図などもうくるものか!」

 

 この間にもカバネ達はすぐそこまで迫って来ている上に一向に合図も上がらず、一部の六頭領たちが早急に甲鉄城へ向かうよう問い詰めて来る。

 膠着状態とはいえ、徐々に圧され始めている状況に住民の不安と我慢は最早限界に達しているのも事実。

 

 お父様の合図を今暫く待つか、避難を始めるか決めあぐねていたその時だった。

 

「そのお喋りまだ続くの?」

 

 振り返った先には、先程まで可愛らしい着物を着ていた様相から一変、武装した無名さんの姿が。

 子供の出る幕ではない! と手を伸ばした大の大人を軽々と制圧すると、囮となってカバネたちを誘導し、避難経路から引き離して行く。

 すかさずこの機会に乗じ、皆が我先にと避難を始める。

 

 呼び止めも虚しく、次々と甲鉄城へ急ぎ向かう人々を前に己の無力さを痛感した私は、悔しさを噛みしめるように拳を握りしめた。

 

 その直後。

 

――ウオオオォォオオオオォオオオオオオオン!! 

 

「っ!?」

 

 突如、どこからともなく上がった身の毛もよだつ雄叫び。私は立っていることもままならず、力が抜けてその場に座り込んだ。

 続けて襲ってきたのは、怖気と震え。少しでも抑えようと自分の肩を抱いて堪え忍ぶ。

 

 周りを見渡せば、尻餅をついて腰を抜かす者や、蹲って頭を押さえる者、果ては気絶して泡を吹き出すものまで続出しており、あの雄叫びの凄まじさを鮮明に物語っていた。

 あまつさえ、来栖や吉備土のような手練れの武士でさえも片膝をつくのがやっとの有り様に、先程桃矢がカバネの群に引き摺り込まれた時以上の恐怖を感じ、死の幻覚が私の脳裏をよぎる。

 

「ご無事ですか、菖蒲様!」

「え、ええ……今のは、何?」

「分かりません……しかし、其処らのカバネとは比べものにならない脅威を感じます。ここは一刻も早く、我らも甲鉄城へ向かいましょう!」

「……はい」

 

 来栖の真に迫った打診を受け、私も皆と甲鉄城に避難する決意を固めた。

 

 お父様……どうかご無事で……! 

 

 

 

 介

 

 

 

「おじいちゃんが残ってたよねっ、と……ふぅ。一丁上がり! 時間は……百二十秒……。かなり遅れた……」

 

 目標の百秒以内に終わらせたかったのになぁ。残り一体を忘れて立ち回ってたからその分のロスが出ちゃったかぁ。

 

 ──にしてもさっきの凄い咆哮は何だったの? 全身がピリつくなんて、今まで無かった感覚だった。一瞬あたしも脚を止めちゃったけど、何より気になったのはカバネたちの動きだ。

 奴らはあの雄叫びを耳にした直後、獲物であるはずのあたしに目もくれず蜘蛛の子を散らすように逃げ出した。これも大幅に時間が延びた原因の一つ。

 

 カバネの吸血衝動に勝り、恐怖を植え付ける程の生物……そんなの聞いたことない。でもあの声を耳にしてから、カバネたちの動きは明らかにおかしくなった。一体あの声の主は何物なの? 

 

 ……分からない。これは兄様に報告しておかないと。

 

 もしあれに出くわしたとしたら、私もただじゃ済まない気がする。

 一つだけはっきりしているのは、早くこの駅から出なければ、どのみち私たちを待ち受けるのは死の結末ということだけだ。

 

 

 

 

 

 お、甲鉄城が見えてきた……て、あんなところにもカバネ。

 しょーがない、さくっと倒しますか。

 

 ――グァアウ!? 

 ――ギュァア!! 

 

 ほんと、こんな雑魚に手こずってるようじゃあここの武士もたかが知れてるねぇ。

 ふわぁ〜あ……エネルギー切れも近いし、さっさと中で休もっと。

 

「お、おい、君!」

 

 ん? あ!! さっきの檻のモサモサの人! 

 この人、他の皆とは何か違うものを感じるんだよね。考え方も少し好感持てるし。名前はい、い……ま、いっか。

 

「やっ! なんか、感じ変わった?」

「そっちこそ、その……強いんだ」

「ん〜、少しはね……ん?」

 

 さっき会った時とは違う匂いを感じ、近付いて確かめてみる。

 あれ、この人の匂い……もしかして……。

 

「なに」

「ふ〜ん……やっぱりあんた、普通じゃないね」

 

 何かをする人とは思ってたけど、まさかそんなことになってるとはね。あたしの目利きもなかなかじゃない? 

 

「客車は車庫の中です! 皆さんが乗るまで出発はしませんから! 慌てないで!」

 

 どうやらあっちも漸く着いたみたい。モタモタしてたら残りのカバネが追ってくるだろうし、急いだ方がいいかもね。

 

「皆を連れて来たのか?」

「んーん、勝手に着いてきただけ。ふわぁ〜……乗るんでしょ、あんたも」

「あ、ああ……」

「貴様!」

 

 ん、こんな時にまた下らない問答? やめてよね。

 あーなるほど、武士の人はモサモサの人のことカバネだって疑ってるのか。めんどくさいからさっさと誤解解いとこ。

 

「違うよ。そいつはカバネじゃない」

「なんだと?」

「だから言ってるだろ! 俺はカバネじゃない!」

「うん、カバネじゃない。そんなことより聞いたでしょ、あの雄叫び。あれが来る前にさっさとこの駅を出た方がいいよ。──皆死ぬかも」

 

 

 

 介

 

 

 

 いやぁ死ぬかと思った! 落ちてきた車輌に潰されたのが右半身だったのが救いだぜ! まさに危機一髪ってヤツだな! ←普通なら致命傷

 無論痛みなんぞ無かったわけだが、潰れた半身から引き剥がす時のブチブチィッ! て音がまだ耳に残ってるよ……。まじぴえん。

 

 さすがに再生も欠損の規模が甚大だから十分は掛かった。今度は目標十秒くらいに縮めたいかな。(謎の向上心)

 

 んで、扶桑城が事故ったってことはだよ? この街並みと重工業ならではの鉄臭さから察するに、クォクォア……顕金駅にご到着エーンドゥ、祝! 本編突入ってわけですね!? 

 

 Fooooooooooooo!! ──あ、やべ。歓喜のあまり思わず大声あげちゃったすっげー近所迷惑。

 

 確かここは西門の近くだから甲鉄城は……真反対じゃねえか! 

 まずいですよ! このまま出発されたらおれのやぼ──願望が叶わなくなっちゃうだろいい加減にしろ! 

 

 急げおれ! 推しカプとのご対面まであと少しだぞ! 

 はーい、よーいスタート(棒読み)

 

 

 

 

 悲報。ワイ、間に合わず。

 

 遠回りしてる場合じゃないから家とか色々突き破って走って来たのに、まさかの甲鉄城の姿がぬわぁい!! 嘘ダルルォ!? 

 虎杖くんも真っ青の速度で走ってきたつもりなのに! 気分はキルアきゅんのカンムルだったのに! 

 

 ええ……どうしよ、何としてでもイチャコラ見たいとか息巻いてたけど、具体的なこと何も考えてなかったわ(無計画)

 

 これからどうしていけば……おや? あそこに倒れてるマリモみたいなモサモサ頭はもしや……生駒氏ではござらぬか!? 

 間違いござらん! 生駒氏であろう!? もしかしなくても来栖に追い払われたのかな。

 ごめんねー、あの子根が真面目過ぎるせいか不器用なのよぉ(親ヅラ)

 

「ぐっ……あ、あんたは……?」

 

 わ、やっぱり本物だ! 生きてる! テレビで観るより凛々しい顔してますね! あの、ファンです! いちファンです! カバネだけど! 

 

「早く、逃げろ……っ、甲鉄城なら、ここを出たばかりだ。走れば……っ、まだ間に合う……!」

 

 あ、そっか。生駒くんがいるってことはこれから橋で足止め食らうだろうからまだチャンスはあるってことじゃん。

 まだ神はこのおれを見放してはいなかったようだな。でもこんな体に転生? させたことには一言文句言わせてね。ガッデム! 

 

「俺に構わず、早く行け……っ、まだカバネが追ってくる……!」

 

 あ、それなら大丈夫。ここら辺の目につくカバネは向かうがてらエスカリボルグでちゃんとぴぴるぴーしてきたから!(殲滅)

 

「おい、早く逃げないと……って、ちょ、何だよ!」

 

 いやあ、どうせ行き先は同じ陸橋でしょ? 本編通りならあのアホ堅将のせいで橋降りなくなってんだろうし、早いに越したことは無いからちょっと大人しくしててね。

 にしてもかっるいなー女子かよ。ちゃんとご飯食べてんの? こないだ送った仕送りの中にちゃんと食べ物たくさん入れといてあげたでしょ?(親ヅラ2回目)

 

「話聞いてたのかよ! 俺のことはほっといて、あんただけでも甲鉄城に──ぐえっ」

 

 うるせぇ! 

 耳元でワーワー喚くんじゃないの! そんな子に育てた覚えはお母さんありません!(まさかの3回目、あのやずやでさえry)

 

 待ってて無名ちゃん! 今カバネ宅急便が速達であんたの王子様をお届けするからね! 

 

「なあ……あんたも、強いのか?」

 

 お、そうだな。

 カバネぐらいならゴミ掃除ぐらいと大して変わらんし。

 

 生駒くんに見えるようにサムズアップしてみせる。

 

「だったら……頼みがある」

 

 ん? いま何でもするって言った? ←言ってない

 

「一緒に……やってくれるか?」

 

 やりますねぇ! 

 

 

 

 介

 

 

 

 切替棒との間に何かが挟まり作動せず、動かぬ跳ね橋の前で足止めを食らう甲鉄城に、次々とカバネが衝突する。

 その膂力と速度で生み出される衝撃によって水槽から水が漏れ出し、状況は悪化の一途を辿っていた。

 

「水が無くなったら、甲鉄城は動けない……」

 

 冷却の役割を果たしている水が底を尽きるのも時間の問題だった。歯噛みする運転見習い、侑那に冷や汗が流れる。

 

「待て、どうするんだ来栖!」

 

 四面楚歌の状況の中、何かを決意した来栖を吉備土が止めた。

 

「線路脇に手動のレバーがある。それで橋を下ろす」

「無茶だ! 外にはカバネがいるんだぞ!」

「俺達は侍だ! この命、今捨てずして何時捨てる!」

 

 是が非でも外へ出ようとする来栖と、それを止める吉備土。

 こうしている間にも、カバネたちは甲鉄城へ侵攻の手を全く止めない。

 

 車内は混乱と恐怖に呑まれ、犠牲を出さぬ手立ても無く絶望的かと思われた。

 

「見てください! カバネの中に人が!」

 

 見張りの報せを受け、来栖や吉備土が覗いた先にいたのは。

 

 

「うおおおお!」

 ――グァオェ!! 

 

 次々に襲い掛かるカバネを蹴散らしながら、懸命に手動レバーへと向かう、カバネと疑われた少年。

 

 ――ギ、ギイイィイイ……!! 

 ――ガグゲゲェエ!! 

 

 一方の反対側では、必死の形相で逃げ惑うカバネたちに対し、口笛を吹きながら追い掛け回す一人の不審者。

 その大きな体躯は黒い外套によって膝下まで覆い隠され、右手に持たれた黄金の巨大な金棒に付着している血痕からは、これまで餌食となった数の甚大さを雄弁に物語っていた。

 

 余談だが、その口笛はまるで涙が溢れないように上を向いて歩きたくなるような曲調であったと、ある男が後に述懐している。

 

 閑話休題。

 

 両側で巻き起こる信じられない光景を前に、甲鉄城内の人々は視線を逸らす事が出来なかった。

 

 片やぼろぼろになりながらも、目の前の障害に挑み行く挑戦者。

 片や傷一つどころか汗もかかず間髪入れずにカバネをぶっ殺していく絶対的強者。

 全く違う両者の姿に、人々は畏怖の念を抱き、忘れられぬ記憶を植え付けられたのだった。

 

 少年によってレバーは下ろされ、跳ね橋も作動。

 

「発車します」

 

 この機を逃さず、侑那は再発進を開始した。

 こうして、人ならざる二体の手によって、希望は繋がったのである。

 

 

 

 介

 

 

 

 お、もう五時かぁ。小腹が空いたなぁ(空いてない)

 

 お疲れ生駒くん。今日は飲もうな! 

 ごめん。今日車なんだ(市原隼人似イケメン)

 

 え、めっちゃ泣いてるじゃん。ダメだよ大の男がそんなメソメソしてちゃみっともない(超ブーメラン)

 折角逞生くんがワイヤー伸ばしてくれてんのに俯いてる場合じゃないぞ! 

 

 まあそんなクヨクヨしなさんな。これから君の未来のマイスウィートハニーが駆けつけてくれっから──お、噂をすれば。

 

 ほら生駒くん! 君の愛しい彼女(予定)が迎えに──え、無名さん、何でこっち睨んでるの? 何で銃を向けてくるの? ふえぇ……顔が怖いよぉ……。

 もしや正体バレたか? いやそれは早計が過ぎる。見た目はそりゃ不審者丸出しだが、そう簡単に見破られる筈が──

 

「そんなんで顔を隠したって誤魔化せないよ。あんた、カバネなんでしょ?匂いで分かるよ。……だけど、カバネに理性が残るなんて、聞いたこともない。一体何者なの?」

 

 普通にバレテーラ……。

 そういや人と同族を匂いで判別出来るんだったよね、カバネリって。あれ、でもワンチャン敵認定はまだされてないよね? 味方認定もされてないけど。

 こりゃあ相手への答え方次第だな。喋れないけど。いや喋るというか声出したら一発六根清浄になるからご勘弁願えますかね。

 

「黙ってないで何とか言いなよ。撃つよ?」

 

 黙秘は罪。はっきり分かんだね。

 こうなったらジェスチャーで伝えるしかないよな。

 

 オレ、シャベレナイ、ノド、ダメ。

 どうや! 

 

「──死ね」

 

 ンアーッ! 

 

「やめろ! この人はおれの恩人だ!」

 

 立ち直った生駒くんが庇ってくれた! さっすが主役の生駒くんだぜ! そこに痺れる憧れるぅぅ! 

 

「……恩人? 何言ってんのあんた。こいつカバネだよ」

「だから何だ! この人は自分の危険も顧みず、おれに力を貸してくれた! 人の心が残ってる!」

「今はそうでも、いつか衝動に負けて襲ってくるよ」

「その時は、俺が命に代えても止める!」

 

 ヒュッー! 生駒ヒューッ! 

 取り敢えず首の皮一枚繋がりましたよ、前世のお母ちゃん。

 僕はまだ死にましぇん! ←はよ氏ね

 

 んぉ、無名ちゃんがまたこっち見た。やっぱまだ怪訝そうだわ。

 

「あんた、人喰ったことある?」

 

 なにいってだこいつ。

 んなもんあるわけねえだろカニバリズムなんかあってたまるか!

 一先ず首を横に振っておきますね。

 

「スンスン……嘘はついてないみたいね」

 

 え、すご……匂いでそんな事まで分かっちゃうんだ……カバネリこっわ。どこの石頭長男だよ。

 

「まあいっか。一先ずあんたの処遇は甲鉄城に乗ってから考えるから。ほら、あんたも」

「いや、俺は──って! いつの間にこれ付けたんだ!」

 

 ああ、ワイヤーなら普通に君が蹲ってる時に付けられてたよ。てかあんなのんびり付けられてるのに気付かんとかどんだけ悲嘆にくれてたのさ。

 まあおれだったら床ドンしたりのたうち回りながら泣いてるがな!(自慢げ)

 で、おれはどうしたらいいのでせう? 

 

「何よあんたまで棒立ちして。仮にもカバネなんだから、さっさと飛び乗ったらいいでしょ、っと!」

 

 おお! 見事な着地! 桃白白には遠く及ばんがな。

 よし、おれも続くぞ! シュワッチ! ──あ、これダメなパターンだ。

 

「へ? ちょ──」

 

 カバネを相手のゴールにシュウウウウ!! 超! エキサイティン!! 

 カバネンドール、−50点(スネイプ感)

 

 やっぱまだ上手く力を制御出来ないんだよなぁ。今の完全に跳躍じゃなくてボールの軌道だったゾ。勢い余ってフードまた取れちったし。

 お、でもいまので奇しくも生駒くんが無名ちゃんに覆い被さる何ともエンダァァなことになっとるぞゴチソウサマデス。

 

「今の音は何事だ!」

 

 うわあ、堅物来栖きゅんまで来ちゃったよ、そりゃ派手な音したし当たり前だよぁ? 

 

 この惨状、どうやったら収拾つくの……? (自業自得)




武士A「おい……カバネが逃げてるぞ」
武士B「どういうこと……?」

カバネ「アイヅ、ヤバイ」
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