口寄せ特化一族の末裔ちゃん   作:冗談だぜ、青い人

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血と禁をその手に

 土影邸は岩隠れの里の中で最も大きな建物である。その内訳は土影の居住区や歴史的書物の保管、任務の管理や象徴である意思の石が奉られている場所など多岐に渡る。

 

 だがその用途の多さ故か、部屋を繋ぐ廊下部分はそこまで広くはない。扉上に標識があるため目的の部屋を探すのは容易だが、誰かに見つかった際に単身で逃げるのは困難だろう。

 その代わり一度に動ける人数も少ないのが、せめてもの救いだが。

 

 そして鵺たちは今、ハクリンの案内により禁書庫前まで来ていた。事前の報告通り鍵がかかっている。が、封印術の様な術式は確認されず、念のため一度ドリュウと入れ替わりで呼び出された鹿尊にも見てもらったが特に封印の類はなかった。

 

 彼らの知る由ではないが、岩隠れの封印技術は木ノ葉隠れのソレに比べれば非常に程度が低い。

 それは偏に、木ノ葉が昔渦の国との国交で得た封印術が高水準過ぎると言うのが理由だが。

 

 そしてそれは感知の術に関してもまた、同様である。犬塚や日向、山中と言った名門一族が持つ物理チャクラ問わない感知の秘伝は、里の防衛は勿論として巡回や高難度任務にも手広く活躍している。

 里を覆う巨大感知結界がその最たるものだろう。

 

 だが岩隠れにその様なシステムは無い。だからこそ幼い上に忍者としてもまだまだ未熟な鵺が、秘伝忍術を使っているとは言え里どころか土影邸に侵入出来ている理由になるのだが。

 

『ハクリンが探したが鍵は見つからなかった。しかしここまで来た以上、多少強引でもやらねばなるまい』

(そうだね、ここからは急がなきゃ)

 

 ハクリンに代わり茶鬼丸が呼び出される。ここからの作戦は非常に単純だ。

 しかし素早さと臨機応変さが求められる、大一番でもある。故に口寄せの準備は常に行っていなければならない。

 

『行くぞ、覚悟はいいな?』

(うん、やって!)

 

 茶鬼丸が剛腕を揮う。身体強化の術を最大限に使用し、熊の腕力と理性による底上げが行われたその膂力は……禁書庫の扉を一撃で粉砕した。かなり音が鳴ってしまったので、警備がやって来るのはそう遠くないだろう。

 書庫は土影邸の奥にあったことを加味しても、だ。

 

 事実、鹿尊の感知角は既にこちらに向かってきている数人の忍者を感知していた。時間はそう残されていない。なのでさっさと禁書庫内に入った。

 

「口寄せの術」

 

 そして茶鬼丸に代わり巨大蟹であるクリスタが出現し、扉の前を陣取る。さらに外で、開けた穴と死体を隠していた幻来も呼び出し直す。

 これで万が一の際は時間稼ぎするのだ。何せクリスタと幻来は、防御型寄りの戦闘口寄せ獣と戦闘支援にも無類の力を発揮する口寄せ獣だ。敵を打倒する力は勿論、足を引っ張る術にも長けている。

 

 クリスタの巨躯と術の難度から、彼女を呼び出すコストは現在鵺の家族の中で最も高い。そして幻来もまた、鵺の両腕で一抱えと言う大きさがコスト削減になっているが、決して安くはない。

 

 だが鵺はここ一番でチャクラを出し惜しみはしない。チャクラコントロールの上達によりコストを抑えられているのもあるが、最悪彼女は気絶していても良いのだ。

 寄生口寄せと契約し、禁術の秘さえ盗めるのならば。

 

『こっちだ鵺。デイダラの寄生口寄せと同じチャクラを感じる』

 

 幻来とクリスタに監視を任せ、鵺は鹿尊の指示により一つの巻物を手に取る。

 それはかなり古ぼけた、通常サイズの巻物だった。一度デイダラに盗み使われたことで分かり難い場所──────禁書庫の本棚の奥底──────に保管されていたが、広い種類のチャクラを判別できる鹿尊にとってはその辺に置いているのと変わらなかった。

 

 巻物の封を切り、広げる。

 そこには口寄せの契約欄があった。そしてさらに巻物を広げると、チャクラを物質に練り込む術の詳細が。

 

『ふむ、予想通りこの寄生口寄せと禁術はセットで作られた様だな。僥倖なことだが、寄生口寄せの術そのものに関しても記載されているぞ』

 

 正しく、その巻物は鵺にとって宝石箱だった。今知りたいこと、欲しい物、全てがここにある。

 

「じゃあ契約するよ」

『あぁ、ワシは術の詳細を読み込んでおく』

 

 これ以上ない喜びだが、悦に浸っている暇は無い。契約するまでではなく、ここから逃げ帰るまでが盗みなのだ。

 

【寄木 鵺】

 

 デイダラという丁度真新しい契約痕の横に名前を書き記す。これで契約は完了だ。

 鵺に寄生させても意味は無いが、これから新しく創り出す家族に寄生させた上で禁術を与えればそれで完成である。

 口寄せに口寄せを寄生させるなど前代未聞だが、恐らくは可能だと鵺の才能が囁いていた。

 

 

 しかし幸せの鍵を掴んだのも束の間、遂に警備がやって来た。

 タイミングとしては悪くないが、どうせなら立ち去るまで来て欲しくないと言うのが彼女の本心だろう。

 

「禁書庫が破られているぞ!」

 

 数にして三人の忍者が現れる。一様に手練れだと直感できる佇まいとチャクラだ、と鹿尊は見る。

 しかしこちらも奥の手であるクリスタがいるのだ。それも、あえて彼女だけを幻来が隠している。

 故に容易く、不意打ちに移行出来た。

 

『水遁・水障壁の術』

 

 警備の忍びの背後に水の障壁が出現する。水遁の忍術であるが、コストが重い分水の無い場所でも安定した威力が出せるというのが彼女の強みだ。

 そしてもう一つ。

 

「キシ……!?」

 

 空気が揺らぎ、彼女の太く鋭い爪が最も前面に立っていた忍者に突き刺さる。微動だにしなければ無類の隠遁を見せる幻来の術から放たれる、ほぼ不可避の初撃は見事一人の忍者を殺害したのだ。

 両側にいた忍者もまともに反応が出来ず、キシと呼ばれた男は胴に大穴を開けて倒れる。接敵してから僅か十秒足らずの出来事であった。

 

「鹿尊、まだかかりそう?」

『あぁ、もう少しじゃな。巻物ごと持ち去れれば良いのだが、古い封印術により禁書庫から持ち出せない様になっているようだのう』

 

 クリスタと幻来の背後では、鵺と鹿尊が術の詳細を追っている。それが終わるまで、彼女たちは警備を食い止めねばならない。

 

『鵺、こちらは任せてくださいね』

 

 幻来の術は派手に動くクリスタを朧げにするが、戦闘自体を覆い隠す程の出力は無い。故に、ここからもまだまだ増援は来るだろう。

 だが、彼女たちがやることは変わらない。

 

 鵺の為に。家族の為に。

 その刃を血で染めるのみだ。

 

 それが彼女たちの、術の根底……存在理由なのだから。

 

 

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