口寄せ特化一族の末裔ちゃん   作:冗談だぜ、青い人

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国家S級犯罪者

「援護する!」

 

 鈍い戦闘音の中、そんな声が響いた。既に最初に現れた三人の警備の内二人はクリスタの手によって惨殺されており、残る一名も正体不明の重撃に攻めあぐねていたところだった。

 

 新たに現れたのは外にいた上忍の二人。これ以上人員を外から寄こすと、新手に対する警戒が出来ないので二人が限界だったのだ。非番の上忍や中忍を呼んではいるが、いつ到着するかは分からない。

 

「土遁・岩石弾の術!」

『水遁・水障壁の術!』

 

 援護である上忍の片割、マキシがモヤに向かって土遁の術を放つ。それをクリスタは左の鋏で砕き、返しに水障壁の術で二人と一人──────元の警備員と上忍、マキシ一人といったように──────分断する。クリスタは多対一でも戦える堅牢さと間合いの広さを持つが、上忍の連携を危惧した故の判断だ。

 

『鵺、幻来に代わり夜月を』

「分かった。口寄せの術!」

 

 幻来とのコンボは所謂初見殺しの術である。キシを殺し、その動揺の最中に鋏で両断した警備員然り……最も効果を発揮するのは初撃のみ。後は止まっていてもそこに何かがいるのは知られている上、動き始めの揺らぎは来ると分かっていれば対処は十分可能だろう。

 

 正体不明の精神的動揺を誘ったり、動きが分かり難いと言う利点はあるものの……顕現枠を一つ潰す程ではない。故に今度は戦力を増やすという方向へシフトした。

 

『鵺、お任せあれ』

 

 精悍な男の声が鵺の中に響く。その家族は一番新しい末っ子であり……今現在唯一の役割を持った狼だ。

 その役割とは、抹殺。敵を屠る……強い強い意志の産物である。

 

 元より力仕事がメインの茶鬼丸や体躯を駆使した重機的用途のクリスタとは違う、本当の意味での戦闘用口寄せ獣なのだ。

 

『通牙!!』

 

 大型犬よりも一回りほど大きい体躯を持つ夜月が、クリスタの節足の隙間を駆けて前線に踊り出る。

 そしてそのままチャクラを纏って回転し、分断された二人組の方へ突っ込んだ。

 

「新手か?!」

 

 その突然の高速攻撃に面食らったが、しかし流石は上忍。中忍だった最後の警備員を上手く庇いつつ、転がる様に避けることに成功した。

 だが、夜月の通牙はこれで終わりではない。犬塚家の扱う通牙系統の技は、激しい回転の中で視界が利かなくとも……その優れた嗅覚でどこまでも追いかけるという猟犬の様な執拗さが味なのだ。

 

 故に、一度避けた程度では……それも無様に転がり避けた程度では二撃目が避けられない。

 

「クソッ!」

 

 上忍は咄嗟の瞬身で、飛び上がる様に天井に退避する。これはすぐに二撃目が来ると、経験や直感に囁かれたおかげだろう。しかしここ最近では退屈な警備任務に浸っていた中忍には、その判断が出来なかった。

 そしてそのツケは、命で払うことになる。

 

「ギャッ」

 

 悲鳴は一瞬。回転とチャクラにより破壊力が尋常でなくなった夜月の爪牙が、彼の頭蓋を粉砕した。

 もはや頭部の損壊が激しすぎて、元が誰だったか分からない程だろう。そんな哀れな男の、友人でもあった上忍の顔が歪む。

 

「ふざけやがっ……」

 

 その憤りからまろび出た罵声は、しかし途中で止まる。

 

「マキシ……?」

 

 今まで彼らを隔てていた水障壁の術が解かれる。それと同時に彼の足元に転がり込んできたのは、援護の相方の上忍であった、マキシの上半身だった。

 

「嘘……だろ?」

 

 仮にも岩隠れの誇る上忍だ。土影邸の警備を任される程信頼にも厚く、またその実力も土影の息子である黄ツチにも劣らないと言われている男……のはずだった。

 

 彼の敗因は、何をとっても場所が悪かった……これに尽きる。

 鵺が意識した事ではないが、土影邸の中……さらには禁書庫を背後に戦うと言うのはマキシにとってかなりやりにくいモノだったのだ。

 

 マキシは土遁と火遁の使い手だった。紙媒体の貴重な資料が多数ある禁書庫前では火遁が使えない……それだけでも戦力半減だ。その上彼の土遁は地殻に影響を与える術を得意としているため、やはり本領は発揮しきれない。

 

 それでも数多の術でテクニカルに戦うことも出来たが、クリスタの外殻は彼の想像以上の硬さと鋭さを持っており押し切られてしまった。

 具体的には懐に潜り込み、拳岩の術で左鋏の防御ごと胴の殻を突き破るのに成功したが……その返す刃で右鋏に腰から上をねじ切られたのだ。

 

 クリスタがそのダメージが元で消える。相打ち……確かに相打ちであるが、残った最後の上忍であるドツバの精神的動揺は決して小さくなかった。

 

『鵺、終わったぞ。撤退だ』

「うん、分かった。口寄せの術!」

 

 巻物を読み進んでいた鹿尊が消え、その代わりにドリュウと幻来が現れる。ここまでスムーズに口寄せの切り替えが出来るようになったのも、修行のおかげかなと鵺はふと思った。

 

「夜月、幻来。足止めしておいてね」

『了解しました』

『あぁ、任された』

 

 途端に幻来の無色の霧が放出され、禁書庫に満ちる。

 ドツバからしたら、獰猛な忍犬と戦っていたら突然侵入者の姿が消えた様に見えた。

 それに驚きはしたが、だからと言って夜月から目を離せば現世から消えるのは彼の方だ。故に逃げられたと分かりはしても、下手に動けない。せめてさらに増援が来るまでは。

 

「チクショウ……!」

 

 歯噛みしても状況は変わらない。幾分か動きに慣れ、次第に夜月を圧倒していくが失われたものは返ってこない。

 

 その数分後、夜月を倒したドツバのもとに増援が到着する。

 鵺が『岩隠れ及び土影邸への不法侵入』『禁術の略奪』『上中忍四名の殺害』の罪状を以て、国家S級犯罪者としてビンゴブックに掲載されるのは、そのすぐ後のことだった。

 

 

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