口寄せ特化一族の末裔ちゃん   作:冗談だぜ、青い人

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幼気な犯罪者編
海を渡るは難しい


 岩隠れの里に押し入り、禁術の略奪および忍者の殺害を行ってから半年強。鵺は十歳になっていた。

 因みにあれから禁術を扱う家族の創造を開始しており、既に完成している。

 

 鵺よりも一回りほどサイズの大きい蚊……名をハートキート。

 彼女は鵺たちの想定通り、寄生口寄せを寄生させた状態で禁術を会得するのに成功した。この手順は初めての試みだったので内心ドキドキしながらだったが、これからの生命線とも言える家族が無事生まれたことに鵺は安堵するのだった。

 

 しかし術を扱えるだけではあまり意味はない。

 そこから鵺の血を採取し、チャクラを圧縮して練り込む。そしてそれを貯蔵するという工程があるのだ。

 

 その上、その血を使うに値する巨大獣も創らねばならない。切り札とも言えるそれは生み出されつつあるが、完成には程遠い。

 その為、いざと言う時の準備はまだまだ時間がかかると言えた。

 

 一応として、現状でも血を使えば事実上口寄せのチャクラ消費は完全に無くせるという使い道はある。

 だが貯めているとは言え、一回ごとに鵺から採取できる血液はそう多くない。それは偏に鵺の身体が未成熟かつ、同年代の子よりも小柄だからだ。

 

 血を抜けば、栄養と休息を取って回復せねばならない。毎日血を抜くのも、やはり難しいだろう。

 なるべく負担を掛けない様にするには、一週間……あるいは少なくとも四、五日は空けた方がいい。

 医療忍術では失われた血液は戻ってこないのだから。

 

 

 そして鵺は今、水の国へ向かっている途中だった。

 しかしその足は止まっていて──────。

 

「お金が……無い」

 

 資金不足。

 今の今まで根無し草で旅をしており、まとまった金など持っていない。基本的に必要な物資があれば、街で盗んでいたので金を持つ必要も無かったのだ。

 

 しかし遂に金がどうしても必要な場面がきてしまった。

 

 時に水の国へ行くには海を渡る必要がある。そしてそのためには船に乗らなければならない。

 一応熟練の忍びならば水面歩行と肉体活性を用いれば、一夜で渡り切れるだろうが鵺には無理だ。

 そして鵺の家族に海を渡れるモノはいない。

 

 故にこそ船が必要なのだが、現在水の国へ向かう船は到底こっそり忍び込めるような大型サイズのものはない。ほぼボートだ。

 その上、現在地である火の国の端っこから水の国の間にある……波の国にてとある企業が航海事業を止めているらしい。多少袖の下を通せば渡れるようだが、やはりその為の資金が無い。

 

 これでは正規の手段では、海を渡れない。

 

『どうやらついにお金稼ぎの必要が出てしまいましたね、鵺』

「海月……どうしたらいいと思う?」

 

 自らが国際指名手配されているとは夢にも思っていない鵺であるが、岩や木ノ葉に追われているのは理解している。

 なので街中を移動する際はブカブカのフードローブを着用し、背中に海月を張り付かせて体格を誤魔化しているのだ。

 

 そんな鵺が海月に相談する。生まれてこの方山で育ち、両親が殺された途端に放浪を始めたのだ。金稼ぎの手段など知る由もなかった。

 

 そもそも何故水の国に向かっているのかと言うと、その周辺にはどうやら寄木一族の祖が起こった場所があるらしいからだ。

 

 と言うのも、土の国から出てからの半年間で一度、彼女は家に戻っていたのだ。

 家は崩れ、有用な術や口寄せ獣などの資料はどの様な理由か失われていたが……唯一床下に収納されていた家系図だけは無事だった。

 

 その今となっては系譜の末である鵺しか残っていない家系図を眺めてみると、かなり遠い祖先まで記されていた。

 そこから分かったのは、寄木一族は水の国にある鬼灯一族の分家の末端から分離した……古い一族であること。

 そして一時期は中規模勢力にまで成長していたこと。その為か今でも水の国の何処かに遺跡が残っている……かもしれないこと。

 

 そこで鵺は、寄木一族の古い術などが残っているかもしれないと水の国を目指すことにしたのである。

 何と言っても、彼女にとって己の武器を強化することと増やすことは最も重要視することなのだから。

 

「……船を止めてる企業、ガトーカンパニーに乗り込もう」

 

 禁術を手に入れ些か自信が付いた鵺であるが、それでもトラウマのある火の国へはあまり長居したくない。

 土の国の忍びだっていつ現れるか分からないのだ、さっさと海を渡ってしまいたいと思うのは不自然なことではなかった。

 

『また追われることになりかねませんよ』

「でも……」

 

 船には乗りたい。だがこれ以上追手を増やすのは嫌だ。そんな葛藤が鵺の脳内を駆け巡る。

 暴力行為の成功経験故か、彼女が思い付く手段はどれも荒っぽく、確実に遺恨を残すものばかりだった。

 

 これでそれら一切合切を跳ね除ける強さがあれば話は違っただろうが、準備が万全ではないという状態が尾を引いている。

 と、そこで一筋の光明が海月より示された。

 

『ではこうしましょう……』

 

 ごにょごにょと囁く様に脳裏に響く海月の声。

 それは正しく、鵺にとっては盲点。目から鱗な平和的解決方法だった。

 

「それでいこう! うん!」

 

 そうして鵺は、喜色を浮かべて一度街へ戻っていった。

 そしてその探しモノを見つけるのはそう難しいことではなかった。何せ彼女は、ここしばらく情報収集のために裏社会に入り浸っていたのだから……。

 

 

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