再不斬と白に連れられて、辿り着いたそこは林の中にあるアジトだった。ここを再不斬がボスとして取り仕切っているらしく、集められた忍の用心棒とは言えその実態は再不斬の一味らしい。
鵺は中に通されると、特に警戒することもなく素直に案内されたソファに身を沈めた。ここに来るまでに白と仲良くなり、再不斬もそう悪い人間でないと言われた結果だった。
白としてはそんな彼女の無防備さに大丈夫かと思うこともあるが、相手はあの国家S級犯罪者だ。その様な大層なことをやらかす程度には自信があるのだろうと考える。
それに白は、鵺に自分を重ねて見ている節があった。
幼い頃に両親が死に、浮浪児として生きて再不斬に拾われたこと。そして鵺は彼にとっての再不斬がいなかったこと。寄る辺の無かった彼女の孤独は、一体どれほどのものなのだろうかと。
そして同じ特殊な血族という点においても。
寄木一族に関しては鵺は詳しく語ったわけでも、その秘伝を口にしたわけでもない。ただ彼が霧の暗部時代に、消えた水の国周辺の特殊な術を持った一族について調べていた時にその名前を見ただけだ。
だがそこに名前が載っているということは、きっと自らが持つ氷遁の血継限界と同様に特殊な術を受け継いでいると……そしてそれを恐れたりあるいは狙った者に彼女の両親は殺されたのだと。
そう白は鵺の話を聞いて感じたのだ。
そっと鵺の頭を撫でる。彼女は不思議そうな顔をして白を見上げるが、対して彼は崩れぬ微笑を向けていた。
確かに自分は再不斬の道具であり、心を持たぬ冷たい氷。
しかしそれは忍者としての自分であり、どうしても忍者になり切れぬ温い部分が残っている。その部分が、鵺に対しての憐みを誘って仕方がなかった。
ならばこそ。
この依頼の最中だけは、手の届く場所にいる限りは、出来るだけ暖かく接しようと白は思うのだった。
かくして、アジトに着き一息ついた彼らは今後の計画を話し合うことになった。
元より計画は既に練られていたのだが、突然鵺という増員があったので、そこのすり合わせと修正を行うのだ。
「鵺と言ったな。何が出来る?」
「色んな口寄せが出来るよ!」
詳しくは言わない。それは忍者としての最低ラインである、秘密保持の観念をデイダラに教えられていたからだ。
そして熟練の忍びである再不斬からすれば、それだけの情報で見えてくるものや活用法も思い付く。
(口寄せか……どうやら手配書と情報は一致しているようだな。それに岩の上中忍を殺せるほどの口寄せ……こいつは使えるな)
自身の強さにはかなりの自負があるが、戦力は多い方が良い。そして特段報酬金の山分け等はないのだから、分け前で争う必要もない。
元より戦力は十分と見ていたのでありがたがるような増援ではないが、それでも嬉しい誤算でもあった。
「分かった、襲撃は今から一週間後だ。お前の投入タイミングは追って伝える」
再不斬はそう言うと奥へ引っ込んだ。その場に残されたのは白と鵺、そして鬼兄弟という二人組だけだ。
しかし鬼兄弟は特に鵺に対する興味はないらしく、目線も寄こさず寛いでいる。鵺もまた、彼らに興味はない。
そうして、彼らは一週間の時を経て一度目の襲撃を開始する。
それが酷く運命を狂わせることだと知らずに。
◇
日々の退屈な任務にうんざりしていたナルトは、遂にその鬱憤を爆発させることになる。
即ちそれは、任務を言い渡す三代目火影への駄々という直訴。彼らの担当上忍であるはたけカカシはそんなナルトの様子にひやひやするも、何と火影はこれを承諾した。
そうして命ぜられた任務は、とある橋職人を波の国へ送り届けること……という護衛のCランク任務だ。
下忍たちにしたら、それは正しく忍者っぽい任務だがカカシにとっては欠伸しながらでも出来る簡単なものだった。
何せCランク任務というのは、対忍者ではなくあくまで野盗やチンピラから守るという逆立ちしても忍者に勝てぬ者相手なのだから。
(ま、コイツらにも良い経験になるでしょ。中忍試験にも推薦するつもりだし、質の高い経験は早い内にした方が良い)
上司として、教師として、そんな子供思いな思考を巡らし心中で頷いた。
と、そうしている内に、橋職人であるタズナと子供たちの顔合わせが終わる。少し偏屈そうな依頼人だが、そこに文句を言う資格は忍者には無い。ただ完璧に任務を遂行するだけだ。
「んじゃ、諸々の準備をして門前に集合ね」
カカシがそう号令を掛けると第七班は一度解散した。
こうして運命の歯車は、少しずつ少しずつ、動き始める。