口寄せ特化一族の末裔ちゃん   作:冗談だぜ、青い人

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想定外は世の常

 作戦決行日、鵺は今再不斬と白に連れられて波の国にある街道にいた。

 先行していた鬼兄弟が破れ、そのことから手練れが護衛についていると判断した再不斬は波の国で待ち伏せることになったのだ。

 

 そして彼らの標的がその地点に現れたのも、そう時間は掛からなかった。

 標的である橋職人の男と顔の殆どを隠した隙の無い男、そして三人の男女混成の子供たちだ。鵺からしたら少し歳上だが、恐怖の対象である忍者としての威圧感はほとんど無い。

 

「クク……写輪眼のカカシか……確かに鬼兄弟では荷が重いな」

 

 再不斬が現れた彼らを観察し、そう零す。

 さらには、引き連れている子供たちは新たに忍者になった見習いの様なモノで、戦力にはならないだろうとも。

 

「私はどうしたらいい?」

 

 基本的に現場の指揮は再不斬が取ることになっている。別段鵺は彼の部下ではないので、命令に従う必要も無いのだが、この場では素直に言う事を聞こうと彼女は考えているのだ。

 

 というのも、一週間の間で白や自分とのやり取りで彼が悪い人ではないと認識したので、白程ではないが懐いたのだ。

 怖い顔をしているが、鵺に酷いことを言ったりしたりしないので多分良い人なのだ、と。

 

 そして白にはこの一週間でかなり面倒を見てもらっていた。

 彼は鵺に対する親近感が強く、食事や風呂など彼女が満足に浸れなかった娯楽を堪能させたのだ。

 そこまでするのは、白が過去にされたかったこと……あるいは再不斬に貰った温もりを鵺にも与えたかったのかもしれない。

 故に非常に懐いた。デイダラとも再不斬とも違う、母親の様な慈愛が鵺の心を満たしたのだ。

 

 そんな鵺だからこそ、勝手には動かず指示を仰いだ。

 彼女の素直さは、身内にはことさら強く発揮されるのだ。

 

「お前たちは待機だ。手を出すなよ」

 

 再不斬はそう言い残し、瞬身の術で消えた。早速襲撃に行くようだ。

 白は彼を信頼し、鵺は幸せに関係ない強い忍びとは積極的に戦いたくないので、素直に観戦に留まる。

 

「再不斬……まずは俺と戦え……!」

 

 数瞬のやり取りの後、相手の上忍が構え、再不斬も完全な臨戦態勢に入った。

 

 戦闘が、始まる。

 

 

 ◇

 途中までは圧倒的に再不斬が有利だった。

 

 相手方の上忍はたけカカシを水牢の術で封じ、残るは経験も実力も再不斬に遠く及ばない子供三人と護衛対象のみ。再不斬は水牢から離れられないが、水分身でも十分始末可能な相手だ。

 如何様にも料理できる……はずだった。

 

 状況が変わったのは、下忍たちの奮闘により水牢の術が解かれて……いや、解かされてからだ。油断していたとは言え、解放されたことへの焦りと怒り……それをカカシに刺激され冷静な判断力を失った。

 

 そこからは相手の掌の上だ。術を相殺され、次の術を追い越され、彼の切り札である水遁・大瀑布の術が再不斬に直撃した。

 そして身動きを封じられた隙に、身体中にクナイが突き刺さる。その鋭い痛みに再不斬が顔を顰める。

 

「お前には……未来が見えているのか……?!」

「あぁ、お前の未来は死だ」

 

 明らかに勝負は決まり。白と鵺の、ここからの判断は拙速を求められた。

 多少強引でも場を収めなければならない。そして撤退し、出直すのだ。

 

「不味いですね……鵺ちゃん、僕は再不斬さんを仮死状態にして回収を……って鵺ちゃん?」

 

 白は再不斬の敗北を受け、回収と撤退を決めた。その為の抜け忍の仮面もある。

 彼が負けるのは想定外だが、ここからどう動けば回収と撤退が出来るかはすぐに思い付き、実行に移そうとした。

 

 無論鵺に一声掛けて……と思っていたのだが、声を掛けた先に鵺がいなかった。

 

「口寄せの術!」

『水遁・水障壁の術』

 

 白が動くよりも早く、鵺が動いた。茂みから飛び出した彼女はクリスタを呼び出し、他に眼もくれず突貫させる。

 一瞬垣間見えたその顔は、どこか恐怖している様な、怒っている様な顔だった。

 

「何だってばよ!」

 

 オレンジの服を着た少年が叫ぶ。

 何せ再不斬をカカシ先生が追い詰めたと思えば、再不斬含めて六人を取り囲む様に水の壁が出現したからだ。

 状況に付いて行けていない。

 

「新手か?!」

 

 一方黒髪の少年も叫ぶ。だがその動揺は子供たちの中では一番少なく、状況に対応するべく周囲に視線を動かしていた。

 心構えが違うのだろう、その心の強さが経験の不足を補っている。

 

 そして最初の攻撃は、すぐに繰り出された。

 再不斬にトドメを刺そうとしていたカカシに向かって、鋭利で巨大な爪が刺すように水の壁を割って現れたのだ。

 

「これは?!」

 

 見覚え……いや、聞き覚えのある攻撃手段にカカシは動揺を隠せない。それは正しく、つい最近岩隠れの里で猛威を振るった惨劇の噂だからだ。

 しかしそこは数多の上忍の中でもトップクラスの実力と経験を持つ男、写輪眼の反動でかなり鈍くなった体を無理やり動かし回避した。

 

「再不斬に加えて、とんでもないのが敵になったね……」

 

 冷や汗を流しつつそこを睨む。彼の優れた頭脳は、援軍が何者かをすぐに思い至らせたのだ。

 その思考と同時に爪が割った水がさらに割れて、一人の少女が再不斬を庇う様に前に出た。そして爪の持ち主である巨大蟹は、そのすぐ後ろから追従する様に現れる。

 

「蟹……?」

 

 口寄せの術を知らぬ子供たちにとっては、理解不能な光景だろう。何せそれほど大きな蟹など見たことも聞いたこともないのだから。

 オレンジの少年……ナルトは混乱から立ち直り、新たな敵の登場を遅れながらも悟る。

 

 そしてそんな彼が活躍しようと鼻息を荒くしているが、カカシは逆に焦る心を収めるのが難しかった。

 

(チャクラも身体も限界だ……どうすればいい……?!)

 

 カカシの持つ情報では、寄木鵺という犯罪者はある意味再不斬よりもヤバイ相手だ。到底子供たちだけでは対処は不可能だと、確信している。

 

 せめて自分が万全な状況なら切り抜けることは出来るだろうが、もはや今の身体は絶不調も絶不調だ。

 雷切こそ使っていないものの、写輪眼の能力を使い過ぎた。今にも倒れそうな身体を保つのに精一杯である。

 

「お前たち……絶対に仕掛けるなよ……」

 

 特に飛び出しそうなナルトを手で制しながら言う。

 彼女のその体躯から侮りや戸惑い、油断を子供たちは感じているが、それは今最も危険な状態だ。 

 

 何と言っても、相手は国家指名手配犯……国家S級犯罪者、格ではあのうちはイタチと同レベルの相手なのだから。

 

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