口寄せ特化一族の末裔ちゃん   作:冗談だぜ、青い人

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子供たちの戦い

 倒れ伏す再不斬の前に立ち、鵺は考える。

 勢いのまま飛び出してしまったが、戦うにしてもまずは再不斬をどうにかしなくてはならない。

 いくら頑強な肉体を持つ忍と言えど、手酷い傷を抱えていては巻き込まれて死ぬ可能性があるのだから。

 

 その点、再不斬を回収するには白がいる。彼とて熟達の忍だ、一回りほど自分よりも大柄な男一人抱えられるだろう。

 ならば、鵺のやることは一つ。足止めだ。そしてあわよくば再不斬を倒した上忍を殺せればよいが、彼を打倒した男を鵺が殺せると思うほど、彼女には自信が無かった。

 

「カカシ先生……何なの? あの子……」

 

 桃色の髪を持つ少女、春野サクラが担当上忍であるカカシに尋ねた。立ち塞がる鵺は、見てくれこそ自分達よりも幼い女の子なのだ……強敵と思われた再不斬を圧倒したカカシがここまで警戒する理由が分からなかったのだ。

 

「……あの少女は寄木鵺という、最近現れた国家指名手配犯だ」

「国家指名手配犯!?」

 

 三人の子供から、異口同音の驚愕が放たれる。

 それもそうだろう。木ノ葉と言う平和な里で生まれ育ち、忍者としての経験も浅く……後ろ暗い世界のことなど何も知らないのだから。

 自分よりも明らかに年下であるにも関わらず、国々から追われる程の犯罪を起こすなど想像も出来ない。

 

「どうするんだ、カカシ……」

 

 サスケが問う。油断なく鵺とその背後の蟹を睨みつけているが、微かに震える手を隠せていない。

 再不斬とカカシが戦っていた時の様な、命を握られる感覚に陥るほどの殺気は感じないが……寧ろそれが不気味に思えたのだ。

 

 睨み合いが続く。鵺側が動く様子を見せないので、カカシたちも動くに動けない。

 カカシとしては再不斬を始末出来ないのは残念だが、限界も近く鵺も現れた以上撤退してくれるに越したことはない。

 

「鵺ちゃん、再不斬さんを回収しました。撤退します」

 

 クリスタの背後に紛れて、再不斬を背負った白がこっそりと鵺に伝える。そこには鵺の撤退も含まれていたのだが、鵺は動かなかった。

 不思議に思い白がもう一度声を掛けようとした瞬間、鵺は口を開いた。

 

「白お兄ちゃん先に行ってて、足止めするから」

「……分かりました」

 

 確かに、荷物を抱えた状態で背中を見せるのはやりたくない。クリスタに紛れているとは言え、カカシほどの忍者を相手に無意味に背中を見せるのは襲ってくださいと言っている様なものだ。

 霧の追い忍としてなら、多少後で違和感を感じさせてしまっても回収は問題なく出来たが……その手段はもう取れない。

 鵺が暴走したが故にだ。

 

 なので白は少々渋りつつも了承し、瞬身の術で去った。

 場には臨戦態勢の第七班と、鵺……そしてクリスタのみが残る。

 

『鵺、少々危険なのではないですか? せめてもう一体戦闘用の家族を出した方が……』

「大丈夫だよ。再不斬おじさんを倒したあの忍者以外は、怖くない(弱い)。それに海月と鹿尊がいないといつ撤退したらいいか分かんないし」

 

 第七班からの視点では鵺の口寄せは蟹一匹だが、その実背中には海月が……そして茂みに隠れて鹿尊が範囲探知をしている。

 前者は万が一の負傷時のため、後者は白の位置と思わぬ奇襲対策のためだ。

 

 そして続く睨み合いに終止符を打ち、最初に動いたのはナルトだった。

 

「うおおおおお!」

「おい! バカ!」

 

 国家指名手配犯だのの話をよく理解出来なかったのか、年下=自分よりも弱いと無意識に油断しているナルトが鵺に突っ込んでいった。

 サスケの制止も虚しく、彼が足を止めることはない。

 

「影分身の術!」

 

 ナルトの得意忍術である影分身の術で、彼が十人に増える。

 数で攪乱と物量押しするのが、不器用でまともな忍術を他に持たぬ彼のスタイルだ。

 

「サスケ! サクラ! 援護だ! 俺はチャクラ切れで動けない!」

 

 いよいよ限界が来たようで、カカシが片膝を突きながら叫んだ。本来なら地面に倒れ伏して身動きも取れないのだが、せめて戦闘指示だけでもと思い気合で昏倒を耐えている。

 

 その切羽詰まった状況でサクラは身を固くしつつも懸命な眼差しを鵺に向け、サスケもまたナルトの後詰めとして思考を巡らせる。

 

「うわぁ!」

 

 本能的に蟹ではなくそれを支配しているであろう鵺に突貫したナルト十人は、ことごとくクリスタの爪に叩き返されその数を減らしていく。

 その膂力差は圧倒的だ。

 

 しかし、それを覆すのもまた忍術である。

 

「火遁・豪火球の術!」

 

 ナルトに気を取られていると見たサスケは、上空から巨大な火の玉を吐き出した。これはとてもではないが下忍に出せる威力の術ではない。

 直撃すればいくら堅牢な殻を持っていそうな巨大蟹でも、無事では済まないとサスケは信じていた。

 

 だが、性質変化の忍術には得てして相性というものがある。

 

『水遁・水障壁の術』

 

 鵺を中心にして、ドーム型に水の壁が吐き出される。その水量は先ほど六人を取り囲んだ時よりも多く、豪火球の術はその壁に阻まれて消えた。

 自信があった攻撃が無に還され、サスケは少なからず動揺する。

 

「サスケェ!」

 

 豪火球の術同様、新たに現れたドーム型の水の壁に阻まれて攻め手を失っていたナルトが叫ぶ。

 クリスタにとって水障壁の術はただの壁ではなく、その見切りやすい大振りな攻撃を隠すベールでもあるのだ。

 

 ドームの天頂を突き破り、大きく開いた鋏が迫る。

 刺突攻撃ではないのは水の壁で視界が封じられており、鹿尊の探知で大まかな場所しか把握出来ないが故の範囲攻撃なのだ。

 

「サスケ君!」

 

 咄嗟にサクラが起爆札の付いたクナイを投げる。基礎忍術しか持たぬ彼女だからこそ、真っ先にその選択が取れたのだ。

 そのクナイは寸分違わず、水障壁と鋏腕(きょうわん)の境に当たり起爆される。

 そしてその衝撃により、サスケに迫っていた攻撃の狙いが大幅にズレて空を切った。

 

 サスケは冷や汗を流しつつも体勢を整え、味方の傍に寄る。ついでにナルトの首根っこを掴んで回収していた。

 

「何するの……? 許さないんだから……!」

 

 水の壁が消えたそこには、左腕が関節とは逆に折れて垂れ下がっている蟹。そして憤怒の表情を浮かべた鵺がいた。

 先程まで専守防衛に努め、積極的な攻勢に出ようともしていなかったが、今は違う。

 家族を傷付けられた怒りで、殺気を撒き散らかしているのだ。

 

 暴力的で刺々しい殺気ではない、寧ろ静かで闇深い……そんな異質なモノをナルトたちは感じた。

 

『鵺、私は大丈夫です』

『鵺、落ち着いてください』

 

 クリスタと海月がそれぞれ宥めようとするが、鵺の心に入っていない。

 暴力には暴力で返さねば……彼女の信じる幸せは壊れ、永遠に辿り着かないのだから。

 

『鹿尊、まだですか』

『まだじゃ、もう少しかかる』

 

 そして不幸にも白と再不斬の撤退が済んでいない。鵺が足止めに買って出ているが、やはり警戒しながら気絶した大男を背負っての逃走は手間が掛かるらしい。

 

「私の幸せを……壊すな!」

 

 鵺の叫びと共に、クリスタの攻撃が始まる。命令があれば問答無用で従うのが彼ら口寄せ獣だ。

 そしてその攻撃の苛烈さは、彼女の精神に引っ張られる。

 

 防衛から攻勢へ、戦いのステージが一つ変わった。

 

 

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