一度目の襲撃から一週間が経った。
彼らの任務は変わらず、タズナを殺し橋作りを頓挫させること。
だが再不斬や鵺の心中には、それ以上にやらねばならないことがある。
それ即ち、散々コケにされたあの木ノ葉の忍を殺すこと。一度目こそ再不斬はカカシに翻弄され、鵺も第七班の下忍達の思わぬ善戦でクリスタを落とされたが、二度目はそうもいかない。
再不斬は白に写輪眼の対策法を練らせ、鵺はいつも以上に夢の中に篭ることで強力な末っ子の創作に励んだ。
結果カカシに対する戦法も新たな家族も完成し、準備は万端と言える状態になった。
そして何よりも、今回は一切の慢心も油断も無い。
初めから三人全員で戦闘に入り、そして勝利する。あのカカシでも、再不斬一人に子供たちを守りながら戦うのは苦戦した。
それなのにも関わらず、今度は三人同時に相手をせねばならないのだ。到底下忍程度には白と鵺の相手にならないと考えているので、必然的に数的不利に陥らせられることになる。
計画では再不斬がカカシを、白がサスケを、鵺がナルトの相手をすることになる。サクラと暗殺対象であるタズナは、大した戦力ではないので考慮しなくていい。ことが終わった後で、じっくり料理してやればいい話だ。
「クク……たった一週間。どれだけ修行したところで、無駄だ。俺の白には勝てまいよ……」
「鵺もいるよ!」
「フッ……そうだな……」
油断は無いが、確かな自信を持って、三人はアジトを去った。
最後の戦いの場、あの橋の上を目指して。
◇
そこには一人足りないが木ノ葉の忍と暗殺対象がいた。
どうやら向こうも鵺たちの登場を予期していたらしく、慌てた様子も無い。寧ろ、闘気に満ち溢れているようだった。
まずは再不斬の霧隠れの術と水分身がカカシ達を取り囲む。十分の一程度の力しかないが、それでも十分威圧になるだろう。特に、再不斬の力量と恐ろしさを叩きこまれた下忍共には。
そしてその予想は正しいように再不斬は見た。黒髪の下忍が手を震わせているのだ。
「クク……またそんなガキを連れて……また震えているじゃないか、可哀想に」
嘲笑交じりに再不斬が言う。だが次の瞬間にはその笑いは驚きに変わることになった。
「武者震いだよ」
「やれ、サスケ」
瞬間、サスケと再不斬の水分身がぶつかる。そしてその戦いが終わったのは一瞬だった。
この一週間で高いレベルでチャクラコントロールを学び、一段も二段も成長したサスケの前に水分身では物の数にならなかったのだ。
「ホ──、水分身を見切ったか。あのガキかなり成長したな」
「そうですね、再不斬さん」
と、そこに再不斬と白が姿を現す。鵺は霧に乗じて潜伏中だ。
彼女は心の中で
クリスタの腕を破壊した、あの女を始末するのだ。
白には正当性無く殺すのは良くないことだと教えられたが、これは仕事の邪魔を排除しているだけなのである。十分正当性はあると考える。
なので彼女が止まることは、無い。
「だが、先手は打った。行け!」
再不斬のコールに合わせて、白がサスケに肉薄する。
それと同時に鵺はクリスタを呼び出し、サクラに攻撃を開始させた。
「クリスタ!」
「これは、あの蟹?!」
唐突に正面の霧が割れて、非常に見覚えのある鋭い爪がサクラを襲う。それに第七班は驚愕の声を上げた。
それも鵺の姿が無かったからかカカシも警戒していたが、まさか一度倒した口寄せがこんなにも早くに再び現れると思っていなかったからだ。
「どーも普通の口寄せとは違うみたいだね」
瞬時にサクラとタズナを庇い、迫り来る爪を防いだカカシは霧の中を睨みつけた。
サスケと白の戦いも気になるが、
「邪魔しないで!」
何処からか幼い少女の声が響く。そしてそれと同時に、前回とは比べ物にならない程の手数で攻めが始まった。
無論写輪眼無しでも見切れるが、視界の利き辛い霧の中で守りながらという枷が足を引く。
(まだか……!)
カカシは心中で呻く。そしてその猛攻が一瞬止み、狙いをサクラに集中させた。どうやら弱い方を先にやろうという魂胆だとカカシは見抜く。
だが位置が悪い。巻き込まない様に少しずつ、サクラ達との距離を離さざるを得なかったのが効いている。
「おっと、カカシ。俺を無視するなよ」
と、そこで再不斬が参戦してきた。実に嫌なタイミングだ。サクラを庇いに行けない。
「サクラ!」
「やって! クリスタ!」
重い身体とは言え、甲殻類の機動力は案外侮れない。
そしてその硬い殻を最大限に活用した、重撃もまた同様に。
「ッ!」
上忍や中忍……もしくはナルトやサスケなら見切れた。だがその身体能力は下忍の域を出ないサクラに、タズナを守りながらの防衛戦は荷が重い。
そして何よりもクナイ程度では、クリスタの爪と対峙するにはあまりにも得物差が開き過ぎている。
万事休す。
と、その時だった。
「牙通牙!!」
霧の中からさらに何者かが現れ、激しい回転を以てクリスタの爪を弾き返した。
損傷まではしていないものの、大きく体勢を崩したクリスタは新手が現れたと見て一度霧の中に潜る。
無論、鵺の保護に回る為だ。
だがこの霧の中でも、透視と鋭い嗅覚から逃れる術はない。
「間一髪だったな、紅」
「えぇ、待たせちゃったわね。カカシ」
新手。そう、新手だ。
鵺と言う国家指名手配犯に対するカウンター。再不斬や白だけなら第七班でも対処が出来るとカカシは想定しているが、もう一人強敵が加わると話が変わって来る。
故にカカシはこの一週間の間で、里に援軍を要請したのだ。
その際Cランクと偽ったBランク任務だと言う旨は報告されたが、忍者は金だけではなく仁義で動くものだ。
勿論タズナの所業は褒められたものではないが、事情を聞けば情状酌量の余地ありと三代目火影は見た。
だが中忍上忍を持て余しているわけでもなく、また既に上忍の中でも一等優秀なカカシ率いる第七班がいるのだ。
ならば同期の忍者を送った方が、連携もとりやすいだろうと考えた。
そこで派遣されたのが──────。
「この子は私たちに任せて」
紅率いる第八班の面々である。