口寄せ特化一族の末裔ちゃん   作:冗談だぜ、青い人

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幸せの手掛かり

 竜の重撃と蟲の多彩さが組み合わさったシーツーの攻撃は、まさしく嵐にも等しい激しさだ。

 通常の爬虫類では再現できない関節の切り替えしや、慣性を打ち消す虫翅による立体軌道は日向一族の優れた眼が無ければあっという間に戦線は崩壊していただろう。

 

 無論、そのままではジリ貧であり第八班が崩れるのは時間の問題なのだが。

 

『シーツーは十分戦えていますね、鵺』

「うん、期待以上だよ。術も与えてない純粋な肉体性能でも圧倒出来てるね」

 

 クリスタが周囲を飛ぶシノの蟲を落としながら、戦いの推移を見守る。そして夜月の方へ眼を向けても、優勢なのは変わらなかった。

 どうやらキバも巨躯の狼である夜月の通牙に翻弄されており、紅たちへの援護は不可能と見える。

 

『鵺、これなら奴らを始末するのも時間の問題ですね』

「んー、さっさとやっちゃって、再不斬おじさん達のお手伝いしたいんだけどなぁ」

 

 圧倒はしている。だが木ノ葉の忍はそう甘くない。

 それは特に未熟な下忍ではなく……それらを率いている上忍は! 

 

「幻術・薄幸酔夢!」

『鵺!!』

 

 シーツーの野太い声と同時に紅のチャクラが揺らぎ、シーツーが霧を晴らしたが故に鵺に射線が通り術式が発動する。瞬間、ビクンと鵺の身体が揺らぎ目が虚ろに霞む。明らかに意識が混濁しているのが見て取れる。

 

 あくまでクリスタは物理攻撃は身を盾にしてでも防げるが、幻術などのチャクラに働きかける術は防げないのだ。

 そしてそんな術者の異常に、一瞬口寄せ獣たちの動きが止まった。

 

 鵺が見ている光景は──────

 

 

「父さん……? 母さん……?」

 

 夢の中の様な慣れ親しんだ浮遊感の中、既に死んだはずの両親が鵺を抱きしめる。

 その懐かしい温もりに、鵺は涙を我慢出来なかった。

 

「私ね……ッずっと怖くて……ッ! 頑張って幸せになろうって……ッ」

「あぁ……分かってるよ鵺。すまなかっ──────」

 

『鵺! 大丈夫ですか?!』

 

 幻術が内から破られる。全員が今知ったことだが、どうやら鵺と同質のチャクラを持つ夢現獣の術の口寄せ獣は鵺のチャクラの乱れを整えられるらしい。

 それは正しく、絆を結んだ尾獣と人柱力に見られる現象と同様であった。

 

「嘘でしょ?! こんなに早く破られるなんて!」

 

 一方で紅は木ノ葉の忍でも、随一の幻術の腕を持つ忍である。

 それなのにも関わらず、掛かってから解除されるまで攻撃の一手すら与えられなかった。これには流石に驚愕を隠せない。

 

 だが紅視点では、鵺に与えた幻術のダメージはそれなりに高いと見えた。

 何せ解除されてからの彼女はどこかぼんやりとしており、心なしか口寄せ獣たちの動きも鈍いように感じるのだから。

 

「チャンスよ!」

 

 紅のコールにより、ヒナタとシノが駆け鵺の捕縛に動く。

 得てして口寄せ獣と言うのは、術者のコンディションに性能を引っ張られることが多く、多大なダメージを負った術者が耐えられずに口寄せ解除をしてしまうのはよくあることだ。

 

 そしてそれを想起した紅は、またとないチャンスだと見た。

 だが、その判断は誤りだったと言う他ない。

 

「……て」

『鵺……?』

「あの女を捕まえて!!」

 

 涙を流しながら、虚ろげだった目をギラつかせて鵺が絶叫する。しかしその指示は殺してではなく捕まえて、だった。

 

『他は殺さなくてもいいのですか?』

「そんなのどうでもいいから!」

『……分かりました。シーツー、夜月……敵の無力化をお願いします』

 

 実際キバとヒナタとシノには大した興味も無い。それ以上にあの光景を生み出したモノに強い興味があったのだ。

 そして口寄せ獣たちは彼女の家族であると同時に手足である。その指示に従う他は無い。彼らにとっても、鵺を傷付けた者以外はどうでも良い存在なのだから。

 

 故にクリスタは夜月とシーツーに、無駄な諍いを生まない為に無力化を指示したのだ。

 

 そして突然に鈍っていたシーツーの動きが加速し、攻撃を仕掛けていたヒナタとシノを逆に叩き伏せる。

 苦し紛れの起爆札を付けたクナイでも、彼の甲殻の前には効果が薄かった。

 

 そしてそのまま足を掛けて乗り、その重量に二人は呻くことしか出来ず、身動きを完全に封じられてしまった。

 

「ヒナタ! シノ! キバ!」

 

 そして夜月もまた、遂にキバの動きを捉え通牙を直撃させることに成功。

 本来なら人体をバラバラにすることも可能だったが、家族の中でも発言力の強いクリスタからの指示で無力化に抑える。それでも、かなりの負傷を強いることになるのだが。

 

「コイツら殺されたくなかったら、大人しくして」

「……ッ!」

 

 鵺が少々危うい光を湛えた眼で紅を射抜く。

 忍者としては時に仲間を、部下を切り捨てて任務に当たらねばならぬ時があるが、取り分け木ノ葉は甘いことで有名だ。

 

 そしてそれが、まだ忍者になったばかりの子供を抱える身であれば尚更である。

 

「……何が目的かしら」

「さっき私に何をし──────『鵺』何?」

 

 術の仕組みを聞き出してしまえば、それを探るのは容易だと思い尋ねようとしたところクリスタに横やりを入れられた。

 疑問に思った鵺はクリスタの見つめる方向を見ると、そこには……

 

 雷切を構えたカカシが、猛然と再不斬に迫っているところだった。

 

 

 

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