口寄せ特化一族の末裔ちゃん   作:冗談だぜ、青い人

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古き血の跡

「古い話だけどねぇ、鵺ちゃん。私のお爺様の盟友様が、色んな獣を操ってこの村を助けてくれたんさ」

 

 そうして老婆が語った話は、鵺にとっても衝撃的かつ興味深いモノだった。

 彼女、シミエの祖父は忍者の隠れ里が生まれる前から忍者として生きていた人物であり、その晩年は盟友である『口寄せを扱う一族』の長と手を取り合ってこの村を作ったらしい。

 

 だがいつしか激化する戦国の中で、その一族は壊滅……そして散り散りになってしまった。

 しかし長と少数の老人だけは、ここを最後の寄り木として残ったそうだ。もうその者らが亡くなって大分と久しいが、彼らが残した旧屋敷は村のはずれの山奥に眠っているらしい。

 

 

「夢現に家族の輪、家族寄り沿う木は夢の中……。()()()()我ら血の先に微睡わん、獣と共に微睡わん」

「それって……?」

 

 前半部分を鵺は知っている。最近思い出した、母から教えてもらったおまじないだ。

 だがシミエはその先を歌った。寄木に伝わるおまじないの、その元の形を。そしてそれには、確かな意味合いが込められていると、そう思わずにはいられなかった。

 

「あぁ、お爺様から教えてもらった言葉でね。いつか寄り木に訪れた子に、伝えてあげなさいって」

 

 ぼんやりとした目が鵺を収める。シミエは遠い昔を思い出す様に、そしてまるで夢に揺蕩っているかの様なボケ具合で語った。

 

「それにしても、不思議な縁があるのねぇ……まさか盟友様の子孫が帰って来るなんて」

「私も、ココがそんな場所だったなんて思わなかった」

 

 そうしてずっとニコニコと笑みを湛えている彼女に別れを告げて、鵺はシミエの家を後にした。

 昔話自体には大した関心は向かなかったが、この近くに遺跡があることを知れたのは僥倖だった。

 もし鹿尊がシミエに気付かなければ、確実にこの情報を見落としていた。そして最悪、寄木の遺跡には二度と辿り着かないこともありえただろう。

 

「ありがとね、シミエおばあちゃん」

 

 老婆の身体を温める様に、身長はまるで足らないがギュッと抱き締めてから鵺は村の中央へ戻った。

 そこには先ほどまでとは少し人数が減った、村の人間たちが固まっており、戻って来た鵺と夜月に悲鳴を漏らす人もいる。

 

 だがそれらには一切目を向けず、シーツーの足元で報告を始めた。

 まるで生殺与奪の権を奪っている村人など、微塵も興味が無いかのように。

 

「お待たせ、寄木の遺跡の情報あったよ!」

『それは良かった。だがあまりに遅いのだから、待ちくたびれて幾人か食ってしまったぞ』

「えへへ、ごめんね」

 

 そう言って鵺は宥める様にシーツーの六本ある足の内一本を撫でる。甲虫の様な造形の足は、角ばっていてかつ装甲は滑らかだ。そしてとても力強さを感じられる。

 そんな愛撫を受けたシーツーは、満足気に呼気を漏らした。

 

 勿論シーツーは待たされたことに本気で怒ってなど、それどころか微塵も悪感情を抱いてはいない。これはただのスキンシップであった。

 ただ近くで見ている村人からしたら、かなり恐ろしい光景であることには間違いないだろうが。

 

 あと人を食ったのも本当だ。

 

「じゃ、行こっか」

 

 相変わらず自らが虐げた村人たちには一瞥もくれず、シーツーに飛び乗る。

 遺跡がこの近くにあるのは分かったが、詳しい位置までは分からないので上空から探すことにしたのだ。

 そして夜月とクリスタは共にシーツーには乗れないので、ここで一度夢へ帰ることになる。

 

 そうして鵺を乗せたシーツーは、鈍く高い翅音を出して飛び上がる。

 その口や足、そして槍の穂先の様な尻尾から血が垂れ、宙を舞ったそれを村人たちは呆然と見送るしかない。

 

 嵐は去った。決して消えぬ傷を、これでもかと刻みつけて。

 鵺たちが完全に見えなくなってからも、生活の続きを行おうと心身ともに動ける者は、誰一人いなかった……。

 

 

 

 ◇

 ソコは、意外なほど容易に見つかった。

 だが話通り余程古いのか、人が住んでいたであろう屋敷は朽ちて崩壊してしまっていた。ここから何かを見つけ出すのならば、本腰を入れて瓦礫撤去から始めねばならないだろう。

 

 まぁ土に埋まっているでも無く、瓦礫自体は木造素材ばかりなので、煉瓦や石材等に比べれば幾段もマシだが。

 

「よーし、口寄せの術!」

 

 本当なら口寄せ時の消費が多いため、シーツーは出しっぱなしである方がいい。だがしかし、それよりも秘伝を発掘する方を優先する。

 

 鵺がシーツーを解除して呼び出したのは、茶鬼丸とクリスタ、そしてドリュウだ。

 

 この三体は今まで鵺の旅において、その肉体を駆使して戦闘や緊急離脱に従事していたが、実はそれは本来の用途ではないのだ。

 寧ろ両親が殺される以前に創られた彼らは、もっぱら人間では難しい重労働を代行するために存在していたのだ。

 

 言うなれば、今から行う作業こそ彼らの本来の役割ということだ。

 

「じゃあみんな、よろしくね」

 

 鵺のお願いに合わせて、三体は動き始めた。

 クリスタは林業重機よろしく柱の残骸や大きな瓦礫を中心に撤去し、茶鬼丸は崩れた屋根で出来た屑山を押しのける。

 そしてドリュウは茶鬼丸を手伝いつつ、埋もれた遺物の掘り出しを担当していた。

 

 何せ瓦礫やホコリと土の混合物が多いのだ。彼の活躍場所は多分にある。

 

 無論鵺も、家族に任せっぱなしではない。彼らの様にマンパワーは無いが、チャクラコントロールを学んでから拙いながらもチャクラの身体力強化は可能としている。

 故に危ないですよとクリスタから苦言を呈されても、小さな体でちょこちょこと遺物の発掘に協力しているのだ。

 

 そして、誰も知らぬことだが奇しくも、以前はこの屋敷……寄木邸の当主の間だった場所を鵺が掘り当てた。

 

「これは……?」

 

 鵺は発見したそれを手に取る。随分と古ぼけて朽ちかけているが、昔ならば相当上質だったと窺える桐箱だ。

 念のため茶鬼丸の代わりに鹿尊を呼び出し、感知をしてもらうが特に封印術や防衛術は仕込まれていなかった。

 

 なので安心して、その桐箱を開封する。

 中には一本の巻物が封じられていた。

 

「『寄木当主秘伝』……」

 

 鵺は書かれていた題名を、無意識に読み上げた。

 それは間違いなく、祖先が残した大事な……幸せの道標だった。

 

 

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