口寄せ特化一族の末裔ちゃん   作:冗談だぜ、青い人

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それが欲しい

 鵺がデイダラと出会ってから、三か月ほど時間が経っていた。そしてその間の生活は、今まで隠れ逃げていた彼女からすれば、随分と久しぶりに感じる落ち着きがあった。

 時折デイダラは仕事に出るが、帰ってくれば食料なども分け与えられるという雛さながらの生活だ。

 

「よし鵺、今日もやるぞ。うん」

「うん!」

 

 そしてもう一つ、彼女にとって大きな恩恵があった。それはデイダラに体術やチャクラコントロールの修行をつけてもらったことだ。

 何だかんだ言ってデイダラは優秀な忍者である。元岩隠れの忍びだと明かした後も鵺はデイダラに懐いていたので、彼女の目的達成と自衛のために教え始めたのだ。

 

 正直なことを言えば、デイダラから見た鵺は忍者としての才能が乏しい。

 もちろん口寄せの術に関する才能には目を見張るどころじゃないものがあるが、その他の体術や忍術……何なら素のチャクラコントロールはまだまだ覚束ない。

 

 九歳だからと言えばそれまでではあるが、それでも自分や妹分はその頃にはもう少し出来ていたなとデイダラは思っていた。

 

 特に忍術はてんでダメだった。

 基本の分身の術や変わり身の術、変化の術すらまともに使えない。ギリギリ形になったのは、チャクラコントロールを使った基本の術。ちょっとした身体強化の術くらいだ。

 この分では他の忍術を修めるのも、ましてや性質変化の術など以ての外だろう。

 

 一方で体術はそれなりに出来ることが分かった。生まれてこの方山暮らしだったのが影響しているのか、小柄ではあるが体力や筋力は付いていたのだ。

 身体裁きも教えれば、メキメキとは行かぬものの忍術なんかよりもよっぽど成長している様に見える。

 まぁそれでもデイダラに言わせれば、必要最低限よりちょっと上くらいなのだが。

 

(コイツが強くなるには……やっぱり口寄せの契約を今以上に増やすしかないな、うん)

 

 これから成長度にもよるだろうが、おそらく鵺のチャクラ量はそこまで多くはならないだろう。そうデイダラは見ていた。故に一騎当千の大型獣は望めない。手札を増やして工夫するしかないのだ。

 

 しかし口寄せの新規契約というのは、術の難易度とは関係ない難しさがある。武器などの無機物ならば別として、生物型との契約はまず出会わないと始まらない。そしてその後に何らかの方法で従ってもらわなければならないのだ。

 

 そこらにいる小動物と一方的に契約し、囮や肉壁として使う者は多いが……主戦力として使用する者が少ないのはその辺の事情が深く絡んでいる。

 

(どうしたもんかな、うん)

 

 一筋縄ではいかない。彼女の行く先も、自分で身を守らせることも。

 それがこの三か月で彼が感じていた苦悩でもあった。

 そしてそれは、デイダラが出会った当初よりも鵺に対し情を覚えているからでもあったのだ。

 

 それを初めて見せたのは、ちょっとした気まぐれからだった。

 彼が里から盗み、新たに手に入れた術。それを使って完成した一大作品──────。

 

 名を『Ⅽ2ドラゴン』

 

 彼の渾身の造形力を込め、儚く美しい芸術を大量に仕込んだ傑作だ。

 その洗練されたポップアートと戦闘力を併せ持った、今の彼のお気に入り作品だった。

 

 それが形になった高揚感で鵺に見せたところ、彼女はかなり気に入ったのだ。案外彼女はポップアートに対する適性があったようで、それ以来デイダラの作品をよく見たがるようになった。

 

 自分の高く掲げる芸術性を無邪気に評価され、彼は満更でも無かった。確かに九歳の彼女には詳しい芸術の何たるかなど、そこに込められた意味や造形の深さなど分かろうはずも無い。しかし、だからこそ本能で粘土作品を気に入った鵺の眼をデイダラは見込みありとしたのだ。

 

 そう、自分の作品を褒められて嬉しくないものなどいないのだ。

 

 

 とデイダラが思考している間に鵺もまた、とあることを考えていた。

 体術の修行のためにデイダラと組手を行っている最中であるが、その彼女の意識は少し別のところにあったのだ。

 

『鵺、ようやくだ』

 

 組手を見守る鹿尊からの知らせ。それは一つ、彼にお願いしていたことが完了した合図だった。

 

『結論から言えば、推測通り……いや、推測以上かもしれんのう』

(じゃあ……?)

 

 心の中で会話する。こんなことが出来るのはデイダラにも言っていない。彼らだけの秘密だった。

 そして、今秘密裏に行っていることも。

 

 これを行い始めたのは、まさしく初めて彼の作品を見た時からだった。

 鵺は彼の作品……いや確かにそのポップな造形には心奪われたが、それ以上に作品に込められたあるものに強く惹かれた。

 

()()()()()()()()()()()()()

 

 最初は起爆札などの、チャクラを流すことで起動する仕組みか何かだと思った。しかしそれは鹿尊の観察により、本質的に違うと分かった。術が仕込まれていると言う次元ではない。チャクラそのものと同一化しているのだと。

 

 そこに鵺は、とんでもない天恵を得ることになる。

 

 そして数週間に渡る鹿尊の調査により、実際にそれが高い確率で可能だろうと結論づけられた。

 それ即ち──────。

 

 

 自らの血にチャクラを練り込むこと。

 

 

 術を手に入れ、それを与える口寄せ獣を創り──────血の吸出しとそのタンクにすることを考えれば『大型の蚊』が望ましいだろう──────鵺が本来抱えきれないレベルのチャクラを溜め込んだ血を作れたとしたら。

 そしてそれが口寄せの代価として機能するならば。

 

 理論上、限界は無くなる。

 

 屋敷を容易く叩き潰せる巨獣でも、国と国の境をひとっ飛び出来る体躯の鳥でも……あるいは凶悪な術をこさえた獣を呼びだすことも。

 

 夢が広がる。

 

 ずっとネックだったチャクラ量の問題が解決するのだ。

 準備こそ必要だが、用意さえしてしまえば……彼女の術が持つ本来の凶悪さが花開くだろう。

 

 それこそ……あの蛇男を殺し、二度と家族が失われないそんな未来が──────。

 

(欲しい……)

 

 ──────()()()()()()()、デイダラお兄ちゃん。

 

 そんな誰も知覚せぬどす黒さが……無自覚に自分を蝕むのを、鵺は知らない。

 彼女の瞳は……昏く深く、底知らぬ黒を孕んでいた。

 

 

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