双子の姉妹が堕とそうとしてくる。   作:灯利

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お気に入り2桁到達ありがとうございます。
毎回展開あんまり進まなくてすみません。
こんな調子でゆっくり頑張って書いていきます。
お手隙の際の暇つぶし程度にどうぞよろしくお願いします。
評価、感想等もお待ちしております。



兄貴…携帯使えるほど賢かったんスか!?

 

 

俺の通う高校はいわゆるお嬢様、お坊ちゃん学校だった。

偏差値よりも何より学生に求められるのは一に家柄、二に財力である。

警視総監の一人息子に、財閥の御曹司、歴代政治家一家の箱入り娘にまで至るまで子供の種類は多種多様。

 

例えどんなバカだろうと問題児だろうと、家柄か財力さえあればよほどのことが無い限りは入学が許可される小中高大一貫の超特別校、それがこの学校の異質すぎる特色で。

 

勿論、入学する前にそんなヤバそうなところだと分かっていたら流石に入学することは無かっただろう。

 

だがあの頃の俺は甘かった。超甘かった。というかなんも考えてなかった。

家を出たいと必死になっていた俺は、目の前に偶然置かれていたパンフレットが超エリート学校のものだと気がつかなかった。

 

 

 

 

 

今思えば、それは果たして偶然だったのだろうか?

 

 

 

 

 

 

…。

 

 

 

 

 

「…んぅ」

「…」

 

 

呆然と立ち尽くす俺の腕の中に収まっているのは、小柄で茶髪ショートヘアの女の子。

気絶しているのか、体をぐったりとさせて全身から力が抜けている。

 

「兄貴、ついに人攫い始めたんすか」

「…チビ、いつから居たんだ」

「いや、はじめから居ましたけど」

「…そうか」

 

突然後ろから気配もなく現れたのは…チビ。

 

白い肌とは対照的な黒いショートロングの髪を赤いリボンで後ろにひとつ束ねて下ろした女学生。元気っ子でクラス随一のムードメイカー。運動抜群な彼女が蹴った部活勧誘は数知れず。

風紀委員なんぞをしていている癖にスカート丈も短ければ制服も変に改造してあったりする。

 

なんとこれがあの黒服三人衆のひとりのチビだ。しかも同じ学校に通っている同級生である。あと2人は流石に社会人だったが、それにしてもこれには驚いた。

 

さらに言えば、俺に会う度何かしらおちょくってくる。親は外交官だとかなんだとか言っていた気がするが、常識という言葉をどこか遠くに置き去ってきたこいつがそんな堅苦しい家の娘だとは今でも到底思えない。

チビの場合、口よりも拳でネゴシエイトするパターンの女だろう。きっとそうだ。間違っても常に腹に黒いものを抱えて交渉出来るような人間じゃない。

 

「俺は何もしてない。こいつが勝手に上から落ちてきた。」

「兄貴が受け止めたんスか。」

「あぁ。」

 

そこでチビが揶揄うように俺を指差して言った。

 

「一般的に見れば、兄貴が人攫いしようとしてる姿にしか見えないッスけどね。」

「…。」

「…ほんと兄貴って、顔死んでる割に表情分かりやすいっすよね。」

 

そう言ってケラケラと笑うチビ。俺をおちょくる事については今更のことなのでこれくらいで怒髪天をついたりはしない。俺は至って冷静だ。

 

「…一応、落ちてきた時は意識はあったんだが…」

「兄貴の顔見て気絶したと」

「…。」

「あは。」

 

あ、また私なんかやっちゃいました!? そんな顔でこっちをニタニタ笑ってくるチビ。身長が小さいので下から上目遣いのように言われるのがなお悪い。俺はおもちゃじゃねぇ。

 

「…まぁ、ここだと人の目がありますし…とりあえず保健室いきましょっか。」

 

そう言って目から笑みを消したチビ。周りを見てみると、確かに遠目に幾人かの生徒が物騒な目でこちらを見ているのが見えた。

 

「あぁ…」

 

俺たちは名もなき女学生を連れて保健室へと向かう。

 

 

この学校には多くの派閥がある。 入学してからはや二年が経ったが、俺は未だにこの嫌な雰囲気に、慣れることが出来ていなかった。

 

 

「…ん?」

 

 

保健室に向かう途中に、ポケットに突っ込んでいた携帯に着信が入っていた事に気がついた。

少女を背負いつつも片手で取り出して画面を見てみると、着信が一件。

 

発信者は、桜。

 

そう、星川桜だ。

 

ふと、桜のことを思い出した。

あいつはいつだって俺の後ろを飽きずにトコトコ歩いてきてはニッコリと笑みを浮かべていた。色々とワガママな妹に比べれば幾分マシだったが、どこに居たってあいつの視線を感じない日は無かった。

やめろと言ってもやめなかったし、かといって別に無理やりやめさせる程のことでもなかった。本当に俺が居てほしくないと思った時には決まってあいつはついてこなかった。言い換えれば怒りの一線をうまく超えないようにしていた。だから自由にさせていた。特にそれ以上進展も無かったが。

結局、俺が一方的に無視しまくったままハイさようなら。

別れもせずに突然家を出てきてみたが、それまでの執着が嘘のように今では音信不通のままだった。それからはや二年になるか。

 

思えば、今あの双子は果たして何のようだろうか。

 

別に、悪い子達ではなかったように思える。姉については極端な寂しがり屋だったとも言えるし、妹も思春期特有のかまってちゃんムーブだったかもしれない。当時は進学のこともあったし、心の余裕があまりにもなくて気がつけなかったが、今こうやって思い返してみると、もうちょっと優しくしてあげても良かったんじゃないかな、なんて若干の後悔も浮かんでくるものだ。

…それが出来ていたら、今頃家を飛び出してきては居ないのだが。

 

 

着信履歴を見るに、電話があったのは今から3時間前。特に携帯なんて弄ることも無いから全く気が付かなかった。

 

(まぁ、気が向いたら電話してみるか…)

 

俺は再び携帯をポケットに突っ込むと、若干ずり落ちそうになっていた少女を背負い直して、保健室へと再び歩を進めた。

 

 

「あ、兄貴もうへばったっスか? 体力ないスね!」

「へばってねぇ」

「私が代わりにおぶってってあげましょうか?これでも力はあるスよ。」

「お前じゃ身長足らんだろ。摺ってくつもりか?」

「何を失礼な!」

 

 

 

 

人の横でギャーギャー喚くチビ。

 

 

 

 

(あぁ、思えば椿のヤツもこんな感じで煩かったな…)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…。

 

 

 

星川家 別邸宅前。

 

幾人ものセキュリティサービスに警護され、その中から一組の双子が邸宅から出てくるところだった。

「桜姉さん。準備出来た? 早くしないとー置いてくよ。」

「あらあら。椿はほんとにハルお兄さんに会うのが楽しみなのねぇ。」

「桜姉さんだってー今日の化粧いつもの倍は時間かけてたじゃん」

「そりゃもう…久しぶりに家族に会いに行くんですもの。気合い入るわぁ…。」

「化粧なんてしなくても桜姉さんなら大丈夫だよ。」

「そういう椿こそ、柄にもなくいつも以上にお化粧丁寧にしてるじゃない。」

「…偶然時間があったからだし。」

「まぁまぁ。そういう事にしておきましょうか。」

 

いつも通りの和気藹々とした双子の姿。外の人間からすればドッペルゲンガーのような外見が全く同じ二人がまるで自分自身と話しているかのような様子に見えるのだから、二人の容姿がいかに不気味なほど似ているのかが見て取れる。

 

普段の服装とはうってかわり、今の二人が身につけているのはセーラー服。

紺を基調とした白がアクセントとなった、可愛いというより伝統に重きを置いた和を纏った制服。偶然かそれはハルの着ていた制服と似通った作りをしていた。

 

絹のように滑らかで細く、風に舞うお揃いの亜麻色の髪。

白魚のように白く美しく、陽気を反射する陶磁のようなお揃いの肌。

日本人形のように芸術的までに美しく整った鏡写しのようなお揃いの顔。

まさしく瓜二つと言って良い双子の姿がそこにあった。

 

 

「では、行きますか椿」

「行きましょう、桜姉さん」

 

 

二人はいつものように仲良く手を絡め、黒塗りの車に仲良く乗り込んだ。

目指すべきは勿論、二人の愛すべき兄の元にである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…。

 

 

「兄貴、実は女の子の肌に直に触れててドキドキとかしてないッスか?」

「してない。」

「今度僕が触らせてあげようか?」

「うるさい。」

「実はドキドキ?」

「しとらんわ!!!」

 

ハルは保健室に向かう道中でもチビに弄られまくっていた。

楽しんでいるのは当のチビだけで、明らかにドス黒く撒き散らされる無意識のうちの超眼力と超強面顔で、なんの武道も知らないズブの素人でさえ「奴はヤバい」と本能的に感じる程の殺気。

勿論周囲の人間達がハルに対してドン引きしていたのを、鈍感なハルは知らない。

 

 

 

 

 

…。

 







椿file No○○○
道引(みちびき)奏衣(かなえ)
夫が外交官で単身赴任中。妻は要人専属セキュリティ会社社長で日本在住中。
兄と同級生であり、最も兄と接点が多い人間。
すばしこい癖に胸が桜姉さんよりデカい。
ー以下ロックされていますー


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