修正作業に時間がとてもかかっている現状です。
学校も忙しいため、週一投稿は夢のまた夢です。
それではどうぞ。
「こ、これは想像以上につらい……」
背中に刺さる視線に耐えながら一夏は小声でつぶやく。
今日は入学式という新しい生活が始まる日だ。
普通の学生ならば変化する環境に期待するか不安を覚えることだろう。
一夏もそのうちの一人で現在不安を覚えている。
(俺、この学校でやっていけるのかな)
周りからくる視線の量は多い。そして、ほとんどが実験動物を観察するように、じっと見つめてくる視線だった。
一夏が視線を受けているのには理由がある。それは彼がこの場において異質だからだ。
教室内に彼以外に男は一人もいない。それどころかこの学園に男がいること自体がおかしいのである。
彼はIS学園一年一組の教室にいる。IS学園とは、約10年前に発表されたマルチフォーマットスーツであるIS《インフィニット・ストラトス》について学ぶための学園だ。
ISは発表された当初に起きた事件のとき、はるかに上回るスペック差で現行していた兵器を一網打尽にした。その事件を期にISの存在は絶対的なものとなった。しかし、そんなISにはひとつの欠点がある。それは女性にしか動かせないことだ。その欠点は世界を変えるきっかけとなり、現在世界中が女尊男卑になっている。
つまり、女の象徴となっているISについて学ぶ、この学園は女子校だと言っても過言ではない。
そんな中にひとり紛れ込んでいる彼は浮いた存在になるのは必然だ。
(誰か、この状況を何とかしてくれる人はいないのか?)
一夏はそう思い、視線だけ動かして周りを見た。
周りにいる女子のほとんどが一夏を見ている状況の中、窓際に見覚えのある容姿をした女子を見つけた。
(もしかして、箒なのか?)
小さい頃に引っ越してしまった女の子、引っ越しをした後、ほとんど連絡も取れずにいた。その女子の姿は小さい頃の面影を残していた。
一夏は窓際にいる女子を注視する。しかし、相手は外を見ているため、こちらの視線に気づく気配はない。
(頼む、こちらを向いてくれ)
一夏は神に祈るように心のなかで呟いた。すると、願いが叶ったのか箒が窓から視線を外し、一夏のいる方を向いた。
そして、一夏と目が合った。
「……!」
一夏と目があった瞬間、箒は勢い良く視線を窓に戻した。
(何故だ!?)
一夏はようやく手に入れかけた現状を良くする材料を手放してしまった。しかし、実際は今のやりとりで時間が経っていた。その証拠に、教室のドアが開く音が聞こえる。
教室に入ってきたのは小柄な女性だった。
「皆さん揃っていますね?SHRを始めますよ!」
晴れ晴れとした笑顔で挨拶をする女性。
「私は、このクラスの副担任の山田真耶といいます。一年間よろしくおねがいしますね!」
山田先生は元気よく自己紹介をする。
「…………」
しかし、周りからの反応は全くなかった。山田先生の顔に雲が指す。
(ごめんなさい、山田先生。反応したいけど、この視線の中ではできません)
心のなかで一夏は謝罪した。
「そ、それでは出席番号順に自己紹介をしてもらいます」
泣きそうな山田先生が言うと、自己紹介が始まった。
一夏への視線は減らない。
(なんで皆こっちを見てるんだよ?自己紹介ぐらい見てやれよ、すごい気合が入っているぞ)
発表者が後ろにいるため、後ろを向けない一夏は気付かなかったが、発表者も一夏を見ていた。
(HRまで我慢すればなんとかなると思ったのに、もしかして、このままずっとこんな状態なのか?)
一夏が未来を想像して絶望していると、ふいに声が聞こえてくる。
「……くん?織斑一夏くん!」
「はっ、はい!」
突然の声に驚いたため変な声を出してしまう。声の主は山田先生のようだ。
「大声出しちゃってごめんね?自己紹介の番が次は織斑くんなんだ」
とても低姿勢の受け答え、本来なら人の話を聞いてなかった一夏が悪いはずだが、真っ先に謝ってくる。
「えっと、もしかして怒ってる?」
(やばい、この人は真っ先に自分に非があると決め付けるタイプの人だ、
急いで話を切り上げないと会話が永久終わらない!)
「だ、大丈夫ですから。怒ってないですし、自己紹介もします!」
一夏は返答を待たずに席から立ち後ろを向く。そこにあるのは今まで散々背中に刺さっていた視線。
(とんでもなく辛い。でも、発言しなければ、ずっと視線がなくならない。)
一夏は思い切って自己紹介をする。
「織斑一夏です。」
一夏は次の台詞を考える
(趣味は特にない。特技は家事全般だけど、男の自己紹介として駄目な気がする。)
案が出ては消されていく。
(あれ?話せるものが何もない。)
一夏の頭にはいい案が浮かばなかった。しかし、時間は有限である時間が経つにつれて周りの視線には「他には?」という意思が付与されていく。
(何か言うんだ俺。)
一夏はさらに考える。考えぬいた結果。
「……以上です」
一夏は締めの言葉を言う。発言時間が10秒にも満たなかった。
クラスの半分近くが椅子からこける。
(俺には無理だったようだ。)
一夏は悟りを開いたように清々しい顔で目を閉じた。
「お前はまともに自己紹介もできんのか?」
「え?」
声が聞こえると同時に、クラッカーを鳴らしたような音が教室中に響く。
その後、激痛が一夏を襲う。
「い、いってぇ?」
あまりの激痛に頭を抱えながらしゃがんでしまう。
「織斑先生!会議は終わったんですか?」
山田先生の声が一夏に届く。
(いったい何が……織斑先生?)
一夏が顔を上げるとそこには、彼の姉である織斑千冬がいた。
「ああ、山田先生SHRを任せてしまってすまない。」
「いえ、私も副担任ですから、これぐらいはしませんと・・・」
普通に会話をする教師2人。
(あれ?俺ぶたれたのに放置なの?)
「それよりも、なんで千冬姉が」
立ち直った一夏が文句を言う前に教室中から爆音が発生する。
「千冬様よ!本物の千冬様だわ!」
「ずっとファンでした!」
「私は憧れてこの学園に来ました!!北九州から!!」
大音量の黄色い声に一夏はまたしゃがんでしまう。
(耳、耳がいかれる。)
一夏がしゃがんでも音響兵器は止まらない。一夏への視線はいつの間にかなくなっていた。
「毎年、よくこれだけの馬鹿が集まるものだ。」
呆れたように織斑先生が言う。
(……毎年こんな状態なのか。千冬姉も大変だな。)
幾分か耳が治ったため一夏は再び立ち上がる。
「それで?お前は満足に挨拶もできずにそのまま立っているのか?」
冷ややかな目で一夏を見る織斑先生。
「そもそもなんで、千冬姉がここにいるんだよ?」
一夏がそう言うと彼の頭にまた、衝撃が走る。
「学校では織斑先生だ!」
(たしかに。でも、一回間違えただけで叩かなくても。)
「なにか言ったか?」
「いえ、なんでもありません。」
(どうやら俺の考えていることは簡単に読まれてしまうようだ……)
「あれ?もしかして織斑くんって、千冬様の弟?」
唐突に発せられるクラスメイトの声。騒がしい中でも、一夏が織斑先生のことを千冬姉と呼んだことに一部の女子は気がついたようだ。
(あっ、これはやばい。また騒がしくなるパターンだ)
一夏は諦めたかのように席に座り、机に突っ伏した。
(もう無理だ、俺の精神がついていけない……)
案の定、騒がしくなる教室内。この数十分間で一夏の精神はとてつもなく消耗してしまったようだ。
だが、案外早く騒ぎは静まった。机の上にへたり込んでいる一夏にも聞こえるように発せられた、織斑先生の声によって。
「いきなりですまないが、転入生を紹介する。」
(……どうやら、俺の精神は更に削られるらしい)
次話からオリキャラが出ます。
修正前と全く話の内容が一緒なのは今回までです。
オリキャラは最初少し戦うだけで、あとは裏でちょこちょこ動いてもらいます。
それでは、次回もよろしくお願いします。