戦闘描写がとても難しい。けど、打つ速度はとても早かったです。
それではどうぞ。
あれから一週間が経過した。一夏と箒は放課後に武道場で剣道をし続けていた。その反面、五代は書類作りに勤しんでいたのだが。
「なあ、箒」
「どうした、一夏?」
一夏も現在の状態がよくわからないのか箒に問いかける。
「なんで五代は目に隈を作りながら、机に突っ伏しているんだ?」
「さすがに私もわからん」
五代はアリーナにある休憩室の机に突っ伏していた。一夏もよく思い出してみたが、この一週間、五代と会話した覚えが殆ど無い。
「少し聞いてくる」
箒は五代のそばに寄り、話を聞こうとする。そんなに離れていないのに一夏には全く会話が聞こえない。しばらくして箒が戻ってくる。
「どうだった?」
「どうやら、相部屋の人が夜遅くまで起きているらしい。そのせいで寝不足が続き、ああなったようだ」
「そうなのか……俺が先にセシリアと戦ったほうが良さそうだ」
一夏は今の五代がISに乗って戦うと事故が起きるようにしか思えなかった。
「そうした方がいいだろう。それと五代、今のお前は絶対に無理をしている。体を壊す前に文句は言った方がいいぞ」
箒が言い終えると、休憩室のドアが開いた。
「織斑君の専用機が届きましたよ!」
山田先生と織斑先生が入ってくる。
「五代はどうしたんだ?」
「寝不足で体調が悪いそうです」
織斑先生の問いに対して箒が答える。
「大丈夫ですか、五代くん?」
山田先生が心配そうに五代を見る。
「コーヒーでも飲ませておけば、大丈夫だろう。それより織斑、準備はいいな?」
「はい、大丈夫です」
織斑先生の確認に一夏は胸を張って答える。
「ならばハッチまでついてこい。そこにお前の専用機がある」
そう言うと織斑先生は部屋を出て行く。後を追いかけるように山田先生も慌ててついていく。
一夏もついていこうと歩き出した。
「……一夏」
五代が小さな声で話しかけてきた。ついでに手招きもしている。一夏が近づくと五代が耳打ちしてくる。
「…………」
「……なんでお前そんなことを知ってるんだ?」
「…………」
「一夏、何をしている早く行くぞ」
遅れている一夏を呼ぶ声が聞こえる。一夏は早足で休憩室から出ようとして、立ち止まった。
「ありがとな、五代」
返事はなかったが、五代は手を小さく振っていた。
「これが織斑くんの専用機、白式です」
一夏の目の前には白色の機体があった。
「織斑くん、ISの装着の仕方はわかりますか?」
「あ、はい。大丈夫です」
一夏は少しの間、白い機体に心を奪われていた。入試の時に操縦した打鉄とは形も風格も違う。一夏には、主を待つ騎士のようにも見えた。
「早く装着しろ。もうセシリアは出ている」
織斑先生が急かしてくる。一夏は体を機体に預けるように機体を装着した。
「初期移行をしている余裕はない。実戦でやれ」
「わかりました」
一夏は織斑先生の指示を理解した。専用機でも初期移行が行われなければ勝ち目はないと。
「一夏……」
箒が心配そうに一夏に話しかける。
「箒、行ってくる。この一週間の成果をオルコットに見せてやるんだ!」
一夏は元気よく宣言した。そして、それを聞いた箒は表情を変えた。
「ふっ、そうだな。行って来い、一夏。私が稽古をつけたんだ。無様な姿を見せたら承知しないぞ」
「それなら、頑張らないとな」
そう言って、お互いに笑い合う。そして、一夏と白式はハッチから飛び出した。
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「あら、あなたが先でしたのね」
アリーナの中央部にセシリアはいた。手には巨大なライフルを持っている。そして
(青い機体……)
セシリアの機体は青かった。
「ああ、五代は俺の後に戦う」
セシリアと会話しながら一夏は青い機体を見続ける。
「最後の通告ですわ。ハンデを受けなさい。あなたでは敗北するのは目に見えていますわ」
セシリアにとっては善意の発言。しかし、一夏にはそれを受けるという選択肢はなかった。
「言っただろ?ハンデなんていらないって」
一夏がそう言うと放送がはいる。
《両者準備はいいな?》
放送の後すぐに、ブザーが鳴る。
「そうですか……」
もう一度。
「ならば、ここでお別れですわ!」
三回目のブザーが鳴り、試合が開始した。
試合が始まると同時にセシリアは四機のビットを展開し、一夏に向かって自身の手にあるライフルも使って射撃した。
大人気ない不意打ちの攻撃にも見えるが、セシリアは織斑一夏には全力を出す必要があると思っている。
彼は自分の持っている男のイメージからかけ離れていた。人の顔色を伺って生きていた彼女の父親とは違い、無礼ではあったが自分の意志をしっかりと持っていた。
だからこそ……
砂煙が晴れると、そこには無傷の白式と息を荒らげた一夏がいた。
「あなたどうやって避けましたの?」
それほど驚いた様子もなく、セシリアは一夏に問う。
「攻撃が来るのはわかっていたから、お前がライフルを撃つ瞬間に前に飛び出しただけだ」
淡々と言う一夏。呼吸の乱れも幾分かましになっている。
「攻撃が来るのがわかっていた。時間をあけて前方にも撃ちましたのに、それさえもわかっていたと?」
「ああ、五代には感謝しないとな。あいつがお前の機体の特徴を教えてくれなければ、俺は攻撃をモロにくらって、負けていた」
先ほど一夏を呼び止めた五代は。
「……セシリアさんの機体が青だったら、主武装はライフルではなく四機のビット兵器だよ」
「……なんでお前そんなこと知っているんだ?」
「国に調べてもらった。それと……」
「なるほど、やはりあなた達は油断できませんわ。ですが」
四機のビットを手足のように操るセシリア。
「ブルーティアーズの奏でる旋律は……この程度ではありませんわ!」
第二ラウンドが始まる。
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「初撃はなんとか避けたが、状況は悪いな」
ハッチからモニターのある休憩室に移動した織斑先生たちは、一夏たちの試合を見ていた。
「はい、五代くん。コーヒーです」
「……ありがとうございます。山田先生」
山田先生からコーヒーを受け取り、五代は少しずつ飲んでいく。
「それにしても、よくセシリアの専用機を調べあげたな」
五代に対して箒が賞賛する。
「国に調べてもらいました。私にできる悪あがきはこれぐらいでしたから」
「なるほど」
五代の返答に織斑先生は納得したように頷いた。
「でも、一夏はすごいですね。動かして二回目の動きじゃないですよ、あれ」
現在、一夏はビット兵器による攻撃を掠りながらも避けている。着実にシールドエネルギーを減らされているがモロに当たった様子はない。
「おまけに一夏の動きに無駄がなくなってきた」
「それに、目的を持って動いているな。期を伺っているようにみえる」
「くそっ!」
ビット兵器の猛攻の中、一夏は悪態をつく。
(悔しいが相手のほうが何枚も上手だ。俺を撹乱するようにビットを動かし続けているうえに、多分だがハイパーセンサーだけじゃなくて、ライフルのスコープでこっちを見ているな。常に銃口がこっちを向いている)
セシリアは一夏の隙を伺い、ライフルで着実にシールドエネルギーを削っている。
(おまけに、俺の武装はブレード一本だけだ)
一夏の白式には武装がブレードしかなかった。遠距離装備に対して近距離の装備しかない。それは、相手にダメージを与えられないことを意味している。
(何とかしてビットを壊せれば……)
一夏はセシリアがライフルを撃つ瞬間にがむしゃらにビットへ特攻を仕掛けた。
「……!」
「えっ?」
ビットの猛攻が一瞬止まり、目の前のビットがブレードを避けた。しかし、すぐに再開される射撃の雨。
(もしかして、セシリアはビットに細かい指示を送るには他のことを中断しないといけないのか?)
すぐに回避行動に戻った一夏は考える。あくまで憶測でしかない。だが、その憶測で現状が変わるなら……
(賭けに出るのもありだな!)
一夏はもう一度ビットに特攻を仕掛ける。他のビットの動きが止まる瞬間に一夏は現在出せる最大のスピードでセシリアに向かって加速した。
反応が遅れて一夏の接近を許してしまうセシリア。
(とった!)
一夏が一撃を入れることを確信した時、セシリアの口元は笑っていた。
「残念ながら、ブルーティアーズは……六機ありましてよ!」
スカート状の装甲から二機の新たなビットが現れる。その形状は他の四機と違い銃口の代わりに鉄の塊がついていた。つまり、ミサイルを装備したビット。そして、そのビットからミサイルが放たれる。
「それも計算済みだ!」
思い出すのは五代の言葉。
「それと、開発当初はビットの数は六機だったらしい。気をつけてね」
一夏はミサイルを紙一重でかわし、セシリアに肉薄する。
「なっ?」
驚きの声を上げるセシリア。
しかし、一夏は違和感を覚えた。ミサイルによって生まれた煙が一つしかない。そして思い出す、ミサイルが何にくっついていたのかを。
「後ろか!」
一夏は全速力で回避行動をとる。そして、一夏の体のあった部分を通過するビット。
「ふふふ、惜しいですわ。もう少しで決定打を与えられたのに」
先ほどの声は演技だったのか、笑っているセシリア。
セシリアは二機のミサイルビットのうち、一つを発射し、もう一つをビットとして一夏に放っていた。
「最初の不意打ちを避けられた時点で私に慢心の二文字は存在しませんわ!」
一夏は急いでミサイルビットから離れようとする。
「それでは、鬼ごっこを始めましょう。鬼の数は五、一つにでも当たればゲームオーバーですわ」
先ほどまで遠くにあった四機のビットが戻ってきていた。
前方と後方をビットに囲まれた一夏は急いで空域を離脱しようとする。
その時、一夏は気づくべきだった。セシリアの持つライフルが一夏を狙っていないことに。ライフルから放たれた光は真っすぐ進み、一夏に肉薄していたミサイルビットを破壊した。
轟音とともに一夏の機体が吹き飛ばされ、地面にぶつかる。そして
「ゲームオーバーですわ」
ライフルとビットの五つの砲門から同時に光が放たれた。
「一夏!」
「織斑くん!」
山田先生と箒が悲鳴を上げる。そんな中
「ブザーが鳴っていない?織斑先生」
「ああ、間に合ったみたいだな。当初の予定を見失い賭けに出たのはマイナスだが、時間稼ぎにはなったようだ」
煙が晴れるとそこには、先ほどと形が変わった機体がいた。
「なぜっ?」
今度こそ本当に驚きの声を上げるセシリア。一夏は何も話さない。
「おまけに、そのブレードは」
セシリアはそのブレードを見たことがある。正確に言うなら似たものだが。かつて、初代ヴァルキリーに選ばれた機体と操縦者が使用していた武器であり、必殺の一撃を生む最強の武器。
「……雪片」
一夏の手にある刀が光を放つ。
(来る!?)
しかし、一夏は動かない。
(何故、動きませんの?)
セシリアの意識が一瞬、一夏の動きから雪片へと変わったとき、一夏は突然動き出した。
いきなりのことで反応が遅れるセシリア。
「先程より速い、やはりあなた初期移行もしていなかったのですね!?」
セシリアにできたことは叫ぶことだけだった。
(ま、負け……)
セシリアが負け感じた瞬間、ブザーが鳴る。
「えっ?」
《試合終了。勝者セシリア・オルコット》
Side一夏
衝撃を受けた後、一夏は立ち上がって周囲を見てみる。
(あれ?さっきとぜんぜん違う)
先ほどまで意識しなければビットの位置もわからなかったのに、今は手に取るようにわかる。
(これが初期移行。これで、この機体は俺専用になったのか)
一夏はブレードを見てみる。最初は名前が近接ブレードとなっていたのに、今は雪片弐型と表示される。
(雪片ってたしか、千冬姉が使っていた)
《零落白夜を起動します》
一夏の頭に幼いころに見た姉である織斑千冬の試合が映像として浮かんだ時、雪片が発光する。
(これが白式の本来の姿か……)
一夏は雪片を見ていると視界の隅にある数値が減っているのに気づく。
(へ?)
ちょうどそこはシールドエネルギーが表示されている場所だった。
(も、もしかして、この光ってシールドエネルギーを消費しているのか?)
一夏は気づく、自分にはこの光を止めるすべがないことを。
(やばい、このままだと自滅してしまう!)
そして、一夏は簡単な結論に至る。
(殺られる前に殺ればいい!)
一夏はセシリアに向かって突撃する。そのときセシリアが何か言っていたが無我夢中の一夏には聞こえなかった。
あと少しで刃が当たる、その直前でブザーが鳴る。つまり
(俺の負けか……)
《試合終了。勝者セシリア・オルコット》
一夏は心のなかでため息をついた。
次回はオリキャラの戦闘回です。多分短くなるから一話で二人と戦うことになると思います。
これから書いていく内容はだいたい決まっているので、バイトがなければかけると思います。
それでは、次回もよろしくお願いします。