「行ってきます。父さん兄さん」
父と兄の写った写真に挨拶をして結翔は学校に向かう。
神樹館小学校。そこは大赦が管理する学校であり、結翔と同じお役目を担う者も通う学校でもある。
「黑咲君おはよう御座います」
「・・・」
廊下でクラス担任の安芸に挨拶されるが、結翔は少し安芸を見てから無視して自分のクラスに向かう。それを安芸は注意する事は無く、ただ悲しい目で結翔を見るだけだった。
「おはよ、結翔君」
「おはようさん」
結翔がクラスに入ると声を掛ける者がいるが、それにはちゃんと返事をして自分の席に着くと少しして黒髪を後ろで束ねた少女が入って来る。
「鷲尾さんおはよう」
「おはよう御座います」
「おはよう」
「おはよう御座います」
鷲尾と呼ばれた少女は挨拶される度に丁寧に挨拶を返していく。
「黑咲さんおはよう御座います」
「おはようさん」
鷲尾の席は結翔の後ろの為にすれ違うときに挨拶をする。そして鷲尾が席に着こうとした時に隣の席で鼻提灯を作り「スピースピー」と寝息を立てて寝ていた子が鼻提灯が割れ、飛び起きる。
「あわわッ! お母さんごめんなさい!……はれ? 家じゃない」」
「乃木さん、ここは教室で朝の学活前よ」
「てへへ。鷲尾さんおはよー」
「おはよう御座います」
挨拶を返すと丁度呼び鈴が鳴り、教師の安芸先生が入って来るのと同時にドタドタと足音を立てながら、小柄な人影がもの凄いスピードで滑り込むように教室に入ってきた。
「は、はざーっす!あぁ、良かったぁ〜。ま、間に合った!」
「三ノ輪 銀さん。間に合ってません」
「痛っ⁉︎」
間に合ったと安堵した銀に安芸は持っていた出席帽で軽く銀の頭を叩きツッコミを入れる。
「痛っ!先生イッター!」
叩かれた事に抗議をするが、よく有ることなのでクラスの皆も一部を除いて笑い、「ミノさんは相変わらずだな~」と言う者も居た。
「はあー。三ノ輪さん早く席に着いてください」
「はーい」
「ねぇ銀ちゃん。今日は何で遅れたの?」
「いや〜、6年生にもなると色々あるんさ」
銀は質問を返してランドセルを開けると「あ」と言ってから表情が固まる。
「・・・アゥ。教科書、忘れた。」
「ほらこれ」
教科書どころか筆記用具の全てを忘れてきた事に固まってると結翔は席が隣な為に銀にノートや筆箱を渡す。
「いつも助かるよ」
「いい加減に忘れてくんな」
「てへへ」
いつも教科書を忘れてきていることで、結翔はよくノートやペンを貸してと言われるために今では銀に貸す様のノートと筆箱を用意する有様である。
「朝の注意事項は以上です。それでは、日直の人」
「はい」
そう言って立ち上がったのは鷲尾 須美。他の面々もそれに続く形で立ち上がる。
「起立。礼。拝。
神樹様のおかげで、今日の私達が在ります。
神棚に、礼。着席」
神世紀となり、298年も経った今では当然と成っている朝礼を終え、着席しおうとした時にクラスの4人だけがある異変に気づく。
「ん?」
「来たか」
「これって」
それは4人以外全員が止まっていたのだ。ただ動きだけ止まっていたのでは無く音も全て、4人以外の時間が止まったかの様だった。鷲尾、乃木、銀、は突如の事に戸惑っているが、ただ1人結翔だけが窓の外、正確には遙か遠くにある大きな木の根で出来たかのような壁を見つめていた。
チリーン。
大量の風鈴の音が南の方、大橋方面から聞こえる。
「来たんだ。私達がお役目をする時が……!」
瀬戸大橋。現在晴人達が住む街のシンボルでもあり、大赦の管理下に置かれて、普段は立ち入り禁止となっている、巨大な橋。その橋の壁側から空間が割れたかのように眩しい光が迫ってくる。
「うわ!眩し!」
銀の言うとおり、眩しすぎる光で全員が目を瞑り、そして世界は、光に包まれた……。