黑咲結翔は■■である   作:斬る斬るティー

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第4話:4人の根性

 4人の中で神樹様のお役目に1番熱意があるのは鷲尾須美だ。毎日精進してきた成果が試されるとあって、面には出さずに奮起していた。全ては、この美しい国を、大切な家族を、共に戦う仲間を守る為に。

 彼女の扱う武器は戦場では1番負担の少ない弓なのだ。だから自分が1番頑張らないとと思っていたが、窮地に立たされたと自覚した途端、須美は自分の立ち回りが分からなくなってしまった。

 

「(私の攻撃は距離があっても威力が無い。三ノ輪さんは攻撃威力が有ってもまず近づけない。乃木さんはどう扱って良いか分からない。そして黑咲君は全然動いてくれないからよく分からない)どうしよう・・・」

 

 頭上を通過して奥に進む水瓶座をどう倒そうか考えるが秀才の須美ですら決定打になる物が思いつかないでいた。

 

「一体どうしたらいいの・・・」

 

 どうすれば良いのか必死に考えていたがそれは失敗だった。戦場で敵に気を反らして考えて無防備で居ると、間違いなく狙われる。実際に水瓶座の水球の攻撃が須美を襲う。

「危ない!」

 

 須美に攻撃が当たる間一髪のところで銀が飛びついて、須美を押し倒し避けた。

 

「動いてないと危な……!」

 

 上半身を起こして注意するが、銀の言葉は最後まで続かなかった。なぜなら銀の頭部に水球が命中し、頭が水球に覆われてしまったからだ。当然、水球なので水と同じく行きが出来なくなる。

 

「三ノ輪さん!」

「ミノさん!」

 

 それに気いた園子と結翔は銀達の所に行くが、水球をどうすれば良いのか分からずにいた。

 

「コレ、弾力が」

「ゆいゆい、コレ壊せない?」

「はあ~やってみるか・・・・・第弐秘剣 ひょ――」

「ダメよ!?三ノ輪さんに当たったらどうするの!」

 

 水球を刺し貫き、割ろうと刀を構えた結翔に須美は止めに入る。

 

「じゃあ見捨てる?」

「そ、それは・・・」

 

 結翔の言葉に須美は悩む。その時に銀はカッと目を見を開けると、銀の頭を覆っている水球の体積が段々と小さくなっていくのが確認できる。よく見ると、中に見える銀の口がえづいており、喉も激しく動いている。

 銀がやっている事を3人は瞬時に理解した。

 

「え、えぇー」

「マジか」

「ミノさん大丈夫?」

 

 数秒した後に銀の頭に着いていた水球は無くなる。それが意味していたのは水球を全部飲み干したと言うことだ。

 

「全部飲んだ」

「神の力を得た勇者にとって、水を飲み干すなど造作もないのだ! ……ウッ、気持ち悪っ……」

「ミノさん凄〜い! お味は?」

 

 園子が興味津々で効くと銀が応える。

 

「最初はサイダーで、途中からウーロン茶に変化した……」

「・・・お腹壊しそう」

「そこは勇者の力で、大丈夫!!」

「関係無いだろ」

 

 銀と結翔が話しているのを見ていたが、須美は我に返る。

 

「 そ、そんな事より、バーテックス!」

「あそこ」

 

 結翔が指さすとはるか向こうに水瓶座が見える。一定のスピードで着実に奥へと進んでいる。そして水瓶座の周りがやけに光っているのに気づいた。

 

「分け御霊の数が凄い……。出口が近いんだわ! 追撃を……!」

「でも彼奴には効かなかったもんね」

「でも、早くしないとやつが大橋から出てしまうわ!」

「大橋を出ると追撃出来なくなるもんな・・・結翔、良い手段無いか?」

「三ノ輪・・・俺に振るな」

 

 銀に手段が無いかと聞かれるが面倒くさそうに答える。その後に何かをお思いついたようにぽんと手を叩く。

 

「一層のことお役目を放棄する?」

「「「それはダメ」」」

「だよな。(面倒くさい)」

 

 結翔の提案(?)に3人は同時に却下をする。そのあと園子がパァっと明るくなる。

 

「……あっ!」

「「「?」」」

「ピッカーンと閃いた!」

「・・・えぇー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それじゃあ、頼んだぞ」

「えぇ、分かったわ」

 

 須美は弓を引いて、水瓶座めがけて矢を放つ。矢は水瓶座の頭部に命中し、侵攻が止まったのを確認した。

 

「気が付いたみたいだな!」

「こっち向いたよ〜!」

「急がないと……!」

 

 水瓶座の足元の樹海は枯れ続けている。現実世界への被害を最小限に留める為にも、ここで仕留める必要がある。

 

「来るぞ!」

「展開!!」

 

 水球の攻撃が来るが、園子が一歩前に出ると、手に持っていた槍の先端の形状が変化し、傘のような盾が形成され、水球による攻撃を跳ね除けた。

 

「この槍、盾になるんよ~」

「園子便利~」

「このまま前進!」

 

 園子が防護する間に、後方から隠れながら、須美が矢を放ち瀬Mリ来る水球を打ち落とす。だが水瓶座も即座に攻撃を変える。

 

「乃木さん!激流が来るわ!」

「!」

 

 かけ声と共に激流の攻撃を受け止める。

 

「乃木さん!大丈夫!?」

「勇者は根性! 押し返せぇぇぇぇぇ! オーエス!」

「「オーエス!」」

 

 最初は銀から始まり、園子も声を揃えて叫び、息を合わせる。

 

「ほら、鷲尾さんと結翔も!」

「え?」

「「オーエス」」

「「「オーエス!」」」

「結翔!」

「わあったよ!」

「「「「オーエス!オーエス!」」」」

 

 4人で園子の槍を持ち水流に耐える。そして遂に水流の威力が弱まり、結翔が動く。

 

「え?きゃああ!」

「ゆいゆい!」

「なにしてってたっか!?」

 

 結翔は突如皆が持っていた槍を思いっきり上に放り投げる。必然的に槍を強く握っていた3人も上に放り出される。

 

「黑咲君危ない!」

 

 盾が無くなった結翔に一直線に水流が向かうが結翔は刀を担いだ状態から思いっきり振り下ろす。

 

「第参秘剣! 落雷!!」

 

 水流は縦に綺麗に真っ二つに割れ水瓶座の元まで裂けていく。それを見て3人は驚く。

 

「す、すげー」

「わーおー」

「黑咲君・・・凄い」

「バカか!!ボケッとすんな!」

 

 その言葉に全員が、ハッとする。3人は上空から攻撃を仕掛けようとする。水瓶座も向きを変えて水球を放とうとしている。

 

「鷲尾さん!」

「狙い、辛い……!」

 

 上空のせいで弓を上手く構えられないが、迫り来る水球をなんとか射貫く。

 

「ミノさん!振り回すよー!」

「やっちゃえ!」

「うんとこしょ〜!」

 

 それに続き園子は銀を水瓶座に向けて投げて、銀は水瓶座へ向かって猛スピードで降下して行く。行く手には水球があるが、それらは同時に放たれた須美の乱射で全て弾け飛んだ。遮るものがなくなったので、初めて攻撃のチャンスが生まれた。

 

「結翔!」

「分かってる!合わせてやるから好きにやれ!!」

 

 結翔は走って水瓶座の真下まで行くと少ししゃがみ真上に飛躍する。

 

「三ノ輪さん!」

「ゆいゆい!」

 

 2人は落下しながら水瓶座に向かう2人の名を呼ぶ。

 

「「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!」」

 

 銀の双斧からは紅い炎を結翔の刀からは黒い炎が吹き出る。結翔は上昇しながら、銀は落下しながら、水瓶座の左右に着いている水球にそれぞれ突撃をする。

 

「「はあぁぁぁぁあああああ!!」」

 

 2人は左右の水球を破壊する。銀は着地と同時に飛躍して下から水瓶座を切り刻み、結翔は自由落下と共に水瓶座を上から切り刻んでいく

 

「行かせるかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

「クタバレぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」

 

 2人の攻撃は水瓶座を細かく切り刻み最後に中心の核みたいな所にぶつかると弾かれ2人は地面に落下する。

 

「これで……! どぉだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

 銀は拳を上げて雄叫びを上げる。その声は樹海の中に大きく響いた。

 

「あー痛え」

「やったな。結翔」

 

 2人は横並びの体勢で倒れているので、銀は掲げた拳をそのまま結翔に向ける。結翔は無視しようと思ったが、花が咲いたような満面の笑みで自分を見ている銀を見るとため息をついて銀と拳を合わせる。その時に大橋に多くあった光の球が更に光を強くする。

 

「! これ……」

「『鎮花の儀』……?」

 

 樹海にぶら下がりながら、園子が呆然と呟く。勇者達の攻撃で弱らせたバーテックスを天に返す儀式が始まったようだ。それが証拠に空から花弁が降り注ぎ、ほとんど原型を留めていない水瓶座を覆っていく。

 

「ミノさん、ゆいゆい大丈夫?」

 

 園子が2人の元に駆け寄り、無事を確認する。

 

「ああ、ガッツリ弱らせてやった!」

「お陰で始まったよ」

 

 銀は起き上がり結翔は寝転んだまま降り注ぐ花びらを見ていた。

 

「綺麗・・・」

 

 同じく空を見上げていた須美が思わずそう呟く。幻想的な光景を目の当たりにしていた。そして4人はしばらく空を眺めていると、突如として原型を殆ど止めていなかった水瓶座が消える。

 

「消えた……?」

 

そして、周囲の光が弱まり、辺りは再び最初の時と同じ光景になった。

 

「静まった……」

「撃退、できた……?」

「……」

 

 皆が起き上がり、しばらくの間、時が止まったかのように呆然としていた一同。

 

「「ヤッタァ!」」

 

 が、直ぐに銀と園子は手を掴みはしゃいでいた。結翔は近くの木の根にもたれ、須美はその2人を離れた位置で見ていた見て。少しだけホッと息を吐いた。すると、花弁が嵐のように吹き荒れて、須美達の視界を覆った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 次に4人が気づいたのは波の音だった。辺りに目を凝らすと、目の前には先ほどまで見られなかった祠がある。その奥に見えるのは、先ほどまで自分達が戦っていた舞台となった、瀬戸大橋。左右に目をやると、さっきまでバラバラの所に居た4人が横一列で並んでいた。

 

「あ~学校に戻るんじゃ無いんだ~」

「やっべ上履きのまんまじゃん」

 

 銀が自分の足元に目をやって驚いていたが、すぐに得意げな顔つきになる。そのわけは、取り出したスマホにあった。

 

 

「ヘヘッ、樹海撮ったんだったぁ……あれ?」

「写らないんだね~」

 

 銀はスマホを見るが、スマホには樹海が一切写っておらず、全部が街の風景だった。

 

「は~てかここ瀬戸大橋記念公園だよな?どうやって帰れって言うんだよ。迎え来んのか?まあいいや」

「・・・?結翔何処行くんだ?」

「散歩」

 

 銀にそれだけ言うと近くにある瀬戸大橋記念公園マリンドームに向かう。

 

 

 

 

 

「いつ見ても・・・」

 

 マリンドームに着くと結翔の目の前には沢山の石碑があった。その石碑は歴代の勇者や巫女の名前が一つ一つ刻まれているが、ある名前だけは絶対に無かった。それは、結翔の家系、黑咲家の人間の名前だった。

 

「ッチ!」

 

 黑咲家は乃木家同様に西暦の時代から続く勇者の家系だ。だが、他の家系とは違い黑咲家の勇者はみな男が選ばれてきた。黑咲家の者は勇者として戦い死んでいった、勿論結翔の父と兄もだ。だが、黑咲家の者は死んでも石碑が建てられるどころか、遺体も残らない為に葬式もされない。そして、黑咲家を知っているのは一部の神官服を着た大赦の人間だけであった。大赦で1番の発言力と権力を持つ乃木家ですら今はもう黑咲家の事を知っている者は多くは居ない。

 

 

 

「・・・!」

 

 結翔はステージの様な場所にある英雄之碑と言う文字が刻まれている石碑のまえに立つ。

 

――ドン!

 

 するとその石碑を思いっきり殴りつける。

 

「神樹、俺はお前や勇者共この世界が大っ嫌いだぁ!いずれ俺はお前らを殺してやる! 俺達黑咲家の憎しみを思い知らせてやる!!」

 

 しばらく殴りつけると溜め息をつき、踵を返し銀達が居るところに戻る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~???~

 

 

 どこか分からない燃えさかる炎の世界に、黒髪で前髪に白いメッシュが入り左目が黒で右目が金眼が特徴の少年が浮いて居た。

 

「へ~。同じ世界に2回も転生させるとは、あの女神様はいったい何を考えてるのかな?いや、神樹か■の■のせいで上手く扱えなかったのかな?まあいいか」

 

 楽しそうに金色に光る大樹を見ながらそんな事を呟いていたが、周りには白い化け物のような物がうじゃうじゃと集まり少年に襲いかかる。

 

「じゃ、ま」

 

――パチン

 

 少年が指を鳴らすと襲いかかって来る白い化け物は一瞬で光になり消え失せる。次に、鎖が付いている首の部分に板があり、そこから頭部と腕が出ている形をしたバーテックス、ジェミニ・バーテックスが襲い掛かる。

 

「うざいな~」

 

 また指を鳴らすとジェミニ・バーテックスは簡単に砕け散った。だが相手したのは双子座、二体で一対のため、同じ姿をしたもう一体が少年に向かう。

 

「まじだるい」

 

 少年は双子座の頭を掴む。すると頭に罅が入り壊れる、すると逆三角形の様な物が現れるが、容赦なくそれも握りつぶし壊す。

 

「あはは、たかだか300年ぐらいしか経ってないのに、俺のこと忘れたか?・・・もし俺の目的の邪魔をするなら、お前ら・・・大半を抉り潰すぞ

 

 上を向きならがドスの効いた声でそう言うと次は白い化け物は少年に向かうこと無く、なにも無かったかのように動く。

 

「お前の人生(物語)もっと見せてくれよ

 

 

 

 

 

 

 黑咲 結翔」


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