「(辛勝、だった……!)」
家に帰ると、裏庭の井戸へ向かい、そこの水を肩から下にかけて、身を清める。これが須美の日課である。
だがこの日はいつもと違って、険しい表情を見せながら、心身を引き締めていた。
「(私1人じゃ勝てなかった)」
その日の夜に須美はパソコンを見て難しそうな顔をしていた。そして見ていたのは
【友達が居ない】友達の作り方。
だった。
~翌日~
朝の学活の時間となるが、この日は須美、銀、園子。そして結翔の計4名は教壇付近に立っていた。4人の横に担任の安芸が、生徒達に向かって話し始める。
「昨日お話しした通り、この4人には、神樹様の大切なお役目があります。だから昨日のように、突然教室からいなくなったりする事もありますが、慌てたり騒いだりせず、落ち着いて、心の中で4人を応援してあげてください。皆さんには、日々の勉強という努めがありますからね」
安芸の説明を受けて軽くパニックになっていた生徒も納得する。須美は不意に隣に立つ銀と園子、そして結翔を見る。それに気が付いた園子は須美に微笑むと慌てて須美は顔をそらす。その日の放課後は、クラスに残った面々から、お役目の質問が炸裂していた。
「ねぇねぇ、お役目って大変なの? 痛いの?」
「俺に聞くな。三ノ輪、パス」
結翔の質問のパスに「え!?」と驚き、数人の友達に質問攻めにされる。
「それでどうなの?三ノ輪さん!!」
「いやー。話しちゃダメなんだよねー」
「えーケチー」
そう楽しそうに銀達は話しているのを園子は楽しそうに見ていた。そして結翔は帰ろうとするが、それを須美が止める。
「待って、黑咲君」
「なに?」
「え、えーと。三ノ輪さんも乃木さんも一緒に祝勝会でもどうかしら?」
「お、いいね~」
「うん!行こういこう~」
銀と園子は賛成だったようで、即答すると3人は結翔の方を見る。
「・・・俺はパス」
「・・・え」
「何でだよ~」
「面倒くさいダルい。だからお前らだけで行って女子会でもしてな」
「ゆいゆいもい行こうよ~」
「・・・俺はお前らの様にそっち側じゃ無い」
そのまま結翔は教室を出て帰る。その姿を3人は残念そうに、そして悲しい目で見ていた。
★
(はー面倒くさいな~彼奴ら。・・・さっさと帰ろうと思ったが帰る前にイネスで食材買って帰るか?でも、何時もドアノブに惣菜がかけられてるからな~・・・でもちゃんと自分でも自炊しなきゃな)
結翔は一年近く1人暮らししているから料理は大体の物を作れる。その為にまずは食材を買いにイネスに向かう。
「じゃあ、アタシは銀で良いよ。三ノ輪さんはよそよそしいな-」
「そうだね~」
「え、え~と」
「あっははは」
須美、銀、園子の3人はイネスのフードコーナーで祝勝会をしていて、今は楽しそうに名前の呼び方の話とかをしていた。
「はー。でも結翔も来たら良かったのに」
「面倒くさいって言われちゃったね-」
「私、黑咲君に嫌われてるのかしら・・・」
3人は結翔に言われた事を気にして落ち込んでいた。だがいきなり園子は何かを思いついたように喋る。
「ぴっかーんと閃いた!」
「園子?」
「乃木さん?」
「ゆいゆい本人に聞いてみるのはどう?」
「どうやって?」
「ほら!」
園子は指さす。その先を2人はたどって見るとフードコーナーに入って来る結翔の姿が有った。
「あ、おーい!!結翔ー!」
「黑咲君!!」
「・・・!!」
結翔はフードコーナーに入ろうとしたが名前を呼ばれて3人を見つけると踵を返し立ち去ろうとする。
「おーい!!ゆいゆーい!!」
「・・・」
だが、いきなり園子は大声で結翔のあだ名を呼ぶことで周りの人も不意に結翔を見る。
「ゆいゆーい!!ゆいゆーい!!」
「もう!わーたよ!だからゆいゆい言うな!!」
根負けをして結翔は3人の元に向かう。それで、3人は空いていた席にランドセルを置いていたがそれを退け結翔、結翔はそこに座る。
「それで、なんで結翔はイネスに?」
「買い物。お前らは・・・祝勝会か」
「そうです」
「ねえねえ、ゆいゆいは私達のこと嫌い?」
「ちょ!園子!?」
「乃木さん!?」
園子はオーブラートに包んだ言い方をせずにストレートに聞く。
「ああ、嫌いだ」
「「「・・・え」」」
また、それに対して結翔もストレートに答える。
「あんな殺し合いをお役目だと必死になる奴なんか嫌いだ」
「でも私達が戦わなきゃこの世界が滅んでしまうわ」
「それで戦って死んで家族を悲しませるか?残された人間はどうなる?役目の真実を知った家族はどうなる?・・・ま、どうでも良いけど」
(そのせいで父さんと兄さんは死んだ。そして知った、母はとち狂ったイカレ女だった。だから俺は神樹も世界も嫌いだ、そして家族と普通に過ごせてるお前らも)
「ゆいゆいは・・・」
結翔の顔に影が出来たのに園子は気づいた。
「じゃあ、暗い話は止めにして皆でここの絶品ジェラートを食べよぉう!!」
「?」
4人はフードコート内にあるジェラート専門店で、各自で好きな味を注文して席に戻って楽しむ。
「はーん。 はふぅ~!幸せ~!正解だよ ほうじ茶&カルピー味、大正解!ミノさんは何味?」
「 醤油豆ジェラート!」
「なにそれ~。でも美味しそ~」
園子と銀はジェラートの味の話をして須美は買ったジェラートをしばらくガン見した音に一口食べる。
「美味だわ!このほろ苦抹茶とあんこの甘さが織りなす調和が絶妙だわ!」
美味しかった事に感激していると園子が口を開けているのが気になり聞く。
「あーん」
「へ?」
「そんなに美味しいのならあ~ん」
それに答えて、須美は園子にジェラートを食べさせてあげると、初めての共同作業と言われて、須美は赤面する。
「言葉の意味が違うぞ~」
「あははは。友達とこんな事してみたかったんだ。それでゆいゆいのは何味?」
「・・・チョコミントとレモーネ味」
「いが~い」
「以外だな」
「以外だわ」
「何処がだ!?って、乃木は口を開けて何?」」
「あーん」
「はいはい。どうぞ」
「うーん。口の中が凄くスーってする」
「それが良いんだよ」
「「「あ」」」
結翔が園子の言葉に答える。すると、須美と銀はジェラートを食べる結翔を見て固まる。
「は、破廉恥だわ!!」
「何が?」
「ゆいゆい。間接キスだ~」
「そう言うお前もな」
「・・・あ」
「つーかさっきから言ってるゆいゆいってなんだよ」
「結翔のあだ名だぞ」
(は?俺のあだ名?黑咲結翔、結翔、ゆいと、ゆいと・・・あーそれでゆいゆい)
「まあどうでも良いけど」
「いいの!?」
「何驚いてんの。それで乃木は何?」
「もらったからお返し~」
「はいはい、あーん。・・・うん普通に美味しい」
「本当?やったー!」
(あれ?そう言えばいっつもは何食べても味は感じなかったのになんでこのジェラートの味は普通に感じるんだ?不思議だ)
「黑咲君どうかしましたか?」
「いや、何にも」
「やっぱ結翔も気にすんだな」
「えへへ照れるな~。ゆいゆいも男の子だね~」
「イラ。乃木、口開けろ」
((イラって言った!?))
「ん? あー」
((口開けるの!?))
結翔の言葉になんの疑いも持たずに大きく口を開ける。それに結翔は自分のジェラートを半分以上をスプーンで取ると園子の口に突っ込む。
「ん、ん!?んんんん!?!?!」
「2人は何やってるんですか」
「あっはははは」
「
須美は2人に呆れ、銀は2人の遣り取りを笑っていた。
「じゃ、ジェラート食べたし俺は帰る(喰ったのは殆ど乃木だが)」
「もう帰るの?って結翔、荷物多いな?(食べたのは殆ど園子だよな?)」
「1人暮らしだからな。じゃ」
「じゃあ、みんなでゆいゆいの家で祝勝会しおう!」
「・・・は?」
「ダメよ乃木さんそんなめいわ――」
「良いな!お菓子買っていこう!」
「・・・へ?」
結翔と須美は2人の提案に驚くが、結局結翔の家で祝勝会することとなりお菓子を買い皆で結翔の家に向かう。
「どうしてこうなった?」