ここは何処だろうか?目の前に広がっているの暗闇、その中は妙な寒気があった。
その中を笹葉は走っていた。
いや、走ってるのではなく、逃げてる、何かに追われて無我夢中に逃げているが正しいだろうか
走るたんびに息が白い靄となって口元から吐かれる。
寒い、冷たい、怖い、焦り、絶望、色んな感情が出てくる。
でも笹葉はその何かが分からない、何に笹葉は追われているのかも。
目の前だけ見て笹葉は走っている、後ろを振り向けない、振り向いてはいけないように感じたから。
でも後ろから微かに声がする。
「イ・・・・タノ・・・・タス・・・・」
その声が笹葉を追っている正体だろうか?しかし雑音混じりな声、何を言っているのかは聞き取れない。
でもその声の主は知っている。なのに分からない。
いや、思い出したくないの間違いだろうか?
その声は段々と大きくなり背後から感じる気配も大きくなる。
焦りが出てきた、もっと早く走らなければ、追いつけられる、速く、速く、速く!!
速く!!!
突如、目の前が明るくなった。
勢い良く瞼を開けたせいか視界はグニャグニャに歪んで見える、だが暫くすると視界は整えられてゆく。
そして視界が直ると目の前に映ったのは白い屋根だった。
そして毛布の感覚、先ほどの寒さはもう感じない。
どうやら夢だったらしい。
でも夢としてはなんだか生々しくも感じた。
どうやら笹葉はベットで寝ていたらしい。ゆっくりとベットから上半身を上げると、先ほどみた夢を反芻する。
すると突然、頭を締め付けるような痛みが襲い同時に吐き気が笹葉を襲った。
すぐに笹葉はベットに立てかけていた半開きのバックの中に手を突っ込み中に入っていた鎮痛剤を取り出すと。カプセル状の鎮痛剤を手のひらに幾つかのっけてそのまま口の中に頬張るように入れる。こんな時に限って近くに水が無い、笹葉は蒸せながらも口元を抑えて無理やり飲み込んだ。
そして飲み込んで数分経つと頭痛は段々と和らいできた、でもあの夢を反芻しているとどうにも胸糞が悪く感じた。
この頃、笹葉は偏頭痛や不眠症などに悩まされている。
医者いわく笹葉は精神病らしく投薬用に鎮痛剤を貰った。鎮痛剤を手にしてからは頭痛に悩まされる事は無くなったが、最近になって再び頭痛が起きるようになった。
何がきっかけで笹葉が精神病になったのかは笹葉にも薄々感ずいていた。
コンコンっと部屋のドアがノックされるとドアが開き一人の隊員が入ってくる。20代の若い男性、見た目からして二等陸士だろうか?
「笹葉一尉、陸将がお呼びです」
突然のお呼び出しだ、まさか新しい任務か?するとその男は笹葉の顔を一瞬見る。
「その・・・大丈夫ですか?」
「大丈夫って何がだ?」
「お顔が優れていないので・・・」
どうやら表情にまで出てしまったらしい、悪夢の事か?それとも新しい任務への不安か?
何がともあれ笹葉は平然を装う。
「安心しろ、いつもの事だ」
司令官室と書かれた扉がある、笹葉はつかさずその扉をノックした。
入れ、という野太い声がして笹葉はドアノブに手を掛ける。
正直新しい任務の話ならば御免だ。
恐る恐るドアを開けると、目の前に、席に座り、新聞を片手に持った男がいた。佐々木博文陸将だ、笹葉を自衛隊の入隊に誘ってくれた人物であり、笹葉もよくお世話になっている。50代であるのに関らずその風貌は30代と若く見える。髪形は刈り上げでいかにも自衛隊感を出している。
その隣には、幹部だろうか?若い一人の男が隣に立っている。その男は笹葉の事をかなり鋭い目で見ている。
笹葉は自然に神妙な表情になる。
「お呼びでしょうか?」
「まあ、そんな硬い表情をするな、単に世間話をしたかっただけだ」
世間話?そのためにわざわざ笹葉を呼んだわけか?すると陸将は片手に持った新聞を机に置いた。その新聞の記事に書かれていたのは「大赦施設襲撃」その下には神社のようなものが燃えている写真があった。
笹葉も一回見たことがある。
「この記事を知っているか?」
「はい、何かと有名な事件ですよね?」
「あぁ知っているなら話は早い、先日、何者かによって大赦の施設が襲撃された、幸い死亡者は出ていないが・・・」
「確か例の頭のイカれたカルト集団の仕業ですか?」
「そうだ、だが上層部は、これを正式なテロリストとして認めたらしい」
これで大方察した。これはただの世間話では無いという事を。
「佐々木陸将、本当は世間話をするために私を呼んだわけではないのでしょう?」
すると陸将の顔も神妙な顔立ちになる。
「新しい任務ですか?」
任務ならばこれらのテロリストの鎮圧だろうか?
「やはり君は噂通り鋭いね、」
すると陸将は右手を上げるとその隣にいた先ほどの男がA4サイズの封筒を上げられた右手に差し出す。
その封筒を手にした陸将はそのまま封筒を取り出して一枚の資料を取り出す。
「私の任務はテロ組織の鎮圧でしょうか?」
「いや、君の任務は護衛だ。それも学園生活内の」
予想外の答えだった、すると陸将が取り出した一枚の資料を机に置いた。その資料には一枚の写真がありその写真に写っているのは紫色でヘアスタイルな髪型をしている一人の女だった。写真の切り取り方からして学校の集合写真からだろうか?その女に笑みは見られない、それより暗い表情をしている。
下には生年月日などのプロフィールが書かれていて、そのプロフィールには「所属 大赦 巫女」と書かれている。
「まさかこの子を護衛しろというわけですか?」
「あぁ、大赦からの要請でな」
「大赦ですって!?冗談じゃない、政府よりも権力を握っているあの大赦ならばもっと有能なSPや護衛を雇えるはずです!」
「そうだ権力を握っているの大赦からの要請だ、ならばそれに従わなければならぬ。なぜわれわれに要請したのかは分からないが大方は予想できる、このテロ集団には大赦で鍛えられた勇者候補生が一枚噛んでいるらしい。それも専用武器ありでな普通の護衛ならば太刀打ちもできんだろう、だから君に頼んだわけだ」
そういう事か・・・
笹葉はようやくここに要請してきた意味を理解した。要するに専用武器を扱える笹葉ならばこれらの有事に対応出来ると人事部が決めたらしい。
それにしても大赦に関りのある勇者候補生・・・これらがテロ組織と関与している事を世間に知られれば非難の矛先は大赦に向く、そうならないために大赦はお得意の隠蔽工作でも行うだろう。
おそらく笹葉は今、苦渋な表情をしているの。
「笹葉君、これはあくまで学園生活内の任務だそれ以外は君の自由にすれば良い。この巫女の護衛している間に、このテロリストは我々の手で鎮圧する。それまでの間だ。
君が大赦を恨んでいる気持ちは分かる、だがこれは大切な任務なんだ、君意外に適任はいない、どうか、引き受けてはくれないだろうか?」
すると陸将は笹葉に頭を下げた、そこまでされては、断ることも出来ない、仕方ない・・・。
「分かりました、この任務引き受けます。」
すると、さっきまで頭を下げていた陸将の表情が明るくなった。どうやら安堵してくれたらしい。
「よかった、必要な物や居住先も用意しておく、もちろん学校の転校手続きも進めておく」
「有難いのですが、それで護衛する人は?」
「おっとすまない詳細を言い忘れていた。彼女の名前は柳原鈴蘭、大赦の巫女だ」
柳原、その名前をどこかで聞いたことがあるように感じた。
「どうした・・・知り合いか?」
「いえ、多分気のせいです。」
部屋をあとにした笹葉はそのまま廊下に出るとそこに洋葉が待っていた。
「どうやら陸将との話は終わったらしいな、んで新しい任務か?」
多分洋葉は笹葉の次に鋭い人間だろう・・・。洋葉との付き合いは長く、当時小隊長であった時にはお世話になっている。今となっては同僚だが。
「あぁ、それで私に何のようです?」
別に反抗をしているわけではない、しかし洋葉との付き合いが長い分、父親的存在にも見えてくる、事実、小隊での人望は厚い。それに広島作戦の際に笹葉を窮地から救ってくれた恩人、いや戦友でもある。
彼が習志野駐屯地出身だった事は聞いてる。
「まぁそんなカッカするな、上官に言われてお前に渡さないといけない物があってな」
すると笹葉に隊員がよく使っているF80無線機を渡された。
まさかこれで連絡しろとでも言うのだろうか?しかしアンテナが着いていない。
「ボタンを押してみろ」
そう促されて笹葉は無線機のボタンを押した。その時、アンテナが着けられる無線機の先端から赤い光が一直線に放たれてその線状に伸びた赤い光はまるで木の根が絡まり合うかのように目の前で形を成すと、
その一瞬にして、笹葉の専用武器である紅ノ太刀が出てきたのだ!笹葉はそれを空中でキャッチする。
一瞬何が起こったか笹葉は目を疑った、厳重に保管されていたはずの紅ノ太刀が笹葉の手元にある、重さから質感、間違えない、本物だ・・・。いや、それ以前に無線機から武器が出た!?
「どうやら驚いているようだな」
笹葉が呆然としている時に洋葉から声を掛けられ、我に戻った。
「大赦からの技術提供があってな、この無線機は勇者システムを元に作られている。といっても見た目はただの無線機だが、まぁ小さな武器庫とでも思えばいい。それ以外にこの中には拳銃や手榴弾などの小火器も入っているからな」
笹葉はその無線機を見るが本当にただの無線機にしか見えない。
「これはあくまで護身用との事だ受け取っておけ」
そういうと洋葉はそのままどこかへ行ってしまった。要するに護衛の際に無線機から武器を出して対応しろというと事だろう。
教室の中は休み時間とあってガヤガヤしていたがその中に取り残されている私がいる。ガヤガヤとした空間は私にとっては耳鳴りのように聞こえる。いつもの事だろう、そう私は自分に言い聞かせる、こんなの慣れっこだって。
私は人と接するのが苦手だ、というよりも誰も私に寄ってくることは無い、私が大赦に属していることがクラスに知られてからは。
「なあなあ聞いたか?今日転校生が来るらしいぜ」
「あぁ聞いたさ確か女子らしいよな」
「女子!?だったらかわいいのか?」
私は机にうつ伏せになりがらクラスの男子が話している話題が聞こえた。
そうか・・・今日は転校生が来る日だったか・・・。正直私にとってはどうでもいい事だ。
しばらくして教室の扉がガラガラと開く音がした瞬間、教室内が静かになる、教師が入ってきたからだ。
「起立!気をつけ、礼」
クラスの日直が言うとまずは目の前で礼をすると今度は窓側に体を横に向けて。
「神樹様に礼」
その掛け声と共に再び礼をする。
そして着席すると朝のホームルームが始まった。クラスの中年の先生が話を始める。
「えぇ今回はみんなに言った通り転校生を紹介する、では」
すると教室内が突然ザワつきだした。
「なぁ確か女だったよな・・・」
「待って、めっちゃイケメンじゃない?」
「かっこいい」
クラスがざわつき出したので私はうつ伏せなっていた状態から体を向けて前を向いた。
目を疑ってしまった、転校生は確か女だったはず、でも彼女はとてもじゃないが女には見えない。むしろ男のようだった。
赤い短髪に赤く鋭い瞳、それに制服は女子用ではなくて男子用の制服を着ている。しかしネクタイはついていない。
教師から自己紹介を促され彼女?は黒板に自分の名前を書いた。
「笹葉の名前は笹葉友奈だ、以後よろしく頼む」
それが私こと柳原鈴蘭と笹葉友奈の出会いだった。