独眼竜アスカ無双 新戦国ヱヴァンゲリヲン   作:朝陽晴空.

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初陣・金山城奪還 ~ご褒美は犯罵亜愚(ハンバーグ)~

 <天正9年(1581年)出羽国米沢(山形県)伊達屋敷>

 

 伊達政宗の側近として仕える事になったアスカとシンジは将の位が与えられ、政宗の屋敷で暮らす事になった。

 家臣たちからは反対論も出ていたが、侍たちから鬼神に勝るアスカとシンジの奮戦振りを聞くと押し黙った。

 腕試しにと対戦を挑んで来る侍や武将たちの来訪も数日で落ち着き、アスカとシンジは政宗から小遣いを貰い城下町をふらついては暇をつぶしていた。

 アスカにとって辛かったのは、訓練よりも食生活の方だった。

 戦国時代の人々は、朝と昼の二食しかない。

 暗くなったら寝るのだから当たり前である。

 

「シンジ、お腹が空いて眠れない~」

「僕だってそうだよ」

 

 食べなくても生きていける身体になっても腹は減る。

 朝は鶏が鳴くと同時に起こされる。

 無敵の力を持っていても集団生活の和を乱せば怒られるのだ。

 

「それに、何でお米が黒いのよ。お米以外に麦とか混じってるし」

「白米は戦いの時にしか食べないんだって」

「あー、ハンバーグが食べたい」

 

 牛は農耕に使う大事な動物。

 鶏も時を告げる神に近い鳥として食す習慣は無かった。

 伊達家は裕福とも言えない台所事情もあり、一汁一菜の食事が多かった。

 街に出ても綺麗な反物を変えるほどの小遣いは無く、アスカはストレスを溜めていた。

 

「誰にも止められないならさ、あの帯とか持って行っちゃおうよ」

「ちょっとアスカ、それって強盗じゃないか」

「シンジの甲斐性無し」

「仕方ないだろう、お金は持って来てなかったんだからさ」

 

 シンジの貯金でアスカが欲しがる帯が買えたのかは分からない。

 まだ合戦も未経験の二人には雀の涙ほどの給料しかないのだ。

 夜の営みはいくらでもOKだと政宗からはGOサインが出ているが、それで腹が膨れるわけでもないし、お金が貯まるわけでもない。

 戦場に出る前にお腹が大きくなってしまってもアスカとしては困る。

 ……と言うかまだ二人はそこまでの関係には至っていない。

 

 

 

 <天正9年(1581年)出羽国米沢(山形県)金山城周辺>

 

 天正9年5月。

 遂に政宗の初陣の時がやって来た。

 伊達家の最前線だった金山城が、相馬家によって奪われたのである。

 金山城を奪還するため、伊達家当主・伊達輝宗は息子である政宗を伴って出陣。

 シンジは政宗に、アスカは小十郎に随行する事になった。

 

「アスカ、これから沢山の人が死ぬことになるけど平気なの?」

「アタシは、弐号機でネルフ本部に攻め寄せた戦略自衛隊の軍隊を撃退している。今更後には引けないのよ」

「僕も初号機でトウジやカヲル君を……いや、もっとたくさんの人を死なせたんだ」

「シンジ、ここは戦場よ。過去の事を引きずっている暇は無いわ。アタシたちの守りたい人たちを守るために、敵を倒すのよ」

「そうだね、米沢の人たちを助けるためにも勝たないと」

 

 シンジとアスカは、戦に負けた国は戦勝国の兵士たちによって略奪を受ける事もあると聞かされていた。

 伊達屋敷の侍たち、食事を作ってくれる炊事場の女性たち、街の人たち、そして何よりも太平の世を作るには、伊達政宗と父親である伊達家当主・輝宗が討たれるわけにはいかないのだ。

 

「さあ行け、若き竜たちよ! 金山城を攻め落とすのだ!」

 

 輝宗の号令の下、伊達軍は政宗率いる東軍と、小十郎がいる西軍に別れて進軍した。

 

「先ずは砦を落として、足元を固めながら進軍するのが定石です」

「そんな面倒な事、やってられないわよキザメガネ!」

 

 アスカは小十郎をキザメガネと呼んでいた。

 発音しにくい事もあるかもしれないが。

 アスカは単身、敵の砦に飛び込み、位の高そうな武将に数発パンチやキックを叩き込んで気絶させた。

 背中から何回か斬り付けられた気がするが、アスカにはチクリとも感じなかった。

 横たわった敵武将をツンツンしてアスカは動かないか確かめた。

 

「敵将、討ち取ったり!」

 

 アスカがそう宣言すると、敵の相馬軍は蜘蛛の子を散らすように砦から逃げて行った。

 機械兵器で戦う近代戦と違い、戦国時代の戦いは兵士たちのやる気が戦いの行方を左右する。

 自分たちの大将がやられてしまえば、兵士たちは弱気になって逃げだしてしまうのだ。

 

「惣流殿、お見事でした。しかし味方と歩調を合わせる事も必要です」

「うるさいわね、次行くわよ!」

 

 小十郎の小言にウンザリとした顔のアスカは、さっさと先に進んでしまった。

 次の砦は、固く門が閉じられていた。

 これでは先には進めない。

 味方が着くのを待ち、包囲するのが定石だが……。

 

 「チェストー!」

 

 アスカはATフィールドの力を強めて門を突き破った。

 こうなっては戦略も何もあったものではない。

 文字通りアスカ無双だった。

 

 「互いの武、競おうぞ! 我こそは相馬……」

 「アンタの名前なんてどうでもいい!」

 

 倒すべき敵武将を理解したアスカは、相手の名乗りを最後まで聞かずにぶちのめした。

 お互いに名乗って戦うと言う儀礼を無視した行為だった。

 戦国時代にそれを律儀に守っている武将もあまり居なかったが。

 

「おのれ、我が殿を!」

 

 敵の武将を倒す事は成功したが、他にも武将は居るらしい。

 アスカはその場で向かって来る敵を振り払う手間に追われた。

 

「ふむ、西軍は順調に進攻しているようだな。わしらも負けてはおれんぞ」

 

 東軍の政宗もそう言って進撃を開始した。

 シンジも政宗について行く。

 

「息子の初陣を親の私が足を引っ張ってはならぬ。政宗、背後の守りは任せておけ!」

「ありがとうございます、父上!」

 

 輝宗・政宗親子の会話を、シンジは心底羨ましいと感じた。

 自分たちにも強い信頼関係があれば、トウジを助ける事が出来たかもしれないと思った。

 

「伊達の快進撃もこれまでだ。鉄砲隊、撃て!」

 

 相馬軍は雑賀孫市と言う鉄砲隊の傭兵を雇っていたのだ。

 

「政宗さん、危ない!」

 

 危険を察知したシンジは身体を張って政宗を守った。

 銃弾を浴びたシンジだが、ATフィールドのおかげで紙屑程にも感じない。

 

「シンジ、すまん、助かったぞ」

 

 命を救われた政宗はシンジにお礼を言う。

 銃弾で政宗の命を奪えると考えていた雑賀孫市の目算は崩れ、逃げ出してしまった。

 相手は傭兵部隊、深追いする必要は無いと判断した政宗は金山城へと進軍する。

 金山城では既にアスカが乗り込んで大暴れしていた。

 混乱を起こす兵士たちの中に相馬家当主の姿を見つけた政宗は、逃げ腰だった相馬家当主を討ち取った。

 

「敵将、討ち取ったり! 金山城は奪還したぞ!」

「初陣、お見事でございます。政宗様」

「これも小十郎、そしてシンジとアスカの働きあっての事だな」

 

 敵将を討ち取った功績と、身体を張って政宗を守った功績が認められたアスカとシンジは、たっぷりと恩賞を貰うのだった。

 

「小十郎、わしの右目を奪った償い、一生懸けてしてもらうぞ!」

「心得まして御座います」

 

 戦いの後、政宗は小十郎にそう告げた。

 

「シンジ、アタシの左目を奪った償い、一生懸けてしてもらうからね!」

「さっそく真似しているよ……」

 

 シンジはそう言ってため息を付くのだった。

 

 

 

 <天正9年(1581年)出羽国米沢(山形県)伊達屋敷>

 

「何、はんばぁぐとなる物を食べたいとな?」

 

 金山城の戦いで敵将を多数討ち取ったアスカは政宗に褒美は何が良いかと尋ねられ、ハンバーグが食べたいと言った。

 ハンバーグを作るには牛肉と豚肉と卵が必要だとシンジが話すと、家臣たちは眉をひそめた。

 牛も豚も鶏も、戦国時代では貴重な動物だったからである。

 

「よし分かった、そちの願い叶えて進ぜよう。わしもはんばぁぐと言うものに興味がある」

 

 政宗の一声で、ハンバーグ作りに許可が下りた。

 

「しかし豚は九州の島津家がわずかに有するのみ。手に入れるのは難しいでしょう」

「それならアタシがパッと行って、パッと獲って来るわ」

 

 アスカは腕まくりをしてそう言ったが、シンジはあわてて引き留めた。

 

「ここから九州までどれだけ距離があると思っているの? 冷蔵庫も無いんだし、腐っちゃうじゃないか」

「だから生け捕りにしてくるのよ」

「御二人とも、落ち着いてくださいませ。豚の代用品なら御座います」

 

 小十郎の話によると、イノシシの肉ならば豚肉の代用品に使えるかもしれないらしい。

 シンジもその意見に賛成し、やがて伊達屋敷の炊事場でシンジのハンバーグ作りが始まった。

 炊事場の女中たちも興味津々と言った様子でハンバーグ作りを見つめる。

 何しろ伊達家史上類を見ない贅沢の限りを尽くした料理なのだ。

 

「うん、久しぶりに食べたわ、シンジのハンバーグ」

 

 白飯にハンバーグを食べれて、アスカはすっかりご満悦の様子だった。

 

「うむ、これは素晴らしい御馳走だ。しかしこの料理は罪深い。よって“犯罵亜愚”と名付ける。もっと食したかったら、手柄をもっと立てて見よ」

 

 ハンバーグを初めて食べた政宗も感心した様子だった。

 戦国時代では肉を食す習慣が無く、それが平均寿命を短くしていたとも言われている。

 この後も度々ハンバーグを食べた伊達の武将たちは、戦場でも力一杯活躍したと伝えられた。

 シンジもハンバーグを食べた後は精力的な夜を迎えられるようになったと、とある人物は話していた。




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