『渡。これを持っていてくれ。』
『なにこれ?ブレスレット?』
『御守りだ。父さんの知り合いが作ってくれてな。きっとこれがお前のことを守ってくれる。…………きっと、守ってくれるさ…………』
ああ、またこの夢だ。冒険家で研究者だった父さんから渡された最後のプレゼント。
父さんは異国への旅や研究で滅多に家に帰れない人だったが、家に帰るときは毎回小さかった俺を相手に外へ連れ出して全力で遊んでくれた。
母さんとは時々喧嘩することもあったけど仲もよかった、俺にとってはとてもいい父親だった。
だからこそこの御守りを渡されたときの父さんの悲痛な表情がどうしてか記憶に残っている。
父さんのこんな表情は見たことが無かったから、だからこの夢は余計に俺の心を締め付けて離さないのかもしれない。
「_____とう....さん...。」
曖昧な意識のままの意識をなんとか覚醒させると、香ばしい匂いが薫ってくる。そして気になって匂いの方に意識を向けると台所の方から料理の焼き上げる音が聞こえる。台所の方で料理を仕上げていた少年がこっちに気づくとまるで向日葵のように眩しい笑顔を向ける。
「あ、渡。起きたのか!おはようさん。」
「ふぁ~...おはよう律。何作ってんの?」
彼の名前は
律が作っている料理が気になって、何を作ってるのか聞いてみると律は焼き終わった鮭を皿に乗せながら答える。
「さすがに朝は時間かけられないからな、焼き魚メイン。味噌汁もあるぜ。あとお好みで納豆もどーぞ。」
「おぉー、定番の朝食。」
「そりゃ日本人
「イギリスとのハーフのくせにへんなところ日本人だよなー。」
「ハーフでも生まれと育ちは日本人だっつーの。よし、出来たぜ。渡、皿並べてくれるか?」
「りょーかい。.....ん?」
『13年前から出現したノイズによる災害の犠牲者は昨夜だけでも30人をしめており、いまだこの災害による犠牲者は後をたちません。我々はこの災害を終えることはできるのでしょうか。』
俺が鮭の盛られた皿を机に乗せていると、偶然電源がつけられていたテレビの音声が聞こえてくる。
ノイズ....13年前、政府が認定した特異災害の総称だ。
オレにも縁が深く、そして怨恨が深いモノでもある。
「またノイズかよ,聞いてて気持ちのいいモンじゃないな、なぁ律。......律?」
「…………あ、ああ、ホントホント!最近多くて困っちゃうよなー!!」
「なあ、律。お前最近変だよ?なんかまた厄介なことに首突っ込んでない?」
「別になんでもないっての、それより、俺は先に行くから、
「ちょっとまっ!!?……もう行っちゃったし……」
慌てて何かから逃げるように家を飛び出した律を呆然と見送ると、俺もご飯を食べて支度する事にする。
それにしてもノイズか……その単語を思い出すと自然とノイズ災害の被害に遭った幼馴染の顔が浮かんでくる。彼女は今も元気にしてるだろうか、俺が今の学校に進学してからこっちも向こうも忙しくてスマホでしか連絡しあえていないし、彼女自身少しお転婆な所があるから心做しか心配になる。
「……そのうち未来さんあたりに聞いてみるかな。」
未来さんは今の彼女にいちばん近いもう一人の幼馴染だ。
彼女なら響の近況も知ってるだろうしそれに向こうもこっちも遠くは無いから都合でも合えば日程を合わせて会うことも可能かもしれない。
そんな事を思いながら支度を終えて家を出る。
「ん?渡??おーい!渡ー!!」
そうしていつも通りの通学路を1人歩いていると、丁度ついさっきまで考えていたはずの張本人の軽快な声が聞こえてくる。
まるで太陽を思わせるほどに眩しい笑顔を浮かべた少女はオレンジ色の髪を揺らして俺の前に姿を現す。
彼女こそが俺の幼馴染コンビの片割れ、立花響その人だった。
「響!!珍しいなこんな所で会うなんて!」
「そんなのこっちのセリフだよ。りっちゃんは?」
「なんか知らんけど用があるみたいでさ、アイツ先に行ってやんの。そっちこそ未来さんは?1人なんて珍しいじゃん」
「未来のほうもクラス委員の仕事……だから一人寂しく登校してるんだよね……ホント、私呪われてるかも。」
「ははっ、そう落ち込みなさんなって!その不幸の代わりに俺と会えたんだからプラマイゼロで帳消しだろ?それよりどうなんだ?リディアンは。」
「どうって?別にいつも通りだよ。未来もいるし弓美や創世に詩織もいる。いつも通り授業を受けていつも通りにちじょうをすごしてる。」
「なんだそれ、最高じゃんか。でもほら、『翼さん』と同じ学校に通うってはしゃいでたじゃないか。結局会えたのか?」
翼さんとは世界的な人気を誇るアイドル、ツヴァイウイングの片割れであり、
「翼さん!?翼さんかぁ……ま、まあ会えたかな。」
なんかあったなこいつ。
辛いことがあった時辛いほどこいつはいつも無理をして笑うところがある。"あの時"からのこいつの悪い癖だ。明らかに冷や汗をかいているその様子を見て思わずため息を吐いてしまうのも仕方がない。
「まあ、今は無理かもだけどさ。辛いことがあったらいつでも言えよな。俺だけじゃなくて律や未来もお前の味方だからさ。」
「渡……ありがとう。あ、そうだ!!渡こそどうなのヴーラギは!」
なにかを誤魔化すように響は俺の近況を聞いてくる。
ヴーラギ音楽学院、響の通うリディアン女学院の兄弟校であり舞台俳優やアーティストを育成するために設立された専門校であり、今までにも様々なアーティストを排出してきた名門校中の名門校だ。
「俺だっていつも通りさ。舞台稽古だって忙しいし、歌のレッスンだって課題は多い。だけど懸命に頑張っているってところかな。まあ何分、目指すところが目指すところだしな。」
「天宮フォルテさん……だっけ?渡もすごいよねぇ、1度ライバル視した人を追いかけるってだけのためにあの難関校を受かっちゃうんだもの。」
「当然だろ!アイツは俺のライバルなんだ!なら全力でアイツを追いかけて追い抜いてやる!!それは俺とアイツの約束でもあるからな。」
「なんかいいなぁ、男の子同士の友情ってカンジで!」
「そうか?」
「そうそう!!」
そんな雑談をしながら俺と響は路地を歩いていくと、どうやらリディアンとヴーラギの分かれ道についたようで響と軽く別れの挨拶をして手を振りながら別れる。……まったく、アイツも元気なところは変わらない。
久々に見たアイツの笑顔を少し思い出すと、おもわず顔がほくそ笑む。だがいつまで惚けていても仕方がない。再びヴーラギに向けて足を踏み出した。
久々の投稿となります。
ここんところ私生活が立て込んでいたりしていたのですがまずは
待たせてしまい、申し訳ございませんでした。
今回からまた時間を見つけてチビチビと書いていくつもりなのでよろしくお願いします。
最後に
レゼ編はいいぞ……